『仮面ライダースーパー1』感想・第27-28話
◆第27話「子供の味方! チャイルドXの正体は?」◆ (監督:佐伯孚治 脚本:土筆勉)
子供達の立ち読みを叱る本屋の店主が、派手な演出で飛来した手錠に両手両足を拘束されると、軽ワゴンの屋根に立ち高笑いと共に現れた金マントのタキシード戦士に成敗され、移動式お立ち台が絶妙な脱力感を巻き起こします。
「僕の名前はチャイルドXだ! 子供の自由と権利を守る為にやってきた。さあみんな、好きなだけマンガを読みたまえ!」
……つまり、山賊だった。
一部始終をジュニアライダー隊が目撃して谷らに報告するも、深刻に受け止めないで居る内に、続けて進学校の教師たちが木に吊される事件が発生し、今度はビルの上に現れるチャイルドXとグラサンかけたX軍団。
「X軍団には、勉強も宿題もない。お菓子と自由があるだけだ!」
甘い言葉に群がって、サングラスをかけてX軍団に入った子供たちは街で無法を繰り返し、いってみればプチ・ジンドグマと化すと、ジュニア・ライダー隊が我が身を張って調査に乗り出す一方、谷らは引き続きモーターショップ内でくっちゃべっており、あくまで子供コミュニティレベルの事件をライダー隊が追っている内に……としたかったのでしょうが、冒頭時点で既に犯罪に片足を突っ込んでいる上で、既に事態は笑い話で済む範疇を超えているので、のほほんとした言行が現状とあまりにも噛み合いません。
良と隊員が、自転車で走っているところにロープを引っかけられると(洒落にならない)、バットを手に持ったX軍団に囲まれるが、
「大人を閉じ込めたり、店のお菓子を勝手に取って食べたり、君たちのやってる事はギャングと同じだ!」
と、事態の有りようについて良が真っ当な見解を示してくれたのは良かったところ。
心配して追いかけてきた一也が良を助けると、チャイルドXその正体はジンドグマ怪人グラサンキッドと一当たり。
グラサン手錠を振り回す戦闘員との手錠アクションは一工夫が効き、今日も今日とて催眠耐性の低い一也は、自ら目を閉じてグラサン催眠を防ぐと変身スーパー1!
「仮面ライダー!」
「そうだ! チャイルドXに化けて子供達をたぶらかし、世の中の混乱に乗じて、日本征服を企む貴様の野望、このスーパー1が叩きつぶしてやる!」
悪役サイドが何も言わないまま、戦闘に入る際の前口上で仮面ライダーが計画の全てを説明してくれるのは、ちょっと珍しいような(笑)
グラサンキッドは撤収するが、小さな無法者・X軍団の増員は着々と進んでいき、東京都下で革命の火の手を上げるまで後一歩に迫る中で幹部会議の場が持たれ、ジンドグマは、作戦の進捗状況について皆で話し合う社風です。
決して仲良しこよしというわけではありませんが、社内の風通しを良くしよう、という意欲が窺え、現代ならきっと、オフィスのパーティーションを取っ払う系(※実際に職場環境が良くなるかどうかは個人によります)。
一方、良とは別行動していたライダー隊がX軍団に囚われていたが、腹痛に倒れた弟を助ける為に組織を抜ける事を決意した団員が裏切り者として処刑されそうになるギャング物の文脈で話が転がり……良の啖呵が、この前振りだったとは(笑)
ブルドーザーによる生き埋めの刑で、きっちり小学生に土をかけにいくのが実に昭和ですが、痕跡を追って現場にやってきたライダー隊が《投石》スキルで救出を試みようとするも、失敗。
みんなまとめて生き埋めにされそうになったところで、多分メンテ中だったスーパー1がようやく出てくると、遅刻を取り返す分とばかり、ジンドグマをブルドーザーで追い散らす一ひねりで、気分はギャングVSヤクザ。
ライダー竜巻の術でサングラスを外させ、X軍団を解散に追い込んだスーパー1は、手錠をかけられるもパワーハンドであっさり粉砕すると、今度はグラサンキッドの乗り込んだブルドーザーとパワーハンドでの対決となり、ブルドーザーから振り落としたグラサンキッドの両目をパンチで潰すと、月面キックでトドメを刺すのであった。
「仮面ライダー……負けたぜぇ……死にたくない!」
グラサンキッドは弾け飛び、子供達は所業を反省し、エピソードとしてはチャイルドXの登場シーンの奇天烈ぶりがピークで、後は定番の子供洗脳反乱ものとなり、どうせプチ・ジンドグマを描くならば、奪うばかりではいずれ何も得られなくなる――マンガもお菓子も“大人”が居なければそこに存在もしない――点についての視線ぐらいは盛り込んでほしかったところ。
その為、ラスト、やっぱり大人の言う事を聞こうでもお母さんは口うるさいなぁあははははは、が物凄く取って付けた感じになってしまったのは残念でした(この辺り、現在《戦隊》含めて80年代初期の作品を立て続けに見ているので余計に気になる……というのはありますが)。
◆第28話「人間を写しとる 怪奇ビデオ怪人!」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝)
「ジンドグマの魔女参謀の招待は、断れない」
言い回しのなかなか格好いい魔女参謀は、サブタイトル通りの能力を持った怪人ビデオンを使い、世界的に有名な科学者を次々と拉致すると、ジンドグマの殺人研究所で強制的に働かせようとしていた!
本日もファンファーレも高らかに悪魔元帥が重役出勤してくると、幹部会議ではそれぞれ厭味を飛ばし合い、ジンドグマは、それでもお昼のランチはみんな一緒に取る社風です。
ヤマモト博士をビデオ撮影によって誘拐したビデオンが車で逃走するととライダー隊が自転車でそれを追いかけていき、ジュニア・ライダー隊の構成員たるもの、時速70キロで自転車をかっ飛ばしながら、スーパー1の為に追跡用のサインを道に残していくぐらい造作もないことなのです。
最近パワーハンドの存在にフォローが入っている一方、レーダーハンドが完全に人力に押しやられて在庫処分の危機になっていますが、ライドルドスアタック、お袋の仇じゃボウガン、などの流れを考えると、これが貴様の地獄行き片道切符じゃレーダーアイ! がシリーズのフィニッシュブローになる可能性があるかもしれません。
ビデオンのアジトに踏み込むスーパー1だが、先走ったライダー隊と共にビデオテープに撮影されていまい、ブラウン管の断面図のようなビデオ怪人の体内映像がなんともシュール。
そのまま殺人研究所に連れて行かれると、スーパー1は内部の真空管を破壊して強引に脱出し、逆転のくだりは実に雑でしたが、ジンファイターがサーベルを振るう殺陣が凝っているのは良いところでした。
戦闘員を串刺しにしたり頭部をサッカーボールのように蹴り飛ばして片付けると、ビデオンとの一騎打ちになり、華麗にサーベルを操るビデオンだったが、足技からパワーハンドでアンテナをへし折られる残虐プレイで悶絶したところに、スーパーライダー稲妻旋風キックを叩き込まれて散るのであった。
魔女参謀の遠吠えタイムの後、子供達に手を振りながら後ずさりするスーパー1がバイクで走り去る王道を見せて、つづく。
次回――これは割と、好き系の怪人かも(笑)