『大戦隊ゴーグルファイブ』感想・第38話
◆第38話「友情のアタック!」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
「できたー! 遂にやったぞ! みんな見てくれ!」
「……なんだこりゃ?」
「発明ごっこに夢中になってるとは、聞いてはいたけど」
銀色の装置を手に青山が勇んで飛び込んでくると、みんな、初手から、厳しい!
青山が完成させたと言い張っているのは、背中に背負って空を飛ぶ携帯ロケットで、てっきり時事ネタかと思ったら、ロス五輪(1984年)の開会式で有名なロケットマンより前でした。
計算上は、高さ1000メートルを時速200キロで飛行可能なロケットパックを手に、ゴーグルファイブが新幹線の上を飛ぶ夢いっぱいの妄想にふける青山に対し、画面手前で無言を通す黒田と、腕組みしながら失笑する赤間が、目を合わせて肩を落とすのが、ひどい(笑)
未来の科学の為に生贄になりませんか? と声をかけられた黄島がコンボガ一同から止められていると、状況を完全スルーして、一同にコーヒーブレイクを勧めるコンピューターお姉さんが、最高に酷い(笑)
一度はコーヒーに引き寄せられるも、青山の口車に乗せられた、もとい熱意にほだされた黄島は、実験への協力を承諾し、
「黄島さん、空を飛んでみたいと思いませんか?」
「空?」
「新しいゴーグルファイブが誕生するんです」
青山のキャラが完全に行方不明(まあ、未来科学研究所の環境にあてられて自分も何かしてみたくなった、とか理由は付けられますが)などはあるものの、青山と黄島のコミカルなやりとりや、コンボガ含めたメンバーのリアクションによる色づけなどが軽快で楽しく、このアバンタイトルだけで、夏休み中の3話分ぐらいの元は取れました(笑)
かくしてロケットパックを背負った黄島は遠隔で青山に点火され……せめて、着よう、スーツ。
「そんじゃ、覚悟決めていきましょう!」
青山がスイッチオンすると、大胆な吊りで黄島は宙に舞い上がり、どういうわけかデスギラーとマズルカが物陰から見つめる中(研究所にスパイが……?)、筑波洋もびっくりのセイリーングジャンプ!
想定外の勢いで順調に空を飛ぶ黄島であったが――ざっくりめの合成が現実と非現実の中間めいて、この場合はメルヘンな効果を発揮しています――、途中でロケットの噴射が止まるとあっという間に墜落して地上の青山に激突し、危うく、デスダークと全く関係なく殉職者が出るところでしたが、溜め込んでいたキビならぬコメ(ディ)ポイントを消費して笑劇時空を発動したことにより、二人とも無事で済みました。
「青山!」
「……黄島さん」
「このやろぉ、ゆるさねぇぞ!」
割と本気で青山を殺りにいく黄島だが、運動能力は割と高い青山はパンチを防御。二人で取っ組み合っているところに姿を見せたデスギラーとマズルカが半壊した青山ロケットを置き引きし、もはや、暗黒科学のプライドは捨てました。
戦闘員が飛び出してきて生身バトルとなると青黄のコンビアタックが炸裂し、少々不自然に変身しない形とはなりましたが、前作ほどではないものの今作も「場面変わると既に変身済み」のパターンが多いので、ドタバタ騒ぎの延長戦で生身の芝居を増やしてくれたのは良かったところ。
戦闘員は蹴散らすも、サイモズーの重戦車アタックを正面からまともに受けた青山と黄島は、土手っ腹をぐさっと刺されると高々と吹き飛ばされて今度こそ殉職かと思われたが、黄島が頭から地面に突き刺さる大技を放って死亡判定に持ち込まれるのを回避し、色々な意味でギリギリの戦いが続きます。
変身した青のスピンキックも黄のメガトンボールもサイモズーの重装甲の前に通じず、絶体絶命の危機に赤黒桃がマシンで合流するが、激しく地面を震動させるサイモズーの重戦車ダッシュにより追跡に失敗。
「いったい俺の開発したロケットエンジンなんか盗んで、どうする気なんだ!」
……いや本当に。
難しい顔担当の赤間と黒田が悪用を危惧する中、サイモズーはクリーンエネルギー研究所をミサイルで吹っ飛ばし、青山ロケットはどういうわけか、サイミサイルの動力に転用されていた!
