『救急戦隊ゴーゴーファイブ』感想・第43-44話
◆第43話「戦慄の災魔ツリー」◆ (監督:小中肇 脚本:武上純希)
鍵を失い扉は砕かれ、普通に幽魔地獄を彷徨っているサラマンデスと、先に干からびて荒野に埋まっているカオス、がのっけから面白すぎて困ります(笑)
「カオス! 本当に無いのか、幽魔地獄から抜け出す方法は?!」
あのサラマンデスが、砂の中からカオスを引き起こす人情を見せるのが精神的にだいぶ参っている事を窺わせますが、カオスが首を左右に振ったその時、忠実な臣下にして平均すると災魔一族で一番役に立っている気がするピエールからの声が届き、サラマンデスへと脱出手段を伝達。
それは、肉体を求める幽魔災魔たちを逆に食らい、おのが力として取り込む事で、世界の境界を突破すること!
一歩間違えれば、精神と肉体を幽魔災魔に乗っ取られる危険を伴うが……
「かまわぬ! 幽魔地獄を抜け出してゴーゴーファイブを討つ為ならば、たとえこの身が幽魔となろうとも!」
かつてない逆境に追い詰められたサラマンデスが、土壇場で脱皮の気概を見せるのは転落したエリートの再起への道筋として説得力が生じ、荒野に斜めに突き立った石碑にサブタイトルが乗せられる変化球……背後に重ねた逆光が眩しすぎて、ちょっと読みにくいですが。
「幽魔災魔ども! 肉体が欲しいならくれてやる!」
傲慢の時代を終え、逆境の境地に辿り着いたサラマンデスが幽魔災魔を次々と切り伏せ、その魂を飲み込んでいく一方、街に買い物に出ていたマツリは、教会のツリーの前で母親を待つ少女・梓と出会う。
「そうか……その子もクリスマスに母親を待ってるってわけか」
2年前に教会の前に置き去りにされ、クリスマスが来る度に母との約束を信じて待ち続ける少女の姿が他人事とは思えない巽ブラザーズ、それぞれの反応差が織り込まれているのは、今作のしっかり手堅いところ。
「でもいつか……待ち続ける事が辛くなる時が来るわ」
「……俺は待つぞ。信じて待ち続ける。それが家族の絆ってもんだろ」
「……マトイ兄ちゃん」
8年の歳月の重みが描かれる一方、異界の荒野でひたすら幽魔を取り込み続けていた逆境サラマンデスの姿が変貌し、顔つきがより邪悪……というか、ヒレ部分が張り出して半魚人顔に。
「力が……力が満ちてきたぞぉぉ!」
逆境を乗り越え、尻尾もにょきっと伸びた新生サラマンデスは遂に自力で幽魔ロードを切り開き、苦楽を共にしたカオスと迷わず一緒に脱出する辺り、僻地勤務で辛酸を舐めた経験を糧に、管理職としての確かな成長を感じます。
地上でピエールと再会したサラマンデスは、ゴーゴーファイブを倒し、本社復帰を果たすための、更なる力を得ようと幽魔ツリーの術式を発動。
教会のクリスマスツリーが人間の魂を力のエキスに変える悪魔の吸魂樹へ変貌すると、次々と教会のシスターや子供たち、更には付近の人々を取り込んで力の実へ変えていき、災魔反応に出場したゴーゴーファイブの前に姿を見せる、復活サラマンデス。
……なのですが、よくよく考えてみると、ゴーゴーファイブ一同、洞穴に逃げ込んだ後にサラマンデスがどうなったのか知らない(笑)
「おまえ達を倒す為、幽魔地獄から甦ってきたのだ」
え……俺達がケーキとシャンメリーでご機嫌だった頃、あのまま荒野で野垂れ死にしかけてたの……?
