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《スーパー戦隊》と職業選択の自由

はたらき、あつまる

 先日、〔《平成ライダー》に無職は多いのか?〕を書いた流れで、今回は《スーパー戦隊》とお仕事の関係について調べてみました。
 個人をチェックしていると量が膨大になるのでチーム単位とし、また、今回は追加戦士ポジションについては外して考えました(「人外」とか居るので……)。
 ひとまず類型化したかったので、ある程度大まかな区分けをしており、その区分けに収まりにくいものや、作劇の関係などで一部不明瞭な部分もある他、区分けそのものへの異論もあるかとは思いますが、個人的な試みとして、ご理解いただければと思います。
 一部、未見や途中リタイアで判定しづらい作品は、リストから外しました(『バイオマン』『リュウソウジャー』『キングオージャー』)。
 以下、区分けについて。
 「職業戦士」:世間に存在が認知されているか秘密部隊であるかは別に、なんらかの公的機関に雇用されて公権力の裏付けを下にヒーロー活動を行っている場合。なお複雑になるので、各個人に“表の顔”が与えられているかは問わない。
 「表の顔あり」:ヒーロー活動にともなって、それまでの生活や職業とは切り離された、表向きの身分を用いている場合。民間の後援組織に雇用されている場合と、そうではない場合を共に含む。
 「無職」:ヒーロー活動にともなって、それまでの生活や職を失うと共に、表向きの職業なども得ていない場合(エピソード単位でのアルバイトなどは考慮しない)。
 「個人別」:ヒーロー活動を行いながら、チームメンバー個人個人が、それまでと同様の生活や仕事を営んでいる場合(メンバーの一部が無職や学生である場合を含む)。

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1975『秘密戦隊ゴレンジャー』 職業戦士
1977『ジャッカー電撃隊』 職業戦士
1979『バトルフィーバーJ』 職業戦士
1980『電子戦隊デンジマン』 表の顔あり
1981『太陽戦隊サンバルカン』 職業戦士
1982『大戦隊ゴーグルファイブ』 表の顔あり
1983『科学戦隊ダイナマン』 無職(表の顔あり?) ※
1985『電撃戦隊チェンジマン』 職業戦士
1986『超新星フラッシュマン』 無職
1987『光戦隊マスクマン』 表の顔あり ※
1988『超獣戦隊ライブマン』 無職
1989『高速戦隊ターボレンジャー』 その他(学生)

1990『地球戦隊ファイブマン』 無職
1991『鳥人戦隊ジェットマン』 個人別 ※
1992『恐竜戦隊ジュウレンジャー』 無職
1993『五星戦隊ダイレンジャー』 個人別
1994『忍者戦隊カクレンジャー』 表の顔あり
1995『超力戦隊オーレンジャー』 職業戦士
1996『激走戦隊カーレンジャー』 個人別 ※
1997『電磁戦隊メガレンジャー』 その他(学生)
1998『星獣戦隊ギンガマン』 表の顔あり
1999『救急戦隊ゴーゴーファイブ』 無職(表の顔あり?) ※

2000『未来戦隊タイムレンジャー』 表の顔あり ※
2001『百獣戦隊ガオレンジャー』 無職
2002『忍風戦隊ハリケンジャー』 表の顔あり
2003『爆竜戦隊アバレンジャー』 表の顔あり
2004『特捜戦隊デカレンジャー』 職業戦士
2005『魔法戦隊マジレンジャー』 個人別
2006『轟轟戦隊ボウケンジャー』 表の顔あり ※
2007『獣拳戦隊ゲキレンジャー』 表の顔あり
2008『炎神戦隊ゴーオンジャー』 無職
2009『侍戦隊シンケンジャー』 無職

2010『天装戦隊ゴセイジャー』 無職
2011『海賊戦隊ゴーカイジャー』 無職 ※
2012『特命戦隊ゴーバスターズ』 職業戦士
2013『獣電戦隊キョウリュウジャー』 個人別
2014『烈車戦隊トッキュウジャー』 無職
2015『手裏剣戦隊ニンニンジャー』 個人別
2016『動物戦隊ジュウオウジャー』 個人別 ※
2017『宇宙戦隊キュウレンジャー』 無職 ※
2018『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』 表の顔あり×職業戦士

2020『魔進戦隊キラメイジャー』 個人別
2021『機界戦隊ゼンカイジャー』 表の顔あり
2022『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』 個人別
2024『爆上戦隊ブンブンジャー』 個人別
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 幾つか注釈を加えますと、まず『ダイナマン』は概ね無職の描写ですが、メンバーを集めた「夢野発明センター職員」の肩書きで活動している可能性あり。
 『ジェットマン』は、職業戦士×民間人、のミックスが掴みのポイントだった分、ジェットマン加入後の民間人サイドの立ち位置はやや曖昧なのですが、少なくともアコは学生のままでしたし、凱も代打ちっぽい描写があったので(笑)
 『カーレンジャー』は、メンバー全員が同じ会社に勤めていますが、ペガサス自体はカーレンジャーと支援関係が存在しないので、「個人個人がたまたま同じ会社に勤めていた例」として「個人別」としました。
 『ゴーゴーファイブ』は退職後、「巽防災研究所所員」の肩書きで、表向きは自営業扱いになっている可能性あり。
 『タイムレンジャー』は、メンバー5人中4人が本来所属する時代基準では「職業戦士」なのですが、物語のメインとなる舞台での立ち位置を取りました。
 『ボウケンジャー』は、公的機関に雇用されているわけではないですが、かといって表の顔を別に持っているわけでもなく、それぞれの前職が描かれた上で、職業:ボウケンジャー、という特殊な例。……とばかり思い込んでいたのですが、ミュージアム職員のお仕事が用意されていたので、「表の顔あり」に移動。
 『ゴーカイジャー』と『キュウレンジャー』は、表に出している稼業そのものがヒーロー活動と直結しているので、一種の職業戦士というか自営業というかなのですが、「海賊」「レジスタンス」という仕事そのものが劇中世界で非合法団体なので、無職扱いとしました。「その他(反政府組織)」が表現としてはふさわしいかも。
 『ジュウオウジャー』は、分類上は「個人別」ですが、大和くん以外は追加戦士含めてみんな無職であり、現地人×異邦人の『タイムレンジャー』的構造の上で、実状は「無職」戦隊の作劇。
 以下、区分けごとの分類。


