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ウルトラマンルーブ』感想・第16-17話

◆第16話「この瞬間が絆」◆ (監督:辻本貴則 脚本:柳井示羊緒)
 「さようなら、愛染マコトさん。――いや、精神寄生体チェレーザ」
 ダーリンを手中に収め、アイゼンテックを乗っ取ったサキにより除菌されるチェレーザ。これでさようならだったらものすっごく面白くないので、再来を期待したいところですが……
 「残念無念、柿八年」
 気絶する前の愛染の呟きに寄生の名残があるのが、実はちょっぴりだけ残っていた、という布石だと思いたい。
 「やっぱりそうなんだ……アサヒは存在してないんだ」
 一方、アサヒが姿を消した湊家は大混乱。
 「俺たちの思い出の中では! お前達2人の間に、アサヒが写ってるんだよ! けどどうだ……」
 恐慌状態のお父さんに写真を突きつけられ、何とかそれを否定しようとする兄弟は、とにかくアサヒの携帯のGPSを追跡して行方を追おうとするが、そんなタイミングで電気を吸い取る怪獣が街に出現。立ち向かうルーブ兄弟はダッシュ体当たりからのボディプレスで下敷きにされてしまうが、充電率90%を確認したサキは、ルーブ兄弟にこだわる事なく怪獣を撤収させる。
 アイゼンテック社を利用し、何やら計画を進めるサキだったが、そこに(私は誰? みんなと本当に家族なの?)と悩めるアサヒから人生相談の電話がかかってきて、しばらく愛染ワンダーランドでデートシーンをお楽しみ下さい。
 「私、覚えてるんです。この広場で、こうしてみんなで、綺麗な景色を見て、ストロベリーアイスクリームを食べた。写真も撮った。でも、写真には私の姿はない。私は誰なんです? 今までずっとハッピーに暮らしてたのに、急にいろんな事が起こり始めました」
 率直に、出会って2回目でこんな重い相談をされるツルちゃんさんは、アイスクリーム地面に投げつけて帰っても許されると思う。
 そこへ、アサヒに対してどう接すればいいのか迷いを抱きながらも兄弟がやってきて、サキは3人の目の前で躊躇なく怪獣を召喚。兄弟はルーブに変身し、サキはアサヒに背を向ける。
 「ハッピーは地球を救う!」
 「その言葉、友の言葉として憶えておこう」
 まさかの、格言認定。
 土と風で立ち向かうルーブ兄弟は怪獣の透明化攻撃に苦戦して本日も地面にひっくり返り、そんな2人に声援を送るアサヒ……第12-16話で3回目。
 「思い出や記憶が違えどアサヒは居る。今すぐそばに」
 「だったら、守るしかないっしょ!」
 「お兄ちゃーん!」
 状況の繰り返しはともかく、気合いを入れ直して立ち上がると両ウルトラマンの胸部が光り輝く演出は格好良く、強引な兄弟喧嘩とそのインスタントな解決からよりも、まだこちらの方が<極>覚醒の契機として納得できた気はするのですが、アサヒの謎から起こる湊家の波乱、暗躍するサキの表舞台への登場、という二つの流れの収束が巧く噛み合わなかった感。
 シリーズ構成の似た近作である『オーブ』『ジード』と比べると、総集編後の1エピソードが無く、最強フォーム(?)登場が2話早いのは今後にもう1段階パワーアップが隠されているのかもですが、現時点ではオーブダーク登場以後のアイテムラッシュを巧く捌いて御しきれなかったという印象であり、〔追加装備ラッシュ・連続する似たようなシチュエーション・同じテーゼの繰り返し〕って三拍子揃って最近の作品で覚えがあるなと思ったら……『仮面ライダービルド』か。
 アサヒの《激励》スキルでガッツの回復した兄弟は、複合技の砂嵐で怪獣のステルスを無効化すると、ばってん斬りで転ばせてから極クリスタルを発動。怪獣が撃ち出した雷電弾を光輪で弾き、周囲に落下したそれが引き起こす爆発を背負って悠然と構える、というアクションは格好良かったです。
 ルーブ極は、いつの間にかなんとなくスピード型のような扱いになっているブルモードで光輪を振り回す連続攻撃から、最後はサブマリン光輪で胴体を真っ二つにして怪獣を撃破。
 結局は直線に飛んでいくしかない必殺光線に比べて工夫のし甲斐があるのか、『オーブ』から数えても色々とアレンジを加えて見せてきた八つ裂き光輪がとうとう最強?の手持ち武器となりましたが、投げて良し叩いて良しなのは応用が利きそうで、今後の見せ方も楽しみ。
 2人が合体しないと最強フォームになれない、というのも、初手から最強フォームを出せないエクスキューズとしては悪くないのですが、肝心の「合体」のくだりが凄く雑だったので(当の2人も状態に何の違和感もなく受け入れている)、合体ルーブ自体に劇的な重みが欠けるのは、つくづく残念。
 「アサヒは居たし、今も居る。……俺たちの家族だよ」
 アサヒに対する心理的葛藤は、飴玉くれる可愛い妹だからいいじゃん、と元の鞘に収まり、今作の人間関係は、波乱を乗り越えて「変化する」のではなく、再確認して「元に戻る」事を基本とし、その土台の強さ(と同時に守りたいもの)こそルーブ兄弟を支えているものだとしているのですが、作劇としては結果的に似たり寄ったりのテーゼとシチュエーションを何度も繰り返す事になって徐々に盛り上がりが落ちていくというパターンに陥っており、果たして最後までそれを貫き通すのかどうか。
 手の中の飴玉に視線を落としながら、サキは無言でそれを見送り、クワトロMでは、帰ってきたアサヒを父が力一杯抱きしめる。
 「今、アサヒが目の前にいる。この瞬間があればそれでいい! 写真がなんだ! この瞬間こそが……この瞬間こそが、にゃんちゃってー!」
 ……じゃなかった、
 「絆だ!」
 ここは変Tネタを繰り出す絶好のタイミング! とワクワクしていたのですが、お父さん、さすがにシリアスを貫き通してがっかり(え)
 「……この瞬間が、絆」
 「俺たちは家族ってこと」
 アサヒという妹/長女の存在を改めて受け入れる湊家の男達であったが、夕飯のリクエストでフルーツいっぱいのチョコフォンデュを要求され、硬直。
 一方、公式にアイゼンテックの社長に就任したサキは、謎の「タワー完成予想図」を見ながら口の端を吊り上げる。
 そして正気に戻った愛染誠は、世界中を回る旅に出ようとしていた。
 「「どうせ地球は丸いんです。その内どっかで会えるでしょう」。……あれ? これ誰の言葉だ? まいっか」
 残念風来坊ネタを繰り出し、自転車で走り去っていく愛染は、何やら完全退場の気配さえ漂いますが(EDパートで、じゃんけんお姉さんと意気投合したりはしていそう)…………うーん…………結局、今作における『オーブ』ネタとは、なんだったのか。
 まあ、アイゼンテックビルで除菌されたと思われたチェレーザの残滓がビル内部に残っていて、最終盤にサキの目論見を打ち砕く行動を取って最後の最後に“真のヒーロー”になる、的な展開の可能性も残ってはおりますが、愛染/チェレーザ関連がこのまま片付けられてしまうなら、だいぶガックリ。
 なお今回からOP歌詞が2番となり、次回――怪獣ハロウィン。今年は戦隊でハロウィンネタやらなかったなぁと思ったら、こちらでやっていた。

