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人の命と地球の未来

救急戦隊ゴーゴーファイブ』感想・第19-20話

◆第19話「完全なる敗北」◆ (監督:小中肇 脚本:小林靖子
 「我が秘蔵のカード、冥界のデッキ。サイマ獣が住む闇よりも、更に深い暗黒の世界より力を喚び出す」
 前回、巨大Vの字バスターを受けて大爆発の憂き目にあったジルフィーザは、ゴーゴーファイブの息の根を止める為に冥界魔闘士三羽烏、ゾーン・グール・ジーンを召喚し、グールが……凄く、ドラムロ(笑)
 (母上ご降臨までに、なんとしても長男として成果をあげておかなければば。……なんとしても)
 眠り続けるドロップを見据えながらの独白で意味ありげな布石が置かれ……果たして、グランドクロスで退場するのはジルフィーザなのかコボルダなのか、いっそ二人まとめてなのか?!
 ディーナスは、顔出しですし、グランディーヌと「ディー」が被っているし、終盤のキーパーソンになるのでは、と雑に予想。
 その頃、巽兄妹は1年前に災害現場で出産を助けた赤ん坊の満一歳の誕生パーティを祝っており、災害現場での出産シーンを描くのは、今作らしいドラマ作りと、死闘への取っかかり。
 一同、なんとなくパーソナルカラーの入った夏服(マトイ除く)のお披露目もされる一方、如何にも性格の悪そうな冥界魔闘士三羽烏が地上に現れると背中の羽をばらまき、続いて一般市民を直接、斬殺・撲殺・刺殺の大暴れ。
 駆けつけたゴーゴーファイブを相手に個々の戦闘能力の高さを見せつけた三羽烏は、日没と共に爆発する悪魔の羽を事前にばらまいていたことを明かす性格の悪さを見せつけ、草葉の陰で策士サイマ獣が、この3人は俺が育てた、とサムズアップしています。
 「爆弾?!」
 「そう。全部で、100ぐらい飛ばしたかな? どこにあるかは、僕たちにもわからない」
 部屋に入ってきたその羽を、赤ん坊が気に入って握りしめていた事を思い出したゴーゴーファイブは焦るが、爆発を止めたければ日没前に三銃士を倒すしかない、と戦闘を続行。
 事情を知ったモンドが赤ん坊の元へ急ぐ一方、乾総監が警察・消防の出動やTVでの注意呼びかけを請け負ってくれた、とミントから言わせる事により、役者は使わずに情報の連携と乾長官の存在をスムーズに示してくれたのは、上手いやり方でした。
 「Vブーメラン!」
 主張の強い起動キーには当たり判定があったが、やはり前回の今回でいきなり通用しないのはまずいという話になったのか、Vランサーの出番はVメランを投げただけで終了し、バーンブラッカー、じゃなかったカラミティブレイカーが青緑黄に誤爆
 バイクで走るモンドは、羽を玩具に河川敷で遊んでいる少年たちを目にして慌ててUターンし、追い詰められながら起死回生の一発逆転を狙うゴーゴーファイブ、ニュースで情報を知り赤ん坊の元に急ぐ母親、少年たちを助けようとするモンド……迫る日没の映像に合わせて、3つのスペクタクルが同時に織り込まれ、行き止まりでの待ち伏せから不意打ちカラミティする救急戦隊だったが、それもはじき返され、日没――。
 太陽が沈むと共に街の各所で大爆発が発生して番組史上最大規模の被害と共にゴーゴーファイブも弾け飛び、少年たちをかばったモンドも生死不明ぐらいになるかと思ったら割と普通に生きていて、さすがのサバイバル能力。
 「僕たちのせいじゃないよ。守れなかったのは、君たちでしょぉ?」
