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ゴルゴム最先端

仮面ライダーBLACK』感想・第9-10話

◆第9話「ビシュムの紅い唇」◆ (監督:蔦林淳望 脚本:宮下隼一)
 「笑わせおって。なにがファッションと若者の街だ」
 お気に入りのローブをSNSで笑い物にでもされたのか、今回は原宿(劇中では名前は出さず)の街に因縁を付けるゴルゴム
 ビシュムの指揮によりハチ怪人の操る大量の毒ハチをペンダントに仕込んで原宿を死の街に変えようと目論み、見所は、空中伸身ひねりでお尻の針を向けてくるハチ怪人。
 動く顎の造型がよく出来ていて実に気持ち悪いデザインでしたが、見た目の面白さとハチっぽさを融合したこのアクションが秀逸でした。
 「喜ぶがいい。今からおまえは我がゴルゴムのしもべとなり、人間どもの驕りを叩き潰す、栄えある尖兵となるのだ」
 ビシュムは、原宿の街でダンスパフォーマンスを行う少女・エツコをゴルゴムに引きずり込み、“普通の若者らしさ”を狙う一貫でか、第2話ラストで見つめていたように「原宿がホームグラウンド」という東映ヒーローでは珍しい設定の光太郎(これに対抗するのは「新宿がホーム」だった『超光戦士シャンゼリオン』ぐらい……?)は、女性2人のショッピングに付き合わされている間、サラリーマンのごとく新聞を広げて怪事件をチェックしていた。
 ブティックを背に新聞を広げて立つ姿の浮き加減で、だいぶ面白ポイントを稼いできました光太郎。
 「聞け。これは恐らくゴルゴムの策略に違いない」
 新聞記事の内容から、謎の熱病とペンダントの関連性に気付く光太郎だが普通に頭のおかしな人扱いを受けて孤独な戦いが強調され、こういった作劇そのものは昔からありますが、「一般市民が悪の組織の存在を無邪気に受け入れてくれない世界」である事を改めて明示。
 光太郎は、ペンダントを配布する中心的になっていたエツコを追いかけ、歩行者天国を大胆に取り込んでの逃走劇など、往年の刑事ドラマっぽい画作りには近年には見られない面白さがあったのですが……「悪の組織がキーアイテムを配り歩く」パターンのアレンジとして『BLACK』流に「憎悪に身を焦がす一般人をそそかして手駒」にしてはみたものの、 インベス ダンスバトルの敗者であるエツコのグループがペンダントを効果的に配れる説得力が薄く、当時の若者文化を取り込んだのかと思われるダンス要素は、最後までエピソードをがたつかせる事に。
 ハチ怪人の襲撃を受けた光太郎がエツコを見失っている間もペンダントの拡散は止まらず、BLACKの介入を阻もうとするビシュムの罠に、見事はまってしまう光太郎(ビルの屋上へと光太郎が駆け上がるシーンで使われるBGMが、毎度サスペンスを煽って格好いい)。
 「30分経つと、ペンダントの毒蜂は孵化して、愚かな人間どもを刺し殺してしまうのだ」
 要所で結構な数のエキストラを用いたり、歩行者天国の様相を随所に差し込んだりと、「人」と「街」の表情を効果的に使っていたエピソードだけに、惨劇の未来がイメージイラスト1枚にされたのは(仕方ないとはいえ)ガックリ来ましたが、これを見て自分が恐ろしい事に手を貸したと知ったエツコが飛び出してくると、ペンダントの真実を広めようと走り出す。
 エツコの仲間2人は地上に危機を知らせようと叫ぶもハチ怪人に襲われた所を光太郎に助けられる……も結局ペンダントの毒蜂に刺されて倒れ、エツコはペンダントを外そうとしてライバルダンスチームと揉め、ゲストも反省してそれを行動に移したので、後はすっきりとクライマックスに持ち込んでほしい流れで、
 ・二つのトラブル(無為に終わるヒーロームーヴ)
 ・一つのシーン移動
 ・主人公の一時消失
 を起こしたのが、だいぶテンポを悪くしてしまいました。
 「ゴルゴム許さん!」
 光太郎は怒りの変身し、場面が変わると、荒野をバトルホッパーで激走していた(笑)
 えええ?! と思ったら、ハチ怪人がエツコとライバルをさらって前方を飛んでおり、バイクの疾走感とかは凄いのですが、展開としてはだいぶわけのわからない事に。
 何より今回は、“生きている街の中”で展開しているからこそ面白いエピソードだったので、戦闘の都合で無人の荒野へ移動してしまったのは、あまりにも台無し。
