今になって『ゼイラム』を見た
◆『ゼイラム』◆ (監督:雨宮慶太 脚本:松本肇/雨宮慶太)
伝説的な生物兵器――その名をゼイラム。
地球に逃亡したゼイラムを追い、捕獲しようとする賞金稼ぎのイリアとボブだが、ゼイラム捕獲の為に設置した特殊空間・ゾーンに、地球人2名が巻き込まれてしまった事から、戦いは思わぬ展開に……。
1991年に公開された、雨宮慶太の初劇場作品で、製作元によるyoutubeの無料公開で視聴。
宇宙から来た怪物vsクールな女賞金稼ぎ(&AIの相棒)という構図に平凡な地球人2名を巻き込んで展開するSFアクションで、和製SFホラーと特撮ヒーローバトルの融合を試みつつ、『エイリアン』『ターミネーター』『遊星から(より)の物体X』といった辺りがブレンドされている感じで、見所は、軽トラに轢かれてちょっと痛そうなゼイラムさん。
やはり、「轢く」は全宇宙共通のダメージソース。
それから冒頭、秋葉原の映像が、古い!
30年以上前なので当たり前なのですが、駅前の雑然としたパーツ屋など、懐かしの風景です。
物語は主に、実在の街を模倣して構築された特殊空間・ゾーン内部で展開。先進宇宙文明のオーバーテクノロジーをわかりやすく示しつつ、人どころか猫の子一匹おらず幾らでも派手に銃器をぶっ放していい、戦闘と撮影に都合の良い設定から、その出入りをストーリーの軸とするのは妙味があった一方、ゾーンに入り込んでしまう男2人にこれといった好感度上昇要素が与えられないので、2人が助かるか否か、のサスペンスはどうにも弱め。
まあ勿論、死んで欲しいというわけではないですし、さすがに後半に入ってくると、後進文明のサルどもとは喋ってはいけないルール、を貫いていたイリアも態度を和らげ(見捨てようとはしない姿勢は一貫)、状況を説明すると互いの協力関係も生まれていき、ドライなAIボブも説き伏せる……といった要素も入ってくるのですが、映画として主なフックになる部分だけに、もう少し地球人2名に好感度の持てる作りにしてほしかったなと。
特に前半は、地球人2名(中年と青年の電機会社の同僚)のパートになる度に「話の緩急」というレベルで無しに、視聴意欲が下降するのは辛いところでした。
恐らく、この2人がひたすら凡人として描写され続けるのはホラー映画の文脈の取り込みがあって、「映画のスタッフ?と勘違いしてゼイラムに話しかける」「怪しい宇宙食?を不用意に食べる」「軽トラで轢いた後、油断してしばらく放心」「慌ててシートベルトが外せない」「ショベルカーを持ち出すも肝心なところで停止」といった辺りは皆、“これがホラー映画なら×回死んでる”みたいな狙いを感じるのですが、あまり面白くは受け止められず。
合わせて、最初から最後まで終始、事態への真剣味が薄かったり、肝心のところでへっぴり腰だったり、2人の凡人ムーヴによるくすぐりを入れ続けるのですが、このセンスが合わなかったのは、だいぶマイナスでありました。
異常事態を簡単に受け入れられず、凡人ゆえに「判断」も「行動」も遅い、のはリアルではあるのですが、さすがに終盤になってくると、いやもう、そこはさくさく進めてほしい……となってしまいましたし。
この辺り、予算が潤沢に見えないながら劇場公開作品として90分はフィルムを作りたい都合、も垣間見え、1シーン1シーンを薄く引き延ばす傾向が強くて全体的にもう一つテンポが良くない為、イリアパートと凡人パートを交互に描く構成も、効果が弱くなっているのは残念でした。
三度笠のようなものを頭部に据えたゼイラムは、今作の“顔”としてデザインも造型も迫力があり、特に笠についた顔は本当に気持ち悪いのですが、それが白塗りの女性の顔なのは、凄く雨宮節を感じました(笑)
ゼイラムの登場シーンで背後に読経が鳴り響くのもインパクト抜群で、音楽の使い方は今作の良かったところ。
イリアパートの、テンポよく打音を繰り返す曲も緊張感を高めましたし、“シーンに合わせて音楽を作る”というよりも“限られた音楽が効果的になるように一定のリズムを画と合わせる”のは、上手い工夫でありました。
見た目に対する足音の重さで、機械的なボディを主張していたゼイラムが、ハリーハウゼンを意識したと思われるストップモーション・アニメのスケルトンモードになったり、本体がひっくり返ってグロテスクな異形と化したり……の3段変形は、やりたい事をやれる範囲で詰め込みました感は出ましたが、“怪物”として十全の仕事ぶり。
……Xモードがバリケードの下敷きにされてバタバタしているのは、ちょっとどうかとは思いましたが、そういった、B級ホラー感(?)を楽しむツボは私の中に無かったようで、そこが楽しめたら、またちょっと違ったかもしれません。
個人的に一番印象に残った台詞は、
「すまない。高さを間違えた。上だ」
すまないじゃすまないよボブ!
趣味としては、もっとヒーローフィクションの方に軸足を寄せてくれた方が好みでしたが(基本はホラー側だな、と)、ネームバリューのある作品を、この機会に見られて良かったです。
Beniさん、ご紹介ありがとうございました!