 多くのものを失い、怒りの5人は生身のまま突撃を敢行するがビームで吹き飛ばされ、ベイエリアからの煙幕弾の間に一時撤収を余儀なくされる……。
 闇の中、傷だらけの兄妹がそれぞれ逃走する負けっぷりが克明に描かれて「完全なる敗北」が強調されるのですが、Vランサーについてお茶を濁したのは、どうしても気になるところで、何故〔新装備で敵の大幹部に完勝〕の次の回に〔新装備を使わずにぽっと出の強敵に完敗〕の組み立てになったのか……。
 同じ負けるにしても、三羽烏の仕掛けてきた性格の悪いゲームが枷になって正面から全力を出せない(Vランサーも揃って出せない)、とか工夫のしようはもう少しあったと思うのですが、タイムリミットを指定された焦りの影響は見るとしても、ゲームの宣言後も、そのまま面と向かって殴り合いに終始したのは、物足りない部分。
 個人的にはゴーゴーファイブ、力でねじ伏せて勝利! といったイメージもあまり無いので、「初めて殴り合いに負けた!」みたいなショックの受け方にも疑問符が浮かび、話の組み立てとしては「殴り合いに負けた」為に「街中を爆破された」、事の後者により深刻なショックを受けているとしたかったのかとは思うのですが、そもそも「倒せば爆発しない」もサイマ獣が言っているだけなので、「安易に殴り合いで勝負を決めようとした」ゴーゴーファイブそのものにやや違和感があって、上述したように戦いの盤面そのものを途中で変えるか、土俵にうまく乗せてくる敵の悪辣さをより強調するか、のもう一工夫が欲しいところでした。
 火山回における「Vロボは負けたけどまだ噴火はしていない」と対比する意図が窺えたからこそ、もう一手、上手く差別化を描けたのではないか、という印象。
 「負けた! ……俺達が! ゴーゴーファイブが!」
 叩きつけるような雨の中、悲嘆に絶叫する5人の姿で、つづく。

◆第20話「不滅の救急(レスキュー)魂」◆ (監督:小中肇 脚本:小林靖子
 冥界魔闘士三羽烏に完敗を喫し、満身創痍の巽兄妹5人は待機ポイントで合流に成功。ベイエリアからブレスを修理する為の補助チップが送られてくる一方、モンドは辿り着いたマンションの爆発現場で、自ら現場で救難活動に当たろうとする乾長官と再会していた。
 「初めての敗北だな……」
 「ああ。這い上がれるかどうかは、あの子たち次第だ」
 街中にいざという時の合流・休憩ポイントが準備されており、修理セットがロケット便で届けられて各々が修理するのは、チームとしてのゴーゴーファイブの前後ろの連携も描かれて面白い場面設定となり、その最中にマツリの涙を表現するのも巧い見せ方。
 「僕たち……守れなかったね。……街も! 人も!!」
 「……俺たち勝てんのか? ……あんな奴ら相手に、地球なんてデカいもん守れんのかよ!?」
 「ショウ!」
 「……ついこないだまで家一軒、人一人火事から守るのに必死だったんだぜ!?」
 「…………だからなんだ。…………だから守れねぇってのか?!」
 サイマ獣への完全敗北をきっかけに、ゴーゴーファイブとして戦う事の恐ろしさと重さ――自分たちの敗北が、多くの悲劇を生み出すこと――が改めて兄妹の胸に染みこむ中、たとえ虚勢でも弟妹を引っ張っていこうとマトイは活を入れ、
 「戦いは続いてんだよっ。一度負けたからってな、背負っちまったもん下ろせるかよ!」
 己の気概を示すが、ブレスの修理に向かうその手は小刻みに震え……
 「びびってねぇっつてんのに、なんでこんな震えんだよ」
 「……マトイ兄ちゃん」
