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引っ越しルパパト9

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第9話

◆#9「もう一度会うために」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 舞い散る桜の花びらに手を伸ばし、これが少女マンガならヒロインが運命の恋に落ちそうな物憂げな表情を浮かべる圭一郎は……
 「だいぶ暖かくなってきたな。犯罪が増える季節だ。気を引き締めねば」
 勿論、犯罪の事を考えていた。
 表情を引き締めコート小脇に出社する圭一郎がすれ違ったのは、パンを加えたドジっ子ヒロイン……じゃなかった、ロックアイスくわえてソンブレロと青緑のポンチョで堂々と街を練り歩く不審者だった。
 「……妙なヤツも増える季節だ」
 これが某ビートル隊所属、殺しのライセンスを持つ特A級宇宙人ハンター・渋川一徹だったら、職務質問どころか問答無用で拘束して身体検査している所ですが、不審者もあまりに堂々としていると趣味に見えるので仕方ない。
 桜と圭一郎、という意表をつくカットで始まり、季節の風物を愛でながらも職務に繋げる圭一郎の警察脳、日常に潜む悪意との交錯、前段の台詞を踏まえての軽いギャグ、とテンポ良く繋がっていき、冒頭から香村×中澤タッグが快調に疾走。今回は話の展開といい演出のテンポといい、このタッグと戦隊のブレンド具合が絶妙で、最初から最後まで見ていて実に気持ち良かったです。
 その頃、快盗レストランでは透真がフレンチトーストの仕込み中。開店準備をさぼってニュース記事を見ている魁利からタブレットを取り上げた初美花が、世界的な宝石デザイナー・エマ来日の記事に目を止めて興奮する姿が前々回を汲み、注意そっちのけで記事に目を通しながら席に戻ると、いきなり同じフレームに収まってくるコグレ。
 「会いに行ってみませんか」
 「ひゃっ?!」
 「……おはようございますコグレさん。今日も唐突ですね」
 厨房でいちはやく立ち直った透真が、無駄とわかっていてもツッコミを入れてみるくだりまで、流れが実に鮮やか。
 コグレによると、エマの身につけているペンダントが、ギャングラー襲撃以前から行方不明になっているコレクションである可能性があり、言われてみると見るからにVSビークルなのですが、管理が雑なのか3代前が借金のカタに売ってしまった事件とかあったのか。
 「で、本物かどうか確かめたい、か」
 遠眼鏡でエマの様子を窺っていた快盗一味(皆で遠眼鏡を取り合うのが面白い)は、不審な清掃員がエマの前に立ちはだかるのを目撃。
 「会いたかったぞ……エマ・ゴルディーニ」
 帽子で顔の上半分に影を落としながらの演技が迫真すぎて、ただのストーカーだったらどうしようかと思いましたが、その正体はトナカイギャングラーでした!
 変身した3人は慌ててビルへと突入し、エマが逃げ込み降下するエレベーター内部という狭い空間を活用してのバトルなど、今回も工夫して見せてきます。
 そして一旦シーンを切り替えて1階ロビー、平穏なビル内部、あくびをしている警備員、で間合いを外してから、エレベーターが到着するとドアを突き破って飛び出すルパンレッドとギャングラーの戦闘が日常を切り裂く! というのが実に中澤監督の間合いで、いやー、流れるように面白い。
 また、これを見た警備員が即座に国際警察に通報している――以前からやたらと通報早いなと思っていましたが、どうやらこの世界、ギャングラー(快盗)案件での直通ホットラインがある模様――というのが、劇中のリアリティ補完として秀逸。
 そしてエマの手を引いて逃げるも、
 「はっはー、さては貴様もペンダント狙いだな、快盗」
 と怪人に指摘されて言葉に詰まり、言い訳を考えている内にエマに逃げられる快盗、というのは今作の特性が活きて面白かったです。
