『仮面ライダーBLACK』感想・第8話
◆第8話「悪魔のトリル」◆ (監督:蔦林淳望 脚本:鷺山京子)
タルティーニの「悪魔のトリル」のエピソードになぞらえながら(今作オリジナルではなく、実際にある楽曲とそれにまつわる逸話)、ゴルゴムは優秀なヴァイオリニストを探しており、試験に落第したヴァイオリニストに襲いかかるセミ怪人様は、今回も扉の後ろでじっと待機しておりました。
なにぶん寿命5万年なので、数時間の棒立ちぐらい、体感ではほんの一瞬の出来事です。
悪魔の画を背景にぐっさりと針を打ち込まれた女が、楽譜と共に地面に倒れた姿にサブタイトルがかかるのは印象的な掴みで、本日も バイクでフラフラしていた 信彦の行方を追っていた光太郎は、公園で奏でられるヴァイオリンの音色に足を止める。
そこに飛んできた紙飛行機は、公園の脇に立つ病院に入院中の少年から、ヴァイオリニストの少女・ユリに送られてきた手紙、というのは洒落ており……
「音楽――愛と夢と美を奏で、安らぎと希望を与える? ふん、戯言だ」
「人間が美しいと思い込んでいる音楽を、恐ろしい音波に変えよう」
今回も人類文明への嫌がらせを目論むゴルゴムは、オーディションに落ち、失意のユリに悪意を囁きスカウトすると、ユリの奏でるヴァイオリンの音色は、セミ怪人によって増幅され街中を破壊音波として襲う!
「やめろ! 君はゴルゴムに操られている!」
断言早いな光太郎(笑)
シリーズ過去作のみならず、東映ヒーロー諸作と比べても、悪の組織の気配に対して激しく前のめりに噛みついていく光太郎ですが、境遇に当然の心理的余裕の薄さと、それを共有できる存在の居ない孤独さ、の現れの一つとはいえそうです。
過去作ならば、喫茶店で新聞でも見ながら、おやっさんポジションと「こいつはもしかして……」と視線を交わすみたいなやり取りが省かれているわけですが、シリーズとしては、アマゾンにおける「隔絶」や、ストロンガーにおける「“事件の起きているところ”に乗り込んでいく風来坊ロードムービー形式」といった工夫を経て、“人の理の外に居る本質的な孤独”を如何に示していくのか、への今作の意識が窺えるところ。
……改めて、後の『ファイズ』のオルフェノクは、シリーズ史をよく踏まえた設定だなと思うわけですがそれは余談として、頭に変なバンドを身につけたユリのバイオリンが殺人音波と化すと、耳を押さえて苦しむ光太郎の背後にいつの間にやら迫るセミ怪人、は面白い映像で、初見の監督でしたが、正調ホラー演出を交えた、怪人の見せ方は秀逸。
長い口吻を針のように突き出し、セミビームを放つ怪人に対して変身する光太郎だが、怪人に与えたダメージがユリにも伝わる悪魔の同調に気付いて躊躇している間に姿を見失ってしまう。
紙飛行機を拾わすに逃げ出したユリを追いかけた病院の少年がゴルゴムのアジトに辿り着き、代わりに建物内部へ侵入した光太郎だが、そこでは選りすぐりのヴァイオリニストたちの手による悪魔のレコードが録音中。
今回も《説得》ロールを試みる光太郎だが、ユリの心は芸術の世界に絶望して真っ黒な復讐心に塗り固められており、別室に居るゴルゴム背広組が、あくまでシルエットのまま光太郎に語りかけるのも、良い演出でした。
「ユリちゃん……君は音楽の素晴らしさが…………わかる人なんていないっていったね」
殺人音波に苦しみながらも、胸のポケットに入れていた紙飛行機を投げると、足下に落ちたそれを見た、ユリの演奏が止まる。
「君は毎日、ヒデオくんが早く良くなるようにと……祈りを込めてヴァイオリンを弾いていた。ヒデオくんにはそれがわかっている。そして君にもだ。だから君は今日、公園に行ったんだ」