 と、5人の心情を台詞で並べるだけではなく、ブレスの修理、という前を向く行動と共に描く事で、そこに生まれる葛藤をあぶり出して見せるのは、上手い場面でした。
 一方、ゴーゴーファイブを探し回るのをやめた三羽烏は、街を直接破壊する事で誘き出そうとし、再び悲鳴に包まれる救命現場。
 「頑張ってくれ。ゴーゴーブレスの修理が終われば、そうすれば……」
 「――そうすれば、おまえの息子たちだ。必ず、もう一度立つ!」
 “親”としての顔を見せて思わず口ごもったモンドを、乾長官が“友”として励ますのが、生死を賭けた現場の中で一瞬、情が情を支えて、やたらに格好いい見せ場。
 「確かにこえぇよなぁ」
 そしてブレスの修理を終えたマトイは……緊急を告げるミントからの通信を敢えて切断すると弟妹に語りかけ、自らの恐怖を認めながらなおそれでも、立ち止まる事を許さない己の魂の声に従い、ブレスを装着する。
 「行かなきゃいられねぇ。そうだろ? 俺もだよ。自分でもわけわかんねぇ。……こんなに震えてんのによ」
 弟妹4人も次々と自らの意志と覚悟でブレスを装着し、今、父に職を奪われるでもなければ、長兄にどやされるわけでもなく、敗北と恐怖を乗り越え、自らの意志と覚悟でアンチハザードスーツを手にする巽兄妹。
 そこへ、爆発現場から母子が助けられたとの連絡が入り、マトイは1年前の現場を思い出す。
 (そうだ……あの時だって本当は怖かった。……地球を背負えるかどうかじゃねぇ。びびってようとなんだろうと、救える命が一つでもあれば走っちまう。それだけで俺達は戦える)
 人の命は地球の未来、一つの命を救うのは無限の未来を救うこと――ならば、
 地球の未来を救うのも一つの命を救うのも同じこと
 なのだと、ゴーゴーファイブのキーフレーズをくるっと一回転させて逆説的に等価に置き、命を救おうとする事はいつだって怖いが、それでも救う為にはどんな形だって戦える、と巽兄妹-ゴーゴーファイブの“行かなきゃいられねぇ理由”、恐怖を乗り越え現場に赴く在り方を、ヒーローになったから変わったのでも複雑で重くなったのでもなく、今までもずっとやってきたことと改めて構築してみせたのは、実に鮮やか。
 小林さんとしての勘所だったのか、ここまでの小林脚本において、消防・警察・救命士……巽兄妹かつての職種とゴーゴーファイブとしての活動が決して切断されたものではないことが繰り返し描かれてきましたが、そんなヒーロー以前との徹底した接続が一つの実を結び、第二のチームアップとして見事なジャンプ。
 ……プロデューサーの差配もあるでしょうが、一歩間違えると小林ゴーゴーファイブと武上ゴーゴーファイブが喧嘩しかねないところで、良くも悪くも武上さんが巽兄妹の過去と現在の心理的擦り合わせについてのこだわりが薄い為、衝突事故が発生していないのは、今作の一つ面白い構造(笑)
 個人的な好みとしては、小林さんの勘所の置き方や全体への目配り、ツボの押し方の評価が高くなりますが、武上さんは武上さんで、そこを投げてお任せにできる、というのはメインライターとしては一つ資質なのかもな、とは(伊達に色々な仕事をやっていないといいますか)。
 不滅の救急魂と共に、ゴーゴーファイブが再び走り出すと、信越しに感無量の表情を見せるモンドの姿を挟むのが凄く効いて、今作は本当に、小中監督がキレキレなのが大きい。
 「待たせたな!」
 「災魔! これ以上無意味に街を荒らすな!
 「ゴーゴーファイブ、足が震えてるんじゃないのか?
