『仮面ライダースーパー1』感想・第38話
◆第38話「危い! 冷蔵庫怪人の中に入るな!!」◆ (監督:山田稔 脚本:江連卓)
サブスギール帝国からやってきたコゴエンスキー司令官(前作第22話)、の親戚みたいな名前の怪人コゴエンベエでしたが、脚本は江連さんでした。
行川アイランドでの強化合宿中に、上官の横暴に対して反乱の気運でも高まったのか、自転車整備を抜け出してかくれんぼを始めたライダー隊員がゴミ捨て場にあった冷蔵庫に吸い込まれてしまい、これぞジンドグマの四次元トンネル作戦!
「四次元トンネルをくぐると、そこは、ジンドグマの、すばらしーいユートピア王国であった」
「その世界を見た子供たちは、ジンドグマの絶対的な支持者となる」
「そういうわけなのよ、鬼火さん」
「ふん、幽霊博士の作戦など、うまくいくものか」
冷蔵庫内部の四次元トンネルをくぐり抜けたハルミらが辿り着いた、花が咲き誇る美しい世界がメルヘンな音楽とスローモーションで幻想的に描かれる一方、マサコに呼ばれた一也らがゴミ捨て場に到着すると、唸りをあげる冷蔵庫。
ハルミ達を救出する為に一也も冷蔵庫の中に飛び込んでいき、チョロは、なにかある時は黙ってチビを抱えるのが、ちょこちょこ好感度が上がります(笑)
「冷蔵庫の中がトンネルとは……一体どうなってるんだ」
「……ふははは、おーきかずやー!」
一也の前には冷蔵庫怪人・コゴエンベエが姿を現し、あまりにもそのままなデザインの、手足の生えた冷蔵庫と殴り合う羽目になる沖一也(笑)
いっそもう、氷を模した頭部は付けなくても良かった気さえしてきます。
「凍え死ね沖一也!」
冷凍ガスを浴びた一也がスーパー1に変身すると怪人は逃げていき、トンネルを抜けて夢の国ユートピアンに入り込む一也だが、兵隊に見つかって不法入国者として連行され、赤ランプ回に続いて、ちょっと不条理展開に弱かった。
恐らく、昭和歴代の中では最も不条理展開に弱い気がする一也、今後のジンドグマの作戦展開において、検討して欲しいウィークポイントです。
一方のハルミらは、ユートピアンの知事を名乗る男の案内を受けて時空の一部が行川アイランドに接続されると、瞬間学習装置や自動調理器の説明を受け、“自然の楽園”に始まって“夢の未来社会”に繋がり、“人間の思考力を奪う世界”の危険性から、一也パートで“裏の顔は管理・階級社会”、そして“戦争風刺”と、ユートピア/ディストピア物の定番要素の断片を次から次へと放り込んだ結果、何を一番の主題にしたいのかが完全にぼやけてしまい(全部やる、のはどだい尺の関係で無理なわけで)、全てがキャンパスの上でのっぺりとした絵の具の染みのようになってしまう事に。
特に致命的だったのは、ユートピアン大統領を称する悪魔元帥先生がTVで「一億国民火の玉となり、世界に向けて銃を構えよ」と演説を始めるくだりで、そもそもは偽の理想郷を見せて構成員を増やす――敵の工作員を抱き込む――みたいな作戦だった筈が、世界のどこかにジンドグマシティがある、みたいな別の状況が始まってしまった上、「文明」から「戦争」へと急に刺す対象を変えるのも流れが悪く、筋道が完全に行方不明になりました。
それまで怠惰に溺れまくっていたライダー隊員が、ジンドグマが出てきた途端に正気を取り戻すので前半のテーマもどこかへ消し飛び、たまに悪魔元帥先生にホームルーム以外の出番を作ったら、壮絶なやらかしで、作戦が台無し(笑)
強制収容施設(一也、ファイターが現場監督しているのに普通に労役についていて、なまじ優秀な研究者脳が不条理時空に追いついていません)やそこからの大脱走が描かれるのも“如何にも”ですが、“脱走の為の脱走”が始まるとライダー隊の存在はかき消え、東映ヒーロー作品でいうと、全体的に『イナズマンF』っぽいノリ。
ライダー隊に向けて「明日の戦争の兵士になるのだ」と言い出す辺りは(これもこれで例え話や風刺の意図は強そうですが)、どちらかというと前半戦のドグマっぽいドリーム感ですし、ジンドグマの山賊主義――の到達点としての理想郷とはどんな姿か――の色味も薄れてしまいました。
囚人たちとライダー隊を連れて脱走を図った一也は冷蔵怪人の奇襲を受け、コゴエンベエいわく「わざと脱走させる罠」との事ですが、一応、足手まといを沢山連れたところに奇襲、の形を取っているものの罠というほどの効果はまるでなく、ここも“支配からの脱走”モチーフを入れたかっただけ、といった感。
“子供のドリーム洗脳”と“ジンドグマ恐怖のユートピア”を一つの箱にまとめて入れて、焼肉トンカツ弁当……だけでは飽き足らず、エビフライと鶏南蛮とサケの切り身も入れたら箱が破れて漬け物だけが残った、みたいなエピソードでしたが(トンネルに入ってから全て、冷蔵庫怪人による大がかりな催眠攻撃だった可能性もありますが)、夏の勢いで半裸を披露した一也は戦闘員を蹴散らすと、変身スーパー1。
「ジンドグマの野望は、俺が打ち砕く!」
いつもより飛び回るスーパー1は戦闘員を次々と蹴散らしていき、いよいよ冷蔵庫と一騎打ち。
なにぶんボディが真四角なので、どうにも殺陣が映えない冷蔵庫は勢いよく冷凍ガスを放つが、もちろん火炎放射で反撃されると月面キックにより弾け飛び、ユートピアンに囚われた人々は無事に元の空間に帰還するのであった。
「努力もしないで勉強ができるようになるなんて、絶対ないんだぞ。一生懸命勉強して、一生懸命遊ぶ。わかったね」
ラストも突然、後半など無かったかのように前半のテーゼにトンボ返りを打って、とってつけたような一也の説教モードでオチとなるのですが、もしかするとそもそもは「危い! 冷蔵庫の中に入るな!!」をメッセージとして一本お願いします、というエピソードだったのかもしれません。
次回は炎だ!!