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シュレディンガーの箱の中

救急戦隊ゴーゴーファイブ』感想・第14話

◆第14話「恐怖のウィルス」◆ (監督:小中肇 脚本:宮下隼一)
 災魔一族は武蔵岳の山腹でマグマゴレムの破片を捜索しており、毎度巨大化の度に着ぐるみ改造するの……? と思っていたら、ゴレムカードは使い捨てで納得。
 ピエールが陣頭に立っての捜索も成果は得られず、今回はひとまず普通にやろう、とジルフィーザの眷属・サイバギルドが生み出されると地上に送り込まれ、前回の流れでマトイらが訓練に励む中、ナガレはビクトリーロボのメンテ中。
 椅子に座って画面とにらめっこするナガレとモンドの姿が重ねられる一方、電脳サイマ獣はウィルスはウィルスでもコンピューターウィルスをネットワークに放ち、今、コンピューターワールドの平和が危ない!
 いきなり、時代に合わせてアップデートされまくったサイマ獣が現れて面食らいましたが、正攻法の有翼の悪魔といったデザインで、見た目と声(林一夫!)の格好良さで、有無を言わせず話を進めていくスタイル。
 一方、訓練を終えた巽兄妹が家に戻るとそこに待ち受けていたのは、宇宙飛行士の秘密のスキルでいつの間にやら上がり込んでいた速瀬京子。
 「先輩、フライトは?」
 「今日はオフ」
 とフォローが入って、量子ゆらぎになりつつあった「速瀬京子は宇宙飛行士」が観測されると共に、実家は老舗の寿司屋、と設定の増えた速瀬から握り寿司が提供されて巽家一同は食い物で買収され、頭使うと疲れる、とかんぴょう巻を奪い合うモンドとナガレ。
 「……なにこの二人?」
 「……ナガレは癖とか好みとか、なんだか父さんに似てるんだよなぁ」
 なお、印象があまりに良くない、と判断されたのか、第5話では速瀬に鼻の下を伸ばしていたモンドは、そんな素振りは一切見せずにかんぴょう巻に夢中であり、実際印象は良くなかったので適切な判断だったとは思います(笑)
 かんぴょう巻を巡る骨肉の争いは、サイマ獣の引き起こしたコンピューターウィルス騒ぎによって中断され、その影響はファイアウォールを突破してベイエリア55にまで!
 本拠の全機能停止寸前、自前のノートパソコンでナガレがセキュリティを強化して事なきを得ると、5人は打倒サイマに出撃。
 サイバギルドのウィルス攻撃に対し、こんなこともあろうかとナガレが開発していたアンチウィルスガンで対抗するが、強化されたウィルスを直接スーツに流し込まれたゴーゴーファイブは完敗を喫し、冒頭の「あの箱にダメージを与えたぞ!」に続き、「ゴーゴーファイブを蹴散らしたぞ!」で大喜びしている災魔4兄妹、いつの間にか志がだいぶ低くなっている気がして心配です。
 もっと意識を高く持とう!!
 明日へのイノベーション!!
 災魔の宮殿では、グランディーヌ様を讃える挿入歌と共にインプのダンスが描かれる突然の謎すぎる『ジュウレンジャー』ノリの一方、すぐに手の平を返す事に定評の生まれつつある巽兄妹はナガレにブーイングを送っていた。
 「科学を実践の場で通用させる為には、理論だけでは、不充分だ。それがわからない内は、ナガレは私にはかなわん」
 モンドが新たなウィルスバスター銃を手に姿を見せると一同元気を取り戻し、心の中では多分、手首の入念な準備運動を行っています。
 相次ぐ厭味にヘソを曲げたナガレが家を飛び出して《家出》実績を解除すると、東京湾を見つめて黄昏れていたところに速瀬が巻き寿司を差し出し……なんか、ちゃんと役に立った!!
