『救急戦隊ゴーゴーファイブ』感想・第7-8話
◆第7話「美しき災魔のワナ」◆ (監督:小中肇 脚本:武上純希)
極秘裏に来日するロビンソン博士の持つ、世界の活断層リストを収めたディスクを奪う為に掘削サイマ獣モルグールを送り込もうとするコボルダだが、事を荒立ててゴーゴーファイブの介入を招く事なく頭を使うべき、と人間に姿を変えたディーナスが、地震研究センターの職員に成り代わると、博士に接触。
ところが、博士が巽モンドの旧友だった事から出迎えにはゴーゴーファイブも送り出されており、作戦開始早々、マトイ・ナガレ・マツリに出くわす緊急通報・緊急通報!
博士から、モンドとの思い出の写真を受け取ったマトイは帰宅するが、ナガレとマツリは同道する上、頭上には緑、背後からは黄が護衛に張り付く超VIP待遇で、緊急通報・緊急通報!
博士は博士で、「イギリス紳士は定期的に紅茶を飲まないと、死ぬ」と大事そうに抱えていたカバンの中から車中でティーセットを広げ始め、いっそこのまま、コスプレ女幹部ムーヴからの華麗な頭脳戦を見せる筈が、巽兄妹らに翻弄され続けるディーナスの苦悩を中心に描いても面白かったような気はしないでもないですが、焦れるコボルダを念話で制したディーナスは、インプ軍団に命じて落石事故を工作。
「我々は、救急戦隊です。近くに、助けを求める人が居れば、無視するわけにはいきません」
「ナガレさん、あなただけが頼りです」
緑と黄がレスキューに回る事になって護衛を離れると、ディーナスはナガレの手を取って籠絡を図り、人間界のドラマとか見て覚えた技でしょーか(笑)
陽動作戦の方で救急活動を消化しつつ、ディーナスは博士を気絶させて一同を罠に誘い込むが肝心のディスクが見つからず……一芝居を打って泣き落としにかかったところで面倒くさくなったコボルダがサイマ獣と共に姿を見せて、初顔合わせ。
「遂に親玉格が出てきたってわけか」
「そうだ。それも、二人もだ。ディーナス、可愛い妹の手助けに、来てやったぞ」
「妹?」
間髪入れずに、これ以上なく雑にネタばらしされました(笑)
単細胞なだけでコボルダの側にこれといった悪意は無いようですが、やむなくディーナスは小芝居を終了して正体を見せ、いやもうちょっと、引っ張って絡めてほしかったんですが……!?
その間に目を覚ましたロビンソン博士が隙を突いて脱出すると、マツリと共に逃走。
ジャミング結界を抜けたマツリの下には赤緑黄が急行し、黄が乗っていたサイドカーを飛ばしてナガレの救出に成功すると、ディスクディスクって何のことだかさっぱりわかっていないけど、5人揃って人の命は地球の未来!
センターと名乗り口上は青が担当するのですが、うーん、正直、メイン感は極薄。
「やっぱりこういう事に」
肉弾戦が始まると早退するディーナスですが、あのまま芝居を打っていても女スパイムーヴは失敗確定だったので、ある意味、コボルダのお陰で傷口が広がらずに済んだ災魔次男のファインプレーといえるかもしれません(笑)
作るだけ作られて待機扱いだった掘削サイマ獣が折角なので穴掘り能力を披露して赤を引きずり込もうとするが、ロープ救出からカラミティブレイカーでゴーゴー爆殺。
現場に出張してきたピエールが高いところから再生カードを投げつけ、挿入歌に乗せて救急マシンが出動すると、今回はバンク使用で緊急合体。巨大戦でも地面に潜るサイマ獣だったがハシゴ曲芸キックにより発生する遠赤外線真空断熱エントロピー効果により地上に吸い出され、青が活躍したように見せる為のアリバイ作りから、青と桃が台詞を担当してのビクトリープロミネンスでさっくり光にされるのであった。
「災魔4兄妹か……」
ゴーゴーファイブは敵上層部について情報共有し、一応、最低限の因縁構築は行いましたが、初顔合わせの現場にはナガレとマツリしか居なかったり、これといってナガレが頭脳でディーナスの奸計を見破るわけでもなく、物足りない内容となりました。
「ディスクなら、地震研究センターに届けたぞ」
肝心のディスクについては、マトイが最初に受け取った写真の中に隠されていた案の定の事実が明かされると、兄妹揃って囮に使っていた事に関してモンドは全く悪びれず、一緒になってニヤニヤしているロビンソン博士も、つまるところ類が呼んだ友にして、インプ軍団から逃れた手際を見ても戸隠流の手の者と思われ、恐らく、スミス博士の兄弟弟子。
そうつまり……
「敵を欺くには、まず味方からだ」
ジャストタイミングでモンドが口にしてくれましたが、どうやら巽モンドも、『世界忍者戦ジライヤ』でお馴染み山地哲山に師事していた時代があったのかと思われ、忍法の奥義は相手を騙しても最後に勝つ事にあるのです。戸隠流では当たり前。
「「「「「オヤジ!(父さん!)」」」」」
さすがにマツリも抗議に加わり一同げんなりで、「美しき災魔のワナ」というより「えげつない身内のワナ」だったオチがついて、つづく。
次回――中年男性同士のこじれにこじれた因縁をナレーションさんが深刻に語る背景で景気良く吹き飛び続ける巽兄妹! 救急戦隊早くも解散?! カードが停止されたんで復職するしかないんだよオヤジーーー!!
