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奇跡の威力だギガントドリラー

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第17話

◆エピソード17「洋館の奇石」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:三条陸
 今回、思わず脳裏に浮かんだ歌。

 おやじみてくれ バンババン
 おれはやるのだ バンババン
 悪をかぎりのヨドンへイムを 全滅だ

 「「「「「ドリジャンが巨神になる?!」」」」」
 冒頭からハンマーヘッド邪面獣とのハンマー対決に敗れ、逃げられてしまうキラメイジャー。博多南からドリジャンに秘められた変形機構を教えられるが、それはあくまで設計上の想定であり、動力として銀のキラメイストーンを必要とするのであった。そこに何故かボロボロの宝路が飛び込んでくると、求めていたお宝の獲得の為にレンタル為朝を要求し、姫様から猛抗議を受ける事に。
 「このお宝は……俺の人生の全てだからだ」
 真剣な表情の宝路に、相談タイムを経て為朝と充瑠が協力する事になり、3人は金銀財宝を賭けたゲームを持ちかけてくる奇妙な洋館に向かうが、怪しげな館の主の正体は、こっそりと闇エナジーを集めていたモグラ叩き邪面!
 宝路の話からそれを推測していた為朝は、邪面師の正体を指摘するとキラメイハンマーで華麗にステージ1を突破するが、ハンマー邪面獣が活動を再開した事で、為朝と示し合わせていた充瑠がこっそりと離脱。
 ……不自然な行動の経緯についてはこの後で説明されるのですが、シーン切り替わったら「あれ充瑠は?」「急用じゃね?」で片付けるのは無理が目立ち、この後に説明するからこそ――そしてそこが今回のエピソードにおける宝路の心の動きに大きく関わるからこそ――、もう少し丁寧に見せて欲しかった部分です。
 為朝の再三の問いかけに、全宇宙に4つしか存在しない究極の秘宝・カナエマストーンこそが求めるお宝である事を宝路は明かし、インフィニもとい超トンデモ系のマジックアイテムの存在が、物語のコア部分に浮上。
 「あんた俺たちと一緒に戦っていくって言った癖に、全然心開いてくんねぇじゃん。そろそろその胸についたでっかい鍵を、開けてほしいよな」
 「…………胸の……でかい鍵」
 宝路は秘宝を集める理由については引き続き口を閉ざし、疑問を残したまま屋敷内に突入する二人だが、そこに待ち受けていたのは、特別ゲストのガルザさん。
 ガルザ、モグラ叩きゲームにお邪魔エネミーとして登場するガルザ、だけで面白さが発生していて、ズルい。
 ガルザの相手を引き受けるシルバーだが、激しい戦闘の中で邪メンタルらしきものを打ち込まれて膝を付き、それに満足したガルザは帰宅。一方、モグラ叩きにまで辿り着くもトラップによりパラライズ状態になってしまうイエローだが、ハンマーを手に力を振り絞る。
 「俺はキラメイジャーの代表なんだ。仲間たちは今頃、宝路さんの夢をかなえるために、体張って戦ってくれてんだよ!」
 為朝たちは、宝路にはなにか真意がある筈と相談した上で宝探しに協力する際の役割分担を決めており、途中離脱した充瑠を含めた4人が、邪面獣と交戦中のシーンが挿入。
 これまでも、なんだかんだ宝路がキラメイジャーの戦いに協力してくれていたので、互いにイーブンな協力関係としても納得のいくものなのですが、ややこしい事になりそうだったり「家族の問題」にまで軽々しく踏み込まないという意識はわからないでもないものの、君たちもう少し、姫様をその輪に加えてあげても罰は当たらないと思うのですが……。
 いやまあ、絶対にややこしい事になるには決まっているのですが、宝路の問題と向き合うにはマブシーナの事を避けて通れないのがわかっている筈なのに、話の都合で5人まとめてそのややこしさから逃げているように見えるのは、引っかかるところです。
 理屈としては、外堀を埋めれば後は時間が解決、宝路とマブシーナの二人が歩み寄っていくしかない、という考え方もあるでしょうし、例えば、為朝や時雨の視点としてはそれで納得が行くのですが、物語がそのややこしさから逃げる為に、ことマブシーナと宝路の問題については、5人+博多南が一緒の温度になってしまっているのは、キャラ描写に重きを置いている作品だけに残念。
