東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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若さにターボ! ミラクルターボ!

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第9-10話

◆第9話「憧れは悪魔のフルート」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 OPクレジットの表記が、やっと「暴魔博士レーダ」になり、体操部と判明したイエローターボ/日野俊介が応援するゲストのフルート少女・ユミは、後のアコちゃん(内田さゆり)。
 「相変わらず美しい音色だなぁ……元気が出てくるなぁ」
 一瞬、ストーカー気質なのかとヒヤリとしたのは、戦隊男子だから仕方ないですね!
 だが、妖精とか見えてしまう高速戦隊のメンバーにそんな邪念はなく、過剰な練習から指を痛めているユミを心配する5人。
 「フレー、フレー、ユミ……!」
 俊介は落ち込むユミの背に届かぬエールを贈り、長石×藤井が、学園物で振り切れると、こういう路線になるのか……(笑)
 コンクールを間近に控えて落ち込むユミが、誰にともなく指が治れば……と祈っていると、家に置いてあった不気味な彫像に囁きかけられ……全人類の思いが今、一つに。
 誰だ、この彫像を、買ってきた家族は!!!
 悪魔の誘惑に従ったユミが思い切りよく彫像を破壊すると中に封印されていたトリツキボーマが大復活し、暴魔百族はすっかり妖怪路線で安定してきましたが、エピソード中の因果関係がわかりやすくなったのは良いところ。1985~1988年にはアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第3シリーズが放映されており、時期は重なっていないものの、この路線が受け入れられやすそうな土壌もあったのかも。
 「ふふふふふふ……願いは確かにかなえてやろう。その代わりおまえはフルートを奏で、元気な子供達を呼び集めて、その美しい音色をたっぷりと聞かせてやるのだ」
 ユミが暴魔獣の取り憑いたフルートを奏でると、その音色を聞いた子供達が急速に衰弱。それを目撃した俊介は、ユミが暴魔獣に付け込まれて利用されている事を知る。
 「俺たちはみんな夢を持っている。その夢をかなえてやると言われたら、誰だって迷う筈だよな……」
 「ああ。俺だって、どうなるかわかんないな……」
 力たちは、我が身に置き換えて人間の心の弱さに付け込む暴魔獣に怒りを燃やし、「夢」をキーワードに学生らしさと善良さを繋げて好感が持ちやすい見せ方。またそれが、悪魔の囁きを続けるボーマの嫌らしさも強調して、「ヒーロー」と「悪」の効果的な対比にもなりました。
 (さぁ……吹け。吹け。ウィーンに行くんだ)
 コンクールで優勝して留学に行きたい……自分の欲望が子供達を傷付けた罪の意識に苛まれるユミは、それゆえに引き返せなくなってしまうが、俊介は必死の説得を試みる。
 「悪魔に魂を売り渡した音色なんて、ちっとも美しくないよ」
 心揺れるユミを乗せて逃走するかっとび暴魔に俊介は食らいつき、せめぎ合いの末に遂にユミはフルートを投げ捨て、取り憑きボーマの支配から脱却。
 「ありがとう……先輩」
 今回の出演と2年後の『ジェットマン』レギュラーにどのぐらいの繋がりがあったのかはわかりませんが、ゲストヒロインの魅力をしっかり引き立てる長石監督らしい見せ方もはまって、いいキャストでした。
 仲間達が合流し、赤青黄のトリプルアタックから、プラズマシュートで「ビクトリー!」と声を揃えるように。取り憑きボーマはズルテンの吹くラッパで巨大化し、幹部の誰がリタイアしても残りメンバーで巨大化可能なのは、スリル満点です(笑)
 巨大戦はざっくり終了し、後日――元気を取り戻した子供たちを見つめるユミに、5人は小遣いを集めて買ったフルートをプレゼント。
 (フレー、フレー、ユミ……!)
 恐る恐るもユミは再びフルートを奏で、ゲストキャラの一歩前進も描かれて青春学園路線の作劇が安定してきて、つづく。

◆第10話「鬼を呼ぶ五月人形」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
 石箱の中に厳重に仕舞われていた古い武者人形に封印されていたオニボーマが、ジンバにより大復活。鬼ボーマは、人形を伝えてきた家の少年にとって友達に等しい馬を奪って我が物とし、着ぐるみ怪人を乗せて山道を走る馬、が見所。
 最初にジンバの攻撃を受けて川岸に転がっていたところを助けてくれた少年に、愛馬を必ず取り戻してみせる、と笑顔で約束する洋平は爽やかに格好良く、屋敷ボーマ回に続いて、いいメイン回が当たりました。制服姿だと俊介と区別がつきにくいのが玉に瑕ですが、この調子でメンバーの個性を描き分けていってほしいところです(この時期の作劇だと、どうしても全員“いい奴”になりがちなのは、悪い事ではないだけに難しいところですが……)。
 配下の赤鬼・青鬼を繰り出した鬼ボーマはその習性に従って金銀財宝の強奪を繰り返し、後手後手に回るターボレンジャーは、絵巻物の内容から、隠れ家とおぼしき滝の洞窟を探る事に。
 鬼@馬・ジンバ・赤鬼&青鬼vsターボレンジャー、という構図になり、大変賢そうな馬が実質今回のメインゲストなのですが、周囲の着ぐるみの事は、ちょっと色彩が派手でふとましい人間、ぐらいに思っているのか、気になります(笑)
 ターボレンジャーは馬とジンバたちを分断し、少年の呼びかけにより馬の解放に成功。
 今回もジンバと赤が一騎打ちし、洞窟の中で酒かっくらったりしていましたが、一応、今のところライバルっぽいポジションです!
 「オニボーマ! 伝説の中に消えてしまえ!」
 暴魔獣には青が零距離射撃からJガンで大ダメージを与え、プラズマシュートでビクトリー。テーマ曲初使用でチャージアップしたターボロボは、ダッシュパンチを鬼ボーマの顔面に叩き込むと高速剣を金棒と打ち合わせ、最後は高速ストレートの一突きでフィニッシュ。
 藤井先生×メルヘン要素、という事で、あらぬ方向に飛んでいってしまわないかドキドキしていたのですが、足柄山の金太郎伝説を背景にした「子供の日」テーマが重石になったようで、武者人形の目がぺかーっと光って実は妖精だった金太郎のメッセージを伝えたり、馬が自爆して鬼ボーマと相討ちになるような事はなく、スタンダードな少年との交流エピソードに収まってホッとしました(笑)
 ラスト、力・洋平・俊介が騎馬を作って少年を背中に乗せて走り回り、更にその頭上には広がる青空に大きな鯉のぼりが翻っている、という大変気持ちの良い締めの画で、つづく。