……それは、なんかちょっと、ごめんな……。
気まずい空気を振り払い、着装する5人だが、家の灯りを窓の外から見つめ、ひもじく体育座りしながら逆恨みの炎を燃やしていた魚顔サラマンデスに災魔ツリーから生命エネルギーがチャージされ、人々が木の実にされている事に気付くゴーゴーファイブ。
「サラマンデス様を倒さぬ限り、皆の魂が解放される事はない」
「今度はおまえ達が地獄に堕ちる番だ!」
前回、大事な杖をあっさり破壊される役回りだったカオスが素手で思わぬ強さを見せると、顔もフォルムも獣に近づいた邪竜サラマンデスは尻尾攻撃で赤を一蹴。
Vブラスター一斉射撃もあっさりと跳ね返し、回避スキルを捨てて王道にこだわり続けること数話、遂に、理想の肉体を手に入れました。
「はははははははは! サラマンデス様は無敵だ!!」
「俺は今! 大魔女グランディーヌさえも越えたのだ!!」
逆境、克己、そして、増長、早かった。
母をも恐れぬ問題発言にディーナスはおののき、グランディーヌは瞳を細め、う、うーん……前回ラストの「おのれ……! ゴーゴーファイブ! このまま幽魔地獄で朽ち果てはせん!」に象徴されていたように、あからさまに切り捨てられてもなおグランディーヌに憎しみが向かない、のが災魔一族らしいと思っていたので、安易な発言で、組織としての個性と面白みを削いでしまった印象。
筋肉の導く魔境(偽りの悟り)に溺れてしまった増長サラマンデスは、災魔ツリーの力でゴーゴーファイブを蹴散らしていくと、この胸に溢れかえる力! これが、筋肉なんだよぉぉぉ!! と、遂に巨大化。
隣に立っていたカオスも、ついでに巨大化。……どうして?!
虎の子のコントローラーをあっさり破壊される → 荒野に埋まって死にかけている → 実はステゴロの使い手 → 上司の付き合いで巨大化、とカオスがやたら面白怪人と化していきますが、これを見てベイエリア55からメカ発進。
「機械仕掛けの人形が思い上がるな」
だが、超救急スピンを放ったライナーボーイは巨大サラマンデスに土手っ腹を貫かれてあっさり殉職し、ビクトリープロミネンスも片手で受け止められると剣を溶かされてしまい……「総力戦」の名の下に全てのロボを出したい思惑はわかるのですが、明らかな強敵を相手に初手ビクトリーロボに無理がありすぎて、前回に続いてロボ戦の組み立てが強引になってしまったのはだいぶ残念。
この窮地にミントがゴーライナーに乗り込んで連結合体するのも、「ビクトリーマーズの危機に飛び出した」なら面白かったと思うのですが、「何故か最初にビクトリーロボを出した」ので、招くべくして招いたピンチになってしまい、ロボの運用のちぐはぐさが、折角の強化サラマンデスの格も落としてしまう事に。
「サラマンデス様ーーーぁぁ!」
ミントライナーが不意打ちの乱入パンチに続けて放ったグランドライナーからサラマンデスをかばい、その身で全弾受け止めて爆死したカオスは、妙に面白くなりましたが(笑)
地上では、娘との約束だったテディベアを手に教会に辿り着いた梓母が、災魔ツリーの実にされてしまった娘に気付いて必死に手を伸ばす母娘のドラマが盛り込まれる一方、怨念を筋肉へと変えた黄金サラマンデスは翼を広げて飛翔。
「我が力、満ちたりぃ!」
大胸筋……ならぬ翼を振るわせて放つ衝撃波を前にVロボとグランドライナーは手も足も出ない中、娘を助けようとする梓母の姿に気付くゴーゴーファイブ。
「信じて待ち続けた梓ちゃんの為にも、サラマンデスだけは絶対に倒す!」
どうにもこうにも、Vマーズを出さないまま勝手に追い詰められているのが盛り上がりを欠きますが、奮戦ミントの操るグランドライナー(これも、もっと面白く使えた筈なのに無駄打ちしてしまった感)が弾け飛ぶと、内部に格納されていたマーズマシンが流星合体。
その間に、しれっと再起動していたライナーボーイがVロボとマックス合体し、VマーズとMVロボが並び立つも怨念ウイングの前に近づけないが、梓母の娘への愛が災魔の術式を打ち破り、ツリーからのエネルギー供給の途切れたサラマンデス、墜落。
