『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』感想・第6話
◆第6話「決戦! 常夏城の大冒険」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:井上亜樹子)
総理を辞職する事になった常夏がブライ団と手を組んで遠野らに挑戦状を叩きつけ、生み出される常夏ボウケン城。
適当に5人セットにされている遠野らは常夏城に乗り込んでいくと試練に挑むが途中でファイヤキャンドルが乱入し、一人おままごとの補習を受ける羽目になり、雑な女装常夏の姿に母親を思い出してしまった遠野は、今日もメンタルバリヤーをあっさり破壊されると常夏式プロレスセミナーの前に屈して己の過去を打ち明け、吠、キャンプファイヤーとか囲ませたら心の全てを全世界同時配信でさらけ出してしまいそうで少々不安になります。
吠は元々“この世界”の出身だったが、少年時代、兄と共にノーマンワールドに迷い込んで同様の奇禍にあった人々と共にノーマンからの逃亡生活を送っていた数奇な過去が明かされ……
「兄ちゃんも、あっちで出会った大事な人も失って、10年ぐらい経ったある日、突然この世界に戻ってきたんだ」
表面上は愉快なドタバタ強めだが個々人の背景は重めのスタイルが続きますが、そのドタバタの出力が“馴れ合いめいたお遊び”や“コントめいた仮装”になってしまう――制作サイドの「重い設定があるのに、敢えて“おふざけ”っぽい事をやるのが面白いでしょ?」がなんとなく透けて見えてしまう――のはどうも好きな手法ではなく、もう一工夫が欲しいところです。
別の言い方をすると、「ギャップ」というのは確かに有効な手法なのですが、「ギャップさえあれば面白いだろう」というのをちょっと安易に使いすぎかな、と。
一応今回、幼い頃からあまりに優秀すぎたゆえの孤独を背負う常夏が“やりたかった遊び”と理由は付けられましたが、それだと、試練の中に常夏自身が加わらないと意味が無いわけで……。
「私たちはまだ取り返せる。失ったもの、得られなかったもの……命あればいつだって」
吠と常夏がお互いの孤独に共感を覚えると、途中経過は無茶苦茶だが、なんだかんだと年上にして元一国の総理である常夏が、若者が前を向けるような言葉をかけるのは、いい所ではありました。
だがその間に、城門前では青黄緑黒がファイヤキャンドル部隊に雑に(本当に雑に……)蹴散らされており、遠野と常夏が参戦すると、並んで変身。
常夏の裏切りに怒りを燃やすあしゅらケーキが出てきて自力で巨大化すると、ローテによりテガソード黒(槍と盾のナイト仕様)が勝負を挑み……単純に滑舌が悪いのか、キャラ付けとして一定の意識があるのかわかりませんが、角乃の舌足らず度合いが、個人的に少々辛い。
魔導騎士アタックでケーキ夫妻がさっくり溶ける一方、地上ではウルフ&ドンモモ元総理がキャンドル&金ベルと激しい戦いを繰り広げ、戦闘の画は終始派手なのですが、その回のメイン以外のメンバーが、画面外にざっくり消滅しがちなのは、気にかかるところ。
赤と共に戦うモモ元総理は、手足になるお供ではなく、背中を預けて共に戦える存在への高揚感にドッカンハイテンションすると、本当の友達が欲しかった、と願いを吐露。
「私は強いだろ、吠くん! 私ならば、君を置いて消えたりはしない! 絶ッ対に!」
……今のところ今作登場人物の中では、言動が一番ヒーローぽい(笑)
コンビ攻撃で金ベルを撃破するとファイヤキャンドルは撤収し、ブライ団を退けたゴジュウウルフとドンモモ元総理は、指輪の戦士として一騎打ち。
その戦いはウルフの勝利に終わると、テガソードの消滅と共に常夏の所持していた戦隊リングは吠のものとなるが、吠は地面に倒れた常夏へと手を伸ばす。
「俺がおめぇの、ベストフレンドナンバーワンだ」
常夏の言葉に打たれて見事に自己啓発された吠もまた常夏を友と認めると、ドッカン大歓喜した常夏は、次の選挙に再出馬だ! とサンシャインで走り去って行き、まあ、常夏さんは、悪いキャラではなかったな、と。
吠と相性が良いというか悪いというか、いきなり吠が過去を語り出したのは面食らったものの、心の隙間に忍び込んで年長者らしい助言を与えるところまでやってくれたのは良かったですし、特にケチな陰謀を企んでいるわけでもなかったので、むしろ現時点での『ゴジュウジャー』の中では、好感度がトップクラスに高いまであります(笑)
これにて一件落着、かと思われたその時、Wケーキが復活すると極太レーザーを放つが、その攻撃からテガソードを守ったのは、どこかで見たような顔の巨大ロボで、つづく。
ボウケン城の試練の辺りはどうしようかと思いましたが、後半は割と持ち直し、吠と常夏のエピソードとしては意外に味が出た一方、ゴジュウジャーの面々が一緒に行動する事に“なんとなく”レベルの説得力も感じられないのが話数を重ねるごとに苦しくなってきていますが、次回どうやらそこにメスが入りそうなので、《スーパー戦隊》としての面白さが出てくる事を期待。