『仮面ライダースーパー1』感想・第40話
◆第40話「あっ人間が溶ける! 石けん怪人出現」◆ (監督:佐伯孚治 脚本:吉田耕助)
幽霊博士の開発した、人間を溶かす恐怖の石けんを試供品として街で配り歩くジンドグマ。
バイクで走っていた一也は、覚醒しつつあるライダー悪のあるところセンサーが反応したのか、見た目ただのサラリーマンがポストに何かを投函しているだけの姿にやたら鋭く誰何を飛ばし、声をかけて逃げ出したらジンドグマだ!
荒ぶる一也は背広の男を追おうとするが、バイクファイター部隊の陽動に引っかかるとシャボン怪人をバイクで追跡した末に、前回に続いてジンドグマ忍法・交通事故隠れの術により逃走を許してしまう。
「どこへ逃げても、探し出してやる!」
……冒頭から一也が妙に殺気立っていて困惑するレベルなのですが、半日かけて積み上げたトランプタワーをドグマファイターに崩されたとかあったのでしょうか。
その頃、自宅で問題の石けんを使ったチビがジンドグマの実験通りに溶けて肉塊と化すと排水口から下水に流されていく紛う事なきグロ映像で、さよなら、チビ……。
毒ガス実験だったり前回の警備員だったり直接的な殺害シーンもあるものの、映像としてはスリラー路線からは離れ加減の今作だけに、どぎつめの表現で驚きましたが(しかも対象は、一番の年少者)、ミチルが谷モーターショップに駆け込んで事情を話すと谷の方も既に怪事を掴んでおり、一也へ連絡。
一方ジンドグマでは、スライム状の肉塊と化した人間は、再生装置にかける事で元の姿を取り戻すが、身も心もぐにゃぐにゃになるので容易く支配下に置く事ができるのだ、と幽霊博士が作戦の概要を説明しており……スプレー怪人の時と同じ形式の二度手間で、日常品に悪意を仕込む狙いはともかく、回収に手間暇をかけるデメリットの方が大きい気がしてなりません(笑)
まあ、チビを襲う悲劇の方が話の主眼で、ジンドグマの作戦や再生手段の方が付け足し、といった感じではありますが。
「よし! 見事スーパー1に、その石けんの泡踊りを踊らせてみよ」
一也が殺気立っている一方、元帥先生は本日はご機嫌で、多分サマージャンボで1万円が当たりました。
「チビ、どうなっちゃうんだろう……」
その頃、ミチルは川面を見つめ、もはや正ヒロインの貫禄たっぷりの表情を見せていたが、このまま小娘の好きなようにはさせぇぇぇん! と手下を引き連れたハルミが乱入。
ライダー隊もチビ探しに協力を申し出ると、二手に分かれて下水の行方を追う内に、ハルミ・良・ミチル組が、川を流れて声を出す肉塊と、それを回収する作業員の姿を目撃。
「後は再生装置にかけて、瓶詰めのゼリー人間を元に戻すだけか。ふふふふ」
正体を見せた怪人とドグマファイターに捕まりそうになるハルミらだが、そこに「この世の汚れを落とす」と怪人に石鹸を投げつける作業員コスプレの男が闖入し、
「何者だ!」
「ははははは……赤心少林拳! 沖一也だ!」
変装を解いて名乗りをあげる超正攻法のヒーロー仕草を発動し、ここ数話、一也が狂気の強火をまとわりつかせながら主役に返り咲きつつあるのは、有り難いところ(代償として、ライダー隊その他の面々は当然のように存在感が泡のように消えていきますがやむなし)。
土手で格好良く投げ技を放つ一也だが、ジンドグマ忍法・あわあわボディを前に正拳突きを封じられると変身スーパー1。
だが、あわあわボディは旋風キックさえ無効化してみせ、「ぬるっ」と自分で擬音をつける怪人がお茶目で、ここだけで物凄い面白怪人ポイントを獲得しました(笑)
スーパー1を翻弄した怪人は忍法・つるつるエスケープすると、一度は逃げ出したハルミ・良・ミチルを人質に取り、Bパート早い内に長めの尺でスーパー1と怪人が戦うも決着が付かず、直後に怪人が人質を取るちょっとしたパターン崩しは、同じ吉田脚本だったハサミ怪人回と類似の構成。
この後、
●マサコ達の話を聞いた谷とチョロがハルミらを探し回り、スーパー1vs怪人の戦闘の痕跡を発見
●あわあわボディ破りの為に自発的に座禅を組んだ一也が即席の修行(イメトレ?)を行う
●ジンドグマのアジトではゼリー人間の再生作業を開始
の3シーンを挟んでから、バイクで走り回っていた一也の元へとシャボン怪人から人質を取ったと連絡が入るのですが、話の展開になんの影響も与えないままこれっきりの谷&チョロ・あっさり切り上げられている修行・再生具合を確認してから人質の存在を思い出したような動きをする怪人、と不自然極まりない組み立てで目が白黒。
たまには谷とチョロを動かしたかったとか、初心に返って修行シーンを入れたかったとか意図はあったのでしょうが、急に理性を発揮してライダー隊の暴走を止めようとする谷も別人のようなら、一也の修行もやっつけ感に溢れており、どうせやるならもっとしっかりと話に組み込んでほしかったところ。
人質死亡までの猶予が「12時間」というのも意味不明レベルの長さですし、別にその長さが意味を持つ(その間に対抗策を編み出す)わけでもなく、クライマックスバトル手前で話のテンポをズタズタにした後、これといって罠も伏兵も無い場所で戦闘員を蹴散らしたスーパー1は、シャボン怪人と再びの一騎打ち。
「そうだ、奴を凍らせてやろう」
前回はライター怪人をエレキ光線で葬ったので、今回こそ低温ガスを使いますぐらいのノリで怪人を凍らせてから旋風キックを叩き込むと、怪人の首が吹っ飛んで残る胴体が大爆発を引き起こし、修行の意味、特に無かった。
……となるところでしたが、さすがにそこまで酷くはなく、なんと地面に転がっていた怪人の頭部からボディが再生。
「俺は不死身だ。おのれ!」
「奴の再生能力は、頭にあったのか」
怯むことなきスーパー1は復活したての怪人にジャンピングチョップを浴びせてさっくり首を刎ねると、宙を舞う頭部に月面キックを叩き込んで今度こそトドメを刺し、修行の意味、本当に無かった。
冒頭のチェイスシーンにおいて怪人が故意に水たまりに落ちて姿を隠す場面はどうやら、体を溶かして追跡を逃れたが頭部から再生できるのだ! の前振りだったようですが、スーパー1はそれを知らないので「再生能力」に言及するのが自然にならず、なにより、あわあわボディの攻略と座禅の間になんの因果関係も無いまま勝利する……わけはさすがに無かった! と思わせておいて、本当に無かった! と持ってくる虚無の二段構えは、予想外すぎて呆気に取られるレベル(笑)
再生装置にかけられていたゼリー人間たちはジンドグマの手から解放されてチビもミチルの元へ戻り、3クール目も終わるから、ジンドグマ四天王……の代わりにライダー隊のメンバー殉職、は回避されましたが、ショックシーンありきで作って残り全部バブル仕立てみたいな、今作標準で見ても残念なエピソードとなりました。