「どんな強い恨みでも、壊せないものがある。家族の絆は、無限だぜ!」
う、うーん……つい最近、「ネガとしての災魔一家の描写も含めて、「家族」を過剰に美化しすぎない、のは今作の良いバランス感覚」と書いたところで、物凄くストレートに「家族の絆の過剰な美化」が来てしまい、眉間に皺が。
いや、まあ、今作の主題ではありますし、これまでも家族愛や繋がりの強さで突破してきた局面は幾つもあるのですが、
「(めいっぱい好意的に見て)複雑な事情はあったのだろうけど娘を捨てた母親」と
「数日で帰るつもりが、なんらかの事件・事故に巻き込まれて生存の絶望視されている母親」
は全く違うものすぎて重ね合わせるのに限度があり、“母の愛とクリスマスの約束”へのフォーカスに引きずられるあまり、これまでの積み重ねと違う場所からジャンプして、見事に転落といったクリスマスの惨劇。
(というか、ここを重ねようとすると巽母に、「父を連れ帰るという名目で家を出て、子供たちを捨ててそのまま失踪」の可能性が示唆されてしまうわけで、そういった筋からもよろしくない事に)
恨みと絆の対比もピンと来ませんし、どうしても“家族の絆”で突破したいのなら、災魔一族の唱える「家族」の空疎さと、巽一家のそれとの対比、といった組み立てにこだわってほしかったところですが、何より今作これまでの積み重ねから外してしまったのは、力強く突きつけた“家族の絆”の中に、実質・父親不在な点で(ゲストのドラマは元より、それに合わせる関係でかモンドの出番自体が少ない)、これまで作品の中軸にあった要素にも拘わらず、「家族(の絆)」がほとんどマジックワード同然の扱いになってしまったのは、非常に残念。
筋肉への慢心から再び地に堕ちたサラマンデスは、怒濤の反撃を浴びると土手っ腹を貫かれ、胸に輝く冥王の星が砕け散ると、この星の初日の出を迎えることなく、大爆死。
「……母上様! 冥王の星が、砕けてしまいました!」
「あれでは、誰も冥王を継げなくなる……」
「期待を裏切り続けおって! 冥王などもういらぬ!」
「母上様!」「母上!」
捨て台詞を残して母上様は普通に引っ込んでいき、ここからマイナスエネルギー確保の大逆転の策でもあるのかと思えば、何も無いのですか母上様?!
「どうしたらいいんだ?!」
いやホントに。
サラマンデス退場により、母上ダウンロード中断以来の逆境に追い込まれた災魔一族は、果たしてここからサイマ腹筋を見せる事ができるのか?!
事の顛末を城から見ているだけだったコボルダとディーナスは、仲が悪いので手を出さない、というよりも、あそこに参加したら流れ弾で死にそう……という自覚がありそうに見えるのが困ったところで、走り込みと筋力が圧倒的に足りていません。
「サラマンデス様……おいたわしや……おいたわしや!」
地上では、主の死を嘆き悲しむピエールがサラマンデスの首元を飾っていた緑の石を拾い……まだこちらの方が逆境からの奮起に期待できそうです(笑)
というかピエールにこのまま退職されると、召喚も再生巨大化も出来ず、災魔一族が洒落抜きで詰みかねないような。
死闘を乗り越えた巽兄弟は母娘の再会を目の当たりにすると、母・律子の帰還を改めて信じ、今回もホワイトクリスマスで、幕。
……というわけで、サラマンデスがとうとう退場となりましたが(復活の可能性がゼロでは無さそうですが)、誕生から今回まで18話、およそ1クール半を引っ張ったと考えればそれなりの貢献とはいえるものの、ジルフィーザ退場と入れ替わる後半の宿敵! といった形で出てきたデビュー戦の期待感を思うと、どうしても看板倒れの印象は否めません。
前任のジルフィーザがなんだかんだと弟妹からの敬意は受けていたのに比べると、軽んじられていた末っ子、そのくせ母上様からの熱心な肩入れ、と兄姉のジェラシーファイヤーに晒される逆境からのスタートという面はありましたが、何が悪かったかといえば、その環境で一歩下がって他者を上手く使ってみせる度量の無さと、自らの力を恃みに他人を見下しがちな傲慢さ、総じて、管理職としては周囲の人間を利用するのが下手すぎたところでしょうか。
