東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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風に乗る不滅の魂

仮面ライダースーパー1』感想・第35-36話

◆第35話「怪奇イス人間! 処刑の部屋!」◆ (監督:冨田義治 脚本:伊上勝
 ジンドグマの科学研究所では、さらってきた人々を相手に非道な毒ガス実験が行われており、その様子を悠然と見つめる悪魔元帥とジンドグマ四天王が……凄く普通に悪そうだった。
 ……いや、これまでも人的被害をそれなりに出してはきたのですが、本日はランチのテーブルも広げていない!
 「ふふふふ……儂の作ったドクロガスは、5秒で人間を溶かす」
 凄いぞジンドグマ!
 格好いいぞジンドグマ!
 君も、ジンドグマに入って一緒に山賊をしないか?
 雰囲気と路線の違いが激しく、これ全て、団員募集の為のPVではないかと不安になりますが、どうやら妄想でも白昼夢でもないようで、悪魔先生はドクロガスの量産にゴーサイン。
 ところがその直後、研究所からドクロガス計画の責任者・オオタが脱走してしまう老舗の定食メニューの一方、ライダー隊はファイターの立て看板を相手に《投石》スキルを日々磨いており、下半身の力を上半身にしっかりと伝え、相手の目と後頭部、それから肝臓を狙うのよ。
 ジンドグマの追っ手から逃げ回るオオタが娘宛の手紙をライダー隊に託すと、個人のプライバシーより地球の平和だ! と手紙の内容を見て走り出した少女をライダー隊は揃って尾行。
 更にその後を追う幽霊博士の姿がなかなか不気味で、合成映像を駆使して幽霊博士が出たり消えたりを繰り返し、悪の幹部としてのおどろおどろしさを表現してくれたのは、今回の良かったポイントです。
 再会を果たす父娘に、そろそろ一足早く卒業するの? ぐらいの勢いで本日はたくさん喋る幽霊博士が迫るが、ライダー隊が投石で介入。少女を連れて逃げだそうとするも、ポルターガイストのごとき動きでバリケードのように組み上がったイスに前後を囲まれる映像は面白いのですが、間に挟まれた子供たちが「イスが!」「イスが!」と騒ぐ姿がいまいち危機感を引き上げてくれないのは、ライダー隊をメインに据えた際の苦しい部分。
 駆けつけた一也が子供たちを逃がすとイスファイター軍団と立ち回りを見せるが、オオタは怪人イスギロチンによって無惨に処刑……寸前に一也が飛び込み、良かった! 本当に良かった!
 最近の一也のヒーロー力だと、万が一の惨劇があるのではないかとヒヤヒヤしました(笑)
 幽霊博士が逃走すると、怪人の操るイスをけしかけられた一也は、狭い室内では不利と窓から飛び出し変身スーパー1。イスバリアをパワーハンドで蹴散らすも攪乱されると怪人の逃走を許し、博士の事情を聞くモーターショップの面々……あれ、気がつくと谷の髭が無い。
 「秘密研究所の場所は?」
 「奥秩父山中の、湖畔ですが……」
 オオタから情報を得た一也は研究所へ向けてバイクを走らせ、ジュニア・ライダー隊が事件の調査に乗り出している間に街をグルグルする事なく、単身、敵のアジトへと乗り込んでいく超正攻法の仮面ライダー仕草。
 Vマシンの後部トランクからロープを取り出す珍しい描写を挟むと、高圧電線や監視カメラをかいくぐり、高い壁もロープで越える潜入ミッションが描かれて、赤心寺での修行時代に比べれば、この程度の罠は児戯も同然、と勇躍所内に入り込んだ一也は、落とし穴に、落ちた。
 ……ハイ、リピートアフターミー。
 落とし穴に、落ちた。
 ヒーロー力の復活と同時に、避けられぬ改造人間の宿命に飲み込まれ、完璧すぎる仮面ライダー仕草を見せた一也は落ちた先でイスギロチンに背後から抱き止められ……以前にも触れましたが、ウィザードが昭和に魔法使いをしていたら、きっと複数回、落とし穴に落ちている筈。というか、きださんは「晴人が落とし穴に落ちる回」を書くべきだったのではないか。
 イスギロチンの電撃を受けて一也は気を失い、大喜びの幽霊博士は、拘束した一也の映像をホームルームで発表。
 「それではこれより、ジンドグマの、悪魔元帥閣下の名のもとに、死刑を執り行う。ドクロガス、ふんーーーしゃ!」
 身動き取れないままの一也はドクロガスの白煙の中に消え……るが、怪人らが死体の確認の為にガス室の扉を開くと、ライダー忍法・天井張り付きの術から高笑い。
 「はははははははははは!」
 「仮面ライダー!」
 「スーパー1は不滅だ!」
 驚くイスギロチンを相手に、一也は拘束を抜け出すとガスの中で変身して天井に潜んでいたことを種明かし。
 「改造人間にドクロガスは効かないぞ!」
 何もかも台無しな発言と共にスーパー1はとうっと降り立ち……えー……第34話と35話の間に、K先輩とかS先輩と遭遇する前後編でもあったのでしょうか(笑)
 ――「いいか一也、落とし穴に落ちるんだ」
 「落とし穴に、落ちる?」
 ――「そう。落ちて、上がる。落ちるからこそ上昇気流のパワーが得られる。これを忘れるな!」
 そう、今までジュニア・ライダー隊の陰に隠れていたのも、全てはこの時の為……落ちてこそ、上がる! 絶好調のスーパー1は毒ガス研究所を景気良く破壊していき、その光景をモニターで見せられて珍しく激怒する悪魔先生。
 「幽霊博士! ワシに、これが見せたかったのか!」
 「こ、こんな筈では……」
 研究所はじっくり盛大に弾け飛び、一仕事終えた満足感を胸に流れで帰ろうとしたスーパー1に襲いかかるのは宙を舞うベンチ! は、イス攻撃のバリエーションとしてとても面白かったです(笑)
 電気イスがモチーフの怪人というより、イスだったらなんでも操れるスタンド使いみたいになっているイスギロチンは、血も涙もないエレキ光線に電圧勝負で敗北すると、弱ったところに月面キックを叩き込まれ、大爆死。
 「愚かな奴だ」
 スーパー1史上、最もきつい気がする一言を吐き捨てると仮面の英雄はバイクに乗って走り去り、ジンドグマのドクロガス計画は阻止されて、つづく。
 ジンドグマ編に入ってから5本目のサブ参加となった伊上先生、前回(釣りキャンプ回)は少年ライダー隊が再臨していましたが、今回は冒頭の実験に始まり、敵地潜入、落とし穴、罠また罠で高笑い、と後半になるほど濃厚さを増していく老舗のソース、ザ・《昭和ライダー》な一本となり、懐かしすぎる定食の味。
 過去にはあまりにも定食メニューが一本調子になり、作品全体として袋小路に行き当たってしまったが故にシリーズその後の模索があるわけですが(ただし《昭和》に関してはほぼ、そして定食に戻る、の繰り返し)、どういった形にせよ主役ヒーローにはこれぐらいの活躍度は欲しい、と思わされるエピソードではありました。
 彼等は何故、落とし穴に落ちるのか?
 そこに、上昇気流があるからだ!
 ちなみに個人的にイスモチーフの怪人というと、『ロボット刑事』(1973)のコシカケマンがインパクト抜群で大好きで、それに比べると、イスギロチンはイス感が弱すぎるのは、ちょっと残念でした(笑)
 次回――なんだか再びご町内路線の気配が漂いますが、果たして。

