遅まきながら、見逃していた第3ー4話の感想です。第5話以降の内容には触れていませんが、最後にちょっとだけ、おまけで触れました。
遡って『救急戦隊ゴーゴーファイブ』感想・第3-4話
◆第3話「爆破された兄弟愛(きずな)!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:武上純希)
「我らが大魔女、グランディーヌ様をお迎えせねばならない大事な時に、目障りな奴らよ、ゴーゴーファイブ」
時は半年ほど、グランドクロスの前に遡り……ゴーゴーファイブ撃破の為に策を進言したディーナスの眷属、ガスガイルが地上へ出撃。
一方、巽防災研究所に忍び込もうとした宇宙飛行士・速瀬京子はナガレの仕掛けたセキュリティに引っかかって袋叩き寸前、ロスの飛行学校(研修先?)におけるショウの先輩であると認められて一命を取り留め、一応、命の恩人たちにお礼を言いにきたとの事ですが、それならどうして、チャイムも押さずにこっそり侵入しようとしていたのか……。
兄弟それぞれ、未だ図りかねる父モンドとゴーゴーファイブとの距離感を、速瀬に経緯を説明する形で表現したのは秀逸で、サイマ獣出現の報に速瀬を叩き出した5人は、拠点での変身から列車で緊急出動。
サイマ獣によって引き起こされたガス爆発により高層ビルがど派手に吹き飛び、地下に取り残された市民の救出に向かう99ダンプが大活躍。
「完璧! 消火、大成功!」
青はビル火災を消し止め、ゴーゴーファイブとしてのスーパーレスキュー成功を喜ぶ5人だが、そこに姿を見せるサイマ獣。
ボール状になって逃げるサイマ獣を追った青と黄だが、調子に乗ったイエローがブルーの制止を無視して罠に突進すると、バックドラフトで吹き飛んで(元警官なので知識不足に説得力あり)第3話にしてゴーグル割れが発動し、早い、早いなゴーゴーファイブ……!
「ナガレ! おまえがついていて、何やってんだ……!」
赤の叱責を受けた青は、少年時代がフラッシュバック。
「弟を危険な目に遭わして、それでも兄弟かぁ!」
ダイモンは自宅療養を余儀なくされ、落ち込むナガレに対して、追い打ちをかけにいくマトイ兄さん……。
「……思い出した! おまえいつか水路でダイモンが怪我をした時、あん時も! ダイモンを危険な目に遭わしただろう!」
更に、昔の失態も思い出すと、かさにかかって正義が暴走を始めるマトイ兄さん……。
「お勉強は出来たかもしれないけどな、おまえいっつも自分のことばっかりで、弟の事なんて、これっぽっちも考えた事ないんだろう?」
無言を貫くナガレに、必要以上の罵声を浴びせ、人格まで否定していくマトイ兄さん……。
ヒートアップを続ける地獄のマトイ劇場はナガレを場外に叩き落としてゴングとなるが、ガソリンを補給したサイマ獣が活動を再開すると、
「弟に怪我を負わせるような奴は、足手まといになるだけだ! 居るだけ邪魔だ!」
オープンチャンネルの通信で、リングアウトしたナガレにニードロップを落としにいくマトイ兄さん……。
天職を失った直後のマトイ兄さんが完全に“首輪を失った狂犬”と化しており、今のところは牙は身内に向けられていますが、この人あれだ、放っておくと、「人の命は地球の未来! タバコのポイ捨て許さねぇぇぇ!! ゴーレッド・フォー・アンチハザード!!」って自警団化して人間狩りを始めかねないので、早く、早くグランドクロスを乗り越えて職に戻してあげないと……!!
少年時代から割と粗忽で兄の制止を聞かない子だったダイモンは、マトイの誤解を解こうと起き上がると、モンドにナガレへのメッセージを託してコマンドアタッカーで現場へと急ぎ、良くも悪くも真っ直ぐなダイモンが、余計な事を考えずに父を頼るのは、立ち位置の色分けとして良かったところ。
「俺の居ない間に、いろんなことがあったってわけか……」
ダイモンが大事に持っていた思い出のルアーをナガレに渡し、立ち上がって走り出した息子の背に10年の空白を実感して呟くモンドは定番ながら良い味を出しており、立ち上がり、非常に手堅い家族模様の描き方になりました。
5人揃わず力を発揮できない赤緑桃にガス爆弾が直撃寸前、駆けつけた黄のサイドマシーンが爆弾をカウンターでサイマ獣にぶつけると、その間にマトイに事情を説明する黄、そしてナガレ。
「ナガレ兄さんは、悪くないんだっ。10年前のことも、今度も、みんな僕が勝手にやった事なんだ。なのに、ナガレ兄さんは僕をかばってくれて……悪いのは、僕なんだ!」
「ダイモン! それは違う! マトイ兄さんの言うとおり、俺がついてながら、ダイモンに怪我をさせたんだ。全ては、殴ってでも止めなかった俺の責任なんだ!」
それからそこの、思い込みが激しくて人の話を聞かない奴が事態をややこしくしたんだ!