そんなサラマンデスが、最後に門番カオスと生死を共にするのは結構な皮肉となりましたが、やはり、コボルダを上手く弾除けに使ってみせる、ぐらいの才覚は欲しかったなと(笑)
それはそれとして退場回ぐらい前後編にしてあげてほしかったところですが、今回も1話にまとめられ、変に薄く引き延ばした前後編を乱発されるよりはいいのですが、今作ここまで、連作風味のエピソードは幾つかあるものの、「ヒーローがピンチに陥ったまま次回へ続く形での明確な前後編」は、第11-12話と、第19-20話のみに留まっているのは、90年代に入ってからでは少々珍しい組み立て……かもしれません。
厳密に調べてみた事がないので、その内、時間を見て確認してみたいかも。
2ヶ月あまりに渡って続いた年末決戦シリーズの決着回としては不満の多い出来となりましたが、次回――メタ予告からの総集編。
……あ、カオスだけは、予想もしない面白さに化けて、良かったです(笑)
◆第44話「救急ファイル99」◆ (監督:小中肇 脚本:山口亮太)
サラマンデスを倒した巽家では大掃除や飾り付けなど正月の準備が進んでおり、『メガ』『ギンガ』に続き、この時期なぜか恒例になっていた英語詞OPで始まる総集編。
ロボの手も借りたい、と買い物に送り出していたミントに代わり、年明けの国際会議に向けた資料整理を押しつけられたマトイたち、の名目でこれまでの戦いが振り返られ、記録媒体が多分MOな事と、第1話のダイモンが父さんは「死んだ」認識だったのが、割と衝撃(笑)
……これ、上の3人の誰かが虫の居所の悪かった時にダイモンに向けて適当に「あんな奴は死んだのと同じだ!」とか言ったのでは疑惑が募りますが、そんな父さんについては、前々回の母さん誕生日やらかしと、前回のそもそも出番が少ない、のフォローの為か、妙に、父さんのマシンは凄いぜ! と、父さんは本当なこんな事を……が多い気がします(笑)
過去映像の途中途中に軽妙なタッチの小芝居を挟んでいた上3人だが、乾長官から呼び出しがかかってマトイとナガレが離脱する一方、夕暮れのガード下では、サラマンデスとの思い出を振り返るピエールが、酒に逃げていた。
そんなピエールと間接的に接触したミントが内部コンピュータの誤作動を起こして帰宅すると、これまでのハプニングシーンが次々と振り返られ、このままでは、各種コスプレや、ハニートラップに鼻の下を伸ばしていた姿が国際会議で全世界に向けて発信されてしまう、と慌てる下3人。
記録媒体を差し替えると、グランディーヌ降臨からVマーズのデビュー戦までが振り返られるが、今度はピエールのテーマに合わせてサイマ獣の活躍が次々と映し出されたのに続いて、しぶといサラマンデスの亡霊がミントに憑依?!
混乱の中、乾長官からの呼び出しは、まさかの兄妹へのボーナスもといお年玉だったマトイとナガレが帰ってくると、モンドが駆け込んできて、修正プログラムを当てる前に内部の日付が2000年を迎えてしまったミントが暴走している事が判明。
いわゆる「2000年問題」が、1999年最後にして2000年最初の“災害”として位置づけられ、
「いかん……このままでは、ベイエリアやロボット達まで、プログラムが、無茶苦茶になっちまうぞ!」
再び迫る、ゴーゴーファイブよる首都消滅の危機!
週刊誌で叩かれるどころか戸籍を買って国外逃亡しか手が無くなってしまう! と追い詰められる巽ファミリーだが、マトイの精神注入チョップにより暴走ミントが修正され、しかしその代償として資料のデータが消滅。
巽家の年越しは、家族揃って資料の束との格闘になり、ベイエリアから明日の青空に向かっていく初日の出を眺めて、つづく。
「頑張れ、ゴーゴーファイブ。地球の平和の、夜明けは、近い」
新規映像の小刻みな入れ方もテンポが良く、軽妙な総集編となり、次回――新春初夢大騒動で、色々好き勝手の予感。