 (みんなが、俺の宝探しを優先してくれたってのか……)
 「ここで神業決めてよ、宝路さんのお宝と一緒に、俺も望みのものを手に入れるぜ! 本当の仲間になった、キラメイシルバーをな」
 「為朝……」
 よろめきなながらも最上階へ辿り着いた銀がドアの隙間から見つめる中、チェンジャーの謎機能で状態異常を快復した黄は渾身の一撃をモグラに叩き込む事でゲームを続行不可能にして勝利を収め、「トラップで状態異常になる」ピンチはゲーム的で面白かったのに、そこからの回復手段が雑だったので、逆転の裏技も盛り上がりに欠ける事に。
 黄はバスターでモグラ叩き邪面を倒し、銀にお宝回収を促して洋館を走り去るが、ハンマー怪獣に苦戦するメンバーの元に駆け付けたのは、ショベルストーンを搭載したドリジャン。
 「それが聞いてくれよ。こいつ石取らねぇでこっちに駆け付けるって言い出しやがった」
 「「「「え?」」」」
 「仲間が俺の為に戦ってくれてたんだ。こっちが最優先に決まってる。みんな、感謝するぜ!」 
 まま起こりがちな失点ですが、石の回収を急ぐ理由が薄くなってしまったので、敢えて怪獣退治を優先した感が薄れてしまい、「葛藤」と「選択」がもう一つ劇的にならず、やはりここに一つのピークを持ってくる為には、不自然に誤魔化しながらそそくさと屋敷を去る充瑠とそれに首を捻る宝路、的なシーンから流れを作っておく必要があったのではないかな、と。
 その上で、今回ラストで明かされる宝路の理由を知ると、「それはそれとして1秒でも早く入手する」べきだったのではと思わされるのでどうも巧く噛み合っていないのですが、遡ると、地底決戦-銭湯回、の流れで「俺たちと一緒に戦っていく」点が駆け足すぎて、宝路の中の「宝探し」と「人助け」のバランスが曖昧になってしまったのが響いている感。
 「あんたの胸の鍵も、すっかり開いたみてぇだな。これで俺の欲しいもんも手に入った!」
 後どうも今回の為朝像がしっくり来ないのですが、実績を買われて要素の多い回を任されている事情もあるにしても、ここまで参加した脚本陣の中では、三条さんが一番『キラメイ』世界と合っていない印象。
 誰かの見ているところで格好つけて格好いいのは時雨の役割で、為朝の格好良さは、誰も見ていないところやさりげない気遣いに視聴者が悶える系だと思うんですよね……。
 ワンダースローでショベ爺が投げ飛ばされてキラメイジンが完成し、ドリジャンと協力して戦うが、ハンマー怪獣強し(召還後も、闇エナジーを供給されていたから?)。
 「お兄様!」
 「……マブシーナ! ……俺は……俺は……負けない!」
 マブシーナは思わず心配の声をあげ、宝路の脳裏には幼い可憐なマブシーナとの思い出がまざまざと蘇り(相変わらずここで止まってるな……)、コックピット内で咄嗟に突き上げた拳とドリルの動きが連動してアッパーカットになったその時、自分の胸に秘めた輝きに気付くシルバー。
 「心をひらける仲間を得た今の俺なら……変わる……変われる……変わりたい!」
 一人では出来ない事も、仲間となら出来る事もある――誰かに支えられている自分を知り、支え合う事の大切さを思い知った宝路の胸の奥に秘められていたのは、モンストーン制御の為に組み込まれた、銀のキラメイストーン。
 「あるぜ。ストーンならここにな。今こそ俺自身が巨神になる時だ!」
 「えぇ?!」
 「……にぃにごめん、意味わかんない」
 「こういう事だ! 行くぜ、俺の中の輝き!」
 スーツのゴーグルを下ろしたシルバーがワンダーチェンジを叫ぶと、じゅわっっっ……じゃなかった、その姿は巨大な銀のキラメイストーンへとチェンジ(笑)
 とうとう自ら石になる離れ業でドリジャンの胴体に積み込まれる(救援に駆け付けるシーンで黄ストーンが積まれていたのが伏線になっていたのは巧い)事で変形シークエンスが発動すると、銀のキラメイストーンを頭部にした巨神モード・ギガントドリラーへとビルドアップし、てっきり『ウルトラマン』かと思ったら、『鋼鉄ジーグ』でした!