「……ナガレ。俺達が5人揃わなきゃ力を発揮できないのはおまえが一番わかってんだろぅ? なにしてたんだよ? 遅いんだよ!」
内心ちょっぴり反省はしているかもしれないが、表だっての謝罪はしない長兄は、俺はおまえがこれぐらいでへこたれる奴じゃないって信じてたぜモードに切り替え、取り戻される兄弟の絆(まあ根本的なところでマトイは、ダイモンが粗忽なのはわかった上で、それでも兄がカバーするべき、という考えなのでしょうが)。
「俺達は5人揃って巽ブラザーズなんだぜ。ゴーゴーファイブなんだよ!」
マスク内部の兄妹の笑顔をハッキリ見せ、スーツを着せた状態でも生身の表情を積極的に映す今作の特徴的な見せ方が押し出されると、改めて5人揃って主題歌に乗せて、人の命は地球の未来! になだれ込むのは、渡辺監督の十八番。
フルパワーを発揮するゴーゴーファイブは、赤青のブラザーサイドカーアタックでサイマ獣をド派手に轢き、車体前方にサイマ獣を引っかけたまま、通り抜けた小屋が背後で大爆発するのは、大変いい画でした。
ライフバードが召喚されてカラミティブレイカーするとサイマ獣は再生巨大化し、緊急合体ビクトリーロボ。
コックピット主観のハシゴ無双から、ビクトリープロミネンスで一刀両断し、兄妹は過酷な戦いを乗り越えるのであった。
「ナガレ……俺も、カッとして言い過ぎたよ」
家に帰るとマトイが一応謝罪の言葉を口にし、そんな兄に振り回される事に慣れきっているぽいナガレもそれを受け入れ、兄弟の仲を取り持つメッセンジャーを務めてくれた父さんの株もちょっぴり上がり、父さんにも人の心があったのかもしれない……と一同見直しそうになった所に帰ってきたモンドは、ダイモン思い出のルアーで魚釣りに興じていた上に、そのルアーをなくした事を白状する外道すぎるコンボを放ち、と、父さんはな、失踪中のサバイバル生活のせいで、魚を見たら釣らずに居られない体質なんだ、カルシウム、貴重なカルシウムだからな!
「やっぱりなんにも……」
「「「「「わかってなーーい」」」」」
モンド株が再び上場廃止の危機に陥って、つづく。
責任感の強さと家族想いが行きすぎて熱暴走しがちな長男・その下で時に苦労しつつも互いへの思いやりは強い弟妹たち・子供たちとの向き合い方に四苦八苦するコミュニケーション不全の父親、を縦横で絡めながら要点を押さえてクライマックスバトルへと持ち込み、「家族」テーマとして手堅い作りかつ、『ゴーゴーファイブ』の基本形がしっかりと打ち出されたエピソードでした。
次回――マツリが予告で「君のハートを、スーパーレスキュー」発言し、予告の定番フレーズにしたかったのでしょうか……。
◆第4話「花びらに異常気象」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:宮下隼一)
今作に影響を感じる<レスキューポリス>三部作を始め、90年代に《メタルヒーロー》シリーズで健筆を振るった宮下さんがサブライター一番手として参戦し……速瀬京子の巽家潜入が今回だったら、危うくレーザーに灼かれるか、研究所が自爆してしまうところでした。
前回の顛末を反省したのか、自作タコ焼きで息子たちの懐柔を図るモンドであったが、そんなもんじゃ人の心は買えねぇんだよっと非難囂々。
おまけにマツリの手作り弁当を毎日の昼食にしている姿に、食費出せ、ボーナス補填しろ、住民税どうするんだ、許された気になるなよこのオヤジ、と厳しい視線を向けられるとすごすご退散していくが、多分にモンドに問題があるとはいえ、あまりに感じの悪い兄4人に、マツリが大激怒。
「お兄ちゃんたちこそ! いい加減にしてよ! 10年ぶりに帰ってきたっていうのに……毎日文句ばっか! お父さんの気持ち、少しも考えてあげてないじゃない!」
このまま家出……したら個人的には面白かったのですが、モンドの置いていった弁当を手に向かったのはベイエリア55。
ところが博士は既に出かけてしまっており、連日の外出の行く先はミントも知らず…………競馬場、とかではないと良いですが、ゴーゴーファイブの運営資金が、モンド式馬券術/車券術/舟券術から生み出されていないとも限りません。
