『救急戦隊ゴーゴーファイブ』感想・第34話
◆第34話「死 さもなくば 破滅」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:小林靖子)
サラマンデスは、花粉サイマ獣・バイラを送り出し、うちのサイマ獣は兄上たちのとはここの出来が違うぜ、とおつむを指さすサラマンデス、今、私が心配なのは、君のそこの具合だサラマンデス。
頭脳派として立ち回りたいディーナスとサラマンデスの視線が火花を散らす中、サボテン災魔の罠にはまったゴーゴーファイブは、成長すると、あらゆるものを腐らせる花粉を放つ呪いの荊に寄生されてしまい、地球破壊爆弾ならぬ人類破滅爆弾にされてしまう!
「一つだけ、それを防ぐ方法がある」
「なに?!」
「焼き尽くすのだよ――おまえ達の、体ごとな。……花粉をばらまき、地球を滅ぼすか。自ら命を絶って地球を守るか。道は二つ」
ブレスに絡みついた荊によって着装も封じられ、体内に張り巡らされた根により外科手術による除去も不可能。唯一、悪魔の花を切除できるのは、破滅の花粉を放出しきった後のみ。
「……災魔にしちゃ、出来すぎだぜ!」
死の呪いを刻まれた兄妹は新型除草剤に一縷の望みを賭けるが、それも入手前にサイマ獣に破壊されてしまい、外部の協力が描かれる今作らしい描写から、除草剤を運搬してきた人たちさえ泡を食って逃げ出し、取り残される5人と開き始める花が、凶悪な画。
「言ったろう? 道は、二つ。死、さもなくば、破滅」
直接交戦を徹底的に避けるサボテンは姿を消し、開花予想時刻まで、残りはいよいよ1時間以下。
「命の重さは測れねぇっつても、俺たち5人と地球全部じゃよ」
弟妹を車に乗せたマトイは、全員焼死の覚悟を固めて、密かに持ち出していた特殊な爆薬を手に取り……「迫り来る死のタイムリミットでヒーローに極限の選択を迫る」という今回のプロットは、小林靖子の戦隊デビュー作である『電磁戦隊メガレンジャー』第16話「激ヤバ! オレたち 死ぬのか?」(監督:辻野正人)を彷彿とさせるのですが、『メガ』の時は「学生戦士ゆえのメンタルの弱さに踏み込んで、メンバーのパーソナリティを引き出す」作りだったのに対して、「プロフェッショナル集団の生き様」にフォーカスした今回は、狙いが違うとはいえ“個人の感情”が見えない点に幾分の物足りなさがあったところから
「あたし死にたくない!」
とマツリが車を飛び出していったのは、良いツイストでした。
「死にたくない……ゴーゴーファイブがそう思っちゃいけないの?!」
今作十八番、メインの武上脚本が番組の必須要素を担当している合間に、小林脚本が割と好き放題、が炸裂して“ヒーローである前に生身の人間”としての生への渇望が迸り、今作における小林脚本にはやはり、ゴーゴーファイブを素材として様々な角度から「ヒーローとはなんだ?」を描こうとする狙いが感じられます。
死に怯えるヒーローの姿を持ってして、「ヒーロー」と「人間」の距離感を問い直す主題については、シリーズでは『鳥人戦隊ジェットマン』という金字塔が存在しますが、それも含めて90年代東映ヒーローのアップデートをコンパクトに濃縮還元している、といった節もあり。
ずっと無言だったマトイは爆薬をポケットに収めて立ち上がり……
「……らしくねぇかやっぱり。俺たち、救急戦隊だもんな。自分の命救っても……かまわねぇよな」
救急戦隊が“命を諦めないヒーロー”であるならば、その“命”の中には、自分たちも入っていい、いやむしろそうあるべき、と極限の選択を前にあるべきゴーゴーファイブとしての姿をもってして「ヒーローの理屈」でひっくり返しにいくのが綺麗に収まり、「人間としての弱さ」を描いたからこその跳躍を持って、ここからはヒーローのターン!
