東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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Vが如く・極

仮面ライダースーパー1』感想・第43-44話

◆第43話「世界が凍る!? 扇風機怪人の威力」◆ (監督:山田稔 脚本:富田祐弘
 開幕ジンドグマ学級会の珍しいパターンで、魔女参謀から一同にかき氷が配られると、悪魔元帥先生もメロン味大盛りに御満悦で、かき氷を堪能しながら悪巧みを聞く悪の組織首領の図は、初めて見たかもしれません。
 液体窒素でバナナを凍らせる実験を披露した魔女参謀は、この調子で日本中を凍り漬けにする計画の腹案を告げると、計画を実現させるに足る液体が、世界的な物理学の権威・尾崎博士によって開発された事について一同かき氷をつつく場でとうとうと説明がなされ、“茶飲み話感覚で日本凍結作戦の相談をしている連中”と考えると一種の怖さはあるのですが、
 「よし! それだ! 魔女参謀、すぐに作戦を進めろ」
 とかき氷片手にゴーサインを出す悪魔先生の適当な感じも含めて、空気の緩さが最高潮。
 作戦計画の夢いっぱい感は前半戦の悪の組織だったドグマに通じるものもあり、もう10話ほど前ならば、この“緩さが怖い”とか“底が知れない”といった雰囲気も出たかもですが、さすがに40話台ともなると、もう少し真剣味を持って活動してほしくなります。
 悪魔先生が機嫌良く太鼓判を押した事により、扇風機怪人が尾崎博士の研究所からコールド薬品を奪っていくと、事件の記事を見た良の音頭でライダー隊が尾崎博士の研究所の前に集い、〔かき氷 → 研究員2名殺害 → 場違いなほどコミカルなBGMで集結するライダー隊〕のアップダウンが激しすぎて、どういう気持ちで見ていればいいのか大変悩ましい作り。
 「見失わないように、発信装置を付けてくる」
 大いなる正義の前には、ちっぽけな倫理観など不要と庭先に潜入した良が博士の車に発信機を取り付けると、既に車に潜り込んでいたジンドグマによって博士ともども捕まってしまい、門の両サイドに張り付いたライダー隊の間を車が走り去って行くのが、どうにも危機感のギアが上がってこない画。
 夏休み期間もあってか、後半戦のコンセプトでもあるジュニア・ライダー隊の活躍に今一度スポットを当てるのがお題ではあったのでしょうが、現場に出せば出すほど画の緊張感を撲殺していくのは如何ともしがたく、なんだかもう、色々とやけっぱち感が漂います。
 メンバーから本部に連絡が入ると発信機を頼りに一也がバイクを走らせるも、自転車で列をなしたライダー隊が先行して車の後を追っていくので、スピード感も緊張感も皆無。
 隊道不覚悟は死あるのみ、とジンドグマ怪人を堂々追跡し、鋼の掟に従って前のめりに命を懸けるライダー隊だが、さすがに追跡に気付いた怪人の強風トラップにより危機に陥ったところに一也が駆けつけ、扇風ファイター部隊と激突。
 本日のファイターは派手に爆発して消し飛び、ここまで完全に正気を失っていたライダー隊が、
 「みんな危ないから早く帰るんだ、いいな」
 と一也にホームルームの挨拶みたいな事を言われると素直に解散して帰っていく姿に、見ているこちらの脳が漂白されそうになってきます。
 (博士、良、無事でいてくれ!)
 拉致された尾崎博士は良を人質に窒素コールダー液の大量生産を命じられていたが、そこに高笑いと共に現れるスーパー1。
 「この世に悪がはびこる限り、仮面ライダーは不滅だ!」
 「白々しい戯言を言うな! 行くぞ!」
 冷凍ガスと火炎放射の打ち合いになると……今回もあっさり怪人の能力を上回ってしまうファイブハンド(笑)
 逃げた怪人の後を追って地下のアジトに入り込むスーパー1だが、Vの遺伝子に目覚めた代償として《落とし穴に落ちやすくなる》《あらゆる罠にかかりやすくなる》パッシブスキルが発動し、まんまと閉じ込められて凍死の危機一髪。
 「ふふははははは、凍れ、凍れぇ!」