◆職業戦士(9)
 ゴレンジャー、ジャッカー電撃隊、バトルフィーバーJ、サンバルカンチェンジマンオーレンジャーデカレンジャー、ゴーバスターズ、パトレンジャー


◆表の顔あり(12)
 デンジマンゴーグルファイブ、マスクマン、カクレンジャーギンガマンタイムレンジャーハリケンジャーアバレンジャーボウケンジャーゲキレンジャー、ルパンレンジャー、ゼンカイジャー


◆無職(13)
 ダイナマンフラッシュマンライブマンファイブマンジュウレンジャーゴーゴーファイブガオレンジャーゴーオンジャーシンケンジャーゴセイジャーゴーカイジャー、トッキュウジャー、キュウレンジャー


◆個人別(10)
 ジェットマンダイレンジャーカーレンジャーマジレンジャーキョウリュウジャーニンニンジャージュウオウジャー、キラメイジャー、ドンブラザーズ、ブンブンジャー


◆その他(2)
 ターボレンジャーメガレンジャー

 ……というわけで、無職、大勝利となりました。
 まあ、職場が吹っ飛んだとか広義の異世界からの来訪者だとか、それぞれ事情もありますが、思ったよりも表向きの顔が用意されていなかったのは、人数が多い分、「住み込みアルバイト」形式が使いにくい、といった事情もありそうでしょうか(典型的なそのパターンになるのは『ギンガ』『アバレ』『ゼンカイ』といったところ)。
 一方で、集計46戦隊において、その他に分類した3戦隊を除くと、概ね4分の1ずつに分かれる結果となり、時代時代のトレンドはあるものの、周期的にバリエーションを試す《スーパー戦隊》らしさが、思っていた以上に数字に出たように思います。
 なお例しに、1975-2000の23戦隊と、2001-2023の23戦隊とに分けて内訳を出してみますと、

 1975-2000〔職業戦士6・表の顔あり6・無職6・個人別3・その他2〕
 2001-2024〔職業戦士3・表の顔あり5・無職7・個人別7・その他1〕

 職業戦士が減って個人別が増加、という概ね予想通りの変化。
 なお今回、確証が持てなくて集計から外しましたが、『バイオ』『リュウソウ』は多分「無職」で、『キングオージャー』は「王様」……?(ずっと「王様」だったかわかりませんが、分類するなら「個人別」か)なので、全体の傾向には変化がなく無職勢力が強くなる形に。

 大まかな流れを追っていきますと、シリーズ初期は公権力を背負った職業戦士が多くを占め、82年以降、鈴木-曽田体制に変わってから無職が増加。特に『ライブマン』は、『ダイナマン』以降に描かれてきた“公を背負わない野生の戦隊”の在り方を、ヒーローとしてどう位置づけるのか、が非常に良く出来た名作(つくづく今作は、「職業戦士」系統の傑作だった『チェンジマン』と対)。
 90年代に入ると『ジェットマン』を皮切りにして、ヒーロー活動と個人生活の切り分け(による「ヒーロー性」の変質や低減)に踏み込んでいき、特に『ダイレンジャー』は、90年代前期に「個人別」路線を明確に押し出していった一作。
 90年代半ば、軍人戦隊の復活から、お仕事物、部活物、といった文脈の取り込みを経て、『ギンガマン』以降、表の顔があったり、表の顔も無かったり、と事前のイメージよりも「無職」が増えていくのですが……並べてみると『ゴーゴーファイブ』『ガオレンジャー』『ゴーオンジャー』のいずれも、「ヒーローになるなら仕事を捨てろ! なんなら、名前も顔も捨てろ!(ってガオイエローが言ってた)」路線であり、つまりこれは、武上さんのヒーロー観だったのでしょうか(笑)
 この時期だと『ハリケンジャー』の、「個人ごとに表の顔を用意する」路線が、らしさもあり合わせ技として面白かったアプローチ(本質はあくまで「忍者」とみると、「個人別」の方に近いのかも)。
 2010年代以降も意外と「無職」が多いのですが、これはどちらかという『シンケン』以降に、天使とか宇宙海賊とかリュウソウ族とかの特殊設定(の結果としての無職)が増えた、と捉えた方がいいのかもしれません。
 近年は、メンバー個々の私生活や社会的立場を維持したままの「個人別」が優勢傾向ですが、これはこれで描写すべきものが増える難しさはあるので、その内また、チームの一体感を最初から強調していく路線に戻る事もあるかもなと。恐らく時流に合わないと判断されているのかとは思いますが、見せ方次第では「ヒーローになるなら仕事を捨てろ!」路線が世に突き刺さる可能性もゼロではないかもしれず(笑)
 まあ、パブリックイメージの逆を突きたい事情や意識なども恐らくあったりするのでしょうが。
 『ゼンカイ』以降は特に、“チームヒーローをどう描くのか”についてシリーズとして四苦八苦しながら取っ組み合っている感じが強まっておりますが、新しい切り口にせよ、過去への回帰にせよ、戦隊が戦隊である事から生まれる面白さをまた見せてほしいな、と思うところであります。