◆第36話「ハサミ怪人のチョキンチョキン作戦!!」◆ (監督:冨田義治 脚本:吉田耕助)
 ライダー隊では、チビのペースに合わせるよりも、パトロールの報告時間に遅れないことの方が大事!
 鉄の結束、血の掟!
 上官命令には絶対服従!!
 そんなチビが街角で切り紙を披露するピエロに興味を示すが、そのピエロの行くところ、ハサミが勝手に動き出す怪事が起こり、床屋や花屋への嫌がらせレベルの成果をいちいちピエロに報告する黒服、あっという間にジンドグマらしさが戻って参りました……!
 「チョキチョキチョッキンチョッキンナ! チョキチョキチョッキンチョッキンナ!」
 この怪事の影響を受けた谷モーターショップでは、宙に浮かんだハサミをレンチで倒し、チェーンで封印し、良の証言から捜査線上に浮かび上がるピエロのハサミ使い。
 一也が夜の街にピエロを追う一方、ジンドグマ四天王はテーブルを囲んで揃ってエールを一杯やっており、ヒーローがあたふたしている間に悪事の成功を祝って飲む酒は美味い!
 ハサミパニックに乗じて東京占領を目論む鬼火司令に対して、割とコスプレ好きの一也はハサミ研ぎの老人に扮してピエロに迫り、前回はやや極端な先祖返りであるものの、今回も一也の自発的な調査シーンが増量されており、さすがにバランスがライダー隊に寄りすぎている点に関して手が入ってきたのかもしれません。
 正体を現したハサミ怪人は街中のハサミを集めてスーパー1を襲うもエレキ光線に撃墜されるが、
 「ハサミン嵐は続くぞ! いつまでもつかな?」
 「とう! せんこーうきーっく!」
 「ぐぁぁ! しまった! 破られたか、残念」
 余裕を見せていたところにいきなり叩き込まれたキックでアンテナをへし折られ、チンピラの嫌がらせレベルから人間への直接攻撃、そして電話線切断などによるインフラの破壊へと作戦のエスカレート具合はなかなか面白かったのですが、怪人の頭脳回路の性能向上までは、予算が足りていませんでした。
 「次なる出会いが、貴様の命の果てる時と知れ!」
 やたら大仰な言い回しで姿を消したハサミ怪人は、ピエロ捜索に散っていたライダー隊を人質に取るとスーパー1を呼び出すが、一度ライダー隊の盃を受けた者たちの精神的苦痛など二の次のスーパー1は、呼び出しの時間ギリギリまで姿を見せないことで焦れた怪人の不意を打ち、俺の時計だとまだ1分前なのに~人質に手を出そうとする「卑怯者め!」と罵声を浴びせて精神的優位に立つと、バイク突撃で人質を救出。
 ハサミミサイルをファイター死体シールドで防ぐと姿を隠し、高い所から「正義は勝つ!」と大音声で言い放つスーパー1、やはり第34話と35話の間に語られざる先輩たちとの出会いがあったのでしょうか。
 切り紙スキルと一緒に搭載された手数の豊富さは面白いハサミ怪人は、中空にハサミを浮かべてスーパー1得意の接近戦を封じる作戦に出るが……いや、スーパー1得意の間合いはむしろ、中距離戦では? からのエレキ光線はさすがに芸も慈悲も無いので、パワーハンドを発動したスーパー1は、君にも出来るスーパー投石! と岩石投げでハサミを潰すと、念入りに火炎放射で炙り焼きにしてから月面キックでトドメを刺すのであった。
 ご町内路線からの被害規模の拡大はなかなか面白かったところですが、一也の見せ場を増量する都合で活動を削られたら、意欲も減退したライダー隊があっさりピンチ要員になってしまった点は今後に向けて気がかりで、最適解はどこかにあるのか、それとも無いのか。
 次回――聖地・行川アイランドでマフラーの色が変わる。