『大戦隊ゴーグルファイブ』感想・第27-28話
◆第27話「人間ジャングル!」◆ (監督:山田稔 脚本:酒井あきよし)
小学校での夏休み写生大会の最中、こっそり抜け出した3人組が道に落ちていたスイカを見つけるが……それはデスダークのスイカモズーであり、色々と困惑している内にスイカの種を吹き付けられた3人は、椰子の木に姿を変えられてしまう!
「ふふはははははは……俺様の種は、人間をどんな植物にも出来るのだ!」
小学生3人の行方不明事件となって、やたら声のいい担任教師が責められる中、教師が目撃した“スイカのお化け”はモズーではないか? と追いかけている内に、街の人々が次々と植物に変えられていき、今回も雑に戦闘にもつれこみ、雑に逃げられるゴーグルV。
素早い動きで尻尾を掴ませないスイカモズーにより、街の大通りが森に飲み込まれるような映像で人間ジャングル作戦の被害が拡大していく中、責任を感じる先生は学校に辞表を提出し、物語の流れは今、全くそれどころではないのですが……この、戦隊の動きとゲストの動きが乖離したままの展開に前作『サンバルカン』第41話「七化けドロンパ狸」を思い出したのですが、こちらの脚本は筒井ともみでした。
「生徒が行方不明になったのは、デスダークの仕業だと、わかったんです。何もやめなくても……」
校長先生は慰留に努め、あ、そこは、世間に認識されているのか……といった情報の出方も上述のエピソードを彷彿とさせつつ、ステレオタイプで感じの悪い教頭は退職に賛成。
生徒から慕われている先生がクラスで子供達に囲まれるベタな学園ドラマが盛り込まれるも、あまりにもゲストとゴーグルVの距離が遠い(生徒の一人をコンボガの一人にして接点は作っているものの、コンボガはコンボガで「小学校」との接点が薄い)ので全く響いてこない上、今、夏休みの真っ最中だったのでは?!
登校日とか先生の為に集まったとか理由は付けられるにしても、夏休みを明言しながら始まった冒頭から「教室で先生との別れを嘆く子供たち」への画の飛躍が強引すぎて、最初に提示された情報と話の内容がスムーズに噛み合いません。
「先生が責任を取って辞める?」
コンボガ少年からこの一件を聞いたゴーグルVは知恵を絞ると、「植物化した人々を元に戻す方法が見つかった」と偽情報でスイカモズーを誘き出す作戦を思いつき、これは珍しく、切れ味のいい納得の作戦。
この情報を得たデスギラーとマズルカが、総統タブーに知られたら始末書の上に減給処分にされてしまう、とコソコソ密談してスイカモズーを送り出すのは、今作これまでに無かった味付けとなり、お、と思わせた、のですが……
マズルカ本日2回目の変装と、コンピューターお姉さんの看護師変装(2回目の外出!)を挟んで、特効薬を奪いに来たスイカモズーをゴーグルVは待ち伏せして不意打ち。
「待っていたぞデスダーク。今日こそケリをつけてやる!」
……から、目くらましを受けてまたも逃走を許すと、追跡・捜索に再び尺を使うテンポの悪さが実に『ゴーグルファイブ』にして、コンボガの一人が基地を飛び出して捜索に加わるのも、捜索途中に赤間がばったり先生と出会うのも、ゴーグルVにしては会心の策略を完全に無駄にしており、ちょっと唖然とする組み立ての悪さ。
コンボガ少年が完全なラッキーパンチでスイカモズーを見つけるも逆に捕まったところに赤間と先生が駆けつけて窮地を救うと、あまりにも雑に一同揃って、戦え、大戦隊!
戦闘員を蹴散らすもスイカモズーの野菜爆弾に苦しむゴーグルVだが、サーベルでスイカを叩くと、ゴーグルビクトリーフラッシュ。巨大戦は開幕、スイカローリングアタックで変化を付けるのですが、すぐに飛び道具の打ち合いになるとゴーグルフラッシュからの銀河斬りでスイカは真っ二つになるのであった。
スイカモズーの爆死と共に人々は元に戻り、先生も学校に復帰し、最後は黄島がスイカを持ってきて一騒動(壮絶なデリカシーの無さ……)で、つづく。
冒頭、コンボガ少年のクラスメイトと担任教師を事件に巻き込んでみるも、被害規模の急拡大により否応なくゴーグルVが出動するので、あっという間に意味を失い、では、先生とゴーグルVに個別の繋がりが生まれるかといえばそんな事はないので、先生が辞める・辞めないが、ゴーグルVと関係ない時空で展開。
その接点となるコンボガ少年はコンボガ少年で、そもそもこの2クール、小学生している描写がほとんど存在しなかったので接点としての機能性が限りなく弱く、先生の復職の為にスイカモズーを見つけようと飛び出していくも闇雲に走り回るだけなので個性の掘り下げもゴーグルVとの関係の深まりも生まれず、驚くほどにあらゆる歯車が空転を繰り返す大惨事。
おしなべてアベレージ低めの今作ではありますが、なまじゴーグルVの仕掛けた罠には面白みがあっただけに、作戦の意味が無に帰すのを含めて、前後の酷さがいつも以上に目立つ一本となりました……気持ちとしては、90年代《メタルヒーロー》における、浅香晶脚本回を見ていた時に近いかも。
次回――「今日は地球はお盆だ。死者の魂が甦る日」。
お盆合わせの亡霊怪人ネタは、シリーズ初でしょーか。
◆第28話「甦った幽霊モズー」◆ (監督:小西通雄 脚本:曽田博久)
「サメモズー、これより映画を見せる」
『仁義なき戦い』みたいな書き文字で「戦いの記録」と表示されると、デストピアではこれまでのデスダークの記録映像が再生開始。
「我がデスダークは、偉大なる総統タブーのもとに結集して、暗黒科学による世界支配に乗り出した。ところが、そこへ立ち塞がったのは、大戦隊ゴーグルファイブである。……予想だにしなかった強敵であった」
デスダーク主観の映像にデスマルク大元帥が重々しくナレーションを被せるのが妙に面白く、モズーの殉職シーンが次々と映し出され、負けっ放しで、完。
哀しみのあまりサメモズーが泣きわめくと、その涙は小型の爆弾と化し、海辺に送り込まれて騒がしい観光客を追い散らすその姿に出動したゴーグルVは、サメモズーと一当たり。
泣けば泣くほど爆弾の威力が増すサメモズーを前にゴーグルVは逃げ惑い、
「デスマルク大元帥、なんて恐ろしい御方……」
なの?!
