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再建屋は失敗しない

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第27話

◆バクアゲ27「甘くない選択」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:冨岡淳広
 「やだねェ……おまえダッサ」
 玄蕃渾身のワイヤージャンプ攻撃は、謎のハシリヤンに軽々と片手で防がれ、エフェクト的には重力操作のスキル持ちでしょうか。
 「おまえの顔は忘れない! おまえは、ディスレース!!」
 地面に叩きつけられながら感情を剥き出しにする玄蕃に対し、ハシリヤンはあくまでも軽薄に対応。
 「ほほぅ、俺の事知ってんの? あはははー! ――強きにスマイル、弱きをディスる、侵略テコ入れ成功率ぅ、実に、100パーセントぉ! ハシリヤン・再建たいちょーーー、ディスレース!」
 全体的にコブラのモチーフがあしらわれた新たなハシリヤン幹部は、ポーズを取って恒例の口上を決め……肩書きは、かつてなく面白かったです(笑)
 そうかハシリヤン、割と侵略活動に支障が出る場合があって、それ専門の部署と立て直し請負人が居るのだな、としんみり。
 「地球に、堂々、着任」
 「面倒な奴が来やがった……」
 「うぁぁぁぁぁ!!」
 先斗が溜息をつく一方、咆哮する玄蕃からは周囲の人間を後ずさりさせるほどの闘気が放出され、瞳の光彩が細まると、白髪のネコ系獣人へと姿が変貌。
 「まさか……」
 「……やっぱり、そうだったのか」
 …………四次元ポケット持ちだからネコ型?
 玄蕃は獣人モードのままブンブンチェンジするとディスレースに襲いかかるが軽くあしらわれ、重力操作でオレンジを噴水に放り込んだディスレースは、入手した極秘のブツ――クランク状のパーツ――を手に退社。
 激昂するオレンジは辺り構わず衝撃波を撒き散らし、そのただ中へ突っ込んでいった大也は、オレンジの暴走を体当たりで制止する。
 「落ち着け! 玄蕃! 奴はもう居ない!!」
 ……なんだか、凄く久々に、主人公の主人公っぽい姿を見たような(笑……い事ではない)
 「……でかいカオスに転がっちまったな」
 先斗の呟きは絶妙にはまり、感情の爆発のあまり仲間を傷つけた事に玄蕃が茫然自失する中、ISAでは腹の黒そうな大人たちが密談の真っ最中。
 「常槍本部長も人が悪い。まさかあれを、ハシリヤンに渡すとは」
 「今度の再建隊長、改造隊長よりは使えそうだからな」
 ……そうだといいと、こちらも期待しています!
 「大丈夫ですか」
 「宇宙のならず者ごとき、勝手にはさせんよ。その為に我々が居る。君の方の状況は?」
 「順調ですよ。量産体制は、整いました」
 内藤の言葉に続いて、ブラックブンブンジャーロボー:エコノミーの姿が差し挟まれ、ISAがハシリヤン内部の情報を持っている事を含めて不穏な空気が醸し出されるのですが、序盤の動向を考えれば、ブンブンジャーを手駒として取り込むのに失敗したISAが地球外戦力に対して自前の防衛戦力を確保しようとする事そのものは自然なので、それに国際的大企業が協力しているのも言い抜けは効く範囲。
 ブンブンジャーロボの海賊版商法に関しては爆上げ法廷バトルにもつれ込む可能性はありますが、まず最初に特許を出願し、商標権を登録しろと教えただろう大也! と返されたら、ぐうの音も出ない可能性もあります。
 現状、場に出ているカードが少ないのでなんともいえませんが、公的防衛組織ネオブンブンジャーの誕生により、世間的にもお払い箱となったブンブンジャーが「それでも(なんのために)戦うのか?」を問う展開が終盤に想定されているのかもしれません。
 「私の本当の名前は、ゲンバード・デ・リバリー2世」
 一方、ガレージでは玄蕃が自らの素性を告白し、しれっと場に加わっている細武さんが、すっかり身内。
 まあとっくにガレージに顔パスではあるのですが、2クールに渡って共に戦ってきた仲間達に明かされる重要な真実、の場面に一緒に立っているのは率直に違和感が大。
 主要メンバーの関係性すら塩ひとつまみのスープから進展の薄い今作では当然でありますが、概ね話の都合に合わせて動いてきた細武さんとブンブンジャーの距離感の変化を丁寧に描いてこれなかった為に、いつの間にやらすっかりシンパと化してブンブンジャー擁護の論陣を張られても特に響くものがないのは、今後に向けた不安材料の一つ。
 別に嫌いなわけではないのですが、2クール目に細武さん回の一つもねじ込めなかったのに、節目の回だけ出てきてブンブンジャーの一員みたいに扱われても、場の雰囲気が掴みにくくなるだけというのが正直なところ。
 「デ・リバリー2世ってことは、惑星ブレキの若旦那か?!」