 「さあ、ギガンとドリルぜ!」
 これまでも、マジキングやゲキトージャのように実質的にメンバーそのものが巨大ロボ化している作品はありましたが、イメージ上のコックピットさえ存在せず、まさしく人機一体の新ロボットはここまでの引っ張りに見合うインパクト抜群で、今回ここまでいまいちノれずに居たのですが、このアイデアは面白かったです。
 過去作を遡ると、黒騎士ブルブラックが重星獣ゴウタウラスの力によって巨大化して重騎士ブルブラックとなった上でゴウタウラスと合体する合身獣士ブルタウラス、及びもともとヘッダーの進化した姿であるゴセイナイトがコアとなって変形合体するゴセイグランドが、同じ一体型としてくくれるでしょうか(……改めて、歴代でもかなり得体がしれないタイプだ黒騎士)。
 ドリルの巨神は、腕がドリルだババンバン、足もドリルだババンバン、科学の力だギガントアームなパワフルなアクションでハンマー怪獣を葬り去り、結果として、
 兄をエネルギー源にして動く巨大ロボ
 という、とんでもないものを作ってしまいましたね博多南さん……もっとも、希少な銀のキラメイストーンを想定した変形機構をわざわざ組み込んでいる時点で何者かの関与を感じないではいられず、これはもう、ココナツタワーの博多南しか入れない地下機密区画で指示を出すコンピューターオラディン王待ったなしであり、充瑠の脳にひらめキングのデータが送信されている疑惑がますます深まります。
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 「充瑠くん、そもそも君は本当に、高校に行った事があるのかな」
 「え?」
 「学校の名前は? 担任の先生はどんな人? 誰か一人でも、クラスメイトの名前を思い出せるかい?」
 「え? え?」
 「……これでわかったろう? 君は俺とオラディン王が、赤いキラメイストーンに選ばれるべく作り出した人形。つまりは、オラディン王の代役ンだったのさ」
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 ……酷い。
 与太はさておき、宝路は念願のカナエマストーンを無事に入手し、5人の仲間に、いよいよその真実を語る。
 「なんで欲しいのかと聞いたな……全宇宙に4つしかないこのストーンを全て集めた時、いかなる願いもかなうと言われている」
 「……いかなる願いも……って、ちょっと凄すぎない?」
 「おいおい、まさか宇宙征服でもするつもりじゃねぇだろうな宝路さん」
 ワンダーーーー指パッチン!
 ……は聞き流した宝路は、今まで秘密にしていた自らの目的を口にする。
 「みんなのお陰で色々目が覚めた。真実を話そう。だが、教えるのはおまえたち5人と魔進たち、それと、無鈴だけにしてもらう」
 「あれ? なんか、大事な人欠けてない?」
 この期に及んで爪弾きにされる姫様は、何やら大事そうに抱えた飾り箱の中に収められた、頭飾りのようなものを見つめていた……。
 「お母様、聞いて下さい。お兄様が凄い事を成し遂げましたよ」
 そして……
 「俺の願いはただ一つ。妹を救いたい。それだけだ。……このままでは、マブシーナはこの世から消えてしまうんだ。大いなる闇の呪いで」
 妹大好きの宝路が、ことお宝の件になるとマブシーナに対して冷淡な態度を取り続けていたのは、真意が顔に出ないように必死に取り繕っていた(だから必要以上に険しい表情になっていた)事が明らかになり……これはあれか、
 「おまえの国に無尽蔵の富を与えてやる代わりに、20になったらおまえの娘をいただいていくぞ」
 という契約書に、サインしたのお父様ぁぁぁぁぁ?!
 繁栄の為には実の娘を闇に売り渡すとは、許すまじ暴君オラディン!!(昔話的には、契約を持ちかけられた時点では娘は生まれておらず、娘とか居ないし~と気軽にサインしたら後に娘が生まれて大慌てのパターン)
 宝路の目的はマブシーナにまつわる深刻な問題であり、姫様に情報を与えてこなかった理由が納得できるところに収まると同時に、これまで物語の中に不在だった「母親」の存在が浮上してくるのは、成る程、という構成(充瑠たちの姫様への対応が、これ前提に引きずられてしまったのは重ねて残念ですが)。
 部分部分には不満もあるものの、追加戦士登場→メンバーと友好度を上げていく→追加ロボ誕生→物語の背景に関わりそうな新たなる問題発生、の流れは綺麗に収まり、お母様の存在も興味を引く巧いカードの出し方となって、ここからの展開も楽しみです。
 ただ、仮に叶えまストーンが順調に集まって伝承通りに願いが叶うとしたら、マブシーナが望むのは「クリスタリアの復興」であって自分の事では無いと思われるので、そのまま進めると地獄絵図の予感しかなく、どう組み立てていくのか、手並みに注目。
 次回――元ネタは「半落ち」でしょうが、物凄いサブタイトルに(笑)