『仮面ライダーBLACK』感想・第14話
◆第14話「マグロが消えた日」◆ (監督:小笠原猛 脚本:山崎久)
「奴を倒すには、最強の怪人を差し向けねば勝てぬ」
ゴルゴムはBLACKへの刺客として冷凍パワーを誇るマンモス怪人を目覚めさせ、そこにかかる「かもめが翔んだ日」みたいなサブタイトル……今、光太郎よりもマグロが危ない!!
……もう少し、入れるタイミングがあったと思うわけなのですが。
サブタイトルからも明らかに掴みの一当たりで、緊迫感の削がれる奇襲を受けた光太郎は、ジャンプ変身からライダーチョップでまずは一撃。
マンモス怪人の冷凍ガスに追い立てられるも、慌てず騒がず間合いを取ると、投げつけられたドラム缶を踏み台にしてライダーパンチを顔面に叩き込み、最強の刺客マンモス怪人、奇襲からちょうど1分で撤収。
「ぬぅぅ……怪人の中で最強の強さを誇る、マンモス怪人が敗れるとは」
早くも絶望しかないゴルゴムだが、怪人の強力な栄養源となるタウリンエキスを黒松教授が開発しており、全身の倦怠感にとてもよく効きそうです。
ゴルゴムがタウリンエキス製造の為に原材料となるマグロの買い占めに走る一方、光太郎がマリン喫茶に帰ると、店には「近くのお寿司屋さんの子」が遊びに来ており、最初、「四国のお寿司屋さんの子」と聞こえて、マグロと絡める為ならなんでもありだな……と思ってすみませんでした。
しじゅう走り回っている光太郎に代わり、便利な人脈ステーションと化してきたマリン喫茶では少年の父がマグロ抜きの握り寿司をお礼に振る舞い、さすがの光太郎も「おのれゴルゴム。美味しいマグロを買い占めるとは、許せん!」と不審を抱くには至らず、秋月家では赤身はマグロに入らないのです。一周回って、玉から入って店主の腕を確かめます。
光太郎のおのれゴルゴムセンサーが不発に終わる中、そのゴルゴムではマッドフォームの黒松教授がマンモス怪人にタウリンエキスを注ぎ込んでおり、ファイト・いっぱーーーつ!!
マンモス怪人の再起動に気をよくした神官トリオは、ゴルゴム怪人強化計画の為に、マンモス怪人に次々とマグロの冷凍倉庫を襲わせ、自らトラックを運転して窃盗に勤しむ黒松教授(笑)
先日だいぶやらかしたのでチンピラを雇う予算も下りず、ゴルゴムへの奉仕も一苦労です。
かくして市場からマグロが消えると、怒りの寿司屋はプロテクターと金属バットで武装してマグロ倉庫の前で張り込むが、現れたマンモス怪人にコミカルな間合いから金属バットを叩きつけるも通用する筈がなく、荷物の下敷きにされて大怪我を負い……1クール目ならまず確実に死んでいたというよりも、ほぼありえないシチュエーションとなり、初参戦の小笠原監督が味付けを間違えた可能性もありますが、「怪人が喋った」以上に、後戻りできない一歩を踏み出した感(凶行はコミカルなのに怪我の様子は割と酷いのも、咀嚼に困るアンバランスさ)。
ただ、病室で父親に対しては明るく笑顔を向ける寿司屋の少年が、光太郎の手をぎゅっと握りしめて不安な心の裡を示し、それに気付いた光太郎が笑顔で少年を励ますのは、良い演出でした。
(なぜ、ゴルゴムはこんなに多くのマグロを必要とするのだろうか……)
――「ふふふふふふふふ……意図が掴めないだと。愚かな人間どもめが」
まさか怪人用リポビタンDを自家生産しようとしているとは、夢にも思いませんね!
