『救急戦隊ゴーゴーファイブ』感想・第28話
◆第28話「奪われたボーイ!」◆ (監督:小中肇 脚本:山口亮太)
冒頭からマグマゴレムとVロボが戦っているところにライナーボーイが現れると、射撃に駄目出しから命令拒否、更には
「あんな奴、ボク一人で充分さ」
と独断専行するも蹴りを跳ね返されて無様に地面に転がり……やたら口数多く流暢に喋るようになった結果、進化した人工知能が、人類を敵と認識してしまったのでしょうか。
今作にはしては緊張感のない戦いだけど、夢オチ……? と思ったら、シミュレーション訓練と判明し、ゲームオーバーになったショウはライナーボーイの態度におかんむり。
「おまえのせいだぞ! 俺の命令無視するから!」
「人のせいにしないでよ。自分が悪いくせに」
5男坊だった筈のボーイですが、ショウはすっかり、家庭内ヒエラルキーの低さから飼い犬に舐められるような扱いになっており、夜な夜な、どこぞのマトイ兄さんが余計な事を吹き込んだりしているのかもしれません。
藤宮印の筋トレハッキングで鍛え続けてきた成果により、早くもベイエリアに復帰したモンドから呼び出しがかかると、そこに同席していたのは、ライナーボーイーの人工知能を設計した電子工学の権威・加賀美博士(演じるのは、うたのおにいさんで、だんご3兄弟で、『オーレンジャー』主題歌でもお馴染み、速水けんたろう)。
20年来の知己を相手にしても、なんだか微妙に目が泳ぎながら話しかけるモンドだが、その加賀美の要請によりライナーボーイのメンテナンスを行う事になり、ショウは緑マシンを操って、加賀美電子工学研究所まで、ライナーボーイを輸送。
「加賀美博士? ……父さんが!」
「ああ、そうだな。おまえの父さんだ。だから心配すんな」
メンテ待ちで不安げなライナーボーイに対して加賀美博士の研究所に居る事を説明し、ライナーボーイの喜びに合わせるショウとのやり取りは微笑ましく、ほぼほぼライナーボーイが新キャラと化している難点はありますが、父-子の要素を手堅く入れつつ、なんだかんだと気はいいショウが兄貴風を吹かせながらマシンの弟分に気遣いをみせるのも好感度が上がるところで……やはり犯人は、暇さえあればライナーボーイの人工知能に家族への悪意を吹き込んでいる巽マ○イ24歳なのでは。
ボーイのメンテ終了まで研究所に居残ろうとするショウだが、博士は生まれて間もない息子・裕一を人質にされて災魔に取り込まれており、死神モチーフ(大鎌とフード)に頭足類を組み合わせているのが面白い軟体サイマ獣が出現。
博士の裏切りもあってショウは囚われ、
「博士は今、ライナーボーイの人工知能に、悪魔回路を組み込んでいる」
との事で、なんだか凄く、造物主を裏切りそうな回路名です。
ショウを気絶はさせた博士だが、悪魔回路の完成にはライナーボーイの実戦データを把握しているショウが必要だと取りなすと、二人で回路の最終調整を開始。
「君にはまだわかるまい。父親はね、地球の未来よりも、自分の子供の方が、大切なんだ。これさえ渡せば、助かるんだ……」
「けど、博士は大切な事を忘れています」
「え?」
「博士は、裕一くんの父親であると同時に、ライナーボーイの父親でもあるんだ。大事な息子を、悪の手に渡すような親は居ない筈でしょう!」
「なにを馬鹿な! ライナーボーイは、ただのロボットだぞ。裕一と比べられるものか!」
「少なくともあいつは……ライナーボーイは、博士の事を親父だと思っています!」
裕一とライナーボーイを必ず助けてみせる、と約束するショウを信じた博士は、隠し持っていたブレスをショウに渡すと、小火騒ぎを工作。
ショウのブレス反応から異変を察知し、研究所にカチコミを仕掛けていたマトイらと合流する博士だが、念のために持ち出していた悪魔回路をディーナスに奪われてしまい、ディーナスはサディスティックに高笑い。
「あっはははは! これでライナーボーイは私のもの!」
約束は守らないのが流儀、と赤ん坊ごと研究所を爆破するディーナスだったが、間一髪、着装したショウが裕一を発見し、煙の中から赤ん坊を抱えて現れる黄金のレスキューヒーロームーヴ。
「――人の命は地球の未来! 燃えるレスキュー魂!!」
いつもより幾分ドスを利かせた緑の前口上から揃い踏みした5人が出場し、緑とサイマ獣が一騎打ち。触手攻撃にVランサーを取り落とす緑だが、力尽くでジャイアントスイングに持ち込むと、VモードチョップだパンチだそーれビッグVバスターだ、で葬り去り、肩書きが「軟体」なのに、属性無効スキル皆無の怪人は、初めて見たかもしれません(笑)
軟体らしさは、どこで使う予定だったのか!
