大いなる家出
挑戦40回目にして、冥界脱出に成功!
……「まずは1勝!」ってリザルトに書かれた。
『Hades』は、冥王ハデスの子・ザグレウスが、生まれ育った冥界から地上への脱出を目指す、ギリシャ神話を下敷きにしたクォータービューのローグライクアクション。
〔ランダムなマップ・ランダムな強化・死ぬと強化がリセットされるが引き継ぎ要素がある〕
というローグライクアクションの基本要素を押さえた上で、
〔繰り返しプレイを前提としたストーリー性・引き継ぎ要素の多さと明確な強化〕
が大きな特徴。
なにより目立つのはストーリー面での強さで、冥界脱出のスタート地点となるハデスの館には、会話可能なキャラクターが5人ほど(ストーリー進行によって増加)居るのですが、死んで戻って来る度に、死因やストーリーの進行状況などに応じて会話内容が変わり、“死を前提とした攻略”と“死を前提としたストーリー進行”を組み合わせてプレイヤーのモチベーションを維持するにあたって、テキストの物量をもってそれを成立させているのが、お見事。
タフで軽口の尽きないヒーロー体質な主人公のザグレウスは、父に反発し、冥界での執務には真面目ではない不良息子なのですが、身内思いで気のいいところはあるので周囲の人々からは概ね好かれており、冥王ハデスも息子を頭ごなしに叱りつけるが、なにやら事情は抱えている様子……と普遍的な題材といえる、不器用な男親子の関係を軸に、ザグレウスに手を貸す、地上の親戚――オリンポスの神々――の思惑や如何に? といった物語も興味を引きます。
なにぶんベースがギリシア神話な事もあり(メタ前提にはしている感)、いっけん親切な血縁たちはいまいち信用しきれず、ポセイドンの力とか借りたくない、とか思わないでもないのですが、津波で吹き飛ばす能力が悔しいけど強い!
……といった具合に、親戚たちからもたらされる《功徳》が主なランダム強化要素となり、主神ゼウスなら攻撃に落雷の追加効果が付いたり、戦神アレスなら範囲攻撃のスピンブレードが放たれり……これらが、通常攻撃・特殊攻撃・魔弾・ダッシュ、といったアクションそれぞれに別個に反映されるので、組み合わせのパターンは極めて豊富。
また、《功徳》をもたらす親戚たちの言葉も、ストーリー進行や強化状態などで変化を見せ(例えば、「○○の助力を既に貰っているのか」と、その神についてのコメントがあったり)、やればやるほど、神々の間の関係性も見えてくる他、人物図鑑みたいなものの項目も埋まっていくのが、至れり尽くせり。
《功徳》に関しては一周限りですが、資材を集めて冥界の一部に有利なスポットを配置したり、闇の鏡でステータスを強化したり、鍵を使って武器を解放したり……と“死んでも持ち帰れる要素”が多く、道中の強化が上手く行かずに早々にリタイアしても次に繋がりやすい、のが親切設計。
思えば昔々の2Dアクションゲームといえば、ゲームオーバーになれば最初からやり直しなのは当たり前だったわけですが、そこに乗せられた流行りのシステム、中でも永続強化要素のサイクルの早さにより、“やればやるほどクリアが楽になっていく”という設計思想が色濃く見え、ではそれなんの為か? といえば、生と死の繰り返しによるストーリーの掘り下げの為である、とするパッケージが非常に秀逸。
そんなわけで、家出成功! は当然のように、本当の物語はこれからだ! に繋がっており、一体どこまで続くのかはわかりませんが、楽しくプレイしております。
(これ無理では……?)が(なんとかなるかも……?)になる案配や、6つの武器×4つの形態、それぞれで攻略する事に意味がある、といった遊ばせ方の拡張性も上手く、なるほど評判作、な出来の良さ。