『仮面ライダースーパー1』感想・第31-32話
◆第31話「人間を吸い込む! スプレー怪人の恐怖」◆ (監督:小西通雄 脚本:鷺山京子)
突然トラックを囲むジンドグマファイターの首!
を掴みのショッキングシーンとして、普通にファイターが出てくるとトラックの運転手にスプレー缶を吹きかけ、本日の作戦スタート。
ジンドグマが売りさばいた特売のヘアスプレーを使った人々は泡のように解けると、その後なぜかスプレー缶の中に吸い込まれてしまうのだ!
その事件にライダー隊も巻き込まれ、女子を囲んで囃し立てていた男子の一人が泡になってしまうのは、日常に近いがゆえに割とインパクトのあるシーン。
「心配するなミチル。シゲルは必ず助け出すよ」
少女を笑顔で励まし渾身のヒーロー仕草を見せる一也は、ジンドグマの仕業に違いない、とスプレーの出元を追う、どころか店頭でいきなり配達員に殴りかかる狼藉に及び、相手が条件反射でファイターの正体を見せてくれたから良かったものの、危うく警察から谷のところへ身元引受人として電話がかかってくるところでした。
内心、自分の立ち位置の危うさに焦りがあるのか、殴って赤くなったらジンドグマだ! と行動の過激化が進む一也は、頭から火を噴くスプレー缶怪人が姿を見せると、変身スーパー1!
「おまえも吸い取ってやる!」
……ここまでに、OP込みで既に10分以上が経過しているのですが、今以て、どうしてわざわざ缶の中に人間を吸い込む機能を付けたのか、ジンドグマにおける作戦的意味が一言も説明されないので反応にちょっと困ります。
「地獄スプレーの威力を見よ!」
捨て身のファイター部隊に囲まれて回避不能になったスーパー1が、とうとう泡にされてスプレー缶の中に回収されAパートが終わると、Bパート冒頭、スプレー缶の中に閉じ込められた人間は数時間後にジンドグマの忠実な兵隊であるスプレー人間として甦る事が示され……つ、つまり、数時間後に、スーパー1とファイターの融合した赤いボディのグラサン1が誕生してしまうの?!
ヒーローの座から転落し、落ちるところまで落ちてしまいそうな一也の明日にドキドキしつつ、肝心のスプレー缶はどうするのかと思えば遠隔操作が可能とわかり、地獄スプレーの作用によりジンドグマの忠実な兵隊と化した人々が次々と誘導される場面に結構な人数を投にゅ……と思ったら14人で限界に達し、行列の末尾まで収めずにシーンを替えたら、更に後ろに人が……感も出せたと思うのですが(笑)
谷の店でもシゲル少年がスプレー人間として甦り、子供たちのやり取りでは「ヤセ」と呼ばれ、わかりやすいあだ名でメンバーを色分けしようという意識は窺えるのですが、一也らからは当然「シゲル」の方で呼ばれる為に、かえってどちらも定着しにくくなっている印象。
アンパンの真理に目覚めつつある太めの少年だけ何故か「大助」なのですが、他のメンバーは概ね、カタカナ3文字のよくある子供ネームなので、部分的にザックリしたあだ名で呼ぶのも、あまり差別化に繋がらず(とりあえず「シゲル」「タケシ」「大助」が居るのは、先輩ネタなのやら)。
シゲルを含め、ジンドグマに誘導される人々がぞろぞろ歩いていくシーンが延々と続いて今回も尺が稼がれると、その後を追っていたライダー隊はジンドグマに捕まり、十字架にかけられて射殺……もといスプレー人間たちからスプレーを向けられ、ハルミらにスプレーをかけるのがジンドグマ入隊の儀式、といった趣向なのですが、なにぶん構えているのがスプレー缶なので、どうにもこうにも緊張感のある画になりません(笑)
そこにスーパー1が駆けつけると、ライダー忍法・足下くぐりの術により実はスプレー缶の中に閉じ込められてなどいなかったのだと自慢げに明かし、つまり今の今まで何をやっていたのかといえばライダー隊を囮にジンドグマが油断するのを待ち構えていたのであり、ジュニア・ライダー隊は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが仮面ライダーは永遠である。つまり――貴様らも永遠である!
