ブレイブ&イマジネーション
◆『烈車戦隊トッキュウジャーvsキョウリュウジャー THE MOVIE』◆ (監督:渡辺勝也 脚本:小林靖子)
キョウリュウジャーはブレイブで背中に爆発を出しそうだし、トッキュウジャーはそれでコケ芸しそうだな、という納得感。
創造主デビウスが、ギャラクシーラインのターミナルに取り憑いて地球に飛来。レディから連絡を受けてターミナルの元へ向かったトッキュウジャーだが謎の敵に手も足も出ず、そこに現れた「聞いて驚け!」な地上最強の勇者達に助けられる事に。
「俺は桐生ダイゴ。キングって呼んでくれ!」
髪はさっぱりしたが、キングはやっぱりキングであった……という、戦隊恒例冬のコラボ映画。
見所は、うっちー(キョウリュウゴールド)がたいそうのおにいさんノリのクロックシャドーと遭遇して交戦している所に現れる虹野明。
「ここか。俺の死に場所は」
「死に場所……」
「あ、ザラムくーん! 君はまだ死に場所さがしてんのかーい」
「人知れず戦って消える……。それが俺、虹野明だ」
「なんという侍魂……!」
変身したトッキュウ6号は、恒例の武器投げ。
「武器さえいらぬというのか……!」
うっちー、ズルいな、うっちー……。
という所が一番面白かったです(笑)
コンセプトでありながら何かと無理の出る戦隊共演に説得力を持たせる為に、トッキュウジャーの攻撃はデビウス軍には通用せず、逆にキョウリュウジャーの攻撃はシャドーラインに通用しない、という設定で二つの戦隊が存在する必要性を描き、それぞれの装備(烈車と獣電池)を交換する事で両方の力を得る、という形でギミックを活用する、というアイデアは良かったのですが……なにぶんメインとなるトッキュウジャーが、致命的に他の戦隊と絡ませにくい設定である為、全体的にどうにもぎくしゃく。
その酷い設定に真っ当に怒りを燃やしたキングがトッキュウジャーを気遣いながら戦い、
「ばかやろぉ! おまえ本当に、ただの遠足のつもりかぁ?!」
「ダイゴ! これが遠足なら、家に帰るまでが遠足なんだよ! それに、生きて帰るまでが戦いなんだよ!」
ライトと互いに檄を飛ばす決戦などは悪くありませんでしたが、それ以外は双方の化学反応も弱く、とにかく相性が悪かったな、と。
あと、大仰な設定の割に創造主デビウスが物凄く格好悪いのもマイナスで、物足りなさの目立つ映画でした。
キチガイ×バカ=大変危険
◆『手裏剣戦隊ニンニンジャーvsトッキュウジャー The Movie 忍者・イン・ワンダーランド』◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:下山健人)
まさかの、バナナが伏線。
古びた電車の座席で目を覚ました天晴は、ラストニンジャ見習い一同揃ってニンジャランドに向かっている途中だった事を思い出すが、不思議な駅を通り過ぎる度にコスプレワールドに取り込まれ、仲間達が次々と消えてしまう……。
天晴目覚める→会話→コスプレ→天晴目覚める……をループさせ、劇場版らしいバラエティ要素で興味を引きつつミステリアスに展開する、というなかなか面白い導入。天晴が電車の座席で目覚めるシーンは恐らく『烈車戦隊トッキュウジャー』第1話のオマージュだと思われ、『トッキュウ』『ニンニン』共にパイロット版監督を務めた中澤監督が、うまく両作品を結合。
ニンニンジャーの6人は実は妖怪電車に囚われており、車掌からの依頼で救援に来たトッキュウジャーに助け出されるも、天晴だけが目的地であるニンジャランドへと連れ去られてしまう。そこで待ち受けていたのは、熱狂的なニンジャフリークの闇博士。姿を消したシャドーラインに所属する闇博士はその力で闇アカニンジャーを生み出し、出涸らしとなった天晴は消滅の危機を迎えてしまう、というのが劇場版ならではのスペクタクル。
天晴とライトのやり取りにおいて『トッキュウジャー』終盤で脱線気味だった闇1号の件を拾い、救出に成功した残りメンバーのサイドでは「家族」「みんな一緒」「帰る」というキーワードを用いて『ニンニン』と『トッキュウ』を巧く繋げ、中澤監督の参加も大きいでしょうが、動揺するレベルで下山さんがいい仕事。
