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ジャガイモはえくぼがいっぱい

電子戦隊デンジマン』感想・第25-26話

◆第25話「虎の穴は逃走迷路」◆ (監督:平山公夫 脚本:曽田博久)
 冒頭、
 「忘れもんですか?」
 「……いえ……」
 のやり取りと黄山が抱えたジャガイモの袋で、買い物をした八百屋にまた戻ってきた事を示し、
 「おたくの秤が、間違ってるんじゃないかと思いまして……」
 口調は気弱ながら、困惑する店員にお構いなしに、胸ポケットからドライバーを取り出して秤の分解を始める黄山にギョッとしていると、それを通りの向かいから赤城と緑山が見ており、
 「あ~あ、しょうがねぇなあいつ」
 「バカだなぁ……レイコちゃんの気持ちも知らないで」
 と顔を見合わせ肩をすくめる姿で、すわ八百屋の不正か黄山の奇行かと思っていたら、黄山に気のある八百屋の娘がこっそりサービスしてくれていたが当の本人は全く気付いていない微笑ましい一幕と判明する流れが実に鮮やかで、1980年代半ば以降に一種異形の進化を遂げていく、戦隊圧縮作劇の萌芽も感じます。
 「秤が正常となると……やっぱり多すぎるな」
 これまでもちょっと多くて気になって……と、数字には強いが女心には疎い黄山はバカ正直に余分を返そうとし、分析担当×料理番の位置づけを踏まえたキャラの個性を好感に繋げていくのも上手く、背後ですごーくいたたまれない様子になっているゲストヒロインの見せ方も秀逸(笑)
 真相に思い至った店長が場を取りなしている所に背後から赤城と緑川がやってくると問答無用で黄山を引きずっていき、二人とも、早々に気付いてからしばらく事態の推移を黙って見守っていたようですが、沈黙の限界に達したのか野暮を承知の種明かし(多分、クラブで昼食待機中の青梅は、わかっていない)。
 「わかってんのか?! レイコちゃんの気持ちだ!」
 「なにが?」
 「なにがって……」
 「これ、レイコちゃんが図ってくれてんだろ?」
 「うん」
 「おまえの事、ジャガイモ300グラム分……わかる?」
 「…………え?!」
 事ここにいたって黄山は状況を理解して狼狽し、黄山を挟んで赤城と緑川が凄く楽しそうなのも、キャラの愛嬌として良い具合になる会心の導入。
 「なに? デンジイエローが?」
 そしてそれは早速、ベーダー一族に筒抜けだった(笑)
 「はっ。奴はとんでもない木偶の坊でございます。しかし、奴にもやっと春が巡ってきたのです。相手は八百屋の娘。そこで、黄山純をその娘の虜にした上で……」
 首をかききる仕草を見せるへドラー将軍が日記朗読会を思い出すノリの良さで、この人、実直な武人に見えて実は、宮廷スキャンダルとか恋愛喜劇とかを愛好しているのではないか(最近は、地球のメロドラマに夢中)。
 かくしてケラーさんが占い師コスプレでレイコに接触すると、積極的になれるようにと強引に招き入れた話し方教室において、ベーダー忍法により目玉ラーが憑依。
 文字通りに人の変わったレイコは黄山に積極的にアプローチを仕掛けるが、野暮天の黄山は映画の最中に煎餅をバリバリ食べて気の荒い客に殴り飛ばされてデートはご破算となり、女王様、超お怒り。
 私の筋書きが、通用しないだと……?! と理系男子の心が読めないヘドラー将軍は、地球で若者向け情報誌を買い漁ってリサーチするが、目玉レイコにディスコに誘われた黄山は生理的に無理だと一目散に逃走し、フィーバー、1年前だった。
 追いすがる目玉レイコを拒絶した黄山は、あまりにも様子がおかしいとデンジスパークからスコープして正体を暴き、逃走した目玉ラーは再びレイコに憑依すると、貴様の好みは把握した! と、元の内気で純朴なレイコらしく振る舞う方針転換。ベーダーの影を感じてならない黄山は、正体を探る為に改めてデートに誘うと、取り落としたリンゴが地面を転がって、爆発(笑)
 ……え、それ、本来なら、噛んだ瞬間に起爆して頭が弾け飛ぶ予定だったのでしょうか。
 「こんな事だろうと思ったぜ!」
 とんだR18規制を回避し、待機していた赤城と緑川が鏡で集めた光を浴びせると目玉ラーの姿が浮かび上がり、レイコの分身が並ぶのは、ちょっと円谷ぽい特撮。
 「よくも影分身・キモガエ(※)の術を見破ったな! ふははははは!」 (※聞き取り、やや自信無し。「肝変え」の意?)
