東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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STOP! 改造人間詐欺

仮面ライダー(新)』感想・第53話

◆第53話「魔神提督の最期! そして大首領の正体は?」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:江連卓)
 ナレーション「だが、父が改造人間FX-777として、ネオショッカーの大幹部になっていると知ったスカイライダーの、胸は痛んだ」
 衝撃! アバンタイトルのナレーション冒頭で飛び出す新情報!!(笑)
 まあ「関東管区司令官」=「大幹部」と認識するのが間違いとは言い切れませんが、そもそもFX-777は父なのか? の真相を確かめようとしていた筈なのに、いつの間にか前提は真、にすり替えられており、ナレーション詐欺にまんまと引っかけられた洋の貯金が今、危ない。
 あなたの父が改造人間FX-777として犯罪に荷担しています。つきましては、今すぐこの口座にお金を振り込んで下さい。
 S先輩が落とし穴に飲み込まれる一方、魔神提督の毒ガス攻撃を受けるスカイライダーは、ジャンプ一番、風上を取る事で毒ガスを回避。だが続けて魔神提督の入れ歯シュートが迫り……全身これ兵器を表現するにしても、他に色々あったのでは?!
 ところが、入れ歯リターンされた魔神提督は、歯に仕込まれた、改造人間の心臓を弱らせる毒液を自ら受けてしまい、一転大ピンチ。
 スカイライダーの反撃を受けると慌てて逃走し、もはや父母の行方しか頭にないスカイライダーが虚空に向けて叫ぶと、背後の湖にはネッシーもとい謎の怪獣が顔を出したところにサブタイトルがかかり……文字が小さめで画面中央に固まった結果、なんだか、週刊誌の見出しみたいになりました。
 連絡の途絶えた洋と茂を心配するブランカには一文字先輩が姿を見せると、開口一番「洋の両親が生きていた」らしいという割とデリケートな話題を店中に響く大声で口にし、デリカシーはもはや、人の体と共に死んだのだ。
 谷らから洋を助けに向かって欲しいと頼まれた一文字先輩は、
 「洋は魔神湖にある、魔神提督のアジトに向かったに違いありません」
 と店を飛び出していき、魔神提督のアジト、その筋では有名観光スポットみたいな扱い。
 ライディング変身を見せた一文字先輩が魔神湖へと向かう一方、胸のエンジンに火が付きっぱなしの洋は提督のアジトへと単身カチコミをかけ、月光を浴びる事でどんな傷も一晩で回復するRPG体質と判明する魔神提督……入れ歯リターンで思ったよりダメージを受けていました。
 戦闘員を蹴散らし、提督の寝室に乗り込んでいく洋だが、そこで目にしたのは、魔神提督が身につけているドッグタグが、FX-777?!
 「馬鹿な! それじゃ……」
 辻褄が合わないぞ洋。
 「魔神提督が、俺の父さん? ……馬鹿な……馬鹿な! そんな馬鹿な!!」
 眠れる提督を前に頭をかきむしりながら洋は絶叫し、主人公の私的な背景から仇敵との戦いに葛藤を抱かせるアプローチそのものは面白いのですが、これまでの戦いの月日が無視され気味な上、洋の家族への思い入れとかあまりにも急に生まれすぎて、見ていて話に全くついていけません。
 前回窓口をたらい回しにされながら集めた情報によると、FX777は3年前に改造されて第三支部へ → 半年前からアリコマンド養成所の所長就任 → 関東管区司令官に栄転、の経緯で出世しており、判明している魔神提督の経歴と全く噛み合わないわけですが、これは視聴者だけがわかる事実で洋が魔神提督の経歴を知らないとした上でも、これまでの戦い全てが関東管区司令官に栄転後と捉えるのもそこに気付かないまま信じ込むのも幾らなんでも無理があり、冷静さを失った洋が騙されている、と受け止めるにも穴が大きすぎて、警察が現金を要求してきたら詐欺だよ洋!
 自分が騙されるわけがないという過信が落とし穴に繋がるんだよ洋!