◆第8話「救急戦隊活動停止」◆ (監督:小中肇 脚本:小林靖子)
謎の救急組織ゴーゴーファイブの活躍が世間の耳目を集める中、巽モンドの帰還を知って巽家に乗り込んできたのは、首都消防局総監・乾謙二。
巽家と乾家は、かつては江戸の町火消しとしてしのぎを削り、数百年に渡るライバルとして首都防災の職を選んできた因縁深い関係であり、総監は天才・巽モンドに追いつけ追い越せと克己を続ける人生を送り、対抗心と劣等感と友情をこじれにこじれさせて引きずり続ける、とっても面倒くさい人だったのだ!
「おまえ、相変わらず昔にこだわるな……」
「当然だ! おまえには火消しの血が流れてないのかぁ?!」
10年ぶりの再会にたがが外れている部分もあるのでしょうが、他人の家にいきなり押しかけてきての傍若無人ぶりには極道親父と似たり寄ったりの総監がモンドに食ってかかると、染みついた縦社会の習性で平謝りする巽兄妹だが、そこへ来客中でも特に遠慮はしないミントが、サイマ獣の出現を緊急通報。
「ライカ、地上をことごとく破壊し、人間どもの死体で埋めよ。我らが、母上の為に」
見るからに強そうな雷サイマ獣が、針を飛ばして雷を落とす大技(二段構えのギミックが秀逸)で街を破壊と混乱の坩堝に陥れ、サイマ獣への対処と共に救命活動にあたるゴーゴーファイブだが、成り行きでゴーゴーファイブの正体を知った総監がベイエリアまで乗り込んできた事で、現場指揮権を巡る混乱が発生。
「だから言ったんだ避難させろと! 天才のお遊びで街は守れん。……おまえに、街を守る資格は無い」
ゴーレッドの死んだふりアタックでサイマ獣は一時撃退するが、結果的にモンドの指示が裏目に出て複数の負傷者が出ると、プロとしての矜持もあってモンドを詰った総監は司令室を後にし……大丈夫かな、嫌がらせで移動用チューブをロックされて、歩いて帰る羽目に陥ったりしないかな……。
激しい戦いで負傷入院した子供たちの為に不細工なおにぎりを作るモンドだが、総監は早速ゴーゴーファイブに活動停止命令を下し、差し押さえ通告を受けたモンドは……我々が守るのは法律じゃない! 命と未来だ!!
