『大戦隊ゴーグルファイブ』感想・第26話
◆第26話「ブラック! 大逆転」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
警官と泥棒のコミカルな追いかけっこから始まり、何故かそこに顔を出すデスギラー。
「イノシシモズー、やれぃ!」
「心得た。今、衝撃のデビュー。イノシシモズー、爆弾通り魔!」
妙に茶目っ気のあるイノシシモズーがショック爆弾を投げつけると、警官と泥棒はまとめてその犠牲となり……警官役は、『スーパー1』のチョロでしょうか……?
白昼堂々の爆弾テロ事件を知ったゴーグルVが現場に駆けつけると、特に外傷は見られない二人だったが記憶を綺麗に失っており、強制記憶喪失による人間社会の混乱を目論むデスダークにより、猪突猛進猪突猛進。
黒田は混乱の中で、記憶を失い母を求める少女を助けて怒りを燃やし、ゴーグルVは通り魔対策の為に大々的にパトロールを展開。
「待てよ。いくらデスダークでも、パトロールが居るところへわざわざ出向く筈がない」
ひとり策をこらした黒田がイノシシモズーの裏をかいて待ち伏せに成功するが、ショック爆弾の影響を受けて記憶を失い、ゴーグルV=危ない覆面集団、と認識してしまう大ピンチ。
「君たちは何者なんだ?!」
4色の仮面の戦士に詰め寄られた黒田は怯えおののくと頭を抱えて逃走し、それを追うデスダークを相手に、バイクに追いかけ回され、戦闘機からの爆撃にさらされ、ダッシュだジャンプだ石つぶてだ! たとえ記憶は失っていても、体は将棋(拳法)を覚えている! の生身アクション大暴れ……まあ、記憶喪失自体が狂言めいてはいるのですが。
「変身する事も忘れたとは、黒田官平も惨めね」
「いよいよ貴様の最期だ!」
デスギラーに追い詰められた黒田は崖から身を躍らせて派手に水落ちし、一連の追撃戦を見ていたデスマルクは電話でデスギラーを呼び出し、ベラとベスに、話しかけた……!
OPクレジットにはずっと居るのに、総統タブー以下の扱いになっていたので、存在を思い出してくれたのはホッとしました(笑)
「何故そう黒田官平を追い回す? 記憶を失った者など、恐れるにたるまい!」
「実は、ショック爆弾による記憶喪失は、一週間しかもたないのです」
「なんだと?」
いやもう儂、総統に「今回の作戦は絶好調です!」って報告した後なんだけど?!
記憶を取り戻さぬ内に黒田を始末しようと焦るデスギラーだが、より高性能な巨大ショック爆弾の完成を伝えたデスマルクは、慌てず騒がす本来の作戦に戻れと指示を出し、ヒーローの存在に拘泥している内に本末転倒を起こす悪習を絶つ大物ぶりを見せる一方、水の中から飛び出した黒田は戦闘員を軽々と蹴散らし、現場に将棋の駒を残していた。
(――この者、歩兵)
仲間たちへのメッセージを残しながら、死んだふり作戦でデスダークの動きを追う黒田は、走行中のトラックの屋根の上から地面に飛び降り受け身を取りながら茂みに転がり込むアクションを決めてみせ、パワー1000倍巨大ショック爆弾の運搬を目撃。
将棋の駒を追ってきた赤青黄桃が姿を見せると、人数不足を気にせず名乗りをあげるもイノシシモズーの猛攻に危機に陥ったその時――
「そこまでだ!」
仲間を囮に高いところに現れた黒田が4カットズームの顔面アップから地上に降り立つと凄まじい戦いぶりで戦闘員を蹴散らしていき、戦隊ヒーローになると生身の戦闘力も強化されるのは常ですが、それにしても、この人の前職はなんだったか思い出せなくなりそうです(笑)
「デスギラー! 信管は抜いたぜ」
大型ショック爆弾を無効化し、信管を手に滅茶苦茶格好良く決めた黒田は、瞬間変身と瞬間変身解除によりショック爆弾に耐えつつ記憶喪失を偽装していた事を明かし、だいたい、忍者。
……なお今回、いつの間にやら青山や黄島から「黒田さん」呼びになっており(今回だけの勢いかもですが)、次作に繋がる萌芽が色々と見て取れます(笑)
「おのれ、ゴーグルブラック!」
「許せないのはおまえ達の方だ! 記憶を奪われた子供の哀しみ、親の嘆き……今こそ晴らしてやる! ゴーーーグル・ブラック!!」
黒田の狙いは、デスダークを自身に引きつけて街中の被害の拡大を防ぐ事にあり、黒田がショック爆弾の性能を知らない以上、成功したのは結果的に……ではあるのですが、その原動力は“親子の愛情を引き裂く悪”への怒りだ! とする事によって思惑の整合性を越えるヒーローフィクションとしての劇的さが生じ、手にした信管(真鍮製のパイプのような見た目)も小道具として効いて、格好いい啖呵となりました。
……惜しむらくは、変身コールと変身直後の名乗りが「ゴーグルブラック」で被ってしまう仕様ですが。
改めて合流した5人が、またフル名乗りを始めなかったのはホッとしたところで、たぶん前回と同じ爆発を背負い、戦え! 大戦隊!!
散々アクションてんこ盛りだったから、と戦闘員をスキップしてイノシシモズーとの戦いになると、黒が足下へのスパイク攻撃でイノシシの突進を止め、これまでの恨みとばかり、パンチ、キック、鈍器、サーベル、が集中的に叩き込まれ、更にバトンの乱れ打ち。
ゴーグルクラブが宙を舞い、意識朦朧としたイノシシモズーにビクトリーフラッシュで大勝利を収め……しかし、巨大戦になると黒はゴーグルシーザーに引っ込むのがゴーグルロボの宿命です。
さすがに、イノシシ突進をシーザーミサイルで止める支援攻撃が挟み込まれると、ビクトリーパンチから、電子銀河斬りで真っ二つにするのであった。
イノシシモズーが死ぬとショック爆弾の効果は解除され、5人はそれぞれの絆を取り戻した人々を笑顔で見つめ、再び始まる警官と泥棒の追いかけっこでオチがついて、つづく。
黒田アクション祭を軸に据えつつ、敵を欺くには味方からを実践した黒田自身が敵の集中砲火を受ける事により仲間たちが責めにくいオチとなり……まあ、後年だったらここからでもツッコミが入ったとは思いますが、生身で戦い続ける理由(記憶喪失の狂言)と視聴者向けのサイン(将棋の駒)にも工夫があって、曽田さんがこのぐらいの出来でキャラ中心のエピソードを出してきてくれると、徐々に作品の平均値が上がってくれて助かる、という一本でした。
次回――夏だスイカだデスダーク植物園だ!