東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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南海の前後編

ウルトラマン80』感想・第17-18話

◆第17話「魔の怪獣島へ飛べ!!(前編)」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:阿井文瓶)
 たぶん本邦初公開! UGMの基地ビルの形は、上から見るとU・G・M!
 東京南方・潮風島で観測されたデータに不審を抱くキャップだが、上層部の横槍により、休暇の名目でイトウチーフが単独調査に向かう事に(相変わらず、長官とキャップの厚い信頼関係が描かれ、かつての戦いをくぐり抜けた同志感)。
 とりあえずハワイアンショーが挿入されると、東映特撮と勘違いしそうになりますが……て、ステージに思いきり行川アイランド」って書いてあるーーー!!(笑)
 ……房総か、ここ(行川アイランドは、この当時の特撮作品にしばしば出てくるロケ地)。
 ところが、調査中のチーフが「あれは!」の言葉を残して消息不明になり、増援として派遣された、矢的・ハラダ・タジマの3人は、海岸で切ないキャンプ生活を送る事に。
 訪れた島は何故か無人で、姿を見せた怪獣は謎めいた美女――ゲストヒロインの美人ぶりは今回ポイント高い――を手掴みにしたまま海中へと姿を消し、ふと気がつくとレジャー施設には人々の姿が戻っているが、その首筋にいずれも、まるで吸血鬼に噛まれたかのような傷跡が……ロケ×タイアップ×前後編という事でか、通信の途絶・不自然な街の様子・謎の女・不審な人々、とスリラーの定石を丁寧に散りばめていくミステリアスな展開。
 ……まあその中で、オレンジの制服でドタバタと動き回る矢的らの姿がやや間抜けになっていますが、UGMの基本スタンスといえば、基本スタンス(笑)
 夜を迎えた島には謎の霧が発生し、スペクトル分析の結果、思考力をマヒさせる作用がある事が判明。霧に操られた人々は、洞穴から伸びる触手に生き血を吸われ、更には丸太を手に矢的たちへと襲いかかり、とりあえず撃とうとするな、ハラダ
 謎の美女に助けられた3人は、朝になって平穏を取り戻した島で女を捜すが、再び怪獣が出現。
 「あれは……イトウさんよ。イトウさんなのよ!」
 女は怪獣の正体はイトウであると主張し、矢的がウルトラアイを使うと、それが真実どころか女の名前までわかってしまって、凄いぞウルトラアイ。
 事態はだいぶ深刻なようなのですが、怪獣に重なる妙にしょんぼりしたイトウの姿が、笑いを誘って困ります。
 発光現象と共に巨大タコ怪獣が出現し、触腕の一撃を叩きつけられたハラダとタジマが気絶したのをいい事に80に変身する矢的だが、タコ怪獣とイトウ怪獣に挟まれて大ピンチ。どうやら両者は、洞穴から響く不気味な咆哮に操られているらしい、とナレーションさんが煽りまくって、80絶体絶命のまま、つづく。