 ……まあ既に洋両親(&妹)の死亡時期が違うユニバースに移動していると思えば、このユニバースでは魔神提督の経歴から違う可能性もありますが、「魔神提督が洋の父?!(と洋だけが勘違い)」をやる為に周囲の時空を大規模にねじ曲げているものの、大規模にねじ曲げてもなお茶番劇さえ成立しないレベルの整合性な上、視聴者を巻き込む仕込みが圧倒的に不足しているので「洋だけが勘違い」しているのも理解困難な状況設定に。
 物理ではなく精神の落とし穴に落ちる新世代仮面ライダー仕草をキめ、眠れる魔神提督に剣を向ける洋の胸には両親との思い出が去来すると、目を開いた提督は唐突に自分は洋の父に間違いないと言い出し、自分を殺すように語りかけ……どこから飛び出してきたのか、洋父人格(笑)
 ただでさえ経緯の辻褄が合っていないのに、芝居にしても魔神提督の人格がどうなっているのか疑問しか浮かんで来ないのですが、洋は否定材料を一切取り上げないまま自称父の言い分を受け入れてしまい、視聴者も一緒に騙される面白さも無ければ、視聴者はわかっているが洋が騙される事で生じるサスペンスも機能しない、とんだカタストロフに到達。
 とにかく洋を軸とした「父と子」のテーゼが強調された事などなく、父親については前回思い出したばかりなので、「3年前に死んだと思い込んでいた父親だから……」といった視点になれず、シリーズとして新しい切り口のドラマ性を加えようと思ったら、土台から爆破されたみたいな状況。
 「洋、この音がなんの音かわかるか? 心臓の音ではない。心臓に仕掛けられた時限爆弾の音だ」
 「知っていたよ、父さん」
 「なに? おまえは知っていて儂を」
 「そうだ。俺は、父さんと一緒に死ぬ覚悟は、出来ているよ」
 父を名乗り出した魔神提督を背負った洋は、2人で暗黒の地底へ行こう、と歩み出し、“公の正義”をかなぐり捨て、“私の感情”のままに行動する主人公が、父の罪を精算する為に父との心中を選ぶのですが、そこに至る積み重ねが特に存在しないので、素材が無いので無からカレーライスを作ってみたが、無はカレーにしても無だった、みたいな事になっています。
 五体バラバラになっても心臓が無事な限りは大首領の力で甦る事ができる魔神提督(まあ、大首領が甦らせてくれるのかはさておき)が洋の背でほくそ笑む一方、落とし穴に落ちたら何故か滝壺に転がっていた城茂は中年の婦人に助けられて目を覚まし、その女性こそ、筑波洋の母。
 茂は洋母からこの3年間の事情を聞くが、洋母は突如として姿を見せた巨大怪獣にぱくっと咥えられて連れ去られ、それを愕然と見送りながら、洋母の心配よりも、あんな巨大生物が地球に居たなんてと考え込んでいる茂、他人の扱いが雑なところが変わっていません(笑)
 続けて今度は、魔神提督をおんぶして歩いてくる洋、という空前絶後に意味不明な状況に出くわした茂は、本物の洋父は冷凍処刑されている事を告げ、背後に氷の塊が見える映像的な伏線はあったのですが、その状況で洋母が生かされている理由もわけがわからず、話の都合が話の都合を生み、話の破綻は広がるばかり。
 「むふふ、むはははははははは……!」
 「魔神提督! 貴様という奴は!」
 「全ては貴様を苦しめる俺の策略だ。今頃気が付いても既に遅い。時限爆弾は3分後に爆発する!」
 え、さ、3分もあるの?!
