『仮面ライダーBLACK』感想・第5話
◆第5話「迷路を走る光太郎」◆ (監督:北本弘 脚本:宮下隼一)
ゴルゴムは、国際友好平和会議を台無しにしようと開催地である群馬県の村に魔手を伸ばしており、杏子の親友・茜が、村に里帰りして事件に巻き込まれた事から群馬県へとバイクを走らせる光太郎。
なんかおかしいぞ? ゴルゴムじゃないの?
といった光太郎の思考の経緯については、概ねナレーションで説明していくスタイルが今回も取られ、問題の村に辿り着いた光太郎は、様子のおかしい村人たちに囲まれる。
「お祈りの時間だ。ヤギ様にお祈りを捧げるんだ」
村長の行方を執拗に捜していた人々はしかし、半鐘が鳴らされると何かに操られるかのように各々の家へと戻っていき、三角屋根にヤギの頭のついた不気味な祭壇、村で受けた恐怖体験によりショック状態の茜の描写、靄の立ちこめる暗闇の中を松明の炎が揺らめく山狩りの様子……と徹底した因習山村ホラー路線(個人的に、「闇と松明」の組み合わせには、妙にホラーを感じます)。
正気を保っていた村長とその孫に接触した光太郎は、数日前、二人が村を離れていた僅か半日の間に、村中が「ヤギ様」信仰に取り憑かれていた怪奇と、村外に危急を報せるべく、茜だけが街へと逃がされた事実を知る。
ナレーション「村の異変の裏に、ゴルゴムが居るのは、もはや間違いない。光太郎は一人、引き返した」
早い(笑)
光太郎は、村長孫の案内により、村人たちを洗脳しているヤギ怪人の姿を目撃し、第3話に続いて今回も、相応の人数を投入する事で異常事態の映像に臨場感を与えているのは、久々のシリーズ復活における力の入り方が窺えます。
ゴルゴムは村人を操って平和会議にカチコミをかけさせようとしており、村長の言葉から、その狙いに思い至る光太郎……布石として、劇中最初に会議の話を持ち出したのは光太郎なのですが、今の今まですっかり忘れていたらしいのが、やはりちょっと不安になります(笑)
村長は自らを囮にして村人の正気を取り戻そうとするが、いきなり松明が投げ込まれる荒っぽさで、家を囲まれ大ピンチ。
打開策の無いまま、手に手に武器を持った村人に囲まれた光太郎は、村長たちをなんとか逃がすと、怒りの変身。
(罪の無い人間の心を自分の思うままに操るゴルゴム――)
ヤギ怪人の洗脳作戦もまた、“人類の自由と尊厳を奪おうとするゴルゴム”の具体例として位置づけられると、BLACKはジャンプ一発でヤギ怪人が拠点とする洞穴まで飛んでいき、洗脳ホラー要素は映像面の仕掛けだけに終わり、用が済んだらポイ捨て扱い、になってしまったのはだいぶ残念。
そこはもう少し、怪人の首を穫りにいく前の段階で、事態を筋肉で切り抜ける前に光太郎に一つ知恵を使う展開が欲しかったところでありました。
ヤギ怪人の操る悪魔の火炎放射は迫力満点で、バトルホッパーを召喚して炎をくぐり抜けたBLACKは、ライダーチョップで角を破壊。怪人が魔力を失うと暗闇が晴れ、ライダーキックを叩き込まれたヤギ怪人は汚い花火となって散るのであった。
ヤギ怪人の消滅とともに村人たちが正気を取り戻すと、茜もその兄と無事に再会し、やりすぎるとワンパターンになってしまうので見極めが必要になりますが、立ち上がり、モチーフを繰り返す(「ゴルゴムの悪」「兄と妹」)事で、作品の土台を丁寧に固めているのは、今作の良いところ。
ナレーション「仮面ライダーBLACKは、改造人間である。その怒りと、哀しみが、今また、ゴルゴムの卑劣な陰謀を叩きつぶした。人間の自由の為に、彼は戦い続ける。今日も、そして明日も!」
……締めのナレーションさんは、もう少し勢いが付くと、『キカイダー01』ナレーションの領域に近づきそうで、ドキドキします(笑)
不気味な山狩り、恐慌に陥る少女、正気を失った人々……と繰り返されるホラー路線の映像には迫力があり、因習ホラーめいた話をTVサイズでコンパクトにやろう、という方向性は面白かったですが、その映像が目的化して終わってしまったのは残念だったところで、もう一手、ヒーローフィクションと融合する事による面白さ、の欲しい一編でした。
あと、村長がヤギの呪文に洗脳されなかった理屈がちょっとわからなかったのですが……現代目線ではイヤホンに見えますが、あれは補聴器だったのでしょうか。最初の印象で、イヤホンで「別のものを聞いていたので洗脳されなかった」だと思い込んでしまったのですが、逆に「外すと聞こえないから洗脳されない」だった?
……そう考えると、洞穴で孫の呼びかけに気付かなかったのも「耳が遠い」ことの表現であったと腑に落ちるので、書いている内にそんな気がしてきましたが、装置の進化にともなう、時代の差を感じる演出でありました。