「総統タブー、ご覧下さい。重戦車サイモズーによる破壊作戦は、素晴らしい成果をあげております」
「素晴らしい! まさに生きている重戦車だ!」
サイモズーのミサイル攻撃を食い止めようとするゴーグルVだが、地震攻撃の前に手も足も出ず、大苦戦。
「誰もサイモズーの突進を止めることはできない!」
「追いつくこともできない。一体どうしたらいいんだ」
ここまでのやり取りから、どうやらゴーグルスカイは「低空浮遊能力」ぐらいの扱いのようですが、今作としては珍しく、ミサイルに蹂躙された被害現場の光景が描かれると、青山は自身の研究が間接的にもたらした惨禍に胸を痛め、今後も曽田戦隊で繰り返し顔を出す“科学技術とそれに伴う責任”テーゼが垣間見えます。
これを未来科学と暗黒科学の対比にまで紐付けようとすると、青山は青山で、ゴーグルロケットアタックを夢見ていたのが惜しいところですが……
「俺がいけないんだ! 俺があんな発明ごっこに、熱中さえしなければ……こんな事にはならなかったんだ! ……畜生!」
壁に拳を叩きつけ、頭を打ち付け苦悩する青山を止めたのは――黄島太。
「こんな事でくじけるなんておまえらしくねぇぞ。……失敗は成功の元と言って粋がってたのは誰だ? やってやろうじゃねぇか! 俺とおまえで、サイモズーを倒す方法を考えるんだよ! おまえと俺なら、必ずできる筈だ!」
「……黄島さん」
中盤ぐらいから稀に、さん付けや敬語で喋る事があった青山ですが、〔美人に弱い2.5枚目 → 天井裏の監視者 → 子供に寄り添うお兄さん → 海の戦士〕と落ち着きの無い紆余曲折を経た末に、今回は実質的な〔メンバー内部の年少者〕ポジション。
……青山、プロ(実業団)のアイスホッケー選手だと認識していたのですが、それもこれも、黒田がカタギの大学生に見えないのが悪い。
青山と黄島は動物園でサイの生態について研究し、角は最大の武器にして同時に弱点でもあると知ると、その角を頭上から攻撃することを思いつく。
かくして、黄島はサイモズーの突進を食い止める為、黒田操るクレーン車の鉄球と生身でぶつかり稽古を行い(山田監督だけに、ほぼ《仮面ライダー》のセルフパロディ)、青山は上空からの攻撃を可能とする携帯ロケットの再開発へと挑み……黒田が青山を手伝い、赤間が黄島に鉄球をぶつけた方がしっくりとした気はします……いやなんか、赤間の方が、必要とあらば身内に鉄球ぶつけそうなイメージ。
サイモズー対策を完成させたゴーグルファイブが掟破りの逆挑戦状を叩きつけると、大地を揺らし、律儀に姿を見せるサイモズー。
「行くぞー! ゴーグルファイブ!」
「やはり勝ちに驕って現れたか、サイモズー!」
「なんだとぉ?!」
一応、敵の心理を計算に入れたのだ、とフォローがされて、いざ、戦え! 大戦隊!
主題歌バトルでまずは戦闘員を軽く蹴散らすと、作戦通りにサイモズーの重戦車アタックにイエローを先頭に立ち向かい、前に出た黄を背後の赤黒桃が支えて4人がかりで押さえ込むスクラムの形で、心底ホッとしました(笑)
その間に背後の崖の上に回った青がロケット飛行すると、空中から高速機動攻撃を仕掛けるも一度は失速しかけるが、気合いで立て直しての宙返りアタックでサイモズーの角を見事に破壊。
動きの止まったサイモズーにゴールデンスピアが突き刺さると、もはや無言で出撃したサイコングに対し、今回も合体前のマシンによるミサイル攻撃を浴びせてから、ゴーゴーチェンジ。
サイコングの体当たりをジャンプでかわし、散々に踏みつけにしたゴーグルロボは、ゴーグルサンダー、そして、いつものモーション代わりにレバーを操作する新カットから、銀河斬りで両断するのであった。
戦い終わり、飛行実験を繰り返す青山と黄島だが、見事に爆発。まだ残っていた笑劇時空の効果により煤だらけの二人は、遠慮なくぶつかり合うのも友情があるから、と最後は肩を組んで、つづく。
およそ2クールほどメイン回から遠ざかっていた黄島に青山とコンビでスポットがあたり、相方の青山がほぼ新キャラなど、これが他の作品だったら難点の方が目立った気はしますが、捏造感は甚だしいにせよ「メンバーの横の関係性」と「強敵に対策を練っての逆転」の要素が押さえられて、『ゴーグルV』比としては楽しめる一本でした。
メインライターとプロデューサーのダブル交代の影響もあってか、最初に設定した要素やテーゼが一向に噛み合わず、いちいち長いバンクシーンが足を引っ張り続けるなど序盤から中盤にかけてもたつきの目立った今作ですが、2クール目半ば辺りから曽田先生のエンジンがようやく暖まってくると、作品の総合点はまだまだとはいえ、上り調子でここまでの問題点を徐々に埋めてきているのは大きいところ。
次回――絵本に囚われる桃園ミキ、とここに来てメイン回が欲しいタイミングもピタッと合い、ラスト1クール、曽田先生の終盤力の覚醒に期待したいです。