『仮面ライダーBLACK』感想・第19話
◆第19話「息づまる地獄の罠」◆ (監督:小西通雄 脚本:山田隆司)
珍しく、大神官ズが揃って日の光の下を歩いているシーンから始まり……黒松が、磔にされていた。
みっともなく命乞いをする黒松は、作戦失敗により3体もの怪人が死亡した件の責任を取らされて組織内部の見せしめの為にも処刑されようとしており、ノミ怪人はともかく、勝手に派遣されてきて勝手に倒されたトカゲ怪人と、そもそも履歴書に虚偽申告があったマンモス怪人については完全に3神官サイドの不手際ですが、いつの世も上の横暴で切り捨てられるのが下っ端の辛さです。
黒松教授、風前の灯火――!
のその時、飛んできたビルゲニアが剣を振るって黒松を解放し、演出が完全にヒーローでちょっと面白い(笑)
「勘違いするな黒松。俺はただ、貴様の顔をちょいと借りたかっただけだ」
ビルゲニアはゴルゴム忍法・姿映しの術により黒松と瓜二つの姿となると、ゴルゴムを退会しようと試みるも「一ヶ月でこれだけお得ですよ?」のループから逃れられず、コウモリ怪人に襲われて負傷したように装って光太郎に助けを求め……ひとまず黒松を病院に運ぼうとする光太郎だが、拾ったタクシーの運転手はだいたい悪い奴の法則が発動。
前回ラストを受ける形で、同道していた杏子と克美が怪人出現を目の当たりにするのは物語のシフトチェンジを窺わせ、2人に黒松を任せた光太郎は変身。
ふさふさの尻尾と長い指が特徴的なオニザル怪人の、跳躍による眩惑的な動きをライダーセンサーで見切るとカウンターの一撃を浴びせて退かせ、黒松はその間に病院へ。
(黒松は信用できない。しかし信彦を助け出す為には、彼を利用するしか方法はない)
信彦の行方は、 黒松の指の爪を一枚ずつ剥いででも 僕が聞き出してみせる、と杏子と克美を病院から追い出した光太郎は黒松への疑念をしっかりと抱いており、光太郎がちゃんと頭を働かせる描写が入っているのは、(時に穴も生みますが)作品の良いところになってきています。
だが、廊下を見張っていた光太郎は病室から噴出した謎のガスに倒れ、それを見下ろす黒松の姿は一瞬でビルゲニアに。
「他愛もない。命は貰った」
剣士としての実力に自負も自身もありそうな割には、奸策に頼り寝込みを襲おうとすることに躊躇がなく、どうも、“頭を使って勝つ自分”に酔っている節のあるビルゲニアは剣を抜くが、人の気配を感じると咄嗟に黒松の姿に戻り……ゴルゴム基準なら、看護師に見とがめられるぐらい気にしなくても良さそうではありますが、「散々偉そうに言っておいて、余計な目撃者を始末するとか恥ずかしすぎて腹痛い」とかコメントされそうだと思うと、プライドが許しませんでした!
今回も、世紀王のパッシブスキル《敵に不幸なことが起きる》にいいところを邪魔されたビルゲニアは、急に腹痛で倒れた光太郎を発見した善意の入院患者(蝶ネクタイ完備)を装って場を取り繕うと、今度は医者に変装。
診察を装って光太郎に近づくが、光太郎が身じろぎすると慌てて剣を収め、諸先輩がたならここで「はっはっはっはっは、俺にそんなものが効くか!」が発動するところでしたが、世紀王は寝相で敵をビクッとさせました。
実際のところ、ガスがちょっと効いていたらしい光太郎は、目を覚ますと黒松の病室に急ぐが、人が寝ているように見せかけられたベッドはもぬけの殻。
敵を欺くにはまず味方からだよ光太郎くん、と蝶ネクタイまでばっちり付けた黒松が背後に現れ、黒松を演じる黒部進さんの出番を確保しつつ、中身ビルゲニアで面白がらせる、というのは一工夫になりました。
光太郎は海外逃亡を目論む黒松の自宅前でコウモリ怪人の監視に気付くが、
「大丈夫だ。地下室から下水道へ出られる秘密の抜け穴があるから」
と昭和の常識を語られ、2人は地下道へ。
黒松の動きを警戒しつつも、信彦の情報が入っている、と促されてアタッシュケースを開けた光太郎は、小型化して内部に潜んでいたオニザル怪人に襲われ、変装を解くビルゲニア。
「とうとう罠にかかったな」
頭を使った謀殺にこだわった末、「カバンの中から飛び出す怪人に奇襲させる」のは罠です! 私が罠と言ったら、息づまる地獄の罠なのです! とビルゲニアが主張すると、背後で流れ出す挿入歌さん(『ブラックホール・メッセージ』)も、
時には仲間を装う奴らの
巧みな誘惑 手のこんだ落とし穴
と側面支援を入れてくれた直後に
何のために 仕掛けた罠
と突き落としにかかり、木っ葉微塵にBreak down,black hole