 そういった移動の例自体は山ほどありますが、ここまで積み重ねてきたものを集約するべきクライマックスで、逆に力強く粉砕する事になったのは、大きな痛手になりました。
 BLACKによって助けられたエツコとライバルだが、逃げようとするその前に巨大ハチの巣とビシュムが浮かび上がると、すっかり魔空空間ノリでハチの巣へと吸い寄せられ、宙に浮くライバルの手を咄嗟にエツコが掴むのは“人間的”ではあるのですが、この2人の過去の関係が掘り下げられているわけでもなく、ライバルについては感じ悪くて暴力的な面しか描かれていないので行間を定番で補うにも限度があり、2人の無事を巡るサスペンスがほとんど機能していません。
 背後では、BLACKとハチ怪人が妙にのたのたと戦う内に、原宿壊滅までタイムリミットはあと5分。
 「時間が無い。時間が」
 挙げ句、2人を助けようとしたBLACKが背後からハチの攻撃を受けている内に、エツコとライバルは結局ハチの巣の中に吸い込まれていき、サスペンス要素もただの時間稼ぎと化すと、ヒップニードル攻撃に苦しむBLACK。
 (あれだ。あの針を狙うんだ)
 “最大の武器は最大の急所”の原則を思い出したBLACKが、おもむろに主題歌に乗せたライダーパンチそしてキックであっさり逆転勝利を収める冴えない決着となり、ハチ怪人が太陽パワーで溶け去ると、毒バチペンダントは自壊。作戦失敗したビシュムは撤収し、巨大ハチの巣から投げ出されたエツコとライバルは、死の淵を覗き命の尊さを知った事で和解し、とにかくこの2人に好感の生じる要素が無い為に、サスペンスも着地点もどうでも良くなってしまったのが残念でした。
 内容も映像も、徹底した“都市型エピソード”の切り口は面白かっただけに、それを最後まで活かしきれなかったのと、ゲスト(ダンス)要素の雑さが、勿体なかった一本。
 「誓いを新たに、仮面ライダーBLACKは走る! 走る!」
 ただ、ナレーションさんは、どんどん面白くなっていくな……!(笑)
 次回――黒松再び。
 そして中田譲治

◆第10話「信彦はどこに?」◆ (監督:北本弘 脚本:内藤誠
 マリン喫茶の東堂先輩が第2話以来の登場となり、光太郎たちとドライブ中に目の前で交通事故が起こるが、そこに現れる、早すぎる救急車。
 背後にあったのは、計画的に交通事故を引き起こし、患者として入院させた若者たちをゴルゴムに従うテロリストに育て上げようとするドクター黒松の策謀であった!
 「今度の黒松教授は、どうやら期待して良さそうだな」
 人員集めは順調ですが、ずぶの素人を破壊工作員に育成するのは、これからです……!
 「人間同士が相討ち、テロがテロを生む、世界戦争を続発させる事だ」
 「弱肉強食の世界戦争の結果、人類の大半は滅び、我々が淘汰する手間が省けるわけだ」
 暴走族ハンター作戦が失敗に終わったので、やはり夢は大きく持とう! と国際紛争の誘発を目論むゴルゴムは、作戦のサポート要員としてトカゲ怪人を目覚めさせ、これまた造型が大変気持ち悪い。
 一方、さすがに偽救急車と行方不明者の続発が新聞記事になると光太郎はゴルゴムの暗躍に思いを馳せ、第2話の誕生パーティから遡って、社会的地位や名声を持つ人物が密かにゴルゴムに与している点が改めて強調されたのは良かったのですが、さして高そうでもないマンションに「月影ひより」の表札を堂々出していた月影ひよりさんが、本当に人気女優だったのかも、改めて気になって仕方ありません(笑)
 黒松や大宮の身辺を洗おうとするもガードが固く、まだまだライダーの力を使った不法侵入まで思い切れない光太郎だが、偶然にも偽救急車を目撃。
 追跡しようとするもトカゲ怪人に阻まれて逃走されると、東堂と示しあわせて偽の交通事故を起こし、被害者として敵の懐に入り込む作戦は相手が東堂だからこその使い方にもなって、なかなか面白く……
 「この病院で傷の手当てをしたら、一暴れしてみないか?」
 「……暴れられるんですか?」
 治安が、大変、悪かった。
 黒松の手駒である偽救命士の男・杉山(演:中田譲治)の勧誘プロセスが、ヤンキー高校の番長グループすぎて戦慄しましたが、首尾良く愚連隊と認められた光太郎は、血気盛んを持て余す若者たちを集めた、ゴルゴムコマンドー育成キャンプへの潜入に成功する。
 (今度こそ計画を成功させ、誰よりも早く怪人にしてもらわなくては)
