東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

グリッドマン家出5秒前

電光超人グリッドマン』感想・第7-8話

◆第7話「電子レンジ爆発0秒前」◆ (監督:川崎郷太 脚本:静谷伊佐夫
 何やらお疲れ気味な直人の様子に、アクセス・フラッシュの副作用を心配したゆか、一平と協力してケーキを作る事に。
 「女の買い物は長いよな……」
 愚痴をこぼしつつも買い物に付き合う一平は、ケーキのお裾分けに預かれると知ると俄然やる気を出し、ゆかはゆかで私が作ったケーキを喜ばない男などこの世界に居る筈がない、という態度なのですが、一応、ゆか、モテるの……?
 率直にビジュアル的な説得力は弱いのですが、まあ頭は良さそうですし、お菓子作りやピアノをたしなんでいたりもするので、クラスでは病院ご令嬢ポジションとして羨望を集めたりしているのか。
 そんな二人を棚の陰からストーキングする武史……ではなく、主人公の直人は尾行がバレて一平に追い払われ、一方、どういうわけかパン売り場で悪態をついていた武史が一人になったゆかを発見。
 未だにいじましく持っていた手紙(ポケット常備)を慌てて取り出すも、勿論渡せる筈がなく……しかしすれ違いざまに買い物籠の中身だけはチェックするところに、プロの姿勢を見ます。
 一平により強引に自宅まで連れ戻された直人は、一平が偶然手に取った大地の日記を二人で盗み読みして大笑いし、グリッドマンに見限られそうな酷さ。
 日記の内容により、それとなく示されていた大地からカナへの好意が明確にされるのですが、その結果としてカナの性悪女ぶりが加速している事を思うと、スタッフはその設定で本当に良かったのか、もう少しじっくり考えた方が良かったのではないか。
 なお今回の描写により現時点の人間関係はこんな感じとなり、
 〔大地→ カナ → 直人 ← ゆか ← 武史/一平〕
 ……割とドロドロです。
 「そんな事をするから女の子にモテないんだぞ!」
 「さすが兄弟だ……直人の状況をピタリと言い当てた」
 前回、3人組の交渉役として口が巧くて粘り強い部分を見せた一平が今回は絶好調で、端々で非常に面白い。
 その頃、買い物を終えて帰宅したゆかは病院前で父とすれ違い、自分ではない誰かの為にケーキを作るという娘の言葉に慌てる姿で愛嬌を付けるのですが、
 「そういう年頃になったのかな……」
 とぼやきながら親指と小指を立てる仕草にどうも品が無く、いまいち好感度の上昇には繋がらないのでした。
 台所ではキャベツを丸ごと生でかじりながら医学書を読む、少々変わり者のゆか兄が初登場。台所から兄を叩き出したゆかは、「東大さえ狙わなければ、どこの医学部でも入れるのに」と呟き、何やら医者の家庭の跡取り息子も大変そうですが、あっちもこっちもノイローゼ気味のキャラクターが増えてきて、今作の先行きも少し心配になってきました!
 一方、ゆかと一平が自分に隠し事をしているのが気になって仕方がない直人は、ジャンクを使ってゆかの日記を覗こうというカーンデジファー様も真っ青な犯罪行為に手を染め、最初は止めようとしていた一平も「ゆかのプライバシー」という一言に大興奮。
 ところが、首尾良くゆかのPCにアクセスするも、パスワードを破れずにログイン失敗。その光景をゆかに目撃されたとは知らず、鳴り響く電話を「ゆかにバレてたりしてな」と冗談交じりにニヤニヤ笑いながら取ると、轟く怒声。
