『太陽戦隊サンバルカン』感想・第41-42話
◆第41話「七化けドロンパ狸」◆ (監督:東条昭平 脚本:筒井ともみ)
見所は、拾った兎を優しく抱えるアマゾンキラー。
日の丸扇子を手に持ち、見た目は愉快な茶釜モンガーだが、その放つ猛毒ガスにより200匹以上の犬が大量変死する事件が引き起こされ、シーシーに引きずられて調査に駆り出された豹は、愛犬を失った少年と出会って事の経緯を基地で説明。
「許せん。絶対に許せん」
ブラックマグマの仕業に違いない、と怒りを燃やす飛羽らが背景に押しやられると、画面手前に入ってきた嵐山長官が呟くのがインパクト抜群で、動物狙いの作戦が、嵐山長官の逆鱗に触れました。
狙いは犬だけとは思えない、と太陽戦隊がパトロールを強化する中、茶釜モンガーはサンバルカンやヘルサターン総統に化ける七変化の術を披露し、本格的に発動する、動物皆殺し大作戦!!
パンサーが茶釜と一当たりして、左足を負傷した茶がモンガーが撤収する一方、共働き家庭で飼い犬への愛が深かった少年の哀しみ・その心を開こうとする教師・怪我した兎の世話を通して前向きになっていく少年…………に、豹が全然からんでこない(笑)
『太陽戦隊サンバルカン』名物、メイン回はどこですか見つけにくいものですかカバンの中も机の中も探したけれど見つからないのにまだまだ探す気ですかそれより僕と踊りませんか、が炸裂し、るるっるー。
そんなわけで導入を除き、サンバルカンサイドと少年サイドが全く交差しないまま、茶釜モンガーに襲われた飼育員の証言から少年が世話している野ウサギに茶釜モンガー疑惑がかけられるのですが、
〔太陽戦隊が少年の元を訪れるわけでもない・少年が野ウサギに疑いを向けた経緯が不明・校長が警官まで呼んで疑惑をかける理由はなお不明・そんな一件を自分の交番だけで処理しようとする警官・茶釜モンガーは明らかに別の場所で行動しておりミスディレクションにもならない〕
と、不幸にもモンガー疑惑をかけられてしまった野ウサギと、それを世話する少年の友情に軸がある仕掛けはわかるのですが、“モンガーを追う”サンバルカンと、“兎を守ろうとする”少年が全く絡まないので、公権力がモンガー包囲網を展開している中で生まれる“市民生活におけるささやかな誤解や不幸”が本当に世界の片隅だけで展開しており(勿論それを狙った作劇もありますえが、ここではそうではないと思われ)、野ウサギの真贋に基づくサスペンスが生む筈の動力が虚空に向けて送られていきます。
そうこうしている内に、少年が交番から救出を敢行した野ウサギが逃げ出すと、それを拾ったアマゾンキラーは、茶釜モンガーをそれに化けさせて包囲網の突破を図るが、特になんの前振りもなくイーグルがバル透視であっさり看破。
二段仕掛けのミスディレクションが全く上手く機能しないまま名乗りですっ飛ばすと(悪い形でのスイッチ切り替え)、輝け! 太陽戦隊!!
茶釜ガスをスクラムハリケーンで跳ね返すサンバルカンだったが、トリプルアタックは連続茶釜変化に打ち破られると、冥土の土産に貴様のメイン回だった事にしてやろう! と茶釜変化で偽パンサーが出現して取っ組み合い。
「どっちが本物だ?!」
「わからん!」
「……ごめんよパンサー」
地球平和の為にどっちも斬ろうでダメージを与えると、尻尾を出した偽物にストロボアタックからバルカンボールVer.3が放たれ、ライターが引火して大爆発。
謝った瞬間に、バルイーグルならやりそう、とは思いましたが、本当にメイン回が冥土の土産になってしまうところでした。
巨大モンガーの茶釜爆弾から茶釜円盤攻撃を受けて苦しむロボだが、前作のデンジ剣さながら、万能リターン技になりつつある太陽スクリューで強引に撃墜すると、オーロラプラズマ返しでずんばらりん。
少年の手元には、アマゾンキラーが保護してくれていた本物の野ウサギが戻っており、野生に帰される野ウサギと、哀しみをこらえてそれを見送る少年の成長譚みたいにまとめられるのですが、とにかく少年×野ウサギの方にサンバルカンが絡まないので、別々の物語がほとんど連動しないまま、最後だけアマゾンキラーにより強引に接着される作りが残念でした。
◆第42話「寝坊少年の白昼夢」◆ (監督:東条昭平 脚本:曽田博久)
妖魔術により東京全域に集団催眠術をかけるとてつもない作戦……は、今回もヘルサターン総統の全く知らないところで進められていた(笑)
「体力の限界まで、使い果たし」
「今や、ヘドリアン女王陛下を支えるのは、精神力のみ」
「我が身を犠牲にしての行いです」
「それというのも全てブラックマグマを思い、ヘルサターン総統の御為を思ってのこと」
「……感激!」
もはやヘドリアン親衛隊と化しているゼロガールズが、アマゾンキラーと口を揃えてヘドリアン女王の勇姿を讃えるとヘルサターン総統はコロッと転がされ、どこをどう取っても、銀座のスナックでホステスにチヤホヤされている会社社長です。
夜間パトロール中の鮫島が土管の中で寝ている少年を発見すると、そこにドラゴンモンガーが出現。
「モンガー! 昼にしてやる!」
咆哮一閃、放たれたドラゴン花火により、空に生まれる人工太陽!
真夜中だった筈の世界は、瞬く間に部分的に真昼と化し、ブラックマグマ突然の大規模作戦に脳の整理が追いつきません!