 遠くからキャンプを見つめる黒松の呟きは、ゴルゴムに与する者たちの願望として面白いのですが……集めた人員の「怪我の治療を受けて甘言に惑わされた」が「迷彩服を着せられて本格的な軍事教練を受ける」理由付けとしては弱く、前回にしろ今回にしろ、古典的な悪の組織の作戦(「呪いのアイテム配布」「殺人部隊結成」)を、人の心を操る『BLACK』風に味付けすると共に作戦プロセスに一工夫を加えてアップデートしようとする狙いはわかるのですが、そうやって“操られる”側の書き込みが甘いので、かえって全ての説得力が下がる落とし穴にはまってしまっています。
 社会的には「入院そのまま軟禁」について若者たちがむしろ歓迎ムードなのは、冒頭の暴走行為が「社会における居場所の無さ」を暗示しているとは取れますが、本気で全体をアップデートするならば、そこをこそ掘り下げなくてはいけない部分を“行間は定番で補って下さい”で片付けられてしまうので、訓練キャンプに勇んで参加している姿が非常に飲み込みづらくなり、暴走族ハンター回と足してかき混ぜるとまだ丁度良かったかもしれない味付け。
 迷彩服姿でのスパルタ訓練シーンにかなり長々と尺が採られるが、結局、若者達が次々と音を上げると、前職は海外傭兵部隊にでも所属していたのか杉山のサブマシンガンが火を噴き、杉山については「妻子ともども事故の治療を受け、職まで世話された」と黒松に従っている理由は付けられているのですが、それにしても、コマンドー部隊の教官も兼ねているのは謎すぎます(笑)
 まあ、杉山を手駒にする時点からゴルゴムの手は入っていそうなので、国防関連の経歴の持ち主と捉えても良いのですが……つまり、話のディテールと展開の説得力を引き上げるならそこ! の部分の掘り下げがものの見事に欠落しており、今作ここまででそれがしっかり出来ていたのが、鷺山脚本のヴァイオリン回という事に。
 前歴についてはまだともかく、誘拐や過酷な訓練について杉山がどう考えているのかも全く描写されない為、それまで15分あまりは完全にネジの外れた人だったのに、光太郎の根拠ゼロの「あんたにそんな事は出来ない」のハッタリに負け、黒松が姿を見せるとさしたる契機も心の動きも感じられないまま、光太郎の説得を受け入れるのが完全に意味不明。
 あくまでもゴルゴムに抱き込まれた根は善良な人、と主張するには、明らかに事故を引き起こしていた側の人なわけですが。
 派手な雷鳴と共にトカゲ怪人が現れると一同逃走して光太郎は変身し、貴様の急所はそこだ! とチョップで尻尾を切断するが、トカゲだけにしっぽが再生。
 得意の勝ちパターンを封じられたBLACKは噛みつき攻撃に苦しめられるが、ホッパーのアニキを召喚してトカゲを撥ねると、主題歌をバックにオフロードアクションで逃げるトカゲを背後からバイクで追い詰めるのが邪悪すぎる画で、世紀王様のお通りじゃーーー。
 進退窮まったトカゲ怪人に顔面パンチ! そしてキックを叩き込み、トカゲ怪人は消滅。
 「ありがとう、バトルホッパー
 本日も、相棒に向けて力強くガッツポーズを決める仮面ライダーBLACKは改造人間である。その戦いは孤独なのだ!
 黒松の支配を脱した杉山は妻子と共に田舎に帰ることになり、「ゴルゴムを憎んで人を憎まず」は今作の基本スタイルではありますが、偽救命士として誘拐を繰り返し、訓練生に向けて実弾をぶっ放し、黒松への恩義に縛られてとはいえ違法行為を承知の上での活動に苦渋を滲ませる描写がまるで無かっただけに、お咎め無しに据わりの悪さは漂い、全体的に、杉山の心情描写が不足しすぎて説得力の出ない一本でありました。
 まあ、時代劇になぞらえれば「江戸所払い」、といった始末でありますが。
 ここまでの『仮面ライダーBLACK』、シリーズ従来作でも見られたような古典的な作戦を、展開に一ひねりを加えたり世相と関連づけるなどして当時的にアップデートして描こうとするのが基本スタイルといえますが、「作戦内容を社会的要素と積極的に繋げる」のならば、「それに伴う人間の心情や背景」も相応にリアリティラインを引き上げなくてはならないのに、しばしば後者が欠落している為にバランスを崩してしまい、前回-今回は、その落とし穴に見事にはまったパターンとなってしまいました。
 過渡期の作風ゆえの産みの苦しみといった面はあり、改善を期待したいところでありますが、次回――ゴルゴム食糧難!
 人類の食糧危機を目論む悪の組織は数多くありましたが、人類より先に食糧危機に陥る悪の組織は大変珍しい気がします。