 先斗が《知識:宇宙》の判定に成功し、銀河に一大通販ネットワークを築き上げた惑星ブレキ、その銀河通販王の二代目だった玄蕃だが、ハシリヤンのネットワーク乗っ取りを受けて父は投獄、玄蕃は地球へと亡命し、そこでエンスト中の大也に出会ったのだった。
 「……お困りのようだね」
 大也に修理部品を調達し、代わりに手持ちのロリポップキャンディーを貰った玄蕃は、「これが地球のお菓子か……最っ高すぎる!」とバンザイしてブンブンカーを出産……じゃなかった、地球人への擬態に必要な糖分の確保手段として、以後、ロリポップを愛好。
 「以来、私は調達屋だ。船を少しずつバラして細工してる」
 …………そうか……あの無駄になったトランポリンも、大事な宇宙船をバラして細工していたのか……。
 「それじゃ、自分の星に帰れないじゃないですか」
 「もう、帰る星はない。そう思っていたんだろ」
 調達屋として地球に骨を埋める覚悟もあった様子の玄蕃だが、ハシリヤンの地球襲来と、ブンブンジャーへの誘いを受けて考えを変え、いつか故郷を取り戻そうとする思いを胸に秘めながらブンブンジャーに参加。
 謎の調達技術や、「君たちを補い進歩させ見届ける。それが私の仕事であり、喜びなのだ」と恥ずかしげもなく言ってのける姿勢は、宇宙の通販魂の産物だったと理由が付けられ……さしあたり、明かされた秘密そのものに特別な驚きは無かったので、これが面白くなるかどうかは、今後の転がし方次第といった感。
 「侵略てのはさ~、効率的な、ターゲティングと、マーケティングがなきゃぁ、刺さるとこに、刺さんねぇ」
 一方、悪のテコ入れコンサルタントたるディスレースは、ハシリヤン通販で宇宙カーペットを注文しており、“背景が深刻な『カーレンジャー』”みたいなノリの場面。
 まあ『カーレンジャー』の場合は、実際は凶悪な事態をそうは見せずにギャグとして処理した上で、それに関わる当事者たちの無自覚さ(想像力の欠落)こそが“悪”である、という作風でありましたが。
 「よし、決めた! みんなで惑星ブレキを取り戻す!」
 「……そうですよ! ハシリヤンの奴ら許せません!」
 ブンブンガレージでは、感情表現の率直な未来と阿久瀬が立ち上がり、第27話にして、積極的にハシリヤンに抗争を仕掛ける理由が誕生するのですが、現状それがBBGと繋がるわけではないので、モチベーションの更なる分裂が発生。
 あくまでも、“マルチなタスクを全てこなすヒーロー”を徹底するつもりなのかもですが、前半2クールで巧く機能していたとは思えませんし、「宇宙へ飛び出してハシリヤンの支配から星一つを救う」という、これまでとは尺度のまるで違う目標設定まで、うっすーーい砂糖水のように消費されてしまったのは、問題を感じます。
 射士郎と大也も無言で賛同の頷きを見せ……ここで分別ある大人の対応、みたいなものを見せて射士郎と同じリアクションさせてしまうのが、現状、大也の面白くならないところなわけですが。
 そこで、多少デリカシーに欠けても「最っ高に爆上げだな!」と親指を立てるわけでもなければ、自分なりの言葉で決意を述べるわけでもないのが、非常に中途半端です。
 「……ああ」
 仲間達の言葉に頷く玄蕃だが……
 「――でも…………それじゃ駄目なんだ」
 一人になると夜空を見上げ……後日、宇宙人と判明した玄蕃はISAの特別監視対象に認定され、ISAに関しては、どんな規模と権利を持っているのかさっぱりわからないまま進んで「存在自体が背景設定」みたいな組織だったので、急に前に出てきて権力を行使されると困惑が募りますが、果たしてブンブンは特別監視対象に認定されているのでしょうか(笑)
 細武がなにやら説明しようとしたところでクルマ獣の出現が検知され、飛び出していくブンブンジャー。
 「玄蕃! ……俺……俺は……」
 その背に声をかけたブンブンだが、なにやら言いよどみ……
 「……ありがとうブンドリオ。我々の境遇は似ているようで違う。おまえさんはいいやつだよ」
 何やら含みのある言い回しからは、玄蕃の正体とブンブンの過去に関連性がある事を窺わせ、BBGとも繋がりが出てくるのか、両者の感情の交錯もあって、ここは面白い布石となりました。
 とある有名マンガ家のサイン会に出現したカーペットグルマーは、炎のマンガ家をグルグルと簀巻きにし、またもメタネタながらイターシャに踏まれてギャーソリンを放出する事になる怪人デザイナーの図、はちょっと面白かったですが、三下トリオの方は新体制の下でも相変わらずキャラが定まりません。
 そこにブンブン一同が飛び込んでくると、人々を逃がしてから戦いに突入し、途中から観戦モードに入るとモノローグを乗せ始めるブンオレンジ。
 (特等席から見る君たちは、まさに、私が見たかった景色だ。美しく…………頼もしい!)
