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気分転換はや鎧武

仮面ライダー鎧武』感想・第41話

◆第41話「激突!オーバーロードの王」◆ (監督:石田秀範 脚本:虚淵玄鋼屋ジン
 見所は、生身のミッチに背後から鈍器で殴りかかるグリドン。
 ……直撃したら、割と洒落にならなかったぞ、城乃内。
 バロンとミッチメロンの激突は両者変身解除から素手の殴り合いに突入し、作風と言えば作風なのですが、バトルが、“必要なテキストを言う為のシーン”になってしまうのも、最終盤まで馴染めなかったところ。
 「おまえ達、生きてたのか」
 そこにブラーボとグリドンが合流して戒斗が割と酷いコメントを出し、映像記録を確認したPレモンは、舞が森に居てそこに校長先生も居るよ、とわざとらしくアナウンス。
 「さて、仕込みは上々。あとは……」
 Pレモンは引き続きハイテンションでスキップを踏み、パティシエコンビにミッチの相手を任せた戒斗は紘汰と合流し、森では舞の言葉に亡き妻を重ねた校長が、“見届ける者”として舞に果実を託し……うーん……結局、舞は、特に裏付けも積み重ねも無いけど重要なキャラの胸にクリティカルでぐさりと響く発言をする係に落ち着いてしまい、残念。
 40数話あったわけなので、ああそうか! ここでそれが繋がるのか! というものが見たいわけでありまして。
 根本的なところでは、校長ロードのような長く深い情念を背負ってきたキャラクターが、若者の言葉でコロッと懐柔されてしまう展開があまり好きではないのですが、やるならやるで、それ相応のパワーが必要なわけで、率直に舞にそこまでのパワーは宿っていなかったなと。
 そしてそこに説得力を持たせるには、終盤の掘り下げにおいて校長とミッチのバランスが悪く、初期の設計に基づけばミッチ優先なのでしょうが、進行中の物語との調整が巧く行かずに分裂状態を引き起こしてしまった印象。
 最も致命的だったのは、ミッチの妄執に繰り返し時間を割く一方で、校長が執着していた王妃復活計画失敗へのリアクションが皆無だった事で、校長の行動が一本の線に繋がるどころか、軒並み話の都合だった事になってしまったのは、大変残念でありました。
 「私はフェムシンムの長として、最後の責務を果たす」
 そして校長は、“意志あるキャラクター”から“機能としての試練の担い手”へとスライドし、オーバーロードの存在そのものが、“人類への試練の一形態”であったといえばそれまでですが、そうやって意図的にキャラクターである事を投げ捨てさせておいて、「舞に果実を埋め込む」という爆弾だけ仕掛けさせるのは、あまり感心しないやり口。
 基本的に校長ロードは“希望の残骸”であったわけですが、その残骸が、黄金の果実を掠め取ってまで執着していた王妃復活をあっさり諦めてしまうのは大変物足りなく、そこに生じる狂気をこそ見たかったのでありました……となると、それはミッチでやっている、という話になるわけですが、ならばもう少し早い段階で、どちらかに一本化して欲しかったかな、と。
 ドリアンとドングリは、ミッチメロンを相手に時間稼ぎをするだけすると、裏技ドングリスローを使って撤収。
 「おまえの事など、誰も信頼していない。本当に価値が無い人間は……光実、おまえ一人だけだ」
 緑ロードに嘲弄されるミッチの前にはシャドー兄さんが浮かび上がり、凄く酷い事を言いながら、いちいち肩に手を置くのが、大変好きです(笑)
 校長は鎧武&バロンと戦い始め、結局、“倒すべき敵”とされずに“力と覚悟を試す為のシステム”に落ち着いた校長の立ち位置に魅力を感じられず、映像は派手ですが、個人的にはあまり盛り上がれず。
 「哀れよな。だが、もう苦しまずともよい。おまえを黄金の果実の呪いから解き放ってやる。永遠にな!」
 「俺は誓ったんだ。後悔なんてしないって!」
 また、前回かなり時間をかけ状況設定に凝って覚悟に至る紘汰を描いた割に、校長パワーを見せたい都合で極変身までに時間がかかってしまったのも、全体の流れとしてスッキリしない感じに。
 前回を明確なスプリングボードとして機能させるには、今回はもっとスパッと極変身しても良かったかな、と。
 「葛葉紘汰よ。確かに見届けたぞ。おまえの、覚悟を」
 大将軍さえ叩き伏せるも、果実の欠片の力を引き出した紘汰を認めたかに見えた校長だがその体を背後から閃光が貫き、立っていたのは緑ロード。
 「ははははははは! 油断なされましたな、王よ」
 漁夫の利チャンスを狙っていた緑ロードは校長の体から果実を取り出すがそれは手の中で干からびてしまい、逆上して校長を刺殺。怒りの紘汰の目が赤く輝くと壊れたロックシードが手の中で修復され、挿入歌に合わせて紘汰は一気に極変身し、校長を敵にしきれなかったので、憎まれ役を一手に引き受ける事となった緑ロードを全力で殴り飛ばす展開。
 遂に森を操る力を得た鎧武は校長ソードを手に緑ロードを圧倒すると火縄銃の直撃で爆殺し……玩具連動の音声ギミックなので仕方ないのですが、この期に及んで、火縄DJ橙銃! とかDJの存在が強調されるのは、誰のせいでもなく辛い(笑)
 校長の死体には王妃の魂が寄り添って共に消滅し、取り残された空っぽの玉座に王妃のベールがかかる映像は石田監督らしくて美しく、フェムシンムの抱えていた虚無感やもの悲しさは、時と場合によっては突き刺さった類のものだったかもとは思うのですが、今の自分のツボには入ってこなかったのは、好き嫌いとは別に残念でした。
 型式としてはここで神(王)殺しが果たされて聖性の委譲が成立した事となり、この戦いを目にしたミッチとデュークは果実の行方を類推し、果たして、黄金の果実を埋め込まれた舞の運命は……次回――毒々ブドウ。