そう、こんな事もあろうかとベイエリアに組み込んでいた変形機構を発動すると、救急降臨ゴーベースロボにより首都消防局に強襲を仕掛けてその機能をマヒに追い込み、首都防災の権限を一手に掌握。「日本の防災意識を、この巽モンドが変えようというのだ」と大演説を行うと、かねてよりよしみを通じていた国防省の一部と結託し、後に「巽ベイエリアの変」と呼ばれる大規模なクーデターに発展…………はせずにシステムキーを素直に総監へ渡し、一家揃ってテロリストルートは回避されました。
偽のシステムキーを渡すような事もなく、予想外にまともな対応だった父については、常識と法の前に屈したのではなく、管轄がどうなろうが「人命救助第一主義」とフォローが入るのですが、その割にサイマ獣の公認後も各方面に根回しをしたり折衝したり、といった様子も見受けられず、これまでは“子供たちを相手に気まずい”のかと思っていたのですが、根本的に“人とコミュニケーションが苦手”なのかもしれません(割と目をそらし気味にぼそぼそ喋るのも、そういう意図の芝居として頷けるような)。
「確かに、ゴーゴーファイブは、預かった」
「……乾、おまえは、現場に出なくなってから、どれぐらいになるんだ」
「……さあなぁ。もうかなりになるが、それが?」
「ふぅん、火消しの価値はな、火の中で、この纏を振る事にあったんだ」
「何が言いたい」
「ただ机にかじりついてるだけじゃ、火は消せんよ」
モンドが去った後、総監室を訪れるマトイだが、時同じくして街の上空に暗雲がたちこめ、再び雷サイマ獣が出現。現場近くに居たモンドが懸命に避難指示を出す中、差し押さえ中で着装できずともナガレら4名も現場に走っていき、人間としてもヒーローとしても「一つの命を救うのは無限の未来を救うこと」が行動原理の真芯としてビシッと通っているのは、今作のストレートに格好いいところ。
総監を前日のレスキュー現場へ連れ出していたマトイは、現場に吹く強烈なビル風の存在を指摘し、モンドの指示が実は街の最新状況を理解していたが故だった事を説明。
「総監! うちの親父、地球を守る事にかけちゃ結構マジみたいなんですよね。……ま、他の事は全部いい加減ですけど」
は、巽兄妹が10年前の失踪(にともなう母親の苦労?)について父を全面的に許してはいない様子ながら、モンドの理念と活動には一定の理解を示している(ゴーゴーファイブを拒絶していない)事への理由付けと、マトイからモンドへの評価と現時点の距離感、そして褒めすぎないバランスが実に絶妙で、後半の言葉と共に浮かべるマトイの苦笑も合わせて、大変いい台詞でした、
(火消しの血を忘れていたのは、私の方か……)
流石に徒手空拳でインプを蹴散らしたりはしなかったモンドの窮地をマトイが救うと、現場で避難指示に奮闘し続けるモンドの姿を目にした総監は、己の矜持がいつの間にか形だけ、言葉だけのものになっていた事を知る。
パニック状態の人々を誘導する為、モンドがワゴン販売のビニールシートを振り立てる姿が火事場の纏に見立てられると、疲労から倒れかけたモンドを総監が支えて加勢するのも美しく収まり、消防局は着装承認。
「行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
「「「「「着装!!」」」」」
公的機関とヒーロー活動の擦り合わせという難題に対して、「偉い人と旧知」としてきたのは難度を楽に下げた印象もあったのですが、面倒くさい大人たちから魂を受け継ぐ子供たちへと綺麗にパスが繋がってスイッチが切り替わり、実に劇的な変身シーンとなったのは、小中×小林がお見事!
「人の命は地球の未来! 燃えるレスキュー魂!」
狙い澄ました主題歌バトルに突入してヒーローのターンとなると、ブラザーシップアタックからのカラミティブレイクで任務完了。
巨大ライマとは暗雲の下でVロボの瞳とランプを光らせながらの戦いになり、雷撃針を撃ち込まれるVロボだったが、ハシゴハンドで敵の体を掴んで死なば諸共の体勢を取る必殺・ビクトリー心中で落雷ダメージを分散し、ビクトリープロミネンスで勝利を収めるのであった。
モンドと総監の和解により、ゴーゴーファイブは現状維持のアンタッチャブル案件で首都消防局と暗黙の協力関係を結ぶ事になり、持つべきものはコネと金、でMission Complete.
上述したように、ややこしい要素(触れなくても誤魔化せる要素)に敢えて踏み込んだ割には楽なカードを切った印象はあったものの、モンドの掘り下げを行いつつ、公的機関のお偉方を、ただの頭の固い分からず屋にする事なく、互いの立場と信念に基づいた落としどころに辿り着く形にしたのは、達者なバランス感覚でありました。
また第6話に続いて、巽兄妹が「なぜゴーゴーファイブを受け入れているのか」をしっかり固めてくれたのは、大変良かったです。