イベントアイテムによりダイス目を+5した光太郎の言葉はユリの迷いをつき、超能力スパイ回では、透視能力者にされた画家たちの、画業へのこだわりが完全に漂白されて話に全く絡んでこないのも物足りない点でしたが、今回は、純粋な音楽への想いと、それを受け取ってくれた少年との関係が、ゲストの心中の葛藤に繋がったのが綺麗な流れ。
大神官の言葉を用いる事により、大仰な物言いにも違和感なく、このエピソードにおける「音楽」とは何か――「愛と夢と美を奏で、安らぎと希望を与える」ものだと先に示しているのも、効果をあげています(今回のかなり巧かったポイント)。
ヴァイオリンの弦を取り落とすユリだが、スモークと共にガラスの向こうに不気味なシルエットを現すセミ怪人が、ヘッドバンドの洗脳を強化。
再び奏でられる破壊音波に苦しむ光太郎は、一時離脱を余儀なくされるがセミ怪人の追撃を受け、背後の森の中に並ぶヴァイオリニスト達。
絶体絶命の危機に光太郎は変身し、ダメージ同調問題が解決してないけれど、光太郎さんそういうの忘れそうで大丈夫か……と思ったら、腕力で! バイオリンを! 奪い取った!!
演奏止まったからもう平気では、と思って例しに蹴りを入れてみたらユリが呻き声をあげ、残念、駄目でした。
「やるがいいわ。あたし達を、傷つけたいのならね」
ユリは憎しみに満ちた視線をBLACKに向け、複数の人質を突きつけられる形になり攻撃手段のないままセミビームを浴びたBLACKは、セミ怪人こだわりのニードルを胸に突き刺されてまたも窮地に陥るが、洗脳強化光線が額から放たれた事を思い出すと、頭部にライダーパンチを叩き込む事により怪人と女性たちのリンクを解除。
もはや一片の手加減も無用、と全力でライダーキックを放つとセミ怪人は太陽パワーで消滅し、反撃開始と共に流れ出した主題歌が、凄く、中途半端なところで、途切れました(笑)
後日――立ち直ったユリは再び少年の為にバイオリンを奏でるが、少年の病室の窓は開かず……落ち込むユリに声をかける光太郎。
「君が悪いんじゃない。誰だって人を憎みたくなる事はある。そこに付け込んだ悪い奴が居たんだ」
今作における“真の巨悪”とは何かと、それに対する光太郎のスタンスが徹底され、上原大先生が4連投の後、5-6-7-8と全て別の脚本家となりましたが、ゴルゴムの作戦の出来不出来は別にして、『仮面ライダーBLACK』として最低限押さえるべきポイントについてはしっかりと共有されているのは、今作立ち上がりの長所。
光太郎の励ましをうけたユリの元へ、元気になって退院していた少年が駆けてきて、涙混じりに二人が一緒に紙飛行機を飛ばして、つづく。
ナレーション「人間の心は弱い。そんな弱さに爪をたて、引き裂こうとする、恐るべきゴルゴム。改造人間・仮面ライダーは、人と人との、美しい絆を守る為、人類の敵・ゴルゴムに立ち向かう。戦え、仮面ライダーBLACK!」
説得成功からそのままクライマックスバトルに突入せず、再洗脳から暴力で解除、が少々しつこい&濁りにはなりましたが、子供ゲストを活用し、ヒーロー説得だけではない人と人の繋がりをゲストキャラの心の「変化」に繋げ、題材とした「音楽」の要素も余すところなく使った組み立てで、文法の綺麗さと子供ゲストの物語への組み込みという、鷺山脚本のいいところの出たエピソードとなり、ここまでのサブライター月間では一番の出来。
次回――
ナレーション「燃えろ! 立て、光太郎! 怒りに握った拳だけが、おまえの愛する街を守る! 変身! 仮面ライダーBLACK!」
格好いい予告ナレーションから、珍しく凝ったサブタイトル。