『救急戦隊ゴーゴーファイブ』感想・第17話
◆第17話「マトイの花嫁候補」◆ (監督:長石多可男 脚本:宮下隼一)
「なんという不甲斐なさ……栄えある災魔一族の血を分けたものとして、情けないぞ。ドロップ! ディーナス!」
災魔一族では長女と三男が長兄ジルフィーザからお説教を受けていると、次男坊(2クール目の山場で退場しそうな第一候補)が眷属最強のサイマ獣・ゲネムージャを引き連れ、自ら打って出ると宣言。
一方、巽家の食卓では、マトイがショウの作ったスパゲティにねちねちと文句を言っており、料理当番がマツリに丸投げにされていなくてホッとしましたが、番組史上最高に感じの悪いマトイの株価下落がモンドを追い抜きそうな勢いで兜町を暗黒に染めていきます。
「愛が無いから、こういう味になるんだろうな~」
「また始まった」
パワハラOBかDV男みたいな空気を漂わせるマトイは、ナガレに噛みつかれると次から次へと弟たちへの文句を口にして一人で食卓の雰囲気を最低にしていき、
「それからマツリ!」
遂に、愛され枠のマツリ(髪型変わった?)にも噛みつくかと思われたが……
「そこまで! ……夕食当番、マトイ兄ちゃんだってこと、忘れないでね」
「……そだっけ」
「言っときますけど、カレーは駄目よ」「毎回カレーだもんな、マトイ兄さん」「たまには違うバリエーション見せてほしいな~」
「……な、ナニ」
「見せてくれるんじゃないの?」「そりゃそうだよね。立場が無くなっちゃうんもんね」
にっこり笑顔で切り返したマツリに続いて逆襲の集中砲火を浴びる羽目になり、明らかにマツリに矛先を向けた事で天から朝敵指定を受けましたが、基本的にマトイ兄さんが感じ悪い態度を見せると弟妹から反撃を受けて帳尻合わせが図られるのは、今作の目配りの感じられるところ。
長兄の立場を見せる為に買い出しに向かったマトイは、偶然知り合った小学生の女の子から買い物の講釈を受け……マトイに、春が、来た?
仕事をしている母親に代わってよく料理をしているという、沢口えりか・9歳への挨拶で、マトイ兄さん24歳(若いな……!)と判明し、
「性格はいたって温厚。みんなに慕われる、長男であります」
歪んだ自己認識を、しれっと、口にしていた(笑)
後段はアイデンティティに直結しているとして、子供向けのポーズでなしに、本気で自分のことを「温厚」だと認識しているとしたら、ちょっと怖いよマトイ兄さん。
それとも、「昔より丸くなった」みたいな意味なの兄さん?!
首都消防局の元関係者の皆さんに緊急アンケートを採りたくなってくる中、暴走する幼稚園バスを目撃したマトイは、荷物を放り捨てて着装。
なんとかバスを止めると、その原因とおぼしきサイマ獣・ゲネムージャの奇襲を受けるが、パワー不足で大技が不発に終わったサイマ獣は、赤の反撃を受けるとそのまま逃走。あまりの手応えの無さに困惑しながら一同が家に帰ると、そこでは沢口えりかがカレーを煮込んでおり、戦隊の本拠地と直結している割には、相変わらずセキュリティに不安が……と思ったら、モンドに話が通っていてホッとしました(笑)
「だってお兄ちゃん、ゴーレッドの時は強くて格好いいいけど、お買い物の時は全然頼りなくて可愛いんだもん。えりか、お兄ちゃんの面倒、全部見るって決めたんだ」
「ええっ?!」
なにやら、マトイの社会不適格系ヒーローぶりが琴線に触れたらしい、えりか(モンドも若い頃、こんな感じで女性に世話を焼かれていたのではないか疑惑)が、齢9歳にして押しかけ女房を気取ると、外堀を埋めカレーで胃袋を掴みにかかるが、園児たちを運んだ病院から連絡が入るのに続いてサイマ獣が再び出現し、次々と意識不明の昏睡状態に落ちていく子供たち。
「おぉぉ、パワーが、漲ってきたぁ!!」
地響きサイマ獣は、穢れのない子供たちの生命エネルギーを吸収して純粋な破壊パワーに変換するかなり悪質な能力を持っており、赤の攻撃を軽々と跳ね返し、大地を裂いてゴーゴーファイブをまとめて吹き飛ばす恐るべき力を発揮。
そこに、どうしてもマトイにカレーを食べてほしいえりかが現れ、えりかをかばった赤を青緑黄桃がかばう形になって全滅の危機に陥るが、サイマ獣はまたもエネルギー切れを起こして撤収。
戦いに巻き込まない為にもえりかを厳しく突き放したマトイは、家に戻って弟妹4人に謝罪すると、えりかの気持ちも汲んでタッパに詰められたカレーを頬張るのですが……マトイ渾身の爽やかスマイルを見せたり、バスからかばっての〔命を救う〕イベントなどがあったにしても、えりかのマトイに対する執着の動機付けが弱く感じて話に入りにくく、マトイ兄さんに憧れを抱くくだりに、もう少し劇的さが欲しかったところ。
その為、優しさと厳しさの間で揺れるマトイの反応も、どうも中途半端な印象。
出入りの激しいサイマ獣が再び出現すると巻き込まれたえりかも昏睡状態に陥ってしまうが、えりかが拾っていたマトイのペンダントが昏睡光線を反射して反撃の糸口を掴むのもだいぶ都合が良くなってしまい、序盤から映像上のフォーカスはしていたものの、それそのものには特にドラマが無い、というのは面白みの無い要素になってしまいました。
昏睡光線を反射されたゲネムージャは、自身が睡魔に襲われたところにカラミティブレイカーを受けて粉みじんとなり……ピエール、生きてた。
再生サイマ獣には光属性のビクトリーロボが出撃すると、かつてなく強力な火炎放射に苦戦するも、ハシゴキックでの反撃からお祓いプロミネンスで災魔退散し、大勝利。
子供達は生命エネルギーを取り戻して目を覚まし、えりかはマトイに今度カレシを紹介したいと告げて、
「要するに……えりかちゃんにとって、マトイ兄ちゃんは、お父さんみたいな存在だった、てわけね」
と、憧れは憧れでも「仕事は出来るが家庭ではダメなお父さん」とオチが付けられ、妥当ではあるのですが、このオチの為に途中経過の劇的さを欠いた節があり、どうも全体的に生煮え感の強いエピソードでありました(えりかが母子家庭らしきニュアンスはあるも、特に掘り下げられなかったり)。
一方、イベントまであと二ヶ月。遅々として原稿が進まず大魔女グランディーヌより叱責を浴びたジルフィーザ(2クール目の山場でドロップ成長と入れ替わりで退場する可能性が否定できない)は、自ら最前線に出る決意を固め、次回――冥王怒りの出撃。