◆第17話「みんなが友だち」◆ (監督:辻本貴則 脚本:皐月彩)
 年に一度の大宇宙慰労会の幹事を務めた異星人ダダだが、パーティが無事に終わった後に「大御所様」に間違った日取りを教えていた事に気付き、大慌て。遅れてやってくる大御所様を歓迎するべく、ハロウィンに浮かれる地球人を集めて何とかパーティの体裁を整えようとするのだが、首尾良く屋敷に招いたアサヒ達にサキが加わったと思ったら、カツミとイサミまでやってきて……という、コスプレギャグ回。
 ギャグ回としてはそんなに悪くない出来でしたが、思わせぶりに引っ張っていた「大御所様」がブースカ、というのはOPクレジットでわかっていた為、衝撃のオチとしては効果ゼロ。……まあ、こういうのは作品が悪いわけではないのですが。
 「ずっと前に戦いに負けて、星になった。本当の敵は無能な身内。身内の失敗は身内が正す」
 「私たちのミスに、君たち兄妹は関係ない」
 純粋悪、というわけでもなさそうなサキは、アサヒとのやり取りから抱える事情の一端を垣間見せ、ダダの流れ弾からアサヒをバリアで守る姿も見せるが……ダダが大御所様のお仕置きを受けて地球を去った後、アイゼンテックの代表として、「1300年ぶりに地球に到達する怪獣をキャッチ」した事をTVで公表。
 「怪獣の到達予測は、二ヶ月後! それに対し私たちは、殲滅活動を実施します! その作戦を実行した結果、地球は、木っ葉微塵になりまーす!」
 で、つづく。
 今回出てきた情報をシンプルに繋げると、サキの身内(諸々のこだわりからすると、ウルトラ警備隊の一員?)を星にした怪獣が地球に迫り、サキはそれを倒すために地球を犠牲にしようとしているようで、“素人ウルトラマン”は果たしてそれを覆して地球を守れるのか、というのが今後の大まかな流れになりそうですが、巧く「ヒーロー」の物語に集約されてくれると良いなぁ……。
 にしても――以下、次回の冒頭部分もちらっと見た上での話になるのですが――、『オーブ』にしろ『ジード』にしろ『ルーブ』にしろ、序盤は、怪獣やウルトラマンに関して作品オリジナルの世界観を構築しようという意識が見え隠れするのに、気がつくと既存の《ウルトラ》ワールドに飲み込まれてしまうというのは、どうにも引っかかる部分。
 勿論、過去のウルトラマンの力を秘めたアイテムで変身する以上、むしろ接続こそが必然であって、そういったシリーズとして受け止めるべきなのかもしれませんが、異星人は地球に潜伏していて大宇宙的にウルトラマンと因縁の戦いを繰り広げてきた、というのが「物語内における衝撃の真実」ではなく「視聴者に対する当然の前提」として提示される事を、個人的には“安定感”や“面白さ”としては受け止められないでいます。
 以前にいただいたgariさんのコメント、

「過去のウルトラマン」が安易なマジックワード化してる感が。
 というのが凄く的を射ていると感じたのですが、過去の資産を活用する手法は良いとして、個々の作品世界の性質と関係なく《ウルトラマン》という言葉が常に超越的な意味を有して扱われる為、宇宙人は基本的に「ウルトラマン」について認識しているのに、地球人だけリセットされているのが、なんか段々ホラーに思えてきてみたり(前作はその「リセット」に理由を付けようというアプローチも見えたのですが、どういう事情があったのか、気がつくと虚空で崩壊)。
 まあ、「地球」も常に同じ「地球」とは限らないわけなので、そういう宇宙観だと思えばいいのかもですが、それはフィクションとしてあまり誠実ではない錯誤に思いますし、切り離せない商業的事情が第一とはいえ、どうにも都合の良いメタ構造に寄りかかりすぎているのでは、という気はしてなりません。