そんな軟体災魔が再生巨大化すると、ディーナスの下僕と化した悪魔ライナーロボもまたVロボに襲いかかり、朝食の空気を最悪にする人類は滅ぶべきダナ!!
「待っていろ、裕一……父さんは、おまえの弟を、取り戻してくる」
ビクトリーロボの危機に、己の所業を悔い、メガネを外した加賀美博士はライナーボーイの元へと駆けていき、今こそ見せよう、鍛え上げた科学者の筋肉を!!
白衣をビリビリに引き裂いた博士はライナーボーイの踏みつぶしを受け止め……ずに、息子を相手に渾身の説得モードに入り、その呼びかけに悪魔回路の呪縛を脱したライナーロボは、再起動。
「ライナーボーイ!」
「……父さん」
滅亡災魔ネットとの接続を遮断したライナーボーイが合流すると、久方ぶりのハシゴ大車輪キックから、これが巽家におけるボクの仕事! と勝利の鉄砲玉と化したライナーボーイがサイマ獣を撃破。
「フフ……愚かな姉上」
サラマンデスはディーナスの失態を嘲笑し、ビクトリーロボはライナーボーイの健闘を讃え、ここに父子の、そして兄弟の絆は取り戻されるのであった。
……いや、まあ、ワシが事前に 忠誠回路 安全装置を組み込んでいたんだけどね、と、基地に帰った兄妹に向けて安定して人の心の足りない事を言い出すモンド。どうやら、加賀美博士に向けた目が泳いでいたのは、勝手に仕掛けた装置がバレた時の事を心配していた模様。
全ては見せかけの技術的特異点、“心”の入る余地の無い集積回路上の信号に過ぎなかったのか……?
ちょっぴり寂しいショウに向けて、ショウがライナーボーイを家族の一員として扱っていたからこそ、成長した人工知能が呼んだ奇跡だった可能性は否定しきれない、とナガレが口にして、なんだか照れくさいショウで、つづく。
初登場から数えて8話、基本、戦闘中のお助けメカなので個別の関係性はどうしても無から湧いてきてしまいますが、裏を返せば、後になればなるほど無理の出る可能性が強まったので、せっかく喋れる設定にしたのだから、と早めにライナーボーイに焦点を当てる回をやってくれたのは、良かったところ。
弟の居なかったダイモンが世話を焼く、とでもした方が自然になりそうではありましたが、ダイモンは成長枠のエピソードで埋まっているために、ショウにお鉢が回ってきた感じでしょうか。
ライナーボーイの復帰について、人の繋がりが生んだ奇跡なのか、あくまでもデジタルな出来事なのか、を曖昧にした辺りの案配は、個人的には好み。
また、ラストでは珍しいショウとナガレ二人だけのやり取りが描かれて、一山越えて3クール目に入ったところで、前半戦に抜けていた部分を補ってくれているのは、目配りを感じます。
次回も予告によるとそういった雰囲気で、次男の青春流れ星。