災魔一家では、ドロップの眷属である武人スタイルの暗黒魔剣サイマ獣が生み出されると、巨大な結界を作り出して内部の気象を自由に操り、街は夏と冬を行ったり来たり。
マツリから連絡を受けた兄4人は、結界魔術を操るサイマ獣を発見して着装し、苦戦しているところにマツリも合流すると形勢逆転するが、サイマ獣は一時逃走。
元担当患者の老人・高部(演じるのは往年の怪人声優・依田英助さん)を、病院から避難させている間に通りすがりの廃墟に……って、さっきまで都心部に居たのにどうしてっ?! は、爆破の都合でさすがにだいぶ苦しくなりました(笑)
とにかく、廃墟に放置してきてしまったマツリは慌てて戻るが、大事な植木鉢に水をやろうとした高部は建物の奥へ入り込んでしまっており、そうこうする内に魔力を回復したサイマ獣が、結界内部に火の玉の雨を降らす大技を放ち、ド派手な爆発の洗礼を受ける巽ブラザース。
高部老人も建物の崩落に巻き込まれると、生存を絶望視して崩れ落ちるマツリだが、4人の兄はそんなマツリを叱咤し、燃えるレスキュー魂は、どんな逆境でも諦めない。
「俺達は疑った事なんか無かったぜ。あの親父の事だって」
「父さんが、簡単にくたばるわけないってな」
「だから誓ったんだ。戻ったら絶対一発お見舞いしてやるって」
「生きて帰ってこなきゃ、文句も言えないからな」
兄4人のモンドに対する当たりが厳しいのは、(私怨もあるけど)憎まれ口を叩けるのも生きて再会したからこそ、と男父子の面倒くさい距離感が末の妹に説明され……まあ、マツリさんはそこは、無理に理解してあげなくても良いと思います(笑)
……事前に、
「マツリちゃん……父親ってのは、たとえ、離ればなれでも、いつだって、家族の幸せをねごうとるもんや」
(そうよ、お父さんだって、きっと……)
というやり取りを置いて、単身赴任生活10年の高部にマツリが父の面影を重ねているとはしたものの、「目の前の要救助者の生存を諦めない」のと、「失踪した父親がどこかで生きていると信じていた」の間にはだいぶ距離があって接続は強引になりましたが、早めに言い訳しておきたかった基本シスコンな兄たちの真意を知ったマツリは、老人救出の為に建物の中へと飛び込んでいく。
赤青緑黄がサイマ獣を食い止め、老人の元へ辿り着いたマツリは再びの崩落の中で着装すると、火を噴く建物の中から要救助者と共に無事な姿を見せる完璧なレスキューヒーロー仕草を決め、人の命は地球の未来!
サイマ忍法・陽炎の術に苦しめられるゴーゴーファイブは、救急忍法・死んだフリ戦法で形勢逆転し、リアルタイム当時は、ゴーゴーファイブ(特にゴーレッド)=死んだフリ戦法、というぐらいのイメージがあったのですが、どうやら、この辺りからの印象だったようです(笑)
カラミティブレイカーを炸裂させると、任務完了して踵を返す5人だが、風を切る再生カードによりサイマ獣が再生復活し、挿入歌に乗せて緊急合体!
暗黒魔剣を受け止めるとハシゴ喉輪から上手出し投げ、ゴーゴー大車輪キックで吹き飛ばしてからのビクトリープロミネンスで圧勝し、郷里に帰る高部老人を見送る巽兄妹であった。
そういえば途中、一切出てこなかったモンドは、首都競馬場のスタンドで馬券を握りしめ……ていたのではなく、知人に替わって三日限定でタコ焼き屋をしていたオチが付き、のらりくらりと読めない父親像で、つづく。
ようやく最序盤を補完できましたが、おまけとして、第26話までを見た状態で序盤のエピソードを見て思った事を3つほど。
以降のネタバレを多少含むので、ご留意下さい。
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●おまけ
・改めて、ビクトリーロボ最大の魅力は「ハシゴ」にあり、マックスビクトリーロボにも、ハシゴ要素を残して欲しかったなと(笑)
・第4話時点だと、炊事はマツリが全面的に担当している設定だったのでは?? ぐらいの雰囲気で描かれており、これは後に、兄妹の当番制が明示されて大変良かったところ。
・「君のハートを、スーパーレスキュー」は、どこから来て、どこへ消えたのか……。