東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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溜め込んでいた最近の読書メモ

 ◇『黒猫の約束あるいは遡行未来』(森晶麿)
 ◇『黒猫の回帰あるいは千夜航路』(〃)
 <黒猫>シリーズ第5作(長編)と、完結編となる第6作(連作短編)。
 エドガー・アラン・ポーの作品とその解釈を物語に組み込む・基本的に恋愛絡み、が作品の縛りとして段々と苦しくなってきたのか、終わってみると一番面白かったのは第1作というのが正直な所ですが、シリーズとしては適度な所でまとまって完結してくれたのは良かったです。
 5作目は、“今作では出すと思わなかったタイプ”のキャラクターを出してくるのですが、作品世界の広がりを見据えてなのか、作者の苦し紛れだったのかは、ちょっと考えてしまうところ。
 1作目の登場人物達が何人か出てくる6作目は、1作目と似たような形式でシリーズ全体をくるみ、くるみながら上昇していくという構造になっているのですが、シリーズ全体の物語としては、すっかり“面倒くさい男”になってしまった黒猫をどう着地させるのか、というのが命題となってしまい、それにウェイトが寄りすぎてミステリとしては弱くなってしまったのが残念。
 シリーズ第1作目は非常に面白かったですし、他作品は引き続きチェックしたい作家。

 ◇『偽恋愛小説家』(森晶麿)
 話題の恋愛小説『彼女』でデビューした大型新人は、偽恋愛小説家? 甘いマスクの下に鋭い知性と毒舌を秘めた夢センセに振り回される編集者の月子は、盗作、そして殺人の疑いをかけられた作家の真実を見破る事が出来るのか……?!
 文学賞を獲得して華々しいデビューを飾るも、一向に2作目を書かずに編集者を煙に巻く作家に持ち上がる偽物疑惑、そして過去の殺人の疑い……果たして彼は何者なのか? というのを縦軸に、『シンデレラ』や『人魚姫』など、著名な童話に新たな解釈の光を投げかけながら、それをなぞらえる形で事件の謎を解く、という連作短編集。
 テキストの解体による独自の解釈がエピソードの事件と繋がる、というのはまるっきり同作者の<黒猫>シリーズのバリエーションといえ、作中にそれを示すような台詞もあるのですが、エドガー・アラン・ポーに題材を取っていた<黒猫>シリーズに対して、“誰もが知っているあの物語”をベースにしている、というのが一歩わかりやすい作り。
 作者の気に入っているフォーマットを変奏曲として書いたのか、<黒猫>シリーズを踏まえたオーダーだったのかはわかりませんが、話の基本構造はともかく、博識で皮肉屋で女性の扱いに少々難のある探偵役までが黒猫のバリエーション、というのはもう一ひねり欲しかったところ。

 ◇『硝子のハンマー』(貴志祐介
 オフィスビルの12階で、会社社長の死体が発見される。死体の打撲痕から事故ではなく殺人と判断されるが、厳重なセキュリティで守られた社長室に入る事が出来たのは、二つ隣の部屋で眠りこけていた専務だけだった。凶器がハッキリしないなど幾つかの不自然さが見え隠れする中、無実を主張する専務の弁護を務める事になった弁護士・青砥純子は、絶対不利の状況を覆すべく、“社長室が密室ではなかった可能性”に一縷の望みを賭け、防犯コンサルタント・榎本径の元を訪れる――。
 現代ミステリの探偵役として、“刑事事件の弁護を有利に運ぶ材料の為に、密室を崩す可能性を探す専門家”というのがまず、自然に物語の中に入ってくる面白い設定。探偵役の榎本が持つもう一つの顔からピカレスクロマンの側面もあり、生真面目な純子とのやり取りもテンポ良く軽妙。後半、小説として個人的にあまり好きでない手法(物語として、ではなく、技法的問題)が用いられるのがマイナスでしたが、読み応えがあって面白かったです。
 ◇『狐火の家』(貴志祐介
 ◇『鍵のかかった部屋』(〃)
 『硝子のハンマー』の探偵コンビによる、短編集。ボーナストラック的なギャグ1篇を除くと、多彩な密室に推論を重ね時に大胆な飛躍で挑む真っ正面からの本格ミステリで、特にその傾向が強い『鍵のかかった家』には海外古典作品に似た趣きもあるのですが、作者がもともとホラー小説でデビューしたという事もあってか、真相が明らかになった時に露わになる“人間のおぞましさ”の見せ方が、いずれも巧み。物語の味付けとして強いインパクトを残し、アベレージの高い短編集でした。

 ◇『天井裏の散歩者』(折原一
 「叙述ミステリー」と銘打ち、ちょっと馬鹿馬鹿しい感じのエピソードがオムニバス形式で続いていくので、どこかで反転して面白くなるのを期待していたら最後まで馬鹿馬鹿しい感じで、好みに合わず。馬鹿馬鹿しい作風だと思えば、そこまで酷くはなかったですが。