 「いい加減にしなさいよ! 女の子のパソコンを覗いたりしていいと思ってるの?! こんな事をする為にジャンクを作ったんじゃないでしょ?! 今度やったら絶交ですからね!」
 「……だから俺はあれほどやめろと言ったんだ」
 コミカルなBGMで直人は硬直し、あっさり手の平を返す一平、と今回、変な方向で面白いのですが、グリッドマンが旅に出ないかどうかは不安になります。
 直人達のヒーローの資格が危うくなりかけている頃、
 「僕の手紙を受け取らないで、ケーキなんか作らせるものか」
 逆恨みに燃える武史は平常運行だった。
 「武史……新しい怪獣で今度は何をするつもりだ?」
 「井上ゆかの家の電子レンジを破壊します」
 「んん?」
 淡々とせせこましい事を宣言した武史、魔王様に「おまえそれ、ちゃんとテロなの?」と凄まれ、慌てて言い訳。
 「いえ、それは……カーンデジファー様の秘密を探る装置の事です」
 「なに?! それは放っておくわけにはいかん」
 電子レンジを知らなかったカーンデジファー様は激しく動揺すると、「秘密を探ろうとする奴は装置ごと消滅させてしまえ」と過激な事を言い出し、今度は武史が動揺するも洗脳ビームを浴びせられて怪獣の制作を続行すると、火炎怪獣フレムラーがゆかの家のキッチンへ送り込まれる事に。
 しばらくほのぼのクッキングシーンが描かれ、ゆか可愛げキャンペーンが展開されるが、男らしくない謝罪の電話が怪獣侵入の影響で切断されてしまうと、ゆかに叩き切られたと思い込んで逆恨みした直人は井上家のセキュリティに侵入し、グリッドマンが次の生け贄もとい憑依先を探しに行きそうな展開。
 セキュリティシステムのサーモグラフィとはいえ、台所で調理中のゆかを見つめる直人の姿はもはや屋根裏の散歩者ばりの変態であり、主人公の下衆っぷりが笑えない領域に突入。コミカルな日常描写を中心に3人組のキャラクターを掘り下げていく見せ方自体は面白かったですし、これが電子レンジの異常に気付くきっかけとはなるのですが、さすがにやり過ぎた感。
 グリッドマンからも怪獣発見の連絡が入り、ゆかの危機を知った直人はアクセスフラッシュ。爆発まで残り時間は1分、決定打を放てないグリッドマンは怪獣の炎にあぶられるが一平がバリアシールドを転送し、受け止めた炎が怪獣の方へ戻っていく映像は格好良かったです。
 怪獣の尻尾を切り落としたグリッドマンが続けて無惨に頭を切り落とすと、怪獣は逃走。電子レンジ爆発寸前、グリッドマンのキラキラミストで暴走は食い止められ、無事ケーキも完成するのであった。
 武史は電子レンジの真実を知ったカーンデジファー様にお仕置き光線を浴び、なんとなくアニメっぽいオチ。
 そしてゆかが綺麗にラッピングして持ってきたケーキを手にとって、今更「俺の為だったのか」と気付く直人であった、でつづく。
 初見の監督×脚本でしたが、BGMも活かしたコミカルな展開は面白く、家族模様も含めつつ日常描写から3人組を広げるアプローチも良かったのですが、直人と一平が「武史っぽい」のを通り越して、「武史と同じ事」(逆恨みによるハッキング)をしてしまうというのは、筆が滑り過ぎたといった感。
 第5話冒頭もそうですが、「80年代っぽい作劇」×「端々でアニメっぽい描写」の見える今作、アニメなら成立しなくもないデフォルメが実写では生々しくなりすぎて、ところどころでギャグの範囲を超えてしまっている気がします。
 女性キャラの魅力を引き出す為に男衆の最低な一面を描くというのはままある手法であり、ゆかに可愛げを付けようキャンペーンとしてはぼちぼち成果が出たものの、あまりにも、失ったものが大きかったような……!