改めて下山さんは、変にナンセンスをやろうやろうとしない方が、良い物を書くという印象です。
闇のニンジャパワーで世界を闇に包もうとする闇博士は、旧シャドーラインのクローン幹部を呼び出してニンジャランドを防衛し、割とギャグっぽい役割なのに、声優陣が超豪華。そして今回の女装担当は、キンジ。
「ここか。今日の俺の死に……。…………仕事場は」
闇博士にトッキュウ6号が立ち向かう一方、闇アカニンジャーにはトッキュウ1号と生身の天晴が戦いを挑み、生身でも戦闘力の高いバカと、それを一切止めないキチガイのコンビが、危険すぎるコラボレーション。
いやほら、普通、形だけでも、「そんな体じゃ無理だ!」とか止めるよね……でも、止めない。
ニンニン&トッキュウがニンジャランドに突入している間に、火事場泥棒で恐れの力を集めようとするキツネ右衛門だが、そこに現れたのは恒例ゲスト枠の動物戦隊ジュウオウジャー。
単純な横並びではなく、画面を広く使い少しずつ距離を置き姿勢もそれぞれの5人が階段に並び、「AhーーAhーーAhーー」とスキャットが入る登場シーンは格好良かったのですが…………純然たるサービスシーンなのでツッコミどころではないのですが…………レオ以外ほぼ別キャラの集団(笑)
初期設定が難産でこの時点でまだキャラが固まっていなかったのか、タスクとセラはあまり友好度を感じさせない態度でぐいぐいツッコみ、大和くんはそれに露骨に動揺し、アムは小悪魔というより無邪気、レオだけが揺るがずバカ。
決め技を放つ際の「さっさと決めるぜ!」の別人感が凄い大和くんは、リアクションを見る限り、どうやら最初期は天然系の路線だったように思われ、登場時の距離を取った並び方といい、実際の本編よりも協力関係の構築に時間がかかる(その間のあれこれを大和くんがのほほんといなす)構想だったのかもしれません。
もはや別戦隊すぎて面白いレベルなので、『ジュウオウジャー』ファンには貴重な資料として見ていただきたいぐらい(笑)
駆けつけた仲間達の赤ピーマンバズーカの支援もあり、闇アカニンジャーを倒すも天晴は消滅してしまうが、イマジネーション的な何かでなんとなく復活。ここまで、両作品のテーゼを繋げて上手く展開していただけに、最後の最後でイマジネーションが単純に「奇跡を起こす力」ぐらいで雑に扱われたのは大変残念でしたが、期待値が低かった事もあり、ここまでは思った以上に楽しめました。
もう一つ難を言うと、『ニンニン』最終盤で株価が奈落の底を抜けたお父さんの語りシーンが長くて、何を言っても(でもこの人、本音は子供達より俺もニンジャになって暴れてーーーの人だからな……)と冷めてしまうのですが、『トッキュウ』との家族テーマ繋がりがあったにしろ、やはり下山さんは結構真剣に、『ニンニン』で「父と子」というテーマをやりたかったのかなと思われるのですが、それがどうしてああなってしまったのか。
W戦隊の団結バトルでは、モモニンジャーとトッキュウ4号のコンビネーションによる、大胆に高低差を組み込んだダイビング火炎斬りが非常に格好良かったです。そして、残念な青2人を叩き起こすトッキュウ3号。
巨大戦ではトッキュウ御神輿大王が降臨し、闇博士を撃破。両戦隊はそれぞれの帰るべき場所へと帰り、ラスト、「ただいま」で締めてくれるなど、『トッキュウ』愛を端々に感じるのは、嬉しい一作でした。
『vsキョウリュウ』は、ただでさえ基本設定が重めな上に本編クライマックスに迫るトッキュウジャーという悪条件に加え、劇中における大人視点であるキングがトッキュウジャーの置かれた状況に向き合ってしまうと展開がシリアスにならざるを得ず、そこに劇場版的な娯楽要素を加えるという構造の噛み合わせが大変悪かったのですが、『ニンニンvs』では一つの旅を終えたトッキュウジャーが闇博士の作り出した異界(トッキュウジャーのフィールドである)に助っ人として通り過ぎるという構造が上手く機能。
上述したように最後のイマジネーションの扱いが残念でしたが、子供トッキュウジャーをラストのサービスだけに留めた判断も良く、予想外に楽しめる出来でした。