 快盗の手を振り払って外へ逃げたエマがギャングラー構成員に追い詰められ、
 「誰か、助けて!」
 と叫んだその時、響く銃声とともに現れたのは、正義の真打ちパトレンジャー! と、助けた人に逃げられる快盗と、パーフェクトなヒーロー登場をする警察戦隊、の対比もバッチリ。
 ハッピートリガーズが構成員を蹴散らすどさくさに紛れ、警備委員の制服を奪って変装した魁利がエマを連れてその場を離れ、そうとは知らぬパトレンジャーは構成員をビル内部へと押し戻し、ギャングvs快盗の戦闘と合流。トナカイは電撃を放って逃亡し、快盗青黄も窓を破って逃亡し、暴力行為に器物破損と、快盗が着実に犯罪を積み重ねてカルマを溜めていきます。
 一方、警備員コスプレで首尾良くエマと現場を離れた魁利は、ペンダントを言い値で買い取りたいと白紙の小切手を差し出し……別にレストランをやっていなくても活動資金には困らないという衝撃の事実が発覚。
 ……まあこれ、換金しようとすると何故か溶けて消えてしまう サージェス財団製 ルパンコレクションという可能性もありますが。
 「あなた……ただの警備員じゃないわね。何者?」
 「…………とある金持ちのしもべ……かな」
 視線を外して下を向き、決して何もかも割り切れているわけではない今の立場を自虐的に呟く魁利だが、それが思わぬ誤解を招く事に。
 「姉さんに伝えて。お金が余っているなら、寄付でもしたら」
 予想外の反応に戸惑いながらも魁利はエマの後を追い、それが魁利の中にある蓋を開ける事になる。
 「私は私のやり方で生きていく。家に戻るつもりはないわ」
 「……伝えてほしいなら伝えてもいいけど。その姉さんってのはどこにいるわけ?」
 国際警察が偽の宝石展示会でギャングと快盗を誘い出そうとする一方、魁利達はレストランで、姉と喧嘩して家出をし、その後、繰り返し連絡を取ろうとしてくる姉に何年も音信不通を貫いている、というエマの事情を聞いていた。
 「姉は、綺麗で優しくてなんでも出来て……子供の頃は憧れていたわ」
 優秀な姉への反発、というエマの過去に自分自身を重ねてしまう魁利が、人好きのする笑顔を浮かべた軽妙洒脱な仮面を剥がされ、真剣かつ沈痛な素顔を垣間見せるのはキャラと役者の引き出しを順調に増やし、3ヶ月目に入って戦隊らしい加速がついてきました。
 魁利は、兄のバスケットの試合を応援していた子供の頃を思い出し、魁利兄、やたら二枚目で私のテンションが上がります。
 「俺、大きくなったら、兄ちゃんみたいに、なる!」
 そして時は流れ……タイムアップ直前、兄と同じように放った魁利のシュートはリングに弾かれ、チームは敗北。
  「でも――」
 試合終了後、夕陽に染まる体育館で独り立ち尽くす魁利の肩を励ますように叩く兄だが……
  「成長するにつれて、どんどん自分が出来損ないみたいに思えてきて」
 魁利はそれを振り払って歩み去る。
 「…………側に居るのが、嫌になった」
 「え?」
 「俺にも、出来のいい兄貴が居るからさ」
 エマへの共感を口にしてしまう魁利が、初美花に続いて仮面を被りきれない脆さを見せ……と考えてみると第3話における透真の暴走は、いっけん冷静で落ち着き払って見える透真の中にある、状況判断を失わせる激情という脆さであり、立ち上がりに快盗3人の精神的な不安定さを明確にしておく、という意図だったようです。先陣を切った関係でまだ透真の性質が掴み切れておらず、劇的さにおいてやや割を食った感がありますが、その分、魁利と初美花の描写が効果的になっているので、ここはやむを得ないところか。
 「会いに行った方がいいよ」
 「え?」
 「お姉さん、会える内に」
 「会えないわよ。色々、酷い事も言ったもの」
 「……いつまでも意地張ってると、後悔するよ。会えなくなってからじゃ、遅いんだ」
 そして偽展示会の日……客に紛れて張り込む国際警察、眼鏡圭一郎があざとい(笑)
 あざとすぎますよ圭一郎先輩!!
