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愛が止まらない

 湿気ダメージでテンションゲージが乱高下中なので、ふわっとざっくり映画の感想。

仮面ライダーZO』(1993)感想(最後までネタバレあり)

◆『仮面ライダーZ0』◆ (監督:雨宮慶太 脚本:杉村升
 「やめてください、博士! バッタの遺伝子で、人間を改造するなんて間違ってます!」
 主人公(翌1994年放映『ブルースワット』ではシグを演じた土門廣)の声質に説得力がありすぎて、思わず、うむ、確かにと思ってしまいました(笑)
 そんな間違った改造実験に手を染める望月博士役、佐々木功のマッド演技が見所の一つですが、博士自身の背景はこれといって描かれず、ごくごく自然に道を踏み外しているのが大変、ナチュラルなキ印科学者登場に定評のある杉村脚本です。
 何者かのテレパシーを受け、森の中で目覚めた半裸の青年が異形の戦士――仮面ライダー――へと姿を変える一方、スクラップ置き場の廃材を利用して肉体を作り出した怪物が街に現れ、クリーチャーのぬめり感と造形はなかなかの迫力。望月博士の息子、宏を狙って街中に降り立つ異形の存在感と商店街無差別爆破も迫力満点なのですが、立ち上がり、“わけもわからないまま異形の怪物に追われる小学生男児”のスリラーをひたすら強調していくのは、個人的には盛り上がりにくいサスペンスでした。
 森永奈緒美大葉健二・山下優・榊原伊織、という豪華メンバーによる生身アクションシーンを挟んで、一度はライダーに敗れた怪物――ネオ生命体――が放ったコウモリ怪人とクモ怪人が出現し、クリーチャーの悪夢的造形の出来の良さは、今作最大の見所。
 あまりにもクリーチャーに力を入れすぎて、対するZOが淡泊に見えてしまうのは良し悪しでしたが、特に女性と子供を追い詰めるクモ怪人は大変気持ち悪く、それを殴り飛ばすZOのヒーロー性の上昇にも一役買いました。戦闘シーンでは、ストップモーション・アニメを交えるという、変化球。
 望月博士を「パパ!」と呼ぶネオ生命体も、全身青紫色で機械と融合しているジニアス望月も大変気持ち悪く、徹底して、夢に出そうな気持ち悪さを追求した作りは、大きな特色になっています。
 ただ肝心のヒーローのインパクトはどうも弱く……半裸から起き上がると自然に変身 → バイクで壁をぶち破って登場 → バイクで敵アジトに向かっている内に自動的に変身、と意識的に「変身!」を描かずに引っ張り続けた上で、満を持して行う「変身!」が、どうしてその流れで「変身!」なのか今ひとつわからないタイミングで、劇的な盛り上がりを生むに至らず大変残念。
 これなら、一度吸収後に脱出した際に、改めて「変身!」から逆転勝利で良かったような気もするのですが、心情描写のメインが主人公ではなく宏少年な上で、これといって少年と主人公の心情がクライマックスでシンクロするわけでもない為、主人公のリアクションが全体的に淡々としたままで大きな心の動きがもたらされるポイントがなく、物語としてのメリハリに欠けてしまいました。
 トータルでは、改造手術により一度は人間性の薄くなった主人公が、宏少年の父への想いに触れていく内に徐々に「ヒーロー」になっていき、「仮面ライダー」として去って行く……という構造にはなっているのですが、溜めた割にはその真の「ヒーロー」となる瞬間が「変身!」に集約されない為にクライマックスが行方不明、といった印象。
 そしてラスト、父と子の思い出の懐中時計はアジトと一緒に蒸発で良かったのか……(笑)
 子の親離れというべきか、狂気の科学者が抹殺されたというべきか……主人公と少年、両者が望月博士を乗り越えていく(父殺しのイニシエーション)、という意識があったのかもしれませんが、結果的に物語としては、焦点がどっちつかずになってしまった感。
 力の入ったクリーチャーの造形は見応えがあり、両手の平に埋め込まれた眼球で目を表現するコウモリ怪人の傑作デザインや、ネオ生命体(最強の攻撃は高速レーザーという身も蓋もなさが感情を捨てたネオ生命体です!)のクラッシャー表現などもインパクトがあったのですが、ヒーローの「変身」に物語が集約されてくれない、というのが個人的な好みからは物足りない内容でありました。