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救急戦隊ゴーゴーファイブ』感想・第10話

◆第10話「誇りのイエロー」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:山口亮太
 「今日一番頑張った兄ちゃんが、一番大きなエビフライ食べて、何が悪いんだ」
 横暴な家長と、調子に乗る三男をたしなめるマツリが、巽家の良心にして最後の歯止めポジションを取り戻してくれてホッとしましたが、ダイモンは、白米・味噌汁・エビフライの食事に、牛乳を合わせに行くのか……!
 失業前は駆け出しの警察官に過ぎず、必然的にレスキュー活動での現場経験に劣るダイモンは、四男坊の立場の弱さも加えて兄3人から格下扱いを受け続ける事に不満をくすぶらせており、年少成長枠の反発を描くにあたり、バックアップの大切さを丁寧に説明できない長男の雑さなど、家族だからこその距離感が内在していた問題の火勢を強める形になって、しっかり今作ならではの筋立てに落としこまれているのは、手堅い作り。
 末っ子は辛いよ、と河川敷でパック牛乳を飲んで黄昏れていたダイモンは自信家のサッカー少年と出会うと、子供同士の揉め事を止めよう……として止められず、ヒーロー力が低かった。
 だが、昔取った杵柄なのか、なんだか凄いオーバーヘディングシュートを見せて尊敬の眼差しを勝ち取り場を収めてみせる一方、災魔一族ではジルフィーザの眷属、黒煙サイマ獣・チャンバーノ(バイクモチーフがなかなか格好いい)が生み出され、人間界から青空を奪おうとしていた。
 冒頭の火災現場で「格好悪いぞゴーイエロー!」と野次を浴びせてきたサッカー少年は、エースが全ての、絵に描いたような傲慢ストライカー気質の持ち主であり、成り行きでコーチをつけるダイモンは、そんな少年にチームワークの大切さを訴える……ほどの説得力を持ち合わせず、やはり、ヒーロー力が低かった。
 排気ガスを撒き散らすサイマ獣が出現すると、赤から市民の救助命令を受ける黄だが、現場を覗いていた少年の視線に気付いて怪人に突撃。しかし安易に煙玉を破壊した事で周辺に毒性の強い排気ガスを撒き散らしてしまい、サッカー少年がそれに巻き込まれてしまう大失策。
 「いつも言ってるだろ! 人の命は地球の未来! たまたま失敗しましたじゃ済まされねぇんだよ!」
 マトイの叱責を受けたダイモンは溜め込んでいた不満を爆発させるが、かえってマトイの怒りを買って鉄拳制裁を受け、巽兄妹、二人目の家出(見逃した第3-4話で、誰かが家出していなければ)。
 こうなると、1年の間に全員一通り家出してほしくなりますが、失意のダイモンはモンドに声をかけられて川縁で簡易キャンプに誘われ、失踪していた10年、父さんはアウトドアスキルがめきめきと上がっていました。
 「弟はいつも損な役回りなんだよ。どうせなら兄貴に産まれて、リーダーになりたかったな!」
 「なんなら、なってみるか? リーダーに」
 リーダー問題が再燃すると、モンドはマトイの短所を並べ立て、思わずそれをさえぎったダイモンがマトイにフォローを入れると、待ってましたと言わんばかりに
 「……そういう優しさが、おまえの持ち味だ」
 と、ゴーゴーファイブは兄妹5人の持ち味がブレンドされて成り立っているのだ、と諭し……ここまでの言行からすると、モンドがあまりにも真っ当に父親/博士ポジションをやり過ぎている感はありますが、こういう時は、殴ってみて反撃してきたら偽物です。
 「それぞれの役割……」
 「おまえには、おまえにしか出来ない事がある。別のものになろうとする必要は、無いんじゃないか?」
 前回が前回だった事もあり、みんな正気すぎる成り行きに若干の物足りなさはあるものの、家族の距離感が火に油を注いでいた問題を、家族の距離感で鎮火に導くのは正攻法となり……まあ失踪時期を考えるとモンド的に、ダイモン(当時10歳ぐらい?)は小さい頃のイメージが強く、マツリ寄りのフォルダに入っているのかもしれません。