 四方八方から冷凍ガスを浴びて真っ白に凍り付いていくスーパー1ですが……そもそもの出自と運用目的を考えると、たとえ毒や幻術に弱くても、〔大気圧・極低温・超高温・海中・真空〕についてはいずれも耐性持ちな気がしてならず、先日の大脱出マジックの際の慌てぶりに続き、このまま宇宙に送り出してよいスペックだったのか大変不安になってきます。
 ――だがその時、スーパー1の電子回路に電流が走った!
 ……カズヤ! フロンティア・スピリットを忘れるナ!!(お馴染み、やりきった男の笑顔を浮かべたヘンリー博士)
 教えたダロウ……本日から貴様らは惑星用改造人間である。兄弟の絆に結ばれる貴様らのくたばるその日まで、どこにいようと惑星用改造人間は貴様らの兄弟だ。多くは外宇宙の惑星開拓へ向かう。ある者は二度と戻らない。だが肝に銘じておけ。 惑星用改造人間は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが人類は永遠である。つまり―――貴様らも永遠である!
 ッテナ!
 緊急時に発動する精神高揚プログラムにより、スーパー1がライダー忍法・懐中ファイブハンドの術から死んだフリで窮地を脱出する一方、尾崎博士は引き続きジンドグマの脅迫を受けており、毎度“博士の子供”だとワンパターンになるのを避ける意図はあったのでしょうが、「見ず知らずの子供(しかも勝手に庭に入り込んで車に発信機を取り付けていた)」の為に悪魔に魂を売れるのか? は葛藤のドラマの組み立てが見るからに難しく、圧縮されたフィクションにおける“人質と脅迫される側の関係”の重要性と、そこをねじ伏せる為には物量で突破するしかない事を改めて感じさせられます。
 細かい内容やタイトルは忘れましたが、それこそ「見ず知らずの子供の為に誘拐の身代金を払えるか?」を題材にした小説があった覚えで、パターン崩しの素材として持ち込むには、それに伴い発生する別の主題が大きすぎた感。
 「この子には気の毒だが、おまえ達に協力はできん!」
 それはそれとして、この時代の博士キャラのマインドは大抵70年代寄りなので、より大きな犠牲を阻止する為ならば、自身の命も目の前の小さな命もまとめて捨てにかかったところで、スーパー1が復活。
 扇風機部隊との殺陣などはなかなか見栄えがしたのですが、あまりにも話がガタガタで盛り上がりにくく、今度は冷凍ガス対決でも上回って扇風機怪人の尊厳をミンチにしたスーパー1だが、怪人を凍らせたところで魔女参謀に人質を突きつけられ……たと思う間もなく、流れるような美しいフォームで返事代わりに冷凍ガスを噴射(笑)
 人質を奪還された魔女参謀が瞬間退場すると、溶けかけの扇風機怪人の特攻は月面キックの前に散り、ジンドグマのかき氷大作戦は素材の入手段階で夏の日射しに溶けて消えるのであった。
 ジュニア・ライダー隊、中でも前半からのレギュラーだった良の出番を大増量するエピソードとなりましたが、ライダー隊の活動を成立させる為に、ジンドグマ含めて全ての空気を緩くしたら画の緊張感が見事に崩壊してしまい、絵空事の成立する基盤さえ土砂崩れでまとめて流されかける一本になってしまいました。
 また、人質にされて以降の良がほぼ全く喋らないのも大きなマイナスで、ライダー隊として粋がっていた良が、いざ人質に取られて命の危機を目前にすると怯えて声も出ない、のは一種のリアルではあるのですが、それはもう今更いらないリアリティであって、ここで必要だったのは、
 「父さん、駄目だ! ジンドグマの言う事なんか、聞いちゃ駄目だ! 僕はジンドグマと戦う、ライダー隊員だ! 死んだっていいんだ! ライダー隊の名誉の為だ!」(第32話)
 ではなかったかなと。
 ラストは唐突に西湖でボート遊びが行われるとドタバタ騒ぎで賑やかに幕となり、谷まで上半身裸でボートを漕ぐ中、一人だけがっちり着込み、絶対に水に入ってやるものかという意志を強く示す一也は、前回の水中マジックショーがそんなにトラウマになったのでしょうか……落ち着いて一也! あなたきっと、呼吸しなくても普通に活動できる機能がついているから!!