 目玉ラーがまたも逃走を余儀なくされると、ベーダーでは将軍が、おまえのロマンス趣味が無様に失敗したぞ! とお叱りを受けていたが、実は目玉ラーはまだレイコの瞳の中に潜り込んでおり、治療の為にレイコが運び込まれたのを利用して、まんまとデンジランドへの侵入に成功。
 「なんとか引きずりだせないか?!」
 「……このまま手をこまねいて見ているなんて、僕にはできない!」
 意識不明のままのレイコの内部に目玉ラーが居座っている事を確認する電子戦隊だが、レイコだけを救う手段が見つからず、アイシーが「まとめて燃やしてしまおう」とデンジビームを放つ前に、懸命にレイコの意識に呼びかける黄山
 「……黄山!」
 その時、黄山の想いが通じたのか、令子の瞳から一筋の涙が零れ落ちると目玉ラーは体外に排出され、今回は冒頭から“人と人の間の想い”が主題なので、ベーダー怪物がそれに敗れるのは、綺麗な流れ。
 スポイトで吸われた目玉ラーはビーカーの中に閉じ込められるが人型への巨大化により脱出し、OP込み開始17分目にして怪人の全身が明確になる変化球。
 「これくらいでくたばる俺ではない!」
 デンジランドの所在を突き止めた目玉ラーは煙幕を放って逃走し、左腕にメッシュ模様が入っている辺り、出自はベーダー忍びの者でありましょうか。
 曲者の侵入を許した電子戦隊が緊急セキュリティを発動すると、デンジランドは壮絶にじばじゃなかった、目玉ラーはけばけばしい照明が視覚に混乱をもたらす特殊通路へと誘い込まれ、「虎の穴は逃走迷路」って、デンジランドの事だったのー?!
 確かにまあ、ベーダー一族からすればデンジマンの秘密基地は「虎穴」であるのですが、てっきり黄山が目玉ラーの幻術で迷路を彷徨ったりするものとばかり思っていたので、迷路を生み出すのがデンジマンの方だった事にビックリです(笑)
 「ここはどこだ……どこだ?」
 「お前の地獄の一丁目だ!」
 浅はかな侵入者を罠に嵌め、見よ! 電子戦隊・デンジマン
 秘密基地侵入を狙った怪人がヒーローサイドの罠によってお引き取り願われるのは前作の黒仮面怪人をちょっと思い出させつつ、しっかりとヒーローフィクションとしての気持ちよさに接続。
 「えぇぃ、この目で、ベーダーの世界征服を見るまでは負けんぞ!」
 自身のモチーフとかけた台詞がちょっと面白い目玉ラーは、山積みで落ちていたタイヤ(これも造形的に繋がっている意図……?)を手にすると黄に向かって次々と投げつけ、ベーダー忍法・タイヤ縛りの術によって地面を転がるイエロータイヤ。
 「よし! 今だ!」
 文字通りに手も足も出ない黄が大ピンチになった時、画面の外に居た残り4人がフォーメーションを組み、赤城さん、イエローを思い切り囮にしたぞ(笑)
 画面外から不意打ちのコンビネーションアタックが炸裂するも、幻覚攻撃からの爆撃を放ってくる目玉ラーだが(イエローはこの間に救出されました)、反撃のデンジブーメランにより、今までにないアップでスパッ!
 巨大目玉ラーの投げつける目玉ジャベリンが割といいところに直撃するダイデンジンだったが、鉄球で反撃すると、満月斬りでずんばらりんし、ヘドラー将軍プロデュースの、デンジイエロー暗殺作戦は失敗に終わるのであった。
 ベーダー一族の作戦に巻き込まれたレイコだが、結果的に一種のショック療法になったのか明るく溌剌とした性格になり、黄山の女性の好みはともかく、最後まで地味なおさげ娘のままだと、それはそれで願望の押しつけが出た感じがあるので、最後にちょっと、明るく前向きにイメチェンした姿を電子戦隊一同が笑顔で見つめるのは、バランスの良いオチでありました。
 黄山はどういうわけか八百屋の店主からの好感度の方が高まっており、
 「おまえの事、スイカ1個分……わかる?」
 「…………え?!」
 ……はさておき、
 ナレーション「デンジマンの活躍で、街にひときわ、明るい声が弾むようになった。彼女が振りまく笑顔は、街の人たちみんなを、ほのぼのとさせる。小さな幸せを守って、明日も、デンジマンは戦う」
 誰かを救う事は、別の誰かを救う事にも繋がっていくのだと、締めのナレーションも綺麗に着地。
 鮮やかな導入に始まって黄山の魅力を引き出し、エピソードとしての一本の筋を通す曽田さんの脚本に、平山監督の好演出、ゲストヒロインの存在感も噛み合った、好篇でした。

◆第26話「デンジ姫の宇宙曲」◆ (監督:平山公夫 脚本:上原正三