 おまえの父なわけがあるか! と真相を告白した魔神提督は、洋の体を背後から両手両足で締めあげ……3分、その姿勢で耐えるの……と思ったところで、変身・ストロンガー! 更に2号先輩も後ろから駆けつけ、主人公がおんぶした大幹部に先輩2人が殴りかかる曰く言い難い映像となった末、絞め技に入ってから、約36秒でもぎ離されました(笑)
 自由を取り戻した洋はスカイ変身し、第18話での初登場(第17話でビームと声だけ登場)から数えること35話の長きに渡り、ネオショッカー日本支部に君臨した大幹部としては、あまりにもあまりなおんぶアタック。
 爆発まであと2分ぐらい、最後の力を振り絞る魔神提督は、袋だたきに遭いながらも3ライダーを道連れに自爆を図るが、2号先輩とS先輩にがっちり両腕を掴まれると、無防備な胴体に連続で叩き込まれるスカイ膝蹴り。えずいたところを宙に放り投げられた魔神提督は、トリプルライダーキックの直撃により、これといって一矢も報いられないまま大爆死を遂げ、遡れば敗因は、センセーショナルなデビューを飾ろうとするあまり、虎の子の必殺魔神ビームをゼネラルモンスターの処分に使ってしまった事でしょうか。
 「貴様に用は無い。廃棄処分にする!」
 復元を嘆願する魔神提督のヘルメットと心臓部は大首領の巨大な手に握り潰され、大幹部ポジションが怪人の姿にならないまま退場したのは、『アマゾン』のゼロ大帝以来でしょうか……?(こちらはちょっと、特例な部分もありますが)
 デザインと化粧のインパクト、役者さんの高笑いと目を剥く芝居には存在感があり、悪い印象はあまり無い大幹部でしたが、対ライダーにこだわって最終作戦がせせこましくなるパターンに陥ると、3ライダーに袋だたきにされて散る、冴えない最期となってしまいました。
 俺パパ詐欺作戦も、周到にして悪辣な策士・魔神提督! というより前後の見境を完全に失い錯乱する暴走・筑波洋! の茶番以下になってしまったのが、痛恨の極み。
 2号先輩は魔神提督のアジトにおいて、大首領の地底基地までのわかりやすい案内図を入手しており、魔神湖周辺はやはり、全世界のネオショッカー構成員が一度は訪れたい、憧れの観光スポット扱いでした。
 最終回1話前だというのにかなり残念な出来になってきていますが、いよいよ大首領の座する大神殿へと突入した3ライダー(そもそもこの3人のセットが、客演の都合でしかないのが厳しい)は、洋母が小間使いとして働かされている姿と、大首領による社長訓辞を目撃。
 「大首領の正体は、暗黒星雲から来た化け物だったのか」
 社長の自称を鵜呑みにした3人、そのまま突撃しての洋母救出を諦めたと思ったら、場面変わるとさっくり洋と母親が再会を果たして目眩がしますが、客演先輩の見せ場の確保と、泣きを重視して湿っぽくもくどい芝居で家族愛を強調しようとする都合により、ぶつ切れのドラマがあっちこっちに散らかり放題で物語のテンポをズタズタにしてしまうのが、完全に3クール目の失敗の繰り返しで、目もあてられません。
 先輩たちが足止めを買って出ている間に洋は母を連れて地下基地から脱出を図り、勢いに任せて神殿に突撃した先輩たちの前に姿を現す大首領ガンガ……じゃなかった、大首領怪獣(いや今回、ガンガンジーの出番が無いので……)。
 「なんという、巨大な化け物だ」
 地底基地を飛び出す2号とストロンガーだが、その後を追って湖から20~30メートル級の宇宙怪獣が出現すると、その巨体はライダーキックをものともしない。
 「ストロンガー、ここはひとまず退散だ」
 2号&S先輩が、大首領を怒らせるだけ怒らせて逃走していた頃、洋は母と共に氷漬けにされた父の遺体に手を合わせており、気持ちはわかるにしても余裕を見せすぎている間に、大首領の引き起こした落盤に飲み込まれそうになって、つづく。
 最終回を目前に控えて新たなユニバースへとライダーブレイクし、過去を書き換えた今作、FX-777絡みの謎にはさして期待していませんでしたがそれにしても無惨な話運びとなると、客演先輩によるひずみが3クール目の二の舞を呼ぶ非常事態で、真剣に今作ワーストクラスの出来がここで来てしまうとは……。
 流石に予告洋は登場せず、次回――最終回!