 「だったらどうした! 俺達はこっからがつええんだ!」
 は、基本、逆境から始まる――災害が起きてから現場に出るので――チームらしさが強くて痺れる啖呵でした(同時に、前回はやはり、「敗北のショック」ありきで、そこがちょっと掛け違っていた印象)。
 「人の命は地球の未来! 燃えるレスキュー魂!」
 「「「「「「救急戦隊!」」」」」
 「ゴー!」「ゴー!」
 「「「「「ファイブ!!」」」」」
 今回は出し惜しみ無しで初手からVランサーで躍りかかると、意識的に市街地から戦いの場を移動していった後に救助活動が描かれるのが官民連携「救急戦隊」として細かい目配りで、海をバックに放たれるVマシンガンだが……無慈悲に通用せず(笑)
 ……ま、まあ、ジルフィーザは長男は長男でも、どこぞの赤い人みたいなレスキュー魂特化型ではなく、内政系のスキルにも色々とポイントを割り振っているので、戦闘力がやや少しちょっと劣っても仕方ないのです。カレーだけではなく、カツ丼も回鍋肉も作れるのです。
 正面攻撃では分が悪い、とゴーゴーファイブは倉庫街を逃走。青緑黄桃が囮となって赤が奇襲を掛けると、命懸けで一人零距離カラミティ&Vマシンガンを放ち、市民の仇じゃぁぁぁぁぁぁ!!
 ……なお砲撃の反動は、ゴーレッドどころか、周囲の倉庫をまとめて爆炎に包みました(笑)
 襲名式に腹マイトでカチコミかける勢いで魔闘士ゾードにケジメをつけたゴーレッドは、スーツに激しい損傷を負いながらも帰還を果たし、
 「見たか……これが、気合いの差っつうもんだよ」
 魂だけで押し切らずに、策と気合いを加えたのは、良いバランスでした。
 「驚いた。あいつらホントのバカだよ」
 「ううーん、ゾードも、運が無かったな」
 センターに立ってリーダーめいていたのが最初に倒れる予想外の展開となるが、冥界デッキの再生カードにより、鬼面を被って二刀流で巨大化復活。
 その凄まじい剣技にVロボが右腕を落とされると、モンドから一か八かのアイデアを伝えられた赤が単独でグランドライナーを起動させ、これぞ秘技・サイズは後から大きくできまい!!
 救急マシン無しでは長くは動かせない、としっかり言及されるのは今作らしく(まあ、どちらにせよグランドライナーは長時間動かせないのですが(笑))、なんだか顔が星の赤い人めいてきたゴーレッド操るグランドライナーのグランドストームと、弟妹操るVロボのプロミネンス連続攻撃により巨大ゾードを撃破。
 若干の無理矢理感はありつつも強敵打破としては納得のいくWロボでしたが、何故か前回から(?)OPで並んで戦う二大ロボを見せてしまっていたのは、秘策のインパクトが薄れて少々勿体なかったところ。
 「どうやら乗り切ったな、巽」
 「うん。そっちも、ご苦労さん」
 モンドと乾は通信越しに挨拶をかわし、登場回の時点でそういうキャラ付けは回避していたのですが、雑に悪役にされがちな、“公”の側の偉い人、である乾長官にやたらと目配りのあるエピソードでした(笑)
 後、他に比べてちょっと目立っていないという認識だったのか、マトイに続く形で、ナガレの台詞も多い回でありました(ナガレ、兄妹の中では最も台詞の読みに難がある感じなので、自然と台詞が減りがちだった疑いはあり)。
 「殺せ……! ゴーゴーファイブを、殺せ……!!」
 怒りのジルフィーザはグールとジーンをせっつき、巽兄妹は病院に母子を見舞い、マトイ兄さんも恥ずかしがらずに、早く赤間健一みたいな真っ赤なシャツを着ると良いと思います。
 前編はVランサー問題への引っかかりを中心に少し作りが歪んだ感がありましたが、後編は今作ここまでの積み重ねを活かして見事なジャンプを決めてみせて、一山として満足の出来でした。
 今後心配されるのは、Vランサー最大の見せ場は「初登場の下駄強奪によるジルフィーザ撃退だった」事にならないかどうかです。
 頑張れ僕らのVランサー、コボルダぐらいはきっと倒せる。
 次回――またも全滅しかけるゴーゴーファイブを救うのは、謎の新戦士?!