『救急戦隊ゴーゴーファイブ』感想・第22話
◆第22話「冥王、最後の決戦」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:武上純希)
「今日がおまえたちの最後となるのだ」
「その言葉、そのままおまえに返してやるぜ!」
第18話から連作ともいえるジルフィーザとの決戦編という事で、冒頭からフルスロットルでジルフィーザとゴーゴーファイブが激突し、カラミティブレイカーを軽々とはじき返す本日の冥王様は絶好調。
「カラミティブレイカーが効かない!」
「なんてパワーだ」
まあそこは、そんなに驚くところではない気がするのですが……どうもVランサーの扱いがあやふやですが、実は急遽投入される事になった追加商材だったりしたのでしょうか(タイミング的にはその可能性は低いと思うのですが、登場以降あまりにも、いっそ無い方が助かる、みたいな扱いが続いて気になります)。
ジルフィーザは前回ラストで意味ありげに手にしていた3つの宝石から、合成魔闘士キマイラーを作り出すとゴーゴーファイブのトドメを命じて自身は早退し……詰めが、詰めが甘すぎますよ!!
これでこの後、熟れすぎたザクロのように弾け飛んでも完っ全に自業自得となりましたが、スパイダー災魔回で既に一度やらかしているなど、圧倒的強者の余裕を見せる立場でもない――冥界デッキ以降、繰り返しそう描かれてきた――わけなので、ここの早退にはもう一工夫の理由付けが欲しかったところ。
ゴーゴーファイブはキマイラをビクトリーバスター(やっと聞き取れた……と思ったら正しくは「ビッグブイバスター」でした!)で攻撃するが、さっくりかわされ……さっくりかわされ、本当に、扱い酷いVランサー(笑)
キマイラの反撃で大ダメージを受けたゴーゴーファイブは変身解除で地面を転がり、えー、今からでも、お父さんに血の繋がった人間の隠し子が居たことにしてゴーゴールドとか出てきてもげふんげふん。
再び煙幕弾で一時撤退すると、このままじゃ勝てない、と体育座りモードに入る青緑黄……スピード感溢れる掌返しには定評のある巽兄妹ですが、自分たちの戦力評価についてもアップダウンが激しくて、掌がビッグウェイブー――この辺り、前作『ギンガマン』が実質公務員戦隊な3000年戦士だったので、メンタル面の差別化を図るニュアンスはあったのかもしれません――。
兄3人をマツリが励ますと、マトイが檄を飛ばし、母親の言葉を口にする――。
「あなた達5人の兄妹が、力を合わせれば」
「「どんな困難も乗り越えられる筈」」
「「母さんは、そう。信じてます、そして」」
「「そんな素晴らしい子供たちの」」
「「「父さんを、信じてます」」」
「「「「「信じ合うのが家族です」」」」」
不在の母親の存在感を消さないと同時に、5人が順々に声を合わせていく演出が良く、兄妹仲良く株価が暴落しそうだった掌の回転ぶりに歯止めがかかると、失意から奮起へ、スイッチの切り替えとしても劇的に機能。
「よーし、巽ブラザーズの底力、見せてやろうぜ!」
そこは「ファミリー」と言ってほしかったモンドより、前回から調整中のマックスシステムが完成間近と連絡が入るが、その完成を待たずして、ジルフィーザが地上殲滅宣言と共に大破壊を開始。
「父さん、確かに今は打つ手はないかもしれない。けど、戦う勇気をなくせば、明日をなくしちまう! 俺達が出場するしか、被害を食い止める方法は他にないんだ! 俺たちはゴーゴーファイブなんだ!!」
傷だらけの5人はモンドの制止を振り切って出場し、巽兄妹を象徴する長兄として、体を張って激しくアップダウンを繰り返すマトイ兄さんですが、ここぞの叫びは実にはまっており、好演・好キャスト。
挿入歌に乗せて5人は飛び出していき、立ちはだかるキマイラを前に、人の命は地球の未来!
死闘が続く中、すっかり便利なエンジニア扱いになっている速瀬の協力で新システムの一部が完成すると、新たな接近戦用プログラムがゴーゴーブレスに転送され、ゴーゴーファイブはブイモードブレスを装着。スペシャルコードの入力により、アンチハザードスーツがVモードへ強化されると5人の拳がシャイニングし、科学とは結局のところ筋肉なのだ!
