東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   X/Twitter→〔X/Twitter/gms02〕

ここ掘れガヴガヴ

仮面ライダーガヴ』感想・第3話

◆第3話「ソーダパンチは罪な味」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:香村純子)
 「こんにちわ! 俺、ショウマ。この前は、なんでも屋をやってる幸果さんに拾ってもらったんだ!」
 ショウマ・ストマックは早くも、爽やかに拾われ慣れていた。
 「探すぞ、次の新天地!」
 人外の化け物として人間を怖がらせてしまう事に忌避感と罪悪感を抱えながらも、前向きな姿勢を崩さず明るく締まるのが良いモノローグで、放浪の旅路の途中、残り僅かな現地通貨で買った駄菓子を勢い余ってばらまくと、粋がったチンピラ風の男にぶつけてしまうショウマだが、空腹が過ぎてその場で倒れ込み――
 OP、歌は今のところまだピンと来ないのですが、赤黒い荒野を背景に目を開いたショウマが歩き出す場面と、イントロ抜きで高いところから入るボーカルが、これから物語が始まる、という切り替えスイッチとして上手く機能しているのは、良し。
 ……しかしこう、ストマック兄妹出社シーンにおける長男さんの、両手ポケットでジャケットなびかせている姿が、香港か韓国の方のヤクザ風味でどうしても笑えます。
 異世界貴族というより、異世界ノワール炎の捜査線なのですが、お兄さんはこっそり人間界からDVDを仕入れているの?!
 ストマック社の秘密はさておき、チンピラ風の男(今回、最後の最後まで名前が出ないのですが、OPクレジットを見る限り、筋元さん)にのり弁をご馳走になったショウマは、なけなしの小遣いを全てお菓子に使ってしまう可哀想な子だと思われ、総菜もプラス。
 「米も肉も野菜も食べねぇと馬力が出ねぇ!」
 グラニュートに必要な栄養酵素はよくわかりませんが、男は、栄養バランスを気にするチンピラだった。
 「お菓子は、小腹が減った時だけ。……後は、めでてぇ時とか、つれぇ時に、特別に食べるんだ!」
 「……辛い時」
 ショウマはディストピア飯に眉を寄せていた母親の姿を思い出し……お母さん、登場する度に毎度「ポテチ食いてぇ……」はあんまりなので、早く回想シーンが増えるといいですね!
 弁当&総菜を平らげたショウマは、近くの工事現場で馬力を披露すると、その怪力を見込まれて男のスカウトを受け、そんな二人を、弁当屋の女(ストマック社のバイト)が見ていた。
 「こっちの、バイク? みたいなのに乗ってる方は、“仮面ライダー”って呼ばれ始めてます」
 絆斗は、SNSに飛び交う目撃情報を師匠の塩谷に伝え、現代的ツールと都市伝説モチーフをミックスし、「仮面を被ったバイク乗り(ライダー)」だから、「#仮面ライダー」と、劇中にタグ付け。
 なお今回も、グミの戦士の固有ヒーローネームは生まれませんでした。
 ……場合によってはこれ、ショウマが落ち着き先を決め、ストマック社との敵対をより明確に宣言するその時(1クール目の最初の一山?)まで引っ張る可能性もありそうでしょうか。
 香村さんの得意技方面ですし、「名前」の意味づけを重視してくれるなら凄く楽しみですが、次回あたりギャルがノリで名付けてSNSに投稿する可能性も20%ぐらいはありそう。
 まあ、名付け親が幸果で、それをショウマがここぞで格好良く名乗るパターンでも充分アリですが。
 「……なあ絆斗……もし、おふくろさんの仇がわかったらおまえ、どうするつもりなんだ? 相手はモンスターだぞ」
