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ウルトラエクストリーム

ウルトラマンルーブ』感想・第15話

◆第15話「まとうは極」◆ (監督:市野龍一 脚本:中野貴雄
 「なんでも1人でやってるなんて思うなよ? いいか、おまえはみんなに支えられてるんだそれを忘れるな! 父さんだって、おまえを大学にやるのがどれだけ大変かわかるだろ?! その為に俺だって」
 「進学諦めたって言うんじゃないだろうな? カツにいは恩着せがましいんだよ。俺に夢を背負わせないでくれ」
 「なんだと、もういっぺん言ってみろよ!」
 「喧嘩はやめてください! 喧嘩はハッピーじゃありません。私たち、3人だけの兄妹じゃないですか」
 自己の存在に疑念を抱きつつも、こじれた兄弟の仲を取り持とうとアサヒが奮闘する中、アイゼンテック社から放たれた拘束ビームで活動を停止していたグルジオキングが、サキの差し金で活動を再開。立ち向かおうとするイサミ@家出中はジャイロを携帯しておらず丸焼けの危機に陥るが、その刹那に飛び込んできたカツミによって助けられる。
 「昨日は怒鳴って悪かった」
 「……俺も、ちょっと言い過ぎたよ」
 「……行くぞ!」
 ……根本的に仲良し兄弟なのでしょうが、こ、これで解決なの?
 復活したコンビネーションでグルジオキングに立ち向かう2人だがその猛攻に勝機を見いだせず、再び光と闇のクリスタルに手を伸ばすも、またも「お客様、その格好ではちょっと……」と入店を拒否されてしまう。
 「しょせんお前達にあのクリスタルは使えない。さらばだ、素人ウルトラマン
 だがその時、倒れたルーブ兄弟に声援を送るアサヒ。
 「カツにい! イサにい! 諦めないで! お母さんは言ってたでしょ?! 兄弟2人なら、何でも出来る!」
 「兄弟2人なら……」
 「何でも出来る!」
 立ち直った2人は今度こそ光と闇のクリスタルの起動に成功し………………えええ。
 話の流れとしては、兄弟の間に生じた軋轢を乗り越え、「兄弟2人なら、何でも出来る」という母の教えを取り戻す事で新たな力を入手するというものなのですが、肝心の不和の克服がショートカットされすぎて、何故クリスタルを使えるようになったのかさっぱりわからない状態になっており……3話ぐらい前にも同じような事を書いた気がしますが、「力」を手に入れる為の「試練の突破」の描き方が、ものすっごく雑。
 …………考えてみると、前作『ジード』でも、唐突に手を伸ばすとまるで当然のように武器が出てくる・ゼロがサングラスの側から復活してしまう&ヒカリ宅急便・お気に入りの女の子に頼まれたのでキングがサービスした、と劇的にはほど遠い「力」の入手が連発されていたのですが(物語ときちっと連動したのはマグニフィセントぐらいか)、現行スタッフのこだわりが薄いのか、或いは2クールに次々と詰め込まれる強化アイテムの存在に諦めの境地になってしまっているのか。
 これが4クール作品だと、幾つか雑な部分はあっても1年間の中である程度紛れる部分もあるのが、2クールの中にギザギザとした山並みが圧縮されている事で悪目立ちしているという面もあるでしょうが。
 この点、『オーブ』は「強化展開を劇的に描く」点に関してはかなり気を遣って巧くやっていたのですが、逆に言えば物語をスムーズに展開するには『オーブ』ぐらいのアイテム(強化パターン)数が精一杯で、それ以上は要求される山場が増えすぎて山と平地の区別が付かなくなってしまうのかもしれず、現行《ウルトラ》シリーズの作り自体がある種の限界に直面しているようにも感じます。
 兄弟がウルトラマン(光)とベリアル(闇)のクリスタルによって「弾けろ、最強の力!」と唱えると四属性クリスタルが合体して極クリスタルとなり、6つの力を結集する事で、2人で1人のエクストリーム、ならぬ三本角のウルトラマンルーブが誕生。
 「「まとうは極、金色の宇宙!」」
 金と黒のラインが特徴的なルーブ(オリジナルの力を取り戻したという事なのか……?)は、グルジオキングの火炎放射を片手で受け止めながら叩き返すと強烈な蹴りを喰らわせ、前回のお返しとばかりに挑発。「ニュージェネレーションヒーロー」クリスタルによりグルジオキャノンを火力で上回るのですが……前作でもカプセルが登場していましたが、「ニュージェネレーション」というくくり自体がメタなので(私が知らないだけで、ウルトラ警備隊でもそう呼ばれているのかもですが)、劇中にそのまま持ち込まれると、どうももやっとします。
 グルジオキングのキャノン砲を使用不能にしたルーブは、手持ちの丸鋸・ルーブ光輪を取り出してグルジオキングを切り刻むと、最後はルーブボルテックバスターで大勝利。それを見届けたサキは無言で歩み去り、歓声をあげるアサヒ、だが……
 「やっぱりお母さんの言った通りだった。兄弟2人なら何でも出来るっ。………………兄弟、2人?」
 ここで、逆転のキーワードになった母の言葉の中に自分が含まれていない事にアサヒが気付くというのは面白い仕込みと繋げ方だったのですが、劇中における「兄弟2人なら何でも出来る」の扱いが雑な為に、トリックは面白いんだけど……といった印象になってしまうのがどうも残念。
 「なんだかんだでさー……俺はおまえが羨ましかったみたいだ」
 「俺が羨ましい? カツにいが?」
 「ああ。イサミはなんか自由に生きてる気がしてさー」
 「……俺もカツにいにコンプレックス持ってたよー。スポーツもできるし、店も父さんと切り盛りして、近所の人気もんだし」
 「うぁぁ! あーきもちわる。おまえ、もう、こんな話やめようぜ」
 「はっ、そうだな。やめやめ!」
 兄弟は互いの本音を少しばかり吐露し、2人の関係にフォローが入った上で明るくまとめてくれたのは良かったのですが、兄弟ヒーローを軸にしている作品だけに、<極>に至る前段階の試練としてもう少しこの要素に焦点を合わせて欲しかったです。
 どうも今作は、好みの作劇から少しずつズレていて淡々と波長が合わないのですが、
 『オーブ』:序盤から中盤にかけてそれなりに楽しむも最終話で思い切りツボから外れる
 『ジード』:折り返し地点のV字回復で期待が高まるも終盤の急失速から大暴落
 『ルーブ』:淡々と低調に横ばいから……?
 と、ある意味で前2作とは逆の印象になっているので、終盤に思わぬ急上昇があるのではと期待もしながら、ここまで来たからには最後まで付き合いたい所存。
 グルジオキングごと吹っ飛んだ愛染誠が世間的に失踪の扱いとなり、謎の女は果たして何を狙うのか……? そして、自らの秘密に迫っていくアサヒが家に帰っておらず……で、つづく。