 加入エピソードの第7話を拾った形なのですが、そもそも第7話の出来に難があったので、正直、何を言っているのかはよくわかりません!
 散々引っ張った末にブンブンジャーへの加入を決めた玄蕃の心の動きがピンと来るものにならなかった(ついでに時制も謎の混乱を見せた)第7話、改めて触れる事で再構築するわけでもなければ、玄蕃の正体が判明した事で成る程と腑に落ちるわけでもなく、本当に第7話とはなんだったのか。
 新体制一発目で気合いは入れたカーペットグルマーが、さしたる能力も見せられないまま歴代最弱クラスの瞬殺をされる一方、謎のクランク状パーツを手にフラフラとしていたディスレースの前には先斗が姿を見せ、一緒に名乗るが戦闘が始まると3倍の速さで姿を消すビュン・ディーゼル
 「てめぇ、この星でなに企んでやがる!」
 「ハシリヤン、最高のイノベーションマネージメントで、地球をプロデュース、て、わ・け・よ」
 「何いってんのかわかんねぇよ!」
 胡散臭さ満載のディスレースは変幻自在の動きで紫を翻弄するとブンブンガトリングさえ片手で防ぎ、重力操作のみならず空間にポータルまで作り出してみせたので、重力系スキルに《ワームホール生成》修得までポイントを注いだ実力者の模様。
 背景で本当に何もしないままカーペットグルマーが水流ブレードのサビと消えると、紫を軽々と変身解除に追い込んだディスレースは余裕で撤収し、3倍速く戻ってくるビュンディー。
 「ヤツの強さ……本物だ」
 戦いには役に立たないが、ソムリエぶりだけ発揮(笑)
 ISAと内藤の密談、意図的にハシリヤンに流された謎のパーツ、かつてない強敵……とブンブンジャーの先行きに暗雲が立ちこめる中、途中でモノローグ戦線離脱した玄蕃は、これからする事はただの個人的な復讐だ、とブンブンジャー離脱を宣言。
 「自分のハンドルは自分で握る……そうだろ? 大也」
 ハンドルアックスの返却は断るも、大也は苦渋の決断としてそれを受け入れ、一同に背を向けて去って行く玄蕃……中間地点で一時的な(?)メンバー離脱という大きな波乱を持ってきたのですが、そもそも大也が「チーム(仲間)」に何を求めているのか、が視聴者に向けてさえ“大也の言葉”で語られていないので、劇的にしようとする場面が空虚になってしまう、いつもの『ブンブン』ロード。
 初恋暴露回で、「自分と違う色を持った人が一緒だと、世界はカラフルで、もっともっと面白くなるから」という指針は示されているのですが、これはあくまで先生が示してくれた大まかな指針であって、大也自身のものとして劇中で示されてはいないわけで、範道大也というキャラクターの背骨として見たいのは、大也自身がそこから導き出した言葉なわけなのですが。
 それを全て「爆上げだ!」で済ませようしたのが上手く行かずに、巨大な負債になっている感。
 結局、爆上げ大将と黙秘権ボーイとのキャラ性が噛み合わないままズルズルここまで来てしまったのが大きな病巣になっており、今、大也に必要なのは、トイレグルマー:トリプルX。
 ブンブンジャーに激震が走る一方、ハシリヤンは何故かカーペットグルマーの素体に使ったカーペットを回収しており、更に、ゴミ捨て場から甦るパラリラ犬で、つづく。
 ……私の長年の性癖である、ゴミ捨て場で拾われる悪の幹部が、まさか犬で実行されるとは。
 次回――復讐×斧、つまり樽爺。