 いや正直、ここで出てこない可能性も否定しきれない、と戦々恐々していたので、気遣いを見せてくれて心底ホッとしました(笑)
 小さい頃は父の後を継いで寿司屋になりたかったと語った速瀬は、比べられるのを承知で父の背を追いかける道を選んだナガレは偉い、と励まし、速瀬の言葉とモンドの態度に思うところのあったナガレがかんぴょうパワーを充電して立ち上がる一方、サイバギルドが標的に選んだのは、首都航空宇宙局(大抵の物は首都にある世界ですが、なるほどここが速瀬の職場でしょうか)。
 サイマ獣の目標を読んでマトイに連絡したナガレは、通信衛星ジャックを寸前で妨害するも再びスーツにウィルスを流し込まれて倒れるが、マトイらが駆けつけるとウィルスバスターで回復し、手の平を返す準備は万全だったのに、凄く普通に強いぞウィルスバスター。
 「さすが父さん……」
 「お兄ちゃん!」
 宵越しの銭とデリカシーは持たないマトイがマツリにたしなめられ、口を半開きにしたまま恐る恐る青の様子を確認する表情が、今作ここまでトップクラスの面白さ(笑)
 「……行くぞ、兄さん!」
 だが青は、自身の進む道がいやでも父と比べられるものであること、父が敢えて厳しい物言いで自身を甘やかさないでいることを、己の「選択」のとして飲み込んでみせ、残りメンバーも揃って着装。
 今度こそ立派なメイン回で前口上をもらったブルーは、得意のウィルスを封じられてフライング頭突きに訴えてきた怪人を受け止めると放り投げ、ロープで身動きを封じたところにカラミティブレイカーで任務完了。
 再生カードで巨大化したサイマ獣は、超救急の箱に瞬殺される、かと思われたがなんとグランドストームに耐えてみせ、新型ロボが2話連続で気持ちよく敵を圧倒できないのは、意表を突かれる展開となりました。
 何かに気付いた青がサイマ獣を分析するとビクトリーロボへの乗り換えを進言し、グランドライナー連結解除から、救急ロボが出撃しての緊急合体が描かれる変化球。復活したVロボは、回転ハシゴパンチからのビクトリープロミネンスでサイマ獣をぶった切り、再生カードによって復活巨大化したサイマ獣は、属性が死霊なのでグランドストームよりもビクトリープロミネンスの方が効果的だったのだ、と説明が付けられて、ビクトリーロボはめでたくエクソシストにクラスチェンジ。
 つまりここに、〔デンジシャワー → 太陽戦隊の合体除霊光線 → 太陽はおお命の星だ! → ビクトリープロミネンス〕の系譜を見ることができそうです。
 まあ理屈は少々強引になりましたが(グランドライナーが通常のサイマ用の必殺兵器を持たないのはちょっと不自然ですし)、メタ的には折角買ったロボットが1クールでお役御免はあんまりなので、グランドライナーに収納可能なプレイバリューを持たせた上で、VロボにはVロボの得意属性がある、としてくれたのは1号/2号ロボの使い分けも含めて配慮を感じる落としどころでした。
 自慢げにソファにふんぞり返るナガレにケチな対抗心を燃やすモンドはウィルスバスターの貢献をアピールするが、速瀬が銃を手に取ると、その銃座にあったのは「流」のサイン。
 「……あ」
 ウィルスバスターはナガレの発明品をモンドが不正改造したものと判明し、家庭が大・大炎上で、つづく。
 前回の掘り下げはいまいちの出来だったナガレでしたが、兄妹の中における頭脳派の役回りから、5人の中で一番ストレートに父の背中を追う立場にある、という位置づけに接続されたのは、個性と味付けの納得度が高くて良かったです。
 一方、コックピットでの喜びようなどを見るに、クール路線は捨てに入った様子ですが、そのルートには後年、数多の青っぽかったり黄色っぽかったりする屍が累々と横たわる事になるので、それで正解な気がしてなりません(笑)
 また、ここまでどうも持て余していた感じのあった速瀬京子についても、〔仕事-現在地-背景〕を揃えて描いた事により、「仕事もあるので四六時中は無理だが、できる範囲でゴーゴーファイブをサポートしたい人」の位置づけが安定したのは大きく、手土産として違和感のない寿司に始まり、父子の関係についてエピソードのキーマンの役割を与えつつ、本筋ではないがサイマ獣の攻撃目標として職場らしき場所を出す事で全体に一本の線を通してみせたのは、鮮やかでした。
 今回の副菜として、個人的にかなり評価ポイント。
 そして残るは、マトイとマツリの家出を待つばかりとなりましたが、次回――ドロップ出撃! ピエールがたくさん喋る! と申しております。