「俺達が要救助者、てことか」
「最後の瞬間まで諦めないのがレスキュー!」
「その通りだ」
変身を封じる事で“人間としてのギリギリ”をあぶり出し、その末に“ヒーロ-”がブレイクスルーを起こす組み立ては第13話「弟たちの反乱」と重なるのですが、ヒーローもまた人間であるならば、人間の自分をヒーローの自分が救おうとする事で、“人の叫びにヒーローが応える”構図が成立しているのが、味があります。
裏を返せば、“誰の心にもヒーローとしての自分が居る”のかもしれず、それが時に他者を、時にはかつての自分自身を救うのかもしれません。
俺達の戦いは常に逆境! 沈みがちだった顔を上げ、青い空を見上げたナガレにその時、天啓ひらめキング。
「…………宇宙だ!!」
……この布石としてのマツリの「この青い空と、緑の大地と、別れるのなんて嫌!」は、ちょっと作風から離れた台詞回しでくさくなりましたが(穿った見方としてはそれこそ、『ジェットマン』オマージュ……?)、空から宇宙への連想そのものは綺麗に繋がり、花粉放出予想まで残り10分、5人はモンドにライナーボーイの出動を要請すると、緊急打ち上げ。
「宇宙を墓場に選んだか。終わったな」
サイマ獣が余裕で見上げる中、5人を乗せたライナーシャトルは大気圏を脱出し……なんの説明もされないまま殉職の危機に陥っているライナーボーイですが、これが末弟の運命です。
一同はそのまま、人間は真空状態でも即死するわけではないのだ、と一か八か開いたハッチから花粉を宇宙空間に放出する大ばくちを打つと、内部映像の途絶を挟んでサスペンスを煽ってから、もはやゴーゴーファイブは死んだ、と破壊活動を開始したサボテン災魔の前に帰還。
「俺たちは往生際が悪くてな」
「花粉も荊も、宇宙できっちり処分させてもらったよ」
宇宙空間に放出した花粉をライナービームで焼き払う映像がしっかりと入り、
「今度はこっちが道を選ばせてやるぜ!」
「戦うか、逃げるか!」
「どっちにしても、災魔は倒す!」
は、台詞を5人に配分しつつヒーロー逆転の啖呵としてバッチリ決まり、顔見せフル名乗りから、ゴーゴーファイブ出場!
……決めどころなのに、背後の挿入歌が戦闘のテンポと全然合っていないのが大変気になりますが……これ、兄妹が唄ってる……?
「俺たちはもうぜってぇ死なんか選ばねぇ! ……選ぶのは災魔、てめぇらの方だ!!」
赤がノーガード戦法からサボテンの顔面にパンチを叩き込むと、連携攻撃にVモードパンチから、ビッグV落としでサイマ獣を滅却。サボテンが強化するとサラマンデスは暗黒災魔ゾーンを展開し、マーズマシンが召喚されると、今度こそ主題歌(英語バージョン)だ!
ビクトリー腹筋して顔に空気が入ってポンと膨らむとビクトリーマーズが立ち上がるが
ナレーション「サラマンデスが作り出した、暗黒災魔ゾーンは、サイマ獣のパワーを、十万倍に高めるのだ」
紅く染まった空に白い閃光が走ると、落雷と爆発が起きてVマーズが火の手に囲まれるのは迫力のある画となり、しかし、これが、これこそが、レスキュー魂を奮い立たせる逆境だ!!
「今日の俺達は! 誰にも止められないぜ!!」
基本、逆境こそ平常運転であるゴーゴーファイブには、暗黒災魔ゾーンは致命的に相性が悪く、Vマーズはノーガード突進から救急シャトルミサイル、そしてX返しの怒濤の電車道により完勝を収めるのであった。
死線をくぐり抜け、帰宅した5人を研究所の方でモンドが待っている姿はしんみりとさせ、5人と父の再会に尺が割かれるのは、良いラストシーンでありました。
次回――予告映像の情報量が多すぎて目移りしますが、果たしてディーナスは知謀の煌めきを見せることができるのか?!