 できれば今後、長男には長男の、次男には次男の、それぞれの立場で色々ある……というのも描いてほしいですが(予告の感じ、次男は第3話でスポット当たったかもですが)、ここまでのところ、「家族だから」という人間関係の“長短いずれにも”視線が感じられるのは、良いところ。
 その頃、サッカー少年はサイマ獣が魔力でバイクを作り出し、自らを強化しているのを目撃。
 インプ軍団に追われているところを父と別れたダイモンとバッタリ出会い、少年を救う為にダイモンは着装するが、インプ軍団は蹴散らすも、サイマ獣には防戦一方で倒れてしまう。
 「やっぱりレッドが居ないと駄目なの? ゴーイエローはやっぱり弱いの?!」
 「敵を倒すことが、強さの証明じゃない! 今の僕の、一番大切な役目は……どんなに、格好悪くたって、君を、守り抜く事だ!」
 ダイモンが辿り着いた心意気そのものは格好いいのですが、バトルの見せ方がこれといって“少年を守って戦う”形になっていなかった(むしろ積極的に殴りに行っているような……)為、状況と台詞があまり噛み合っていなかったのが残念。
 黄と少年がまとめて災魔バイクに轢かれそうになったところに赤青緑桃が駆けつけると、現場における優先順位を間違えなかった黄の行動を赤が讃え、人の命は地球の未来!
 黄センターで挿入歌バトルとなると、災魔バイクに黄がサイドマシーンで対抗して真っ正面からの激突で打ち勝ち、これがドリルの力だ!
 大ダメージを負ったサイマ獣が排気ガス爆弾を打ち出すと、《サッカー》スキルを発動した黄が足でキャッチしたところに赤が必殺シュートを打ち込み、更なる追い打ち。
 「どんなに凄いエースストライカーでも、シュートは一人じゃ決まらない!」
 「勝利の陰に、名アシストありってね!」
 赤と黄はがっちり握手をかわし、この長兄にしてこの弟たちありというか、ショウもダイモンも基本、調子に乗りやすくて口ぶりよりは遥かに打たれ強そう(笑)
 満身創痍のサイマ獣は改めてカラミティブレイカーで木っ葉微塵となり、風を切る再生カードで巨大化。
 巨大戦では突然のブルース・リー挑発を行ったVロボが、ハシゴ拳法上手出し投げから、遠心力を凶器に変えたジャイアントスイングパンチを放つが、サイマ獣の死んだフリに背を向けたところに不意打ちを受け……そもそもサイマ獣、プラスエネルギーを打ち込まないと倒せないのはわかっている筈なのに死んだフリに騙されるなど、やりたかったギミックを盛り込むのを優先したのか、ちぐはぐな組み立て。
 その為、引っかけられて形勢逆転、というほどの事もなく、突撃してきたサイマ獣をコックピット主観で迎え撃つと、慌てず騒がずに剣を取り出して土手っ腹を貫き、赤と黄が二人で「剣よ!」「光を呼べ!」と分担してプロミネンスするのであった。
 ゴーゴーファイブの連携シュートに電流の走った少年は、地元のチームに加入して一人じゃないサッカーを始め、アシストを決めるその姿にダイモンがVサインを送ってつづ……く前に、サイマ獣を葬り去られ続ける災魔4兄妹&ピエールがギリギリと奥歯を噛み締める姿が挟まれ、原稿が予定通りに進めば後3ヶ月ほどで復活予定の大魔女グランディーヌのふんわりとしたイメージ映像(メドー様……?)が描かれて、果たして人類は、1999年7の月を乗り越えて夏コミで新刊を出せるのか。
 「我が復活の日は近い……地球に恐怖を」
 不穏な気配が地球に迫る中、次回――ビクトリーロボ、勝利ならず?!
 シリーズ初参加となる山口さん(次作『タイムレンジャー』で印象的なエピソードあり)、まずはオーソドックスといえる作りの一本となりましたが、上述したように、肝心の“守る為の戦い”とは何か、が上手く描写されていなかったのが残念で、これは脚本そのものというよりは(アクション)演出と上手く噛み合わなかった感じでありましょうか。
 前回が最終的に映像の破壊力で押し切る路線だった事もあり、映像による説得力を一押し加えられなかったのが、勿体ない一本でした。