山地哲山も言ってた。
敵を騙すならまず味方から、てな。
もはや、なりふり構わずヒーロー復権を目指す一也は、踏み出す前によく考えて欲しかった方の階段を一気に駆け上がり、人質無効の先輩たちが、階上から笑顔でサムズアップを向けてきます。
スプレー怪人の火炎放射を浴びて一度は派手な斜面落ちを披露するスーパー1だが、冷凍ガスで火炎放射を無効化すると稲妻閃光キックにより勝利を収めるのであった。
怪人が倒れるとスプレー人間たちは泡に、ではなく正気に戻り……今回ばかりは、ジンドグマの科学力を信じたい気持ちで一杯です。
一件落着したところに、やあやあやあと走ってくる《ウルトラ》仕草で一也が姿を見せ、
「一也さん、仮面ライダーは?」
「仮面ライダー?」
「うん! 仮面ライダーが助けてくれたんだよ」
「そうか、良かったな」
面倒くさいなこの接待……と心で思っても、顔には出さない早川良であった。
◆第32話「ライダーを餌にしろ! 釣り竿怪人出現」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝)
冒頭からEDテーマに乗って自転車で走るジュニアライダー隊は、新兵を加えての強化訓練キャンプをスタートし、
「ジュニアライダー隊員は――」
「「「平和を守ります」」」
「ジュニアライダー隊員は――」
「「「正義を愛します」」」
だいぶ、出来上がってきていた。
コメディリリーフとして一人だいぶ心持ちの違うチョロの存在が、こんなにも場を和ませる事になろうとは夢にも思いませんでした。
「俺たちの釣りは、魚ではない。人間を釣りに来たのだ」
だがそんなキャンプを、国防庁長官の息子であった新兵を狙う釣り人ジンファイターが襲撃。
チョロに魚の餌を届けに向かっていた一也は魔女参謀の罠により足止めを食っていたが、ライダー忍法・シーンスキップの術により大胆すぎる飛躍でその窮地に駆けつけ……と思ったその時、釣り竿怪人ツリボットにより少年が釣り上げられしまい、錘爆弾からの華麗な釣り糸クライミングで怪人は逃走。
今日も今日とて愉快なジンドグマ学級会に悪魔先生が顔を出すと、魔女参謀の狙いは国防長官の息子を人質にとってのミサイルぶんどり作戦と判明。《スーパー戦隊》の女性幹部スパイ枠よろしくコスプレ担当となっている魔女参謀は看護師に扮すると長官と接触し、同期『デンジマン』ではミラー&ケラーが猛威を振るっていた頃ですが、シリーズ初の女性幹部の投入は、その路線を取り込みたかったのでありましょうか。
「父さん、駄目だ! ジンドグマの言う事なんか、聞いちゃ駄目だ! 僕はジンドグマと戦う、ライダー隊員だ! 死んだっていいんだ! ライダー隊の名誉の為だ!」
ジンドグマ処刑場において魔女参謀は長官を脅迫し、国防に携わる長官がジンドグマの脅迫にあっさり屈しないのはともかくとして、少年が死んでもいい理由が「ライダー隊の名誉の為」なのが入隊早々にガンギマリ過ぎで、帰宅できたらお父さんはすぐに、息子をライダー隊から引き離した上で公安に連絡を取った方が良い案件ではないかと思います。
長官が決断を迫られたその時、一当たりの際に釣り竿怪人に発信機を取り付けていたスーパー1が岩場にバイクで駆けつけるとダブルキックで少年を助け、魔女参謀は逃走。
モチーフは釣り竿だが顔が魚なのが哲学的なツリボットは、ジンドグマ処刑場の人喰い鮫をけしかける搦め手でスーパー1を攻めるが、あっさりジャンプで脱出されてただの尺稼ぎに終わると、おまえも干物にしてやろうか、と火炎放射であぶられた末、月面キックの露と消えるのであった。
ライダー隊の地獄キャンプは再開し、愛の為、自由の為、名誉の為、我らは死ぬ。死ぬことで我らは道を切り拓く。死してその名は残る事なく、ただ道をならす事こそ我らが使命。宿る魂は鋼の如く、流れる血潮は炎の如く、嗚呼、我ら無名の勇士、ジュニア・ライダー隊。嗚呼、我ら不屈の闘士、ジュニア・ライダー隊!
前回-今回と、怪人デザインありきで、この怪人(モチーフ)をお題に作戦を一つ、みたいなエピソードが続きましたが、次回はラジコンだ!