◆第8話「兄弟の絆」◆ (監督:川崎郷太 脚本:神戸一彦)
 「うちなんかカナの方がつえぇから喧嘩になんねぇよ」
 「いい兄妹に恵まれて羨ましいよ」
 
 「そうかしら……」
 疑念を挟みつつキャベツ兄の姿を思い浮かべるゆかですが、会話の流れからはカナに対して思うところあるようにしか聞こえず、女の戦いは始まっている!
 ……まあこの後、一平に頼まれるとご飯をよそうカナの姿が描かれており、カナは直人を除く全方位に性格が悪いのではなく、格下とみなした相手に傲慢に振る舞う事がわかり…………あれ、フォローになって……ない?
 そんな直人達の会話を小耳に挟んだ武史は、再生したフレムラーの兄弟怪獣ブリザラーを作り出し、Cワールドへ送り込まれた二体の怪獣は次々と各家庭のエアコンのシステムを破壊。ある家では高温、ある家では低温、とそれぞれの特性に合わせてエアコンを暴走させ、被害に遭ったゆかと一平に呼ばれた直人は、アクセス・フラッシュ。
 ところが、直人が家を出た後に部屋のエアコンが暴走を始め、朝の兄弟喧嘩の意趣返しでベッドに縛り付けた弟を放置したままジャンク部屋に集合した結果、凍死寸前に追い込まれる大地、という物凄く酷いエピソード。
 前回のは(最終的にやり過ぎになったものの)まだ面白がれる酷さでしたが、怪獣というフィクションによるクッションを置いてはいるものの、軽い気持ちの子供の悪戯が重大な結果を招く事故に繋がる、というのは現実的な可能性も含めて見せられて楽しいものでもなく(第3話のトラック閉じ込めは誰の悪意も介在していないので成立していた)、脚本段階からこうだったのか、演出が行きすぎたのかはわかりかねますが、どこかで考え直さないといけない内容だったのでは、と思います。
 特に、今作においてグリッドマンが対峙している悪(カーンデジファー&武史)がまさにこの、重大な悲劇を引き起こしかねないドミノ倒しのトリガーたるちっぽけな悪意とそれを煽る無責任の寓意、である事を考えると、直人サイドの描写としては、もっと慎重に扱わなければならない部分であり、総合的にデリケートな領域を無神経に踏み荒らしてしまった感。
 ブリザラーの放つブリザードミサイルをバリアシールドで防ぐグリッドマンだったが、増援として同じCワールドにフレームラーが送り込まれ、よくわからないまま音波怪獣の踏み台にされた裂刀怪獣と比べると、相反する属性の怪獣によるW攻撃、という展開は再生強化怪獣に意味が出て良かったです。
 兄弟怪獣の挟み撃ちに苦戦するグリッドマンだが、バラード調のBGMが流れ出すと死にかけの弟の助けを求める声を聞き奮闘する直人/グリッドマン、みたいないい話演出が発動。目が点になっている間に兄弟怪獣の仲間割れに持ち込み、両者が争う姿にカーンデジファー様と武史が慌てる姿で、悪意は真の兄弟の絆を理解できず勝てないのだ、といった雰囲気の流れになるのですが、冒頭の喧嘩の原因に始まって全面的に直人に非があるため、強引に演出で補強されても、そう受け止めるのは無理。
 しばらく両者の消耗を待ちながらゲージを溜めたグリッドマンは、満を持してユニゾンブレードを振り上げると特にタメはなく切りかかり、電光雷撃剣グリッドマンソード(突き)で怪獣を撃破、キラキラミストでCワールドを修復するのであった。
 ここの所、間に入ったカナの影響で冷え冷えとしていた翔兄弟の関係(まあ、年頃の男兄弟なんてこの方がリアルではあるのですが)を補強しようとした結果、現場に杭打ち機を持ち込んでしまい、リフォームどころか母屋の床に巨大な穴を開けるような事になってしまいましたが、ラスト、直人がしっかりと大地に謝罪し、嘆く母親の姿も描かれたのはホッとしました。ただ、
 「直人と大地の、見えない兄弟の絆が、事件を解決した。これからも、二人の絆は、多くの困難を、乗り越えていく事だろう」
 それは無理がないですかナレーションさん!
 次回――忍者! 洗脳塾! と濃厚に漂う東映の香り(笑)