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ウルトラマンガイア』感想・第11話

◆第11話「龍の都」◆ (監督:原田昌樹 脚本:古怒田健志 特技監督:満留浩昌)
 『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008)での仕事が大変素晴らしく、いつかまた戦隊に参加してほしい古怒田さんの、『ガイア』初登板。
 東京が極度の水不足に悩まされ、更にガス・電気・電話などのライフラインに原因不明の障害が多発。オペレーターズと検討中だった我夢の背後に迫る、筋肉、更に筋肉、そして筋肉。
 「そ、我夢のピンチを助けたのは、俺たち」
 「「「チーム・ハーキュリーズ」」」
 手を打ち合わせて一斉にサムズアップを決め、これまで無かったノリを見せる筋肉トリオは、あの時の借りを今すぐ返せと我夢を格納庫に引きずっていき、新型タンク・スティンガーへの弾薬その他の積み込みを半強制。
 「しめて900キロってとこかな」
 エリアルベースで過ごす事2ヶ月余り、周囲の筋肉密度にだいぶ慣れてきたとはいえ、基本的にはインドア派のインテリであるところの我夢にとって、親しみをひたすら自分たちの土俵で示してくるパーフェクトに体育会系ノリのハーキュリーズには苦手が先に立つようで、命の恩人として感謝はしているけど僕はミニスカの(綺麗な)お姉さん達と情報分析をしていたいです! と終始逃げ腰なのが、エピソード通してほのぼの。
 ファイターチームとはまたノリの違うハーキュリーズの姿が1エピソードでしっかり色分け出来ましたし、我夢のリアクションの幅が広がり、様々な感覚を持った人々が使命の為に共同体として活動している、という地球防衛を担う大所帯・エリアルベース内の人間関係の奥行きが広がったのも良かったです。
 一緒に戦う仲間として無条件に意気投合しているというわけではなく、かといって険悪という事もないけれど、嫌いじゃないけどちょっと苦手、という距離感を描いたのは特に秀逸(改めて前回は、我夢からチーム・クロウへの視点が欠けていたのが残念)。
 「いや、だってほら、僕って、一応、アナライズ担当ですし」
 「XIGの一員である以上、こういうひ弱っちい体じゃいかん!」
 「そうそう。ウェイトトレーニングのつもりで、みっちりやってくれ」
 我夢と筋肉ネタは、概ね冗談で書いていたのですが、まさか本編でこんな直球が投げ込まれるとは思いませんでした(笑)
 「なんで僕がこんな事を……」
 「ハハ……吉田さんも志摩さんも、陸戦専門の叩き上げだからな。おまえさんみたいな青っちろいのを見てると、つい鍛えたくなるんだろ」
 前回(おもむろに倒立)と今回が逆だったら、完璧なはまり方だったのが、惜しい。
 ほうら藤宮、僕はもう、背中に力士を乗せながら指立て伏せが出来るようになったから脳細胞までスクワットしているぜ!
 その頃、今回もディレクター不在のTVクルー組は、東京を悩ます水不足問題についてアマチュア風水師の女・黒田恵に取材し、都市開発によって壬龍(みずのえのりゅう)の地脈が断ち切られているのかもしれない、という話を聞いていた。
 そして3人が向かった工事現場で、地下から忽然と姿を現す巨大な龍の首!
 立て続けに都内六カ所に出現した龍の首により、弱り切っていた東京の都市機能は完全に麻痺。古い地下水脈やガス・水道などのパイプラインなど、複層的な東京の地下マップに怪獣の出現地点を照らし合わせると、画面に浮かび上がったのは、東京地下に潜む巨大な龍の姿……虚空のXIGと地上のTVクルー、2つの視点に分かれていた科学とオカルトが結びついた所で怪獣の正体が明らかになり、しれっと、風水について語るコマンダー(笑)
 そして何だか、もう事態が解決するなら私は何でもいいです、という勢いでその解釈を受け入れる監督が、この2ヶ月の間に対応が柔軟になりすぎてむしろ不安です。
 東京の地下で蠢き、今その姿を地上の人間に見せつけたのは、近代の都市開発によって切り刻まれた龍の道を繋ぎ直し、古代の地脈を回復する事で自らの土地を取り戻そうとする地帝の龍!