◆第44話「ニョキ・ニョキのびる ハシゴ怪人の魔手」◆ (監督:山田稔 脚本:鷺山京子)
 第22話以来22話ぶりに宇宙開発研究所が登場し、そこで一也が見せられたのは、ほんの微量をライフル弾に塗っただけで、一発で戦車を消し飛ばす威力を発揮する新開発のロケット燃料・X-ベータ。
 「今のところ、極めて安定性が悪く、小さな衝撃を与えただけで、大爆発を起こしてしまう。これだけの量を床に落としただけで、東京中が木っ葉微塵だ」
 「じゃあ、安全に制御できるようになるまで、実用化は無理か」
 …………え、いや、実用化云々どころか、どう考えても、現段階でそれだけの量を精製したり、ライフルで射撃実験とかしてはいけない代物なのでは。
 コケ芸一つで一千万都市が壊滅しそうでジンドグマも真っ青ですが、そのジンドグマはハシゴ怪人ハシゴーンを送り出すと、プールに向かう途中だったライダー隊と引率のチョロをまとめてさらい、空から目の前に突然ハシゴが下りてくるのは、インパクトのある画で良かったです。
 「たいへんだ。みんながさらわれた」
 やたら書き文字に凝ったサブタイトルが入ると、ひとり難を逃れたチビから本部に連絡が入る一方、チョロらはジンドグマによる能力テストを強要され、天からの人さらいとその後のテストには、規模は違うもドグマ時代のスパイダー怪人を思い出したり。
 おもむろに穴抜けを要求されるライダー隊の姿に尺が費やされる、前作以降お馴染みの組み立てとなると、チビに事情を聞いた一也はライダー隊が連れ去られる途中で道々に落としていったコインを目に留め、
 ナレーション「赤心少林拳で鍛えられた一也の目は、走るオートバイの上からも、小さなコインを見逃さなかった!」
 突然ナレーションさんが思い出す赤心少林拳――!
 一方、いずれも穴抜けテストをクリアできなかったライダー隊には処刑の危機が迫っていたが、大人なので相手にされていなかったチョロが立ち上がると、穴抜けに成功したら子供たちを助けてほしいと取引を持ちかけ、肩の関節をちょいっちょいと外して穴抜けに見事成功。
 「こう見てもこのチョロ様は、元・日本一の大泥棒!」
 発言は時間稼ぎのハッタリかもしれませんが、チョロといえば第4話「走れ一也! ドグマ死の結婚行進曲」(監督:広田茂穂 脚本:土筆勉)において手首の関節外しを披露しており、40話越しに伏線が回収されるミラクル(笑)
 折良く一也がアジトに辿り着くが、正面から堂々とバイクで乗り付けてきたので警戒装置に引っかかり、始まるハシゴカンフーバトル。
 戦闘員を蹴散らした一也の前には高いところで腕組みしながらハシゴーンが姿を見せ、
 「沖一也! このハシゴーン様が息の根を止めてくれるわ! 電磁光線!」
 え(笑)
 ハシゴ感0の飛び道具を放ってくる掟破りに一也が変身スーパー1すると、ハシゴーンはハシゴ伸ばしやハシゴ倒し、果てはハシゴ固めからのハシゴ電ショックでスーパー1を苦しめ、初手ビーム攻撃でどうなる事かと思いましたが、多芸なハシゴ技は面白みがあり、なかなか良い怪人でした。
 一方、どんな時でも正解は筋肉が教えてくれる、とスーパー1は小手先のテクニックを覆すパワーハンドで強引に脱出し、ハシゴーンは背中のハシゴを伸ばして空中へと逃走。
 子供達の救出に成功するスーパー1だが、実質身代わりとなったチョロはジンドグマに連れて行かれると洗脳光線を浴びて妖怪王女の忠実な下僕になっており、ジンドグマ幹部陣の前で、その潜入テクニックを披露。
 …………どう考えても作るべきは、“潜入工作用の人材をさらってくるハシゴ怪人”ではなく“狭い通路を難なく進めるスライム怪人”でしたが、丁度いい素材が倉庫にありませんでした!
 ライダー隊の証言から、ジンドグマの狙いがX-ベータと気付く一也だが、一足違いでチョロは研究所内部へと侵入。
 チョロの怪盗ミッションとスーパー1vsジンドグマの戦いが交互に描かれ、最近は、敢えて同じ属性をぶつけて力でねじ伏せるのが楽しくなっているスーパー1は、電磁光線に対してエレキハンドを選択。光線の打ち合いから敵がひるんだところに閃光キックを放つが、そこに慢心があったのかハシゴよけで回避を許し、カウンターを受ける不覚。
 そうこうしている内にチョロが怪盗ミッションに成功し、X-ベータを受け取ってハシゴで逃走しようとする怪人だが、その背に向けて、
 「エレキ光線、発射ぁ!」
 おい。
 「危ない!」
 じゃない。
 Vの遺伝子に導かれるまま、人質の扱いが雑を極めたスーパー1は、一千万都市が灰燼に帰す事を恐れぬ勇猛果敢な即断即決でX-ベータを無事に取り戻すと、必殺ハシゴ固めをライダー忍法・出初め式の術で打ち破り、月面キックで勝利を収めるのであった。
 背中に背負ったハシゴを伸ばしてどこからともなくやってくるワンギミックの出オチ系かと思いきや、巧みなハシゴ捌きでスーパー1を苦しめた思わぬ強力怪人だったハシゴーン(メタ的には、長いハシゴを振り回してスーパー1に叩きつける人がカメラの手前側に居たのかと思うと、ちょっと面白い)、X-ベータを手にしているところに背後から電撃を浴びせられるとは思いも寄らなかった常識が仇となってスーパー1の非常識の前に敗れ去りましたが、歴代ジンドグマ怪人の中でも大健闘の一体となりました。
 怪人が消し飛ぶとチョロが正気に戻ったところに研究所の人々がゾロゾロ現れ、どこからどう見てもチョロが犯人なのですが、通りすがりの仮面ライダーがなんかいい感じに助けてくれた事になって諸々は闇に葬り去られ、宇宙研としても勿論、出来れば表沙汰にしたくない不始末です!
 実は第4話の感想で、


 手首の関節ぐらいは外せるチョロ、前身がなんだったのか段々と不安になってきますが

 と書いていたのですが、半ば洗脳状態とはいえ、久々にチョロにスポットが当たり、昔取った杵柄(?)を見せてくれたのは、嬉しかったです(笑) チョロ、細かい行動で人の良いところを見せてくれるので、コメディリリーフとしては、嫌いではないキャラ。
 次回――ジンドグマ、とうとう怪人を公募する。