ヒトデの時は説得力がありましたが、さすがに今回の上司持ち上げは苦しい……!
メガトンボールからゴーグルキックで反撃するが海に逃げられ、別に海の戦士ではなかった筈のブルーが勢いで飛び込んで追撃する一方、大元帥は海の墓場に眠るモズーの亡霊を呼び出すように命令。
逃走したサメモズーは海が大好きを主張して地元の少年少女を懐柔するとブルーの追跡をまき、コスプレの力で祈祷師もできるマゼンタが海の墓に眠るモズーの亡霊を呼び出し……なんと、まさか、怪人の特殊能力では無かった。
ど、どういう事なの?!
予想外すぎる展開に面食らいましたが、とにもかくにも亡霊たちの怨念がサメモズーに託されると、サメモズーの怒りと哀しみは最高潮に達して更にパワーアップするのだ!
「今日はデスダークのお盆だ。生贄にゴーグルファイブを捧げてやるのだ」
総統タブーも大喜びで……勢いは面白い(笑)
基地ではコンボガが、儀式の生み出す謎の反応をキャッチするといつものように説明台詞を分け合い、現場へ向かったゴーグルファイブは儀式を止めるがサメモズーは亡霊のオーダーに応えて地元の少女を生贄に捧げようとしており、それを助けに走る青山……のメイン回ということで一応いいのかどうか審議に入りたいと思います。
別に海の戦士ではなかった筈のゴーグルブルーは、望遠ゴーグルアイで少女の行方を突き止めると勢いで海に飛び込み……よく見たらバルシャークだったらどうしよう、みたいな映像で海から飛び出して夏の勢いで<氷上の戦士>を捨て、<海の戦士>にジョブチェンジ。
戦闘員を蹴散らして少女を救出するも銃撃にさらされると、毎度ながら雑にゴーグルVが集合し、それに付き合ってデスギラーとマズルカもワープしてきて、戦え! 大戦隊!
そこからだいぶ長い集団戦に突入し、ブルーはすっかりデンジグリーン(足技)路線……パーティのスマート系が担当しがちと相場が決まってはおりますが。
そしてイエローは完全に、ボールを捨てた鈍器路線。
戦闘員を蹴散らすと、何故かサメモズーが霊媒能力を発動して亡霊モズー軍団が召喚され、「ハチモズーが居るぞ!」「シシモズーも居る!」と物理無効の亡霊軍団に大苦戦するゴーグルファイブだが、ゴーグルシャワーでさくっと悪霊退散。
サメモズーがコンセプトを取り戻して涙爆弾による猛攻を仕掛け、涙の粒が大きくなるのに合わせて爆発の規模も大きくなる、という怪人の能力の表現は面白かったです。
ゴーグルファイブは、ゴーグルリボンでサメモズーをくすぐり倒す拷問によって涙を封じると、ゴーグルリングを投げつけて倒れたところにビクトリー。
「ええい、サメコング出どぉぉ!」
……ずっと引っかかっていた違和感の正体に今頃になって急に気付いたのですが、あまりツッコむところでないとはいえ、毎度毎度、負ける前提で用意されているのだな、各コング……。
当初は別物だったのでコングメカ自体の存在理由が一応あったのですが、「個々の怪人に合わせた上半身を準備」して怪人との一体感を強めた結果、「怪人が敗北したら出動させるものを常にスタンバイさせている」新たな問題を発生させており、やはり、吹き飛んだり瀕死になった怪人を巨大化させる(自発的にする)パターンの方が、基本的にスマートであるな、と。
巨大サメモズーは、ハンドミサイル・ビクトリーパンチ・電子斬りのお手軽ハッピーセット(毎日¥550)で斬殺され、生贄にされかけた少女は弟と無事に再会を果たし、やたらと姉弟から持ち上げられるゴーグルファイブ(共同体の外部から来た存在が魔を祓って伝承に名を残すパターン)。
「でもわからないな……涙まで流した奴が、どうしてあんな悪い事をするんだろう」
「……暗黒科学がいけないんだ」
「暗黒科学、許すまじだ」
黒田と赤間が重々しく呟き、悪いのは暗黒科学の心だ!!
次回――やたらテンションの高いナレーションさん、割と大がかりに見える映像、果たして、どう転ぶのか?!