 ハニー ハニー 愛しの ハニーーー
 緑川の高校時代の音楽仲間で親友・吹雪豪(クレジットを見る感じ、演じるのは後のエージェント・アブレラなどでお馴染み中尾隆聖さんで、そう思って聞くと、確かに声質に聞き覚えが)が新曲「銀河ハニー」で大ヒットを飛ばすが、その曲はヘドリアン女王に激しい頭痛
を引き起こさせる悪魔祓いの曲であり、ベーダーを呪う曲なのだった。
 「そういえば、デンジ星で聞いた事がある……」
 「はよぅなんとかせい! その曲を潰せ!」
 レコーラーが地球へ差し向けられられると、ラジカセやレコードプレイヤーといった音源を次々と破壊して回り、自ら囮となった緑川の前にもレコーラーが出現。
 デンジランドでレコードを分析しているとアイシーが曲の正体に気付き、突然、「待てよ……デンジ姫が地球に持ち込んだとしたら、どうだ?」と、デンジランドとは別ルートでデンジ星を脱出していたデンジ姫のグレートクイーン号について触れられ……どうやら、1980年7月12日に公開された劇場版と連動したエピソードの模様(今回は、同年7月26日放映)。
 当時ブームの最盛期だったタケノコ族の映像に、「銀河ハニー」を被せる事で爆発的な流行を表現するだけかと思いきや、曲の危険性を訴えて電子戦隊が止めに入る姿を加えるのはなかなか凝っており、夏服姿のチエコ&相棒も登場。
 だが若者たちは制止を聞かずに「銀河ハニー」を流し続け、その結果、レコーラーの襲撃を受けて大規模バイオテロの被害に遭ったり凄惨なバイク事故に見舞われるのは、かなりきつめの被害描写。
 屋外ライブにレコーラーの襲撃を受けるもデンジマンに助けられた吹雪は、ギター片手に世界を放浪中に「銀河ハニー」の原曲に出会った事を明かし、地球に飛来したデンジ姫が、ピラミッドやマヤ文明に影響を与えたんだ!(※独自の憶測です)
 原盤のデンジレコード(見た目は石の円盤)から「銀河ハニー」よりもスローテンポな原曲が流れ出すと、デンジ姫を思って桃井は涙を流し、恐らく劇場版を見ていると感動的な場面ではあるのでしょうが、本編だけではわかりづらい作り。
 「銀河ハニー」の正体を確認した電子戦隊一同は、ライブハウスでレコーラーを待ち受けるが、凄く普通にケラーさんが客の中に紛れ込んでおり、スタッフこだわりのコスプレで、電子戦隊が吹雪の護衛についている事を報告。
 「あぁ、恐ろしい……世界中であの曲が鳴り響いたらどうなる? 私はどうすれば良いのじゃ、嗚呼……!」
 ヘドリアン女王が、デンジマンと関係ないところで敗北しそうになっていると、今回は役に立ってみせると将軍が立ち上がり、命令を受けたレコーラーは日本中のレコードを物理的に破壊。……自己主張が弱いので、どういう怪人かいまいちハッキリしないレコーラーですが、劇中の描写を見る限り、「音源」に対して強制的な作用をもたらせるようで、対象範囲が限定される代わりに効果の高い能力持ちタイプな感じでしょうか。
 ナレーション「音楽が消えた! 日本中から、音楽が消えてしまった!」
 「レコーラーよくやった。これで安眠できるぞ。あははははは……!」
 ナレーション「デンジ星から来た一枚のレコードが、逆に、日本中から、音楽を奪う結果となってしまった」
 皮肉ともいえる顛末をナレーションさんが畳みかけると、意を決した電子戦隊は原曲のレコードを大音量で流し、ヒーローに呪殺されそうになるヘドリアン女王
 急遽レコーラーが出撃するが当然のようにデンジマンが待ち構えており、2話連続、敵を罠にはめたヒーローが高所から姿を見せて、ジャーンジャーン!!!
 罠とわかっていて突撃をかけるレコーラーの姿にむしろヒロイックさが漂いつつ(将軍はもう少し、手勢をつけてあげても良かったと思います!)、デンジマンのバリアブル攻撃からブーメランを受けたレコーラーは巨大化。
 レコード爆弾でダイデンジンを苦しめるが、接近戦で殴り飛ばされると満月斬りで両断され、蓄音機とレコードの歪んだ合成物に、久々に魚系の顔がつき、なかなか秀逸なデザインのベーダー怪物でした。
 街には音楽が戻り、ローラースケートやダンスを楽しむヤングたちの姿が描かれ、「銀河ハニー」と吹雪豪のその後は明確にされないものの、世の流行は移ろいやすいものであり、青春ダッシュでオチをつけて、つづく。
 次回――戦慄のカブト虫爆弾でえげつなさすぎる予感。