Love and peace love and peace ……ううっ……頭が……はさておき、ビルゲニアは怪人をけしかけるだけけしかけておいて別に狭い地下道で挟撃するわけでもなく姿を消し、戦いが地上の倉庫に移ると、尻尾を掴んでのジャイアントスイングからライダーパンチそしてキックを叩き込まれたオニザル怪人は消滅。
勝利の余韻に浸るBLACKだが、倉庫の外から飛んできた炎の剣に襲われ、さすがにこれで終わりでは無いと思いたいけど勝利のテーマがかかった……? からの不意打ちは、視聴者の心理的陥穽を作り出すBGMの使い方が秀逸でした(笑)
「貴様に倒された怪人たちの恨みを、晴らしてやるわ」
四方八方からBLACKを襲うビルセイバーは、ビルゲニアの姿になると背後からBLACKの首を締め上げ、前回に続いて今回も明らかに怪人を捨て駒として使っていたビルゲニアですが、これを“本気で言っている”のだとしたら、面白い方向に化けてくれるかもしれません。
(苦しい。なんという力だ)
苦戦を糧に、これまでにない強敵としてビルゲニアを持ち上げるBLACKはバトルホッパーのアニキを召喚し、主題歌ブーストで突っ込んでくるアニキだが、盾に殴られて倒れた(笑)
予算の都合か、倉庫突入シーンにおけるホッパーブレイクがスキップされたのに続き(明らかに前方のシャッターが閉まっている映像なのに……)、必殺の体当たりを弾かれる割と衝撃的なシーンでしたが、尊い犠牲の間に体勢を立て直したBLACKは、ビルゲニアの腕を振りほどくと投げ飛ばし、反撃のキック!
だがそれもゴルゴムシールドに弾き返され、強いぞ盾。凄いぞ盾。
3万年前のゴルゴムにはまだ、匠の魂があったのかもしれません。
だったらこれだ、と生体メカなので自力で起き上がっていたアニキにまたがったBLACKは改めてビルゲニアの轢殺を試み、狭い倉庫内でバイクを乗り回すのは、ちょっとしたアクションの変化として面白かったです。
どうやら特性《バイクに強い》を持つ難敵ビルゲニアのカウンターでホッパーから転がり落ちたBLACKは、バイクで無いなら何に弱いのか、とマルチアイを発動。
これでいきなり弱点が見つかったらどうしようかと思いましたが、さすがにそれは避けられ、斬撃を辛うじて白刃取りで受け止めるもMPが枯渇し、意識朦朧としてきたBLACKは、「マシンスクラム!」の叫びにより再びホッパーのアニキを召喚。
今回も体当たりを盾に受け止められるも、驚異の学習能力でアニキが踏ん張ると、「マシンスクラム!」により同時に呼ばれていたロードセクターが現場に駆けつけ、そう、今こそ夢の、バイク合体!!
「うなれ! バトルセクター!!」
「なんだとぉっ?!」
……とはなりませんでしたが、片手に剣、片手に盾で力比べの膠着状態に陥ったその時、背後から全速力で迫ってくるもう一台のバイクに気付いてちょっと慌てるビルゲニアは、とても良かったです(笑)
「仮面ライダー、姑息な手を使いおって」
ロードセクターの体当たりを受けたビルゲニアは高い所に逃避し、死角からもう一台のバイクで轢こうとした件について弁明の余地は一切ありませんが、黒松教授に変装しての芝居について「姑息」の自覚が全く無いのだとしたら、重ねてビルゲニアが面白い方向性に飛んでくれる可能性がありそうで、ちょっと楽しみになってきました。
「この次は必ず貴様を倒してみせるわ」
剣聖は今回も捨て台詞を残して撤収し、行き詰まる……もとい息づまる罠の方はともかく、スクラム召喚によって2台のバイクの意味を出しつつ、2台を投入しても引き分けに持ち込むのがやっと、は強敵感の補強になって良かったです。
辛うじて死地を脱した光太郎は、後日、黒松教授の変死体が発見されたのを新聞紙上で知り、暗黒結社に積極的に協力し、怪人となる事で来たる新世紀に生き延びる事を望む社会の名士、として今作における悪の組織の在り方を象徴してくれた黒松教授、ここにリタイア。
回が進むごとに「大丈夫かゴルゴム怪人?」となっていったのはともかく、こういった立ち位置のキャラクターを使い切りにせずに継続出演させてくれたのは、作品世界の奥行きの表現として良い作劇でした。
退場回なので、マッドフォームを強化してはっちゃける展開も見てみたかった気はしますが、なんにせよ光太郎による直接的なチェストは難しそうなので、大神官ズの責任転嫁により切り捨てられ、闇に葬られるのは末路としてふさわしかったとは思います。
次回――ビルゲニアの職場復帰により立場の危うい大神官ズはいよいよ「ライダーに対する総力戦に踏み切った」ところに冷蔵庫に吸い込まれていく少女の映像が重なるのが大変不安を誘いますが、果たして3神官は、この行き詰まりをゴルゴムブレイクできるのか?!