 と、最低でも前後編ぐらいには広げられそうなスケールの大きいアイデアを投入して、惜しげもなく1話でまとめてしまうのは、今作の素敵なところ。
 実質的に東京を占領して首を引っ込めた龍の反応が丸の内の地下に集中している事から、チーム・ハーキュリーズがスティンガーで出撃し、我夢がEX機で上空から情報支援に当たる事に。
 「俺たちの命、チューインガムに預けたぜ」
 「信頼して、くれますか」
 「俺たちはさ、坊やをXIGに入隊させた、コマンダーを信頼してるんだよ」
 信頼は仕事で勝ち取るものだ、という反応が渋いですが、信頼していいのかどうか結構悩ましいコマンダーに、部下からの厚い信頼が語られてホッとしました(笑)
 スティンガーは丸の内の工事現場から東京の地下へと乗り込んでいき、地下世界を進むおむすびタンクという、力の入ったミニチュア特撮に大興奮。
 地下空洞の地底湖において、複数の龍の首を我夢のアドバイスで撃退するスティンガーだが、巨大な龍の本体と遭遇。その強烈無比な念動力によって地下空洞が崩れ、凄まじい水しぶきをあげながら壬龍の本体が地上に顕現。
 街を洗い流す濁流のシーンは、さすがに第1話の使い回しかもですが、最初に地上に出てきた複数の首は尻尾に過ぎなかった、という巨大な龍の造形も凝っていて、大変豪華。
 膨大な水流と共に地上へ噴き上げられたスティンガーが行動不能に陥っているのを見た我夢は、オートパイロットを起動するとガイアへ変身。しかし複数の首による攻撃に苦戦し、必殺のうにょんバスターの溜めポーズ中に連続攻撃を受けて崩れ落ちてしまう。更に龍の念動力により宙づりにされたガイアは、筋肉不足で大ピンチ。筋肉さえあれば、うにょんバスターのモーションはあと5秒縮められるし、念動も光の力で破れる筈なのに!
 ガイアの危機に、再起動したスティンガーがグレネードミサイルを放つも、龍の念動バリアーはそれを完全防御。
 「グレネードミサイル、撃ち尽くしました!」
 だがしかし、チーム・ハーキュリーズは諦めない。
 「……武器は……まだある」
 そう、昔の偉い人は言いました。
 筋肉は、最後の武器だ!
 スティンガーを降りたチーム・ハーキュリーズの面々は、壬龍のバリアをものともせずに肉弾ラリアット、じゃなかった、弾薬積み込みシーンで伏線のあった携帯火器で立ち向かい、そういえば今作、戦闘中に隊員がメカから降りる事が無かったので、歩兵による火力支援は初でしょうか。OPでは光線銃を構えているチーム・ライトニングも使った試しが無いですし、我夢のアリバイ作りと同様の今作なりのリアリズムを感じますが、そう考えると、シーガルに次いで怪獣に近づいた経験がある(しかも複数)のは我夢で、それはハーキュリーズも心配するわけだなと(笑)
 「壬の龍は、東京という街が生まれる前からここに居たんです。この場所を、人間から取り戻すまで、怒りは収まらないかもしれません」
 ハーキュリーズの攻撃が龍の額の宝玉を砕く事で念動力が解除されて自由を取り戻すも、がくっと倒れ伏してカラータイマーの点滅するガイア。
 「……でも、怒りからは何も生まれません」
 ガイア絶体絶命のその時、荒ぶる大地の龍に恵の声が届くと徐々にその瞳の光は和らいでいき、今回はオカルトの領域でふんわりと解決するのですが、こういう役どころに10代の少女ではなく30がらみの妙齢の女性を配置、というのは珍しいでしょうか。結果的にアネモス回と雰囲気や構図が重なりつつ、片方は人間の一方的な感情移入を厳しく拒絶され、片方は祈りが聞き届けられるという対照的な結末を迎えるのですが、『ガイア』としては前者の方が劇的であり、今回は説得力の積み重ねが不足した印象。
 XIGの敵性存在としては「根源的破滅招来体」という名称で一括りにしているものの、その実態は様々な“人類の敵”のバリエーションである、というのが今作の基本構造で、今回はその一つとして「古代の神格」が取り上げられており、地底湖に人工物と見られる神殿が存在していたように、それはかつて祭祀の対象であったからこそ人の祈りを受け止められる存在である、という事なのでしょうが、そういった理由付けが詰め込んだ理屈の段階で止まってしまって、物語の流れでスムーズに納得できる劇的な場や言葉に昇華しきれなかったのが残念。
 積み重ねのない集約は空虚ですが、積み重ねが集約されなければ断片にしかならないわけで、道中の要素を欲張りすぎて、クライマックスへ至る計算式を美しく収めきれなかった感。