一歩間違えると、そんな組織のトップに立っていたかもしれない光太郎が、ゴルゴムの発想の理解に苦しむ中、杏子と克美は、母の命日に沈む寿司少年を連れて海へ。
杏子と克美が唄っている、という体裁で女性ボーカルバージョンのEDテーマが流れ始めると、冬の海を見つめる3人の姿に、第2話を中心とした“平和だったあの頃”の回想シーンが幾つか差し込まれ、Aパートは元より1クール目からもタッチの飛躍が激しく、だいぶ困惑する演出なのですが、横の女性2人が急に海に向けて唄い始め、どうすればいいのかわからない少年の気持ちにマグロが翔んだ。
最終的には3人が冬の海に向けて叫び、信彦の存在を定期的に強調したいのは痛いほどわかるのですが、少年の亡き母への想いと、杏子と克美の信彦への想いに重なる部分が薄いのでポカンとしてしまい、前回にしろ今回にしろ、全体のオーダーらしき要素(「バトル回想と特訓」「信彦絡みの回想」)とエピソード個別の要素が有機的に連動していないので、物の見事にとっ散らかってしまっています。
一方、《通りすがりの立ち聞き》スキルを発動した光太郎は刑事に誤解されてマグロ情報を入手するとバイクを走らせるが、その前に24時間戦えるようになったマンモス怪人が立ちふさがり、地形さえ変えるパワーを発揮。
がっぷり四つからの電車道で押し潰されそうになるBLACKだが、柔よく剛を制すと巴投げで形勢逆転し、劣勢となったマンモス怪人は、タウリンエキス製造施設まで逃げ込むと「エキスだエキスだ!」と地道な労働に勤しむ黒松教授を押しのけ、どうして、そういう時だけ、喋るのか(笑)
後を追ってきたBLACKに計画がバレてしまうと、再びファイト一発したマンモス怪人の流れ弾が製造施設を吹っ飛ばし、ゴルゴム怪人に本当に必要だったのは、タウリンではなくドコサヘキサエン酸だったのかもしれません。
冷凍ガスと氷柱ミサイルの連続攻撃により窮地に陥るBLACKだったが、両手首と胸の縞々(ナレーションの聞き取りに自身が無いのですが「パワーストライプス」?)に蓄えられていたエネルギーを放出する事で氷を消し飛ばすと、牙を叩き折ったマンモス怪人にパンチとキックを打ち込んで撃破し、完っっ全に、V3・26の秘密と同じ作劇。
脚本の山崎久は、東映ヒーロー作品では70年代を中心に活躍していた田口勝彦監督(それこそ『V3』にも参加)の筆名との事ですが、2クール目早々、強烈な先祖返りといえる展開となり、このまま路線変更の荒波に押し流され、気がつくとオヤジさんとコメディリリーフと賑やかしのライダーガールズと子役レギュラーに囲まれる事になってしまうのか南光太郎よ?!
ナレーションさんも、新しい言い回しを急ピッチで検討中かもしれません。
黒松教授は大神官のお仕置きビームを浴び……今回に関してはどう考えても悪いのはマンモス怪人ですが、やられ方までコミカルで、もはやレギュラー三下チンピラのような扱いに。
そして、常人にしてはあまりにも快復が早い寿司屋の店主に大トロを振る舞われ、舌鼓を打つ光太郎たちの姿で、つづく。
第14話にして、6人目の監督、7人目の脚本家となりましたが、路線修正の気配と、次から次への初登板が重なって、すっかり迷走の気配が漂います。
そろそろビシッとネジを引き締め直すエピソードが欲しいところですが……次回――凄まじいまでの“如何にも”感(笑)
これは、上原大先生本人なのか、それとも、そろそろ荒川さんか……?
※ちなみに、今作同期の《スーパー戦隊》となる『光戦隊マスクマン』『超獣戦隊ライブマン』はいずれも、監督3人・脚本3人で1年間を回しており、制作体制やプロデューサーの方針など様々な要因が絡むので、どちらが良い悪いというものではありませんが、実に対照的。
《戦隊》は《戦隊》で勤続疲労による問題を生みますし、もしかすると他シリーズとの兼ね合いでしわ寄せを受けてそうなっていたのかもしれませんが、結果としてはこの異様に盤石な体制がシリーズとしての作劇を研ぎ澄ましていき、80年代戦隊の集大成といえる『ライブマン』の完成に至ったのは、歴史の綾として面白いところです。