 「………………わかんないっス」
 師匠の問いかけに悩んだ末に、絆斗がハッキリとした言葉を返せなかったのは、18年の歳月の経過と重みの双方を感じさせて良かったところ。
 「正直、危ない真似はしてほしくないって思ってるよ。……親代わりやってきた身としてはな」
 「……師匠」
 「……ま! この仕事にひきずりこんだ俺が言うのもなんだけどな」
 「そうっすよ! てか、何回ヤバい現場の張り込み行かされたと思ってんスか!」
 明るく笑顔を浮かべた絆斗は師匠にヘッドロックをかけてじゃれあい、
 ・塩谷はモンスターに関する絆斗の事情を知っており、母を失った絆斗の親代わり
 ・塩谷は怪しげなフリーライター業だが、根っこのところで真摯
 ・絆斗は、モンスターについて唯一信じてくれた塩谷の事を深く信頼している
 ・真面目な話の後は照れ隠しも含めて軽口を叩き合う仲
 と、パイロット版時点では胡散臭いばかりだった塩谷周りの情報を補強すると共に絆斗との関係に触れ、キャラクターの現在地の確認、人間関係の肉付け、なくてもとりあえず話は進むのだけど、“あるとないでは大違い”のシーンをしっかりと入れてくるのが、作品としての信頼度の積み上げに繋がります。
 またこのやり取りで、「絆斗父の不在」「絆斗母と塩谷の関係」という新たな伏せ札が場に並ぶのが、実に香村脚本。
 絆斗と幸果は、過去に3回ほど仕事を頼んだ顔見知りであると接着され、ファンタジー耐性があり、グレーゾーンに片足突っ込んだような仕事はしていそうな一方、割と常識人の雰囲気もある絆斗が、どうしてこの奇矯なカラーリングのなんでも屋に仕事を依頼する事になったのかは、だいぶ気になります(笑)
 幸果にネット上での「仮面ライダー」絡みの情報収集を依頼した絆斗が、事務所に居合わせた律から、くだんの怪物の目撃情報を聞かされていた頃、ショウマはチンピラ風味の男に利用されて泥棒の片棒を担がされ……そうになるも途中で気付くと真っ当な倫理観を発揮して男を制止し、強制退去。
 作劇が煩雑になる事を防ぐ為もあってか、グラニュート界の道徳観念は人間界と大きく変わりはなさそうな扱いで、故に「闇」菓子でありましょうか。
 男が荒らし回った室内については眷属が綺麗に片付け…………これ、殺人現場をお掃除するアレだな、とか思っても口に出してはいけない(OPの長男の勇姿を思い浮かべながら)。
 チンピラおじさんは、かつて自分を拾ってくれたオヤジに恩返しする為に、泥棒してでも会社(く、組関係……?)の資金繰りを助けようとしていた事を明かし、「行き場も取り柄もねぇ俺を拾って、飯食わせてくれた恩人」「今度は、俺が助けるのが筋」「金さえありゃあ、オヤジに恩返しできる」と、一宿一飯の恩義に報いようとするショウマの行動原理を鏡映しにする事で、
 「今度は、泥棒された人が困る」
 と、ショウマの引く一線を強調。
 またここでは、「恩には恩を返す」為とはいっても、他人の幸福を奪って誰かの不幸を穴埋めしようとすれば、今度はその不幸が循環していくという観念が窺え、今作の基本的な世界観であると同時に、ショウマが“否定していくべきもの”を示しているように思われます。
 「いいから! おまえは黙って手伝え! 飯、食わせてやったろ!」
 「…………おじさんは、俺に泥棒させる為にご飯くれたの?」
 最初は行き倒れを見捨てきれずに、思わず、だった(背景には当然、過去の「オヤジ」の行為がある)事を突きつけられると男は言葉を無くし、第1話を見た時に「動物報恩譚」のニュアンスを感じた今作ですが、見返りを求めない親切と、見返りを求める親切の真似事とでは、返ってくるものが違うのもまた、民話・説話の要素を意識的に取り入れているように感じます。
