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狂気の竈に火をくべよ

仮面ライダースーパー1』感想・第39話

◆第39話「強力ライター怪人の弱点はどこだ!!」◆ (監督:佐伯孚治 脚本:伊上勝
 東京都内で原因不明の火事が続発!
 それを引き起こしているのはジンドグマのライター怪人・フランケライターであり、警備委員を焼き殺そう……として途中でファイアストーン(火口的なもの?)が切れる一幕の後に出るサブタイトルが、酷い(笑)
 「燃えろ燃えろ悪魔の炎! 天を焦がして焼き尽くせ!」
 「鬼火司令!」
 作戦の成果を見つめる鬼火司令の背後に、いきなりスーパー1が姿を見せる変化球で冒頭から両者が激突すると、鬼火に変じた司令に代わってライター怪人が飛び出してきてスーパー1のパンチもキックも平然と受け止め、前回に続いてジンドグマ怪人の素材が強化されているのかもしれません。
 「焼き殺してやる。ふぁぁいやぁー」
 ライターの炎に炙られ苦しむスーパー1は、ちょっと考えてから……チョップで強引に蓋を締めた。
 「居ない。……恐るべき怪人だ」
 そう、なの?!
 思わぬ弱点を突かれたライダー怪人は姿を消し、スーパー1が先代に倣い敵を褒めて自分の株も上げるスタイルを会得しつつある一方、本日も幹部陣がくだをまいているところに悪魔先生が出勤してきて、起立・礼・着席。
 ジンドグマでは、ライター怪人の量産化による同時攻撃により東京全土を火の海にしようと目論んでいたが、肝心の開発者が、もうこんな待遇でやってられっか! とストライキを起こし(元々、さらわれてきて世間では行方不明扱いの模様)、やむなく要求を呑んだ鬼火司令は、息子に会わせてやると約束。
 和装の中年紳士に変装した鬼火司令が父を探す少年を連れ去ろうとしたところで、緊急招集のかかったライダー隊が四方八方から投石を仕掛け…………うーん……時代感覚の差も出る場面ではありそうですが、戦闘員に目くらましを当てるぐらいならまだともかく、(結果的に)怪人どころか幹部クラスにまで直接攻撃を仕掛けてしまうと、ライダー隊の周囲に張り巡らされた不可視の結界が露骨になりすぎて、やはりどうにも、場の緊張感を削いでしまいます。
 実際問題、かつての少年ライダー隊もかなりトンデモ(時に世界観を棄損する要素)ではあったのですが、総じて空気緩めのジンドグマ編にしても今回だって冒頭で警備員2名が無惨に焼き殺されているわけで、「密偵レベルを超えてジュニア・ライダー隊が最前線まで出てくる」と「場のリアリティラインの崩し具合がコメディリリーフ同然になってしまう」のは個人的に飲み込み辛い部分であり、また「それを力尽くでねじ伏せるだけの“狂気”は今作には存在しない」のを感じさせられるところ。
 正体を現した鬼火司令は、ファイターをライダー隊にけしかけている間に少年を強引に車へと押し込むが、後部座席に脚を組んで座っていたのは、誰あろう沖一也(笑)
 「この子の代わりに、俺を案内してもらおうか」
 「ふざけるな!」
 すっかりVの遺伝子に目覚めてしまった沖一也、どう好意的に解釈してもライダー隊を囮に使っているのですが……いや待って、K先輩でもそこまでした記憶は無い(…………たぶん)ので、どちらかというとタックルに対する初期のS先輩みたいな対応になっており、もう駄目かもしれません。
 ここ数話の伊上回の一也は、伊上先生が昔の引き出しの中身そのままで書き加減の為にすっかり70年代ヒーローと化している一方、主人公の狂気の炎がジュニア・ライダー隊に多少の焼き目を付けている部分はあり、長年の肌感覚の賜物なのか、現状の今作(ジュニア・ライダー隊)を成立させる為に必要な火力を補おうとする形になっているのは、少々面白いところ。
 鬼火司令は、一也を轢き殺そうと車で追いかけ回すも派手に事故ると姿を消すが、その間に少年とミチルがライター怪人によってさらわれてしまう。
 ライター怪人はミチルを人質にして一也を地獄ヶ原に呼び出し、念入りに十字架に磔にされて処刑場に運ばれていくミチルは、もはや番組後半の、正ヒロインの座を得ようとしていた。
 鬼軍曹の座を手に入れて嬉々としている内に思わぬ伏兵に足下をすくわれそうで、危うしハルミ。
 果たして最終回までに、逆さ磔やハムスターギロチンにかけられて、正ヒロイン力を高める事はできるのか?!
 それはさておき、ジンドグマの所業に憤る博士と怪人の、
 「おまえは、それでも――」
 「おっと、生憎と人間じゃないぜ」
 は洒落た言い回しのやり取りで秀逸でした。
 ライター地雷の待ち受ける地獄ヶ原に一也が突入する一方、再会した息子の言葉に奮起した博士がハンドメイド火炎放射器を手に怪人に立ち向かい、時に暴力に屈するが、時に暴力に立ち向かう、人の心の弱さと強さが織り込まれるが敢えなく捕らえられると、一也もまた地雷を踏んで木っ葉微塵?!
 ……まあ勿論そんなわけはなく、死と再生のイニシエーションを瞬間的に通過する自作自演により、
 「爆風を利用し、空を飛び変身したんだ」
 …………………………あの、スーパー1さん?
 今、ミチルの前で、沖一也=スーパー1と自白したのですが、いくらほとんど公然の秘密であり、一同揃って“気付いていないフリ”のロールプレイをしている可能性大とはいえ(多分、チョロだけ気付いていない)、当人が皆の気遣いを踏みにじるのはどうなのでしょうか。
 みんなこれまでずっと、(一也さんは秘密のヒーローの方がテンションが上がるんだな……)と考えて、優しい気持ちと生暖かい視線でプレイに付き合ってくれていたのに、ガッカリです、大変ガッカリです。
 後で反省文を書いて、風見先輩の元へ速達で送って下さい。
 ……真面目な話としては、種明かしの誘惑に負けて完全にやらかしているのですが、元より秘密の必然性は薄いとはいえ、作品としてはもう少し気を配ってほしかったところ。
 ただそこで、珍しいOPインストアレンジの音楽が入るのは格好良く、戦闘員をばったばったと薙ぎ倒していくと、ライター爆弾をくぐり抜け、いよいよ怪人と一騎打ち。
 博士のアドバイスを受けたスーパー1はエレキ光線でファイヤーストーンを破壊し、自慢の発火能力を失い恐慌状態で無様に這いつくばるライター怪人を蹴り転がし、投げ飛ばし、弱ったとことにスーパーライダーはんてーんさんだーんキックを打ち込み勝利を収めるのであった。
 博士の息子はライダー隊アメリ支部員として盃を受け、つまりこれは、「沖一也=仮面ライダースーパー1である、と口外したら消す」という血の盟約であり、ジュニア・ライダー隊は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが仮面ライダーは永遠である。つまり――貴様らも永遠である!
 次回――チビ、永遠になる。