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レジガス爆発

電光超人グリッドマン』感想・第11話

◆第11話「おこづかいは十万円?」◆ (監督:小中和哉 脚本:川崎ヒロユキ)
 「パパもママも、お金さえ渡しておけば、僕が幸せだと思ってるんだ!」
 独り言を呟きながらスーパーでサプリメントを購入していた武史、子供にぶつかられてその母親から白い目を向けられたストレス発散に、自室で万札吹雪。
 「ほう、それが人間の欲望をかきたてる、金というものか」
 「金は人間の醜さをえぐり出す。人間は金の奴隷に過ぎないんだ!」
 床に散らばった1万円札をぐりぐりと踏みつけながらメタルボディの鋼鉄怪獣を作り出した武史は、カーンデジファー様の音頭で商店街のレジ管理システムに潜入。商店街共通の専用キャッシュカード(例えばWA○Nカード的なニュアンスか)である桜カードの残金を全て10万円に書き換えるが、そこにはある恐るべき目的があった……
 「恐怖の買い物ゲームの始まりだ」
 母から買い物を頼まれ、カードの残額をお小遣いにしていい(母の目論見では200円ぐらい)と言われた大地はこの騒動に巻き込まれて10万円を手にする事になり、カナとその友人達に大盤振る舞い。
 「「「大地くん、あの洋服買ってー」」」
 手に入れた大金を後先考えずに使ってしまうのは子供の浅はかさと無邪気さではあるのですが、今作における「悪」が、「日常の些細な出来事から爆発するねじれた憎悪」という現実にかなり近い場所を発源としている事と、グリッドマンと怪獣の戦いがCワールドで行われる為に一般市民の世界の認識にパラダイムシフトが発生していない事が重なって、今作は日常世界のリアリティラインが意外と高い為に、万単位の金を使い歩く小学生だけの集団を素通しする店の人とか、桜カードはそもそも小さい子供に持ち歩かせていいのだろうか、などは少々気になってしまうところ。
 作品によっては全く気にならないタイプの表現なのですが、直人達の家族模様を丁寧に肉付けして描くという今作の特色の、長短裏表といった感。
 さんざん遊蕩の限りを尽くした大地一行は、街角で直人たち3人組と遭遇。ジャンクを強化しようとそれぞれの小遣いを持ち寄るも、諭吉さんのゆか、ゲーム代にと貯めておいた夏目さんの一平に対し、全財産350円しか出せなかった直人は、羽振りの良い大地の姿を見てまなじりを吊り上げる……と思いきや、金を無心。
 「大地ぃぃ……少し俺に貸してくれよー」
 「えー!」
 「あー、ジャンクの……じゃなかった、とにかくお金が要るんだよ」
 本日も最低だな……。
 「やだよ、これは僕のだもん!」
 「そうだ! きっとそれは俺の分も、含まれてるんだよ」
 最低だ……。
 「聞いてないよ、そんな事!」
 「いいや、そうに違いない。少し寄越せよ」
 どうしようもなく最低だ……。
 前回のオプションメカの礼として、ゆかと一平に宅配ピザをおごるという気前の良さで稼いだ好感度を、振り向きざまに地面に叩きつける勢いで最低だ……!
 迫り来る本当の敵という名の無計画な身内を水鉄砲で迎撃してその場を切り抜ける大地であったが、その際の金に物を言わせる言動がきっかけで、カナに愛想を尽かされてしまう。
 「おごってもらってどうもありがとう。だからって私たち大地の家来になったわけじゃないもん。あんなこと言う大地なんてだいっきらい」
 カナ&友人ズは大地に買ってもらった商品をその場に置き捨てて去って行き、お金で人の心は買えないのであった!
 与り知らぬ事とはいえ、不正な形で得た金で買った物品をそのまま自分のものにしてしまわなかったのはホッとした所で(食事はしましたが……)、このショックにより金銭的熱狂の冷めた大地は、肝心のお使いの買い物をどこかへ忘れてしまった事に気付き、慌ててスーパーへと戻る。
 一方、大地の豪遊について公衆電話から母に問い質す一平は……
 「あんた大地のお駄賃巻き上げるつもりなの?! いい加減になさい!」
 日頃の行いの悪さからぶちっと電話を切られ、ゆかと一平からも非難囂々(笑)
 ところが街では桜カードを巡る異常事態――恐怖の買い物ゲームが新たな局面を迎えており、カード内部の10万円を使い切った途端、それを読み込んだレジが煙を噴き上げながらカウントダウンを開始。現場に居合わせたコメディリリーフ巡査が慌ててレジを抱えて外へ飛び出すと、放り投げた空き地で、割と派手に爆発するレジ(笑)
 今回のエピソードはこれが“スイッチ”となっていて、Cワールドにおける破壊活動の結果が現実世界に飛び出す事で、フィクションとして飛躍するのですが(このスイッチの機能が不十分だったのが洗脳塾回)、ここまで空回り気味のコメディリリーフでしかなかった巡査が、その正義感と職業意識を発揮して命がけで市民を守る姿を見せるシーンになったのも、良かったです。
 そして地面の陰から順々に顔を出し、
 巡査「レジが爆発するなんて……」
 直人「こんな事が出来るのは……」
 一平「きっとカーンデジ」
 ゆか(一平の口を塞ぐ)
 というのは非常に面白かったです。
 巡査の言葉から桜カードとレジ爆発の関連疑惑を知ったところでGコールが鳴り響き、主題歌をバックにジャンクの元へ、というのも綺麗な流れ。
 「出動だ、直人」
 「アクセーース・フラッシュ!」
 Cワールドへ入り込んだグリッドマンは鋼鉄怪獣とご対面し、一平が怪獣の分析をしている間に、大地の姿を探すゆか、がごく当たり前のように商店街の防犯カメラをハッキングしているのですが……つまるところゆかは、杉村升世界の科学者(大変ナチュラルにキ印)みたいなものだと思っておけばいいのか。
 善でも悪でもなく、『グリッドマン』世界では、プログラマー=マッドなのだ!
 グリッドマンが鋼鉄怪獣のビーム反射特性に苦戦し、大地がレジ大爆発に巻き込まれる寸前、第3のオプションメカであるゴッドタンクが送り込まれると、実体弾により怪獣を蜂の巣に。この攻撃で怪獣のビーム反射クリスタルが破壊された所にグリッドビームを叩き込むと怪獣は消滅、グリッドマンはCワールドを修復し、レジ大爆発は辛くも回避されるのであった。
 最後は、不正カードによる支払いは不成立という事になったのか、大量の支払い請求が翔家を訪れる、でオチ。これはこれで割と酷いのですが、レジが爆発した所でエピソードのリアリティラインが切り替わっている為に、十万円狂騒曲の因果応報としてスッキリと見る事が出来ました。……今作最大の邪悪が、なんだか勝ち逃げしている感じなのは気に掛かりますが(笑)
 個人的に苦手な監督と脚本家で少し身構えていたのですが、今回はなかなか面白かったです。