デザイン違いのテンキー付きブレスという、ちょっと微妙な強化装備(玩具的には『メガレンジャー』のバトルライザーの系譜でしょうか)を身につけた5人が、震えるほどレスキュー! 唸らせるほどマッスル! と拳でキマイラを正面から粉砕すると、まだまだ余裕を漂わせるジルフィーザが、自ら巨大化。
「私に抵抗する事が、いかに無駄なことか、まだわからんのか」
初顔合わせでVボンバーされたのがあまりにも致命的だった冥王様、比類無き強敵としての説得力不足は如何ともしがたいですが、前回ジーンを一撃で葬ったVファミリーアタックを防ぐとライナーボーイを撃墜して機能停止に追い込み、最高幹部相手にとりあえず投げつけられてみたライナーボーイ、あまりにも、酷い扱いでしたね……。
「最強コンビでも駄目なのか?!」
ジルフィーザはグランドストームにもびくともせず、Vランサーの時は、営業ノルマへのストレスから来る酷い寝不足と二日酔いだったのかもしれません。
「貴様らごとこの地上を破壊してやる! 母上様との神聖な約束、必ずやこのジルフィーザが」
母親との繋がりが対比されると、その言葉がゴーゴーファイブにまたも土壇場で力を与え、必殺の一撃をギリギリで受け止めるグランドライナー。そのまま立ち上がり、ジルフィーザを押し返そうとするグランドライナー、当初は棒立ち瞬殺系箱物かと思われましたが、結構動かしていて、感嘆。
だがそれも束の間、ジルフィーザの切り札である腹から災魔光線がグランドライナーの土手っ腹を貫き、もはや決着かと思われたその時――マックスシステムがとうとう完成。
モンドの指示を受けた5人は救急マシンに乗り替えると緊急合体し、ここでビクトリーロボが瓦礫の街に立つのは、シンプルに熱い展開。
ただその熱量が行きすぎたのか、マックスシステムについて何も確認しないままビクトリープロミネンスで切りかかったVロボは、当然のように通用せずに腹からビームで吹き飛ばされ、名物・高速の掌返しが炸裂。
詳しくは後述しますが、正直、このくだりは不要だったと思うのですが、巽ファミリーの鍛え上げた手首が土俵際でもう一閃すると、改めてモンドの指示により、Vモードブレスを使用したマックスシステムが発動。
再起動したライナーボーイがシャトル形態となると、空中で分割されてVロボに追加アーマーと下駄を履かせるマックスビクトリーロボが誕生し、大型の2号ロボを挟んで、1号ロボと3号ロボがスーパー合体をしてみせるのは、面白い強化の流れ……Vロボからフォルムが変わりすぎて、なんのロボかはよくわからなくなりましたが(笑)
両肩から新幹線を突き出し、ホバー移動からの微妙な飛び道具で戦うMVロボは、本日三度目の腹から災魔光線で消し飛んだ……かと
思われたが、爆発エネルギーを吸収するカウンター体質を発揮すると、全火力を一斉発射するマックスノヴァを放ち、その直撃を受けたジルフィーザは盛大に弾け飛ぶのであった。
「母上……美しい、そのお姿を、今一度……見とう、ございました……!」
長兄の戦死に、ディーナスは悲嘆に床をかきむしり、コボルダが激憤に武器を振り回す中、ジルフィーザの爆発から浮かび上がった紅い光球がドロップの額に吸い込まれて、つづく。
……いやー、てっきり3クール目の終わりぐらいにドロップと交代する形で退場かと予想していたジルフィーザが、まさかの爆死!
グランドクロスも迎えられずの早期リタイアとなりましたが、『ジュウレンジャー』(1992)以降、定番になりつつあった追加戦士をミスディレクションに用いての新ロボ投入→1号ロボとのスーパー合体から、敵組織のリーダー格が上司に追い込まれて真っ先に退場、と90年代ラスト《戦隊》としての試行錯誤が窺えます。
Vランサー以降、強化&苦戦ラッシュでかなり忙しい展開になり、新戦力に対する掌返しという名のアップダウンが激しくなったものの、中盤のスーパー合体エピソードとしては特別良くも悪くもない、といった出来でしたが……MVロボの生贄としてジルフィーザの脅威を煽る必要はあったにしても、
「カラミティブレイカーが効かない!」「なんてパワーだ」
に始まって、
「ライナーボーイ!」「最強コンビでも駄目なのか?!」
「グランドストームが、効かない!」「なんて奴だ!」
「ビクトリープロミネンスが、効かない?!」
「ビクトリーロボでも、駄目なのか?!」「打つ手は無いの?!」
「マックスビクトリーロボでも駄目なのか……!」
を1エピソードに6回繰り返したのは、やり過ぎであったと思います。
特に、冥王だけに神聖攻撃が弱点だった可能性はあるにしても、グランドライナー&ボーイが完敗した後にビクトリープロミネンスを叩きつけにいって通用しないのは、視聴者からすれば、それはそうだろうが過ぎますし戦闘のテンポも悪くしてしまい、後半三つに関しては無しで一気にマックスビクトリーしてくれた方が素直に盛り上がれた感触。
……まあ、遡ればVランサー初お目見えでジルフィーザを吹き飛ばしてしまったのが尾を引いているとはいえ、なかなか難しい。
ジルフィーザについては、デザインは格好良かったですし、真面目な仕事人間である点は割と好きだったので早期退場は惜しまれますが、当初から如何にもだったドロップが、どう“化ける”のか、期待したいと思います。
次回――か、か、怪談?