 「…………おまえなんか拾うんじゃなかったよ。じゃあな」
 ショウマは、それ以上の無理強いはせずに去って行く男を若い衆に尾行させると、無人のキッチンカーを目にした男はそろそろと忍び込み、それを、弁当屋の女が見ていた。
 「……上質なスパイスを手に入れるには、こっちで作ってやればいいのさ。……幸せをな」
 金庫を開き、中に入っていた帯封×3を手にした瞬間、男はペロリとプレートに変えられ、床に散らばった札束が表裏だけ本物な紙の束に過ぎなかった事が示されるのは、欲望に負けて安易に道を踏み外す事の虚しさを示しているようで、種明かしとしての説得力と同時に、今作の世界観といった感。
 「幸せスパイスの素、一丁上がり」
 弁当屋がプレートを手にすると、ストマック社の菓子工場の場面が挟み込まれ、
 「いい笑顔……人間が幸せであれば幸せである程、良質なスパイスを搾り取れる。良質なスパイスは、良質なお菓子を作る」
 とのストマック長女の言からすると、工場送り=実質死亡ではなく、スパイスを搾り取っている間は再生の余地ありでしょうか。
 「……こういう時にお菓子食べるんだよね」
 優しく綺麗なばかりではない人間の一面に触れたショウマ――とはいえ、グラニュート界でそれなりに社会の闇に触れていた気配があり、悪意に対してピュアなわけではないのは良いところ――が、それはそれとして、おじさんの言葉通りに貴重なグミを口に入れるのは愛嬌となり、ソーダグミ、弾ける炭酸、こいつはグミ界の易姓革命やーーー! とビッグウェイブ。
 昂奮のあまりソーダグミの眷属を出産すると、恩返しとはいえ悪い事には手を貸せないと口にしたのに続いて「あの家から逃げてきたんだから」も明確にされ、断片的ながらも主人公周りの背景は思ったよりも早々と見せてくるスタイル。
 尾行に放っていた若い衆(便利)が帰還しておじさんの危機を伝えると、ショウマはバイクでキッチンカーを追跡。舌を弾いて変身すると弁当屋の女が鉄球グラニュートと化し、幸果からの情報を元に現場に駆けつけた絆斗は、両者の戦いを目撃。
 鉄球グラニュートのトゲトゲパンチに苦戦するグミの戦士は、ポテトを纏って有効打を与えるもトゲトゲミサイルの直撃を受けると、鎧が壊れてパンツ一丁システムで生き残り、再びミートグミでシールドを回復。弾力ボディで敏捷性に優れるという扱いなのか、グミの戦士とミサイルの追いかけっこがしばらく描かれ、跳ね回って華麗に回避……の途中で、こめかみにいいのが入った。
 吹き飛ばされたグミの戦士が、カシラの為なら覚悟は出来てるっス……! と鉄砲玉に立候補してきたソーダグミを平らげると、命の力が右の拳に集まって、巨大なソーダハンドにパワーアップ。
 「そうか。パンチにはパンチだ」
 ……なの?
 はともかく、迫り来るミサイルへと突っ込んでいったグミの戦士は、連続回転パンチでグラニュートをたたき伏せると、鉄球パンチも真っ正面からのスプラッシュパンチで打ち破り、倒れたグラニュートの周囲に、ソーダ色の処刑台をセッティング。
 「……どうする? 二度と闇菓子に関わらないか。この場で俺に、倒されるか?!」
 「闇菓子を、やめられるわけねぇだろ!」
 「……闇菓子?」
 今作のヒーロー性において大事なところだと認識していたので、パイロット版以後も、この最後通牒が維持されてくれたのは嬉しかったのに加えて、それを活用して今回の目撃者となった絆斗が無理なくキーワードを耳にするのが、鮮やか。
 「……そうか」
 鉄球グラニュートが処刑許可書に自らサインを行うとグミの戦士はスイッチオンし――これがソーダグミの、命の爆発!