◆第18話「魔の怪獣島へ飛べ!!(後編)」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:阿井文瓶)
 ナレーション「が、その瞬間、ラブラスはダロンの首を一撃した!」
 80の首を刎ねるかと思われたイトウ怪獣のハサミハンドがタコ怪獣の顔に画面一杯で突き刺さるのは、インパクトのある絵。
 ナレーション「怪獣ラブラスにされたイトウ隊員は、その精神力で、彼を、操ろうとする咆哮と必死に戦い、遂に打ち勝ったのだ!」
 これが、先の怪獣大戦(仮)の生き残りの力だ!
 ナレーションさん怒濤の説明のどさくさに紛れ、80はウルトラ投げやりでタコ怪獣を撃破するが、エネルギー切れで一時撤退。イトウ怪獣は島のいずこかに姿を消し、ハラダとタジマは、なんとか生きていた。
 本部では霧の分析が進められ、キャップの話し相手が居なくて困ったのか、広報のセラが再登場。
 「霧の分解は無理です! ……あれは宇宙のカオスなんです! とても薬品分解はできません!」
 分析の報告を持ち帰った城野、意味はわかりませんが、勢いはある台詞(笑)
 「そんな~。チーフが怪獣のままだなんて、キャップ、なんとかして下さい!」
 「……よし爆破だ」
 考え込んだ末に物凄く即物的な内容を渋い声で口にするので、いったい何事かと思いましたよキャップ!!
 キャップはイトウ怪獣の、じゃなかった、洞穴の入り口を爆破する事で霧の噴出を押さえ込むよう現地組に指示を出すが、謎の女によって霧の中に侵入するのに必須の防毒マスクが破壊された上に工作用の爆薬を奪われてしまい、果てしなく杜撰なテント。
 爆薬抱えた女を追う内に霧に巻かれてタジマが意識を失い、止めるハラダを殴り飛ばして気絶させた矢的は、目を覚ましたタジマに(霧が原因と思い込ませて)ハラダの介抱を頼むと自らは霧の中に突入していき、この辺りから加速をつけて雑になっていくのは、凄く『80』(笑)
 「あなたはどうして、この霧の中で平気でいられるの?」
 「……君も宇宙人なのか」
 ウルトラ体質により霧の中に踏み込んだ猛は女に追いつき、女――ホシ・サワコが、20年前、怪獣に宇宙船を襲われて地球に不時着した宇宙人であり、イトウの婚約者である事を知る。親切な夫婦に拾われて地球人として育てられていたサワコだが、サワコと同じく地球に辿り着いていた怪獣が20年ぶりに活動を再開。イトウの怪獣化の顛末を語ったサワコは、逸る復讐心のまま、怪獣の潜む洞穴を破壊するが、それによって大怪獣ギマイラが地上へと姿を現してしまう!
 事ここにいたって防衛隊の戦闘機が出撃するが次々と撃墜されていき、矢的が、怪獣の角から怪光線を80カプセルで弾き返しながら変身するのは、格好いいシーン。
 だがギマイラの戦闘力は80を凌駕しており、物凄い勢いで蹴り転がされる80の姿に後のガイアを思い出すところですが、今回の特撮監督である佐川和夫さんが、好きなのでしょうか、これ(笑)
 80の危機に、背後からギマイラへと不意打ちを仕掛けるラブラス。
 ナレーション「しかし、果たしてラブラスの力で、ギマイラを倒す事ができるのだろうか。……それは無理だ! ラブラスが危ない! イトウチーフにもしもの事があったら」
 いや、既に、もしもでは……と思っているに内に、一本角で胸をぐさっと突き刺されたラブラスは倒れ、サワコの言った通りに死によって人間の姿に戻ったイトウの体が海岸に転がると……空気を読まずに軽快なテンポで流れ出す逆転テーマ(主題歌インストアレンジ)。
 この10年に見た中でも屈指の気がするBGMカタストロフの巻き起こる中、80渾身の必殺キックにより、大怪獣は内部から木っ葉微塵の大爆発!
 だが……
 ナレーション「怪獣ラブラスにされたイトウ隊員は死んだ」
 もともとナレーションを多用する作風ですが、今回は特に大暴れ。
 ナレーション「猛は、イトウチーフの死を知って、愕然とした。もし代われるものなら代わりたいと、思い続けた」
 イトウの遺体と、それにすがりついて泣き崩れるサワコの姿を目にした矢的は悲嘆にくれ、わかりやすさ優先にも度があるメタな心情説明により、風情のない事この上ありません。
 「怪獣でもいい。なんでもいい。生きていて欲しかった……」
 イトウを心から愛するサワコは、矢的が空を見上げて悲しみにくれている間に自らの命を捧げてイトウを蘇生させ、悲劇を回避する為にラスト1分で別の悲劇が唐突に発生するという、唖然とする展開。
 成り行きとしては「突然の奇跡で復活」と全く変わらない上で、「突然の奇跡で復活するが代わりにゲストが死ぬ」という、レギュラーメンバーの危機を煽った上で退場させない為だけの悲劇の付け替えが堂々と行われていて、もはやなんの為の悲劇だったのかさえわかりません。
 気を遣ったキャップはイトウに5日間の特別休暇を与えて本部へと帰投するが、なにこの、生き残った方の生き地獄……。
 「サワコはなにも言わなかったが、俺は彼女が宇宙人だと知っていた。宇宙人でも地球人でもいい。みんなで力を合わせて、平和な世界を……そう思っていた。……しかし……。……サワコは俺の中にいる。……サワコの為にも、俺は戦うぞ」
 一人の修羅の誕生に、声をかけることも出来ない矢的であった……で、つづく。
 デビル城野回と比べると、分業体制によりイトウを元に戻す方法を検証している分マシでしたが、それが駄目となるこれといった手段のないままイトウが死亡→ゲストヒロインが身代わりになって死亡、となり結局は前後編かけて主人公とこれといって関係性のないゲストヒロインが死亡するのを見せられる、なんとも言いがたいエピソードに。
 テーマ的には最後にイトウがまとめるように、星を越えた愛の存在みたいなものだっと思われ、当時の物語作法ではあったのかもしれませんが、それは「死ぬ」以外の形で見せて欲しかったと思うところです。