 3人はまんまと偽物に引っかかり、力尽くでペンダントを強奪しようとしたトナカイギャングを三方から取り囲み、パトライズ。
 「国際警察の権限において、実力を行使する!」
 第6話において、この決め台詞に芯が入った事により、毎度これ言うだけで格好いい、というのは実に効果的でお見事な仕掛け。そこにギャングラーのお宝目当てで青黄が乱入し、魁利はレストランを出たエマを追いかけていた。
 「そんなにペンダントが欲しいの? 快盗さん」
 「それが本当にルパンコレクションなら、俺には必要なんだ。もう一度、兄貴に会う為に」
 「え?」
 「それに、命を賭けないと家族に会えないなんて、俺みたいに道踏み外した奴だけで十分でしょ」
 この発言からすると、魁利はルパンレンジャー以前から“道を踏み外して”おり、それが結果として兄の喪失に繋がった(喧嘩の要因)という罪の意識を持っているようで、「道を踏み外した」からこそ「命を賭けないと家族に会えない」状況になったという思い(込み)が、魁利を縛る呪いであるのかもしれません。そして魁利は恐らく、一言でもいいから兄に謝りたいのだろうな、と。
 そう考えると、そこまで思わせる何をしていたのかが気になる所ですが、どういう形で点と点が繋がってくるのか楽しみです。
 また前回、ゴーシュの見る見る双眼鏡の映像で、ルパンレッドの右腕の部分がうっすら光っていたように見え、右腕を怪我した事でバスケットを続けられなくなったのも魁利がやさぐれた要因の一つ……? とも想像していたのですが、今回は特に触れられず、またそれならコグレがあそこまで怪しい笑みを浮かべるほどの事とも思えないので、ここもどう繋がってくるのか楽しみ。
 足を止めるエマだが、そこに、知力低めの元部下に仕事を任せつつ、心配なので自分は自分で独自にエマを追っていたらしい(ザミーゴ情報かもですが)デストラさん@苦労人が強襲。
 魁利はデストラの前でマスカレードし、ルパンレッドの正体を誰よりも早く知るのがデストラさんというのは予想外の展開。現状、ギャングラーにとっては特に意味のないカード(魁利がどこの何者かまでは全くわからないわけですし、今のところあまり興味もなさそう)ですが、「快盗の正体」が重要な意味を持つ物語だけに、どこかで効果的に機能して欲しい要素です。
 独自にルパンコレクションを入手しようとするデストラの襲撃を受け、ミサイルパーティを辛くもかわす赤とエマだがビルの中に閉じ込められてしまい、アバンからギャングラーに襲撃を受け、逃げ込んだエレベーターの中では至近距離で快盗と怪人が戦い、外に出たと思ったら構成員に囲まれ、トドメにデストラさんのミサイルから逃げ惑う、というエマさん、非戦闘員の単発ゲストとしては、かなりの巻き込まれっぷり。
 もうタイトスカートにヒールで走り回る人生に疲れた……じゃなかった、コレクションの為とはいえ自分を守る快盗赤の背中を見つめたエマは、そこに秘められた真摯な思いを感じ取り、“自分が姉に会う決心を固めるきっかけをくれた”代価として、“魁利がもう一度兄に会うために必要なルパンコレクション”の譲渡を決断。
 「なんだよ急に」
 「あげるわ。だって私、姉に会いにいかなきゃいけないもの」
 今回は、従来作的に表現すると“快盗とゲストの交流エピソード”なのですが、如何にもありそうな、洒脱で飄々とした快盗の姿に「あんな生き方もあるのか……」的な影響を受ける、というような内容ではなく、快盗が仮面に隠す生の部分に触れた相手がそれを受け止めて変化を決意する、というエピソードをその最初に持ってきたというのは、コミュニケーションを重視する香村さんらしい展開。