 グラニュートを囲んでいたソーダ色の球体が巨大な拳として実体化すると怪人を乱舞して打ち据え、トドメはグミの戦士の急降下爆撃ソーダパンチにより、大爆死。
 チンピラおじさんを解放するも、またも「化け物」を頂いたグミの戦士は、
 「もう、悪いこと、考えるなよ」
 と精一杯に告げて足早に立ち去るが、角を曲がったら辛木田絆斗。
 「……あんた……人間?」
 恐る恐る問いかける絆斗と、反応に困って佇むグミの戦士だが、そこにステッキを手にした更なる闖入者が登場。
 「おまえもグラニュートなのか?」
 「え?」「……え?」
 「それとも別の生命体かいったいなんなんだ調べさせろ!」
 興奮するステッキ×眼鏡×帽子な謎の男が絆斗を押しのけようとすると絆斗もそれに張り合い、二人が揉めている間にグミの戦士は慌てて逃走。
 「どーすんだ折角接触できたってのに!」
 「こっちの台詞だよ! てか、あんたなんなんだよ?!」
 「……俺はグラニュート研究家だよ」
 既にグラニュートの存在を把握している人間が居た予想外の展開で、つづ……くにはまだ早く、助けられたチンピラおじさんのその後がしっかりと収められると務め先の工場は会社を畳む事が決定し、反社会的な団体ではありませんでしたすいませんでした!(まあ、おじさんの名前「筋元」を深読みすると、おじさん自身はヤクザ崩れのチンピラで、工場長に拾われて更生したような背景はあったのかもですが)
 「オヤジ……なんも恩返しできず……すいませんでした!」
 「ばっかやろう。おまえになんとかしてもらおうと思って、拾ってやったわけじゃねぇよ」
 「…………ごめん、兄ちゃん……」
 オヤジの言葉に、自分がショウマを助けた理由に改めて気付いた男はうなだれ、男自身は苦い結末を噛み締めるのですが、実際に盗難したお金を会社の資金繰りに使おうなどとしたらもっと大変な事になったでしょうし(工場長も気付いて問いただしそうな人物ですし)、ショウマとの出会いによって命を救われ、決定的な破滅も回避した男が“気付き”を得て再出発するのならば、その先行きはきっとほのかに明るいのだろう、と感じさせるのは、同じ香村脚本の名編『海賊戦隊ゴーカイジャー』第13話「道を教えて」(監督:坂本太郎)を思い出したところ。
 元よりヒーローの手が届かない問題をゲストに抱えさせる話法はあまり好きではないのですが、ややこしい問題に手を伸ばすだけ伸ばして放り投げる事もなければ、苦さだけを強調して酔っ払うような事もなく、ゲストとヒーローの「出会い」に少なからぬ前向きな意味を与え、過剰な救済をもたらさない範囲で個人の気付きや変化をヒーローフィクションだからこその落としどころにしてみせたのが、さすがの技でありました。
 そして、ショウマとの出会いはあくまでも契機でしかなく、思い詰めたおじさんを救う――情念に最終的な落としどころを与える――のは、あくまでも工場長ではなくてはいけない、のも絶妙なバランスで、主人公がそれっぽい事を言って、なんとなく気持ちよくなる落とし穴も回避しているのが、お見事。
 最後に、双子ストマックの下を、グミの戦士vs鉄球グラニュートの一部始終を撮影していたエージェント(もしかすると、ストマック兄妹にとっての「眷属」にあたる……?)が訪れ、
 「「やっぱり、こいつ赤ガヴだ!!」」
 で、つづく。
 終盤やや、畳みかけるように新しい情報を入れすぎたかなと思うところもありましたが、新フォーム(新技)を話の流れの中にしっかりと落とし込み、ショウマ以外の人間関係も動かした上で、ゲストとショウマの物語に尻切れトンボ感を出さずに1話でまとめてみせたのに加え、善良なだけではないゲスト、女性型のグラニュートと抑えてほしい所も手堅く抑え、立ち上がりとしては圧巻の内容。
 演出サイドのさじ加減も含めて、ここまでなら尺に収められるだろうという情報密度のコントロールが凄まじく、手堅いは手堅いでも手堅く60点台なのではなく、90点の手堅さを叩きつけてくるのが、お見事でありました。
 後は、香村さんのこの切れ味を維持しながら作品を回していけるよう、脚本陣の上手い差配をプロデューサー陣に期待したいところです。
 次回――ベ、ベイマックス!?