 「あなたの思いは、ガイアに伝わったわ」
 ……そ、そうなんですか? まあこの場合、“ガイアと同調している我夢”ではなく、“我夢を通して顕現したガイア――大地を守るもの――”に対して、抗議の意志が伝わったので、書類は本社に持ち帰って検討の上、出来る限り前向きに善処する所存です、と受け止めればいいのかもですが。
 鎮まった龍は荒魂から和魂へと姿を変えると地下へと戻っていき、ガイアもまた飛び去っていく。
 「何が起きたんだ?」
 「……我々は、自然が本来持つ力というものに……もっと敬意を払うべきなのかもしれません」
 本日もそれらしい事を言って、自分と周囲をなんとなく納得させるコマンダーであった。
 平穏の戻った東京では、静かな公園をそぞろ歩きする、恵とTVクルー。
 「私たちが作ったこの街にも、風の流れがあります。新しい、風と水の流れが。風水では、人が作ったものも、大地の一部とみなします。人が何を作っても、それは所詮、地球という大きな自然の一部に過ぎないのかも」
 環境テロリスト過激派へのスタンダードな反論である「人間も地球の一部」理論を恵が風水的な視点で語り、藤宮へのアンチテーゼが我夢も藤宮も居ない所でゲストキャラの口から持ち出されるのですが、風水師というキャラクター性と繋げる事で唐突さも減じて言葉だけが浮き上がる事もなく、「一つの物の見方」として説得力を持たせたのはお見事。
 ここで一つの返答が示される事が、この先で我夢がどんな答に辿り着くのかに期待を持たせる仕込みにもなっており、こちらが綺麗に収まっただけに尚更、壬龍との決着が惜しい事になりました。
 恵の言葉に合わせて、EDのイントロから水辺のカットが次々と切り替わり(ここの映像が美しくて素晴らしい)、風――空から、カメラはエリアルベースで我夢の肩をバンバン叩く(この如何にも感(笑))チーム・ハーキュリーズに焦点を戻し、ほらだから僕はミニスカの(綺麗な)お姉さん達と情報分析してこその人材なんですよーと腰の引ける我夢を取り囲む、筋骨隆々の男達。
 「じゃあ行こうかー」
 「え……どこに?」
 「スティンガーに弾丸を積み込むんだよ」
 「全弾撃ち尽くしたからねー」
 「えー?! 勘弁してくださいよ!」
 高山我夢、肉体改造の道のりは果てしなく遠い、でオチ。
 得意不得意でいえば確実に苦手方面なチーム・ハーキュリーズの面々ですが、ガンQショックやテンカイ戦を経て周囲と打ち解けてきたとはいえ、自分本位で配慮不足の一面を持つ我夢には、このぐらいズカズカ絡んでくる人達に巻き込まれる方がエリアル・ベースに馴染みやすかろう、という点で、他人事目線としては大変楽しく見る事が出来ました(笑)
 我夢に正確に伝わっているかはさておき、ハーキュリーズ側に、戦闘員主体のエリアルベースに飛び込んできた異分子といえる我夢に対する大人の配慮が見え隠れするのも素敵。
 また、本来なら突っ慳貪にしたり逃げ出したい我夢が、相手は命の恩人なので逃げられない(ちゃんとその恩を忘れない人間性も持っている)、というのは実に巧い退路の塞ぎ方。序盤の要素をしっかりと汲んで、我夢とハーキュリーズの関係性は、面白かったです。
 人類破滅の要因になりうるかもしれない古代の神格との激突、その導線となるオカルト要素(風水的視点)を藤宮へのアンチテーゼに繋げる、状況を盛り上げる特殊ミッションに挑むチーム・ハーキュリーズと我夢、とこれだけの要素を関連させながら詰め込んでいる手腕はさすがなものの、詰め込みすぎて捌き切れずにクライマックスでの不足に繋がった気配もあり、古怒田脚本に期待しているハードルからするとやや届きませんでしたが、そこは『ゴーオン』10年前ではあるか。
 次回――久々登場の藤宮に、我夢は肉体改造の成果を見せつける!
 「馬鹿な! き、君はいつの間にそこまで均整の取れた完璧なシックスバックを手に入れたんだ我夢?!」
 「藤宮! 君も僕と一緒に、XIGでトレーニングしないか?! 地球を守る仕事の傍ら、プロの軍人が付きっきりでトレーニングを指導してくれるぞ!」
 果たして藤宮は、その誘惑に打ち勝つ事が出来るのか!!
 ……えー、真面目な予告としては、藤宮に野獣疑惑が浮かび上がるも実は……みたいな感じに見えますが、藤宮が《野獣》属性持ちになったらそれはそれで楽しいので、どう転んでもOKです。