「ドラゴンの太陽は決して沈まぬ! 決して消えぬ! これからお前達は、夜の無い世界に住むのだぁ!」
ドラゴンの太陽の影響が及ぶ昼と夜の境目を色分けで見せる演出はシンプルに面白く、その間で無駄に回転するバルパンサー(笑)
人工太陽には地球守備隊の航空戦力も手を出せないまま、次々と打ち上げられていくドラゴンの太陽により、東京全域はとうとう、常昼の世界と化してしまう。
「ひょひょー、本物の太陽が昇ってきたぞ」
「まるで朝が来たって感じがしないな」
「ドラゴンの太陽は七つになってしまった……ブラックマグマは、いったい東京をどうしようっていうんだ」
主題歌に唄われている「太陽が燃えている限り 必ず眩しい朝が来る」、すなわち「明けない夜はない」のテーゼを、偽物の太陽が常に輝いている事でぼやけさせる=人類社会の危機を暗示する、のは面白い趣向となり、この後の曽田戦隊に通底するテーマを考えると、「人の心を失った科学が人類にもたらすもの」の隠喩を見てもいいのかもしれません。
サファリで目を覚ましたねぼすけ少年は迷子と判明する中、街では睡眠不足を原因とする交通事故が多発……どころかコンビナートまで盛大に吹き飛び、なんか、ブラックマグマ史上最大の戦果を上げつつあった。
「このように睡眠不足で疲労した人間こそ、一番催眠術にかかりやすい状態にあるのだ」
ヘルサターン総統史上最高に成功したアシストを受けて、ヘドリアン女王は改めて妖魔集団催眠術を発動。
ドラゴンモンガーには妖魔力の中継器としての能力も与えられており、女王 → ドラゴン →ドラゴンの太陽を通して、東京都下に放射される強力な妖魔催眠術!
ブ、ブ、ブラックマグマの作戦が、段取りを踏んで綺麗に噛み合っている?!
もはやこれは、次回組織崩壊の大きすぎるフラグでは無いのかと心配になってくる中、そこに女性運動めいたものを絡めて(世相ネタ……?)、久々に一般人コスプレに身を包むゼロガールズがブラックマグマワッペンを配って回り……まあ既に催眠術が効果を及ぼしているという事なのでしょうが、それ、国連公認の人類の敵ですよね?!(笑)
「集団催眠だ! ブラックマグマは、東京中の人間を集団催眠にかけるつもりだ!」
嵐山長官の灰色の脳細胞が一足飛びに結論に辿り着くとサンバルカンを出撃させ、表向き募金を集める市民運動に(いつもの事とはいえ)戦闘服姿のサンバルカンが乗り込んでいくのは、公権力の暴力性について幾分かの風刺性も感じさせる画ではあり。
「よーし、みんなの目を覚ますんだ!」
アマゾンキラーがサンバルカンへと市民をけしかける一方、サファリでは唐突に始まるねぼすけ少年の悩み相談に美佐が答えて子供ゲスト要素がねじ込むように消化されていたが、事態は遂に催眠術にかけられた平和守備隊の一部によるクーデターの動きへと発展していき、弾圧も暴力革命も、どちらも大抵よくない。
ひとまず市民を放置し、急ぎクーデター派の元へと向かったサンバルカンはバリケードを築いた守備隊から銃撃を浴びせられ、なんか、凄い事になってきました(笑)
とはいえエスカレートはここまで、太陽シャワーを浴びせるとショック療法で隊員たちが正気を取り戻す一方、妖魔力を中継するドラゴンモンガーが足を滑らせた拍子に投射される魔力がずれると、それに感応したねぼすけ少年(多分デンジ星人の子孫)が悪夢の形で怪人の姿を見た事から、その居場所が判明。
だいぶ強引で残念な解決法になりましたが、サブタイトル通りに「寝坊少年の白昼夢」に焦点を合わせるならば、事態が拡大するより前に少年の悪夢から始めるのがセオリーなので、派手な作戦と画を優先した結果、ゲスト少年要素の接続が付け合わせの佃煮みたいになった感。
サンバルカンは戦闘員を蹴散らしていき、地形にうまく隠したトランポリンを、敵も味方も使うの、割と好き。
強力なドラゴン妖術に苦しむサンバルカンだが、コンビネーションからの合体剣(悪霊退散に使った技でしょうか)で反撃すると、バルカンボールVer.3から拘束具が飛び出してモンガーの口を塞ぎ、体内で製造される爆弾が暴発したドラゴンモンガーは、自らの生み出した原子の炎に灼かれながら崖を転がり落ちていく、モンガー史上に残る酷たらしい焼死を遂げると巨大モンガー。
巨大戦はどういうわけかボクシングスタイルの殴り合いになると、胸から放つVの字光線バルカンビクトリーからのオーロラプラズマ返しにより、サンバルカンロボが勝利を収めるのであった。
7つの太陽は消え、街には穏やかな夜が戻り、ねぼすけ少年との交流は、美佐が8割方を持っていく『サンバルカン』仕様でしたが、メイン回に実体はなく、ただそれを見る人の心の中だけにあり、最後は鮫島が少年をおぶって、少年を家に送り届ける太陽戦隊の姿で、つづく。
……第39-40話が、飛羽が目立ち加減の作りだったのを受けて、そろそろクライマックス突入を前に、豹&鮫島を1話ずつ目立たせようという意識の欠片ぐらいは見えるのですが、欠片で終わる『サンバルカン』。
40話台に入って到達した結論として、今作の場合、導入に存在が活用されたらメイン回ぐらいの気持ちで受け止めるのが丁度良いのかもしれません。