魚心あれば酒心
(※以下、ストーリー内容に多少触れるので、ご留意下さい。)
ゲーム中では、道中で拾えるネクタル(神界のお酒、みたいなもの)が袖の下として機能するのですが、オリンポスの神には恭しく供物として捧げる一方、冥界ではご禁制の品なので「へっへっへ、まあここは何も言わず、どうぞ一つ。いやいや、賄賂だなんてとんでもない。私がたまたま“拾った”ものを、然るべき方に然るべき場所へ“処分”してほしいのございますよ」(台詞はイメージです)と立ち回る主人公ザグレウスが、実にいい味(ローカライズも秀逸)。
冥王ハデスの息子、冥界の王子ではあるが、下々にも驕る事なく友としての敬意をもって接し、頭脳派というわけではないがTPOに応じてエレガントに振る舞える礼節や教養もある、という帝王学の素養と格式に囚われない破天荒さを併せ持つキャラクターなのですが、父親とは犬猿の仲だが師匠大好きっ子というのも絶妙な愛嬌で、主人公とその周囲を取り巻く人間ドラマも、周回を重ねさせる動機付けの一つにしっかり組み込まれているのが実に上手い造型で……最近ちょっと、友人のイケメンが向けてくる感情が重い(笑)
現在、70周目ぐらい。
周回はだいぶ安定してきて、相当ヘマをしなければ、まず最後までは確実に進める(ボスは強化とリソース次第)ようになりましたが、1周およそ3~40分、プレイヤーが飽きずに周回する為の仕掛けとして、一方には周回を重ねるごとに進んでいくストーリーや人間関係が、もう一方には、脱出行の要素追加やサイドクエストの達成が用意されていて、この両輪のバランスの取り方が、実にお見事。
ストーリーや人間関係を進める為には、会話を重ねる他に、袖の下を渡して友好度を上げたり、特定の要件を満たしたり、それられに脱出行の中で手に入る報酬が必要になる事があり……その報酬を「予言書」の形で示されるサイドクエストで手早く入手できるので、クエスト達成を目指して装備を工夫する……といった形で、基本は「同じの事の繰り返し」ながら「試したい事が途切れない」のが、巧妙で、やればやるほど、よく出来ているなと感心させられます。
特定のキャラと出会いやすくなる装備品などで、ある程度は“狙える”要素がある一方、ローグライクならではのランダム性により、会いたい時に限って会いたいキャラに会えなかったり、目的と違うミッション達成条件が埋まりそう(ただしそれを選ぶと周回が厳しくなる)などの“揺らぎ”が生じるのも、ジャンルの特性を外さないスパイスになっており、70周してもなお、なんかよくわからないほど強力なビルドが出来てしまったぞ……みたいな事があるのも面白み。
そして特定キャラクターとの交流が進む事で新しい装備が解放されるなど、物語の進行とゲームとしての幅の拡大もしっかり連動しており、「やれる事を試している」内に「やれる事が増えていく」さじ加減が、非常に絶妙。
とにかく、プレイヤーに対する、モチベーションとストレスのコントロールが、上手い。
物語の方は、冥界脱出成功を契機に、第1部・第2部・第3部……といった具合に、やることは同じだがその構造が変化していくのですが、面倒くさい男親子の関係性に始まる「家族の再生」の物語が、主人公とハデスのみならず、オリンポスの神々をはじめ、周辺人物たちの「家族」へと、主題を一貫しながら段階的に広がっていくのが巧妙で、題材の組み合わせと調理の仕方に、唸らされます。