 そして自分の過去を重ねてエマにアドバイスを送ったり本音の一端を打ち明けながらも、レストランでは顔は向けながらも体は横→立ち上がって背中、翌朝は追い越してから背中を向けて、とあくまで正面から向き合おうとしなかった魁利が、他者の心を動かした時、逃げずに正面から向き合う事を要求される。
 「あなたも、お兄さんともう一度会えますように」
 「…………メルシー」
 半身で固まっていたルパンレッドは、ペンダントを握らされて逡巡の末にようやくエマに正面を向け、正々堂々、常に正面から「約束」する朝加圭一郎との対比になっていますが、これがいずれ、夜野魁利が向き合わなければならない自分自身の弱さである事を示唆しているようにも思えます。
 突入してきたデストラにペンダントを見せつけてエマから引き離すも、猛攻に追い詰められた赤が咄嗟にペンダントをチェンジャーにセットすると、なんとペンダントはVSチェンジャーへと変形。赤は巨大ビークルをデストラにぶつけて逃走し、デストラはゴーレムを召喚する。
 その頃、警察・快盗・トナカイギャングは展示会場の外で三つ巴の戦闘中。新兵器カメラで複数の戦闘を一つの画面に収めているのがなんだか、広い敷地に配置した戦隊メンバーと敵組織を一斉に戦わせ、それをズームアウトやズームインで見せていく、80年代的な戦闘シーンを彷彿とさせます。
 混戦の中、1号の飛び蹴りを食らって吹き飛ぶトナカイ。
 「今だ。コレクションはいただく!」
 「チャンス!」
 と駆ける青と黄だが、僅かに早く地球クリーンマグナムが炸裂し、その眼前で弾け飛ぶトナカイギャング。
 前回のタイヤ使用時と意図的に重ねたと思われる流れで、今回も間一髪で快盗が華麗に……というお約束の安心感を木っ葉微塵に打ち砕きつつ、快盗のお宝回収失敗という変化球をこのタイミングで入れてきたのは面白かったです。……とかいいつつ私、概ね警察サイドに肩入れしながら見ている為、タイヤ直撃の瞬間に無音になり、ショッキングなシーンとして描かれた事に、あれ? なんか問題あったっけ? と首をひねった事を正直に告白します(笑)
 「こんな便利なお宝」というトナカイの発言以外は特にコレクションについて語られていないところを見るに、電撃は自前の能力でコレクションのスキルは別の効果、など秘密がありそうですが、無情な光景に愕然と焼け跡を見つめる青と黄。
 「そんな……ルパンコレクションが……」
 「俺たちの……願いが……」
 自失状態の二人に銃を向ける警察戦隊だが、ゴーレムと快盗ジェットの戦闘の余波が届いたところにグッティが登場し、戦闘の停止を優先してパトカイザーに。しかし新ビークルを「あれは生き別れの」と発言するニンジンの邪魔が入り、ゴーレムとの撃ち合いに負けていいところなく敗北(^^; ゴーレムは快盗赤が、新ビークルのダブルハサミで十文字に切り裂いて撃破し、飛び去っていくその航跡を見つめながら、エマは姉に電話をかけるのであった……。
 ところでこのペンダント(ビークル)は祖母の形見だそうですが、何代か前にアルセーヌ・残念が居て、ナンパに使ったに1票。
 かくしてお宝を手に入れて意気揚々とレストランに戻る魁利だが、出迎えたのは透真と初美花の沈痛な表情であった。
 「なんだよ二人して、リアクション悪いな」
 「…………ごめん」
 「コレクションごと……警察にやられた」
 「……え」
 砕け散る希望、でつづく。
 快盗の勝利と敗北を対照的な落差で劇的に描き、次回、果たして快盗達は再起できるのか?! 生き別れって何、新装備登場、ザミーゴとの邂逅、と盛り沢山になりそうですが、
 魁利に缶コーヒーを差し出す通りすがりの朝加圭一郎の図
 が、すっっっっっっっっっっっっっごく気になります!!(笑)
 一回休んだ香村さんの研ぎ澄まされた脚本に、中澤監督の演出も絶妙で、いやぁ今回、面白かったです。次回、仇敵ザミーゴがどういった存在として描かれるか、大変楽しみ。