『大戦隊ゴーグルファイブ』感想・第21-22話
◆第21話「恐怖! 魚が化石に」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
ここ数話、明らかに生身の出番が多い赤間はサケの子供を川に放流しようとする少年と出会い、今回もなんだか、冒頭から夏休み感が溢れていた。
一方、シーラカンスモズーが吐き出す液体により川魚が化石と化し……今回は、作戦です!
昨年、似たような効果を持つ化学薬品を事故で川に流出させていた悪の組織がありましたが、今回は、作戦通りです!
外回りの赤間が事件の調査に向かうと、現場に落とした証拠品の鱗を回収しようとしていたシーラカンスモズーが少年を襲う場面に出くわし、赤間は変身。
シーラカンスモズーの鱗にキックを防がれると、釣り針ロープで振り回すが、デスギラー将軍が剣でロープを切り裂くと《ここは俺に任せて先に行け》を発動し、デスダークは、全世界の魚を石にする事で、食糧危機を引き起こそうとしていた!
時間稼ぎだけして将軍は逃走し、少年を家に送っていった赤間は、怪人の鱗が、少年の父が行方不明になっていた現場にも落ちていた事を知る突然のミステリー展開。
少年の父はデスダークにさらわれて実験用の魚の飼育を任されており、大量の魚の輸送ルートを追って怪しげな魚類研究所へと忍び込んだ赤間ら5人がデスダークの迎撃を受けると、今作では珍しい生身バトルがしばらく行われ、引き続き戦闘シーンが多いなりに、ここ数話はメンバー生身の出番を増やそうとする意識は感じられます。
「ゴーグルファイブ、罠にかかったな」
研究所の外へ出ると、高いところに将軍とマズルカが待ち構えていて窮地に陥った5人は、派手な海落ち。
デスダークでは新型化石液が完成し、用済みとして始末されそうになる少年父だが、透視能力でアジトを発見した赤がそれを助け、全員集合すると、海をバックに、戦え、大戦隊!
ゴーグルサーベル投擲さえ防ぐシーラカンスモズーの鱗だが、鱗の剥がれ落ちた箇所にサーベルを突き刺した赤が更に渾身のレッドパンチを叩き込み、しっかり戦闘でも活躍を見せると、Vフラッシュ。
巨大戦では衝撃! ハンドミサイル初の無効化! から石化ガスを浴びるゴーグルロボだが、シーザーの熱光線によって解凍されると、ベーゴマの回転が鱗の鎧を打ち破り、地球剣電子銀河斬りでずんばらりん。
「化石化実験の為に活きの良い魚が大量に欲しいので、魚類飼育の名人をさらう」デスダークの発想はともかく、赤間と少年の交流・「放流したサケの帰還」と「失踪した父の帰還」を重ねる、といった要素がエピソードに芯を通した事で、今作にしては割と足取りがしっかりとしてテンポの良い進行の一本でした。
次回――今度こそ七変化?
◆第22話「呪い人形の攻撃」◆ (監督:服部和史 脚本:曽田博久)
クジャクモズーの能力により、捨てられた人形の怨念が形代に宿って生み出された呪いの人形(人間大)がデストピアに並び、洋装ドレス・和服振り袖・ピエロ・狸の着ぐるみ・野球選手――すなわち、
人を呪うは悪魔の未来! 燃える暗黒サイエンス! 呪殺戦隊! ニン! ギョウ! ファイブ!! 霊場!
「いかがです。呪いに満ちた人形たち。これより、捨てられた人形たちが、人間どもに呪いの復讐を始めるのです」
「おまえ達、人間どもに、暗黒科学の呪いの恐ろしさを思い知らせてやるがよい」
もはや「科学」と「呪い」を並べる事に一瞬の躊躇もないデスダークだが、
「面白い! じっくりと見せて貰おう。やれ!」
総統タブーも乗り気で腕をバタバタさせ、まあ、デスマルク大元帥に睡眠学習させていた当人なので、大元帥の作戦に面と向かって「え、何それ……」とは言いにくい立場です。
その頃、桃園は研究所の年長女性コンビと共にお洒落して竹下通りに繰り出すとブティックで服を選んでおり、
「気にしないで。餞別代わりよ」
「本郷博士のお手伝いに戻るんだから、パリッとした格好で行って」
……どうやら1人、リストラされるようだった。
まあこの2人は、コンボガの子役に言わせるには長い説明台詞を喋る係以上でも以下でもなく、もはや遅すぎた必然とも言える処置ではありますし、この手のサイドレギュラー的キャラが急に消えたり入れ替わったりするのは東映特撮ではままある出来事とはいえ、もう少しどうにかならなかったのか、とは思うところ。
ところが、ドレスルームに入った助手Aが呪い人形の襲撃を受けると、店内のマネキン人形が生命を持ったかのように桃園に襲いかかり、巨大フランス人形と戦うゴーグルV。
「古来、暗黒科学においては、人形は人型と称して、人を呪う道具に使った。これからは、人形自身が人を呪うのだ!」
どうやら「暗黒科学」の中には、今日「魔術/呪術」と呼ばれるものが含まれているようで、暗黒科学的には何もおかしくはない! と今回も丁寧に作戦内容を説明してくれるデスギラー将軍。
各地で呪いを振りまくニンギョウファイブに対して後手後手に回って決定的な手を打てないゴーグルファイブだが、そこに振り袖姿で美しく着飾った桃園が現れると、人形に化けて他の呪いの人形を釣り出す作戦を提案し、ピエロ人形の来歴を聞き出す事に成功。
クジャクの矢が突き刺さった事で呪物となっていたピエロ人形を解放するとニンギョウピエロは消滅し、続けてピエロ人形に扮した桃園がニンギョウファイブのアジトに潜り込むのは、コスプレ回として面白い切り口。
次々とニンギョウファイブの来歴を聞き出し、内部から瓦解させる事に成功したピエロ桃園は、頑なに口を噤むフランス人形を男装の王子桃園として籠絡。だがそれはピエロの動きを怪しんだデスギラーの罠であり、待ち受ける銃口が火を噴いたその時――王子桃園をフランス人形が身を挺してかばうのは、しっかりと劇的になりました。
「人形たちの無念の思いを呪いにかけ、利用する悪魔のデスダーク! 許さん!」
土に還った人形の為に涙をこぼした桃園王子は薔薇のサーベルを振り回して戦闘員を次々と斬殺。
「貴様は……何者だ?!」
「正義と平和を守る、愛の戦士……桃園ミキ。――ゴーグルピンク!」
え? デスギラー気付いてなかったの?!
はまあともかく、怒りの啖呵からの綺麗な変身となり、一同揃うと河川敷にいきなり現れたお城の上で、戦え! 大戦隊!
クジャクモズーが西洋妖怪コスプレ軍団を繰り出しての主題歌バトルとなり、こうらくえん遊園地のアトラクションからお借りしてきたような感が凄いですが、見所は、アイアンアームで狼男の顔に鉄釘を叩きつけまくる黒・フランケンシュタインの怪物の後頭部をメガトンボールで全力で殴打する黄・魔女の顔面にレッドパンチを叩き込む赤。
《スーパー戦隊》名物・本日は軽装なので敵の動きがいつもよりアクロバット、な激しいバトルの末、逃げたクジャクモズーを追った桃が怪人と激突。
リボンシャワーからのハート催眠で痛めつけるとバトンで叩きのめし、この時代、ミス・アメリカもデンジピンクも、戦闘能力は他のメンバーより明確に一歩落ちる描写だったのですが、ゴーグルピンクが一騎打ちでの完勝を見せると、ゴーグルビクトリーフラッシュ!
クジャクコングとはいつもの飛び道具の打ち合いから、ピンクのシーザーミサイル発射で形勢逆転すると、電子銀河斬りで真っ二つにするのであった。
戦い終わると、
「さようならみどりちゃん」
と助手Aが基地から送り出され、エピソードの中でスポットが当たる事こそ無かったものの、外出シーンが描かれる・お別れシーンも描かれる、と驚くほどの好待遇での卒業となりました。
集められた人形たちはゴーグルVの手によって祀り上げられて怨念は鎮められ、
〔コスプレ回を成立させる為の一工夫・メイン回で普段とちょっと違う芝居をさせる・作戦内容に合わせてキャラの心理にフォーカス・そこから繋いで啖呵を切っての「変身」の瞬間を劇的にする〕
と、目配りと組み立てに妙味があり、ようやく今作の曽田脚本で、このぐらいの内容を作品の基準にしてほしい、という出来の一本が出てきてくれました。
前回も比較的テンポが良かったですし、ここから上昇気流に転ずるのを期待したいところで、次回――目立てるのか青山?!