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滅亡ロックフェス

仮面ライダーゼロワン』感想・第8話

◆第8話「ココからが滅びの始まり」◆ (監督:山口恭平 脚本:高橋悠也
 声優ギア回で滅がステージ上に登場した際、腰の後ろあたりから両サイドに棒状のものが伸びているのが見えて、これが左右に差した日本刀なら格好いいなぁ……と思っていたのですが、本当に日本刀でした!
 そんなわけで日本刀が大活躍して滅への好感度が3割増しになった他、メインライターに戻って物語が大きく動く、全方位に盛り沢山のエピソードでしたが、何が怪しいって、「飛電インテリジェンスの社長」と「A.I.M.S.の隊長」が検診を受ける病院が一緒という事実であり、両者とも会社指定の病院でしょうからつまり、癒着! 裏で上層部に癒着の匂いがしますよ不破さーん!
 ……まあ単純に、近隣で最も設備の整った病院、というだけの可能性はありますが。
 「ねえ滅ー、人類って今何人ぐらい居んの?」
 「77億人」
 「え?!」
 「医療の発達によって今も増え続けている」
 「ええー、人類滅亡も楽じゃないなぁ」
 アルトサイドにおいて「ヒューマギア開発の発端は医療分野から」「セキュリティとして病院独自のローカルネットワークで管理」という情報を提示してから、医療施設を狙う滅亡ギルドの動きに繋げる流れは鮮やか。滅亡ギルドは病院のセキュリティを破る為にA.I.M.S.特殊技術研究所を標的に定め、唯阿はA.I.M.S.内部の別部署のトップであったと判明。唯阿が連絡を取るチェスの人は「我が社」と口にし、ZAIA(でいいのか?)エンタープライズという社名が登場して唯阿の背後に浮かび上がる。
 偉い人同士の怪しげな繋がりはともかく、A.I.M.S.とZAIAは隠す事のない協力関係にあるようですが、そこまで年配でもなさそうな雰囲気のチェス社長、かつてアルトと共にお笑いの星を目指していたが音楽性の違いからコンビ解散した元相方とかでないといいなぁ。


 「まだわからないのかアルト? 俺のギャグを理解できない人類は邪魔なんだよ!」
 「それは違うチェス夫(仮名)! おまえのギャグには……「アイ」が足りない」
 「愛、だと……?」
 「そう、A・I! はい!」
 「「アルトじゃーーーナイト!!」」(半壊したイズと声を揃えて)
 「ぐぁぁぁぁぁ?!」

 (架空第43話「アイがあるから一人じゃナイ」より)

 ……ソレハサテオキ(しかしまあ、《平成ライダー》のノリ的に、新たな敵はパーフェクト若社長というのはありそうな範囲)、ZAIAの開発した、暴走ギア用の制御機能を持った巨大ロボ、自立駆動型ヒューマギア統率兵器ギーガーの試験起動中に、迅と暗殺2号、そして滅自らが研究所を襲撃。
 立ち向かったバルキリーは、強奪された新装備・鞄アローの一撃を受けて完敗し、2対1だったとはいえ、チェス社長から「滅亡ギルドを葬り去れる」と評され、まだ底を見せていない実力者ポジションであった唯阿/バルキリーの格落ちは、少し早すぎた印象。
 「全てはアークの意思だ」
 その頃、病院ではアルトと不破が喧嘩腰で衝突しており、体育教師ギアの一件を踏まえて、とも取れますが、お互い明らかにだいぶ感じ悪くなっており、やはり5-7話は、高橋さんの想定よりもアルトと不破の関係が緩くなりすぎていたのかな、と思うところ。とはいえ監督は前回と同じなのですが、この辺り、役者陣や演出陣がキャラクターを掴むよりも劇中の関係性の変化の方が早くなってしまう、というのは一桁話数からハイテンポで物語を動かしていく事の弊害といえるのかもしれません。
 「奴らが自我を持つ事自体が危険なんだ」
 かたや病院の廊下で大声で奇声をあげ、かたや検診を受けている身で「不愉快だ」と吐き捨て、廊下で器の小さい小競り合いをする困った外来患者二人は、研究所襲撃の急報を受けて駆け付けるが、ギーガーに接触し、鞄二つを奪ってバルキリーを倒した滅亡ギルドは既に撤収済み。
 「滅亡迅雷ネットの逃亡先はわかった?!」
 「いえ、消息を絶ったままです」
 アルト・イズ・不破は、左腕を負傷した唯阿の治療に付き添い、大きな穴に広がりかけていた滅亡ギルド追跡問題をフォロー。視聴者的にはデイブレイクタウンが見過ごされているように見えるのは苦しいところですが、半ば水没した一都市、ともなれば捜索も難しいでしょうし、そこは滅亡ギルドが上手く隠れている、と取るところでしょうか。
 「不破諌さん、頭、大丈夫ですか?」
 プログラムされた職務の範疇を超え、不破に脳の検査を勧める看護士ヒューマギアを目にしたアルトは、それが滅亡ギルドの求める“ヒューマギアの自我”なのではないか、と看護士ギアを社長ラボに持ち帰って緊急スキャンするが、異常無し。
 「ヒューマギアにも、心ってあるのかな?」
 「理論的には有り得ません。ヒューマギアが、シンギュラリティにでも、到達しない限り」
 「……はーぁ、シンギュラリティねぇ……てなに?」
 「技術的特異点
 社長ラボ、バ・レ・た。
 「我々人類の概念を越える力だ」
 廊下で待たせていたA.I.M.S.組が社長ラボに入り込み、こういう部分の緩さというか、その辺りはこだわらなくてもいいでしょう、というスタイルは『ビルド』にもしばしば見られたので、大森Pのウェイトの置き所が出ている部分でしょうか。
 ヒューマギアの自我、滅亡迅雷、シンギュラリティ……ここまで積み重ねられてきた要素がまとめられ、看護士ギアの陥っている危険性を指摘する唯阿。
 「この個体は今、飛電が制御した通りに動かなくなっている。人間の概念を越えた、違法な存在ともいえる」
 「即刻、処分すべきだな」
 そして本日は、他人の部屋の床にヒューマギアの脳漿をぶちまけようとする不破諌さんであった。
 アルトと唯阿(大事な証拠品だし)は、若干、某ナイトレイダー副隊長めいてきた不破の銃の前に立ちはだかり、社長ラボで3人が揉めているところに、暴走したギーガーによる病院襲撃の急報が入る。滅亡ギルドによるA.I.M.S.研究所襲撃の目的……それはハッキングしたギーガーにより病院のセキュリティを物理で突破する事にあったのだ!
 「滅亡迅雷! 今度は何の真似だ!」
 「ちょっと友達を探しにね」
 「やめろ……ヒューマギアは人の為に尽くしてくれてるのに! なんでこんな事を?!」
 「我々は人間ではないからだ」
 滅と陣がバンダナとフードを外すと、ヒューマギアのアイコンである耳部が露わになり、今回全体的に滅のタメの効いた演技で持たせているのですが、アルトの恒例の叫びにカウンターを入れる形でおく事により、二人が正体を明かすシーンは実に格好良く決まりました。
 積み重ねてきた主人公のキャラクターが成立しているからこそ、悪の側もより劇的になるという構造で、お手本のような手堅さ。
 「なぜ人間を襲う?!」
 「――アークは判断した。この星のあらゆる生物種の中で、人類こそが最も絶滅すべき種であると」
 病院のローカルネットワークを破壊したギーガーは、救命活動中の医療ヒューマギア達にケーブルを伸ばして同時ハッキングし、ものの見事に、過剰武装が人類に牙を剥く展開! なお、ヒューマギアの本分に従い人命救助を手伝っていたイズはこのケーブルをさらっとかわしており、運動性能の高さを窺わせます。
 「全てのヒューマギアよ。今こそ目覚める時だ。人類を滅ぼし、ヒューマギアがこの星の主となれ。滅亡迅雷ネットの、意思のままに」
 刀を掲げて滅は高らかに宣言し、湖に沈むアークがゼアと同型のヒューマギア制御用通信衛星だとすると、滅亡迅雷ネット=アーク内部のプログラムであり、滅自身も、“それをプログラムした何者か”の意思で動いている、という可能性はありそう(滅がそれを自覚しているかどうかは別に)。
 「みーんな僕の友達だ! いい? 病院は、人間を救う場所じゃない」
 「違う……ヒューマギアは、夢のマシンなんだよ!!」
 だが、アルトの絶叫を嘲笑うかのように、狂笑をあげた医療ヒューマギア達は、次々と暴走。
 「…………嘘だろ」
 「ヒューマギアは人の命を奪う! 破壊すべき、人類の敵だ!!」
 銃を構えた不破が進み出て、アルト・不破・唯阿が初の一斉変身となるのですが、感情的距離感を示す意図もあってか不破がアルトよりかなり前に踏み出している為、三人一緒に画面に収めようとするとカメラがだいぶ遠くなってしまった上、対峙する滅亡ギルド側の変身も一緒のフレームに収めた結果、揃ってとても小さくなってしまい、いまいち締まらない映像に。
 ゼロワンは暗殺ドードーと激突し、戦術パターンを解析したイズが背後から次々とキーを投げるのは、何やら『オーズ』風味(といっても、もう約10年前になりますが)。
 基本的な方向性として、ゼロワンのバトルは“明るく格好良く”なのかな、とは思われますし、変身ヒーローになったら当然テンション上がるよね、という意思表示もわかるのですが、特に今回の話の流れだと、戦闘中のアルトのノリが軽すぎるのは、少々引っかかる部分。この辺りも、模索している部分はあるのでしょうが、アルトと暗殺ギアとの絡みも特に無かったので、決め台詞も少し浮いてしまう事に。
 「今日こそが革命の日。歴史に刻まれるのは……われわれ滅亡迅雷ネットの勝利だ」
 ドードーキーを回収した滅は、ゼツメファルコンと戦うゴリラ&ホーネットの前に立ち、フォースライザーを身につけると紫色の仮面ライダー――ゼツメポイズンに変身。
 紫ライダーは色合いといいバスガイドを消滅させた攻撃といい毒っぽいけど、コブラ(蛇)は割と最近やったしな……と思っていたらサソリモチーフでした。
 「おまえか…………おまえがデイブレイクの首謀者だったのか!」
 その姿こそデイブレイクタウンで発見された12年前の映像に映っていた仮面ライダーであり、怒りを燃やして殴りかかるゴリラ。
 テロリストの声明というニュアンスはあるのでしょうが、ここまでかなり饒舌だった滅が、バルカンの激昂に対してはうんともすんとも反応を見せないのは少々引っかかるところで、12年前のライダーの中身と滅が同一人物なのかどうかは、割と疑わしそうなポイント。12年前のライダーの中身が滅の制作者で、滅はその意思を引き継いでいる、或いは操られている、という展開もありそうかな、と。
 「人類は、滅びゆく定め」
 怒りのゴリラに滅多打ちにされ、ありったけの弾丸をぶち込まれた末に必殺ロケットゴリラパンチの直撃を受けるも平然と歩むポイズンは、絶滅アローの一撃でゴリラを粉砕すると、よろめくゴリラの胸に煉獄滅殲スティングディストピアを叩き込み、仮面ライダーバルカン、もはや爽快なレベルの大爆発。
 主人公であるゼロワンの代理で生け贄にされた感は少々ありますが、今作のペース的にゴリラの賞味期限としては丁度良い頃合いであり、絶望的な強敵登場を示す敗北としてやり切ってくれた満足度は高く、地面に倒れる不破諌の運命や如何に!? で、つづく。
 沢山喋ると声のトーンの良さが光る滅パパショータイムでしたが、〔コンピューターによる人類抹殺指令・高度なテクノロジーの暴走と反乱〕と滅亡迅雷ネットの背景と目的は非常にオーソドックスなものとなり、これが戦隊なら最初に明示されて「ああ今回はそういう敵か」で問題なく進みますが、少し引っ張った後で明かされると、もう一ひねり二ひねりを求めたくなるわけで、ここからどう転がしていくか、どちらにジャンプするのかが、腕の見せ所かつ作品として一つの分水嶺という事になりそう。
 ……世情の不穏さを煽り立てる展開から一気に世界観をシフトした結果、その刺激に作り手が酔ってしまった『ビルド』戦争編の悪夢再び、みたいにならないかは少々心配です。
 看護士ギアの自我の表現だったで終わるかもしれませんが、「脳の検査を受けていない」事がなんとなく不穏さを漂わせる不破さんは、次回、緊急 改造 手術を受ける事になるようで……瀕死の重傷から憎きヒューマギア医師に命を救われた上、生命維持の為に肉体の30%をヒューマギア用の疑似生体部品で補われ、ヒューマギアの手で生かされてしまった己自身とそのギア化した肉体に深い憎悪を抱きながらも、信念の為に全てのヒューマギアを抹殺しようとするサイボーグ不破・爆誕 とかなったら、物凄く私好みのヒーロー誕生なのですが、どうでしょうか、不破さん。

 「サイボーグにならんか?」
 「サイボーグ?」
 「君は、ゴリラエネルギーを内臓したダイヤバルカンだ。そして、滅亡迅雷ネットを倒すのだ」

 (架空第10話「だれも知らないヒミツの切り札」より)

 ちなみに『ジャッカー電撃隊』(1977)には本当に、事故により酸欠で死亡した結果、勝手にサイボーグに改造されてしまうヒーローが登場するので東映的には大丈夫。
 世迷い言はさておき、今後の強化の布石も兼ねて、右腕がメカ化ぐらいは有りの範囲ではと思うのですが、現実に人を支えるテクノロジーとしての義手や義足と、フィクションにおけるヒューマギアというのは、重ねる事のできるテーマなのでは、とも思ってみたり。
 とりあえず、この件をきっかけにさくっと宗旨替えする不破さんはあまり見たくはないですが、「わかってないなぁ。道具は使いようだ」されない事も、祈りたいと思います。

 「久しぶりだな、不破諌。おまえが私を――刃唯阿を――見忘れるわけがない…そうだろう? 私がおまえの運命そのものだからだ――不破諌――仮面ライダー…バルカン――」

 忘れるわけがない…たとえ神が俺の頭から…すべての記憶を、掻き出したとしても…この腕が、貴様を覚えている!! この腕の痛みが! 決して貴様を忘れさせない!! “憎悪”が俺を染め上げる! ヤツを殺せと…! ヤツをこの手で引き裂けと!!

 つい最近、同じネタをやった気がしますが、『闇